距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚

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推理?

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「――いやはや、完全に私が予想した通りになりましたねぇ、七里ヶ浜君……」

 コーラを飲んだらガスが放出されるのと同じくらい確実になってしまった、俺から隆輝への相談。
 
 彼は先日の「おおみつがれ」を聞くや否や、幻想のメガネを持ち上げる仕草をし、妙にねっとりした口調になる。

「それは誰の真似なんだよ」
「はぁ!? お前、もしかして『ブラザー』見てないの!?」
「あれの真似してたのか……」

 ブラザーは日本の刑事ドラマシリーズ。
 警視庁の刑事である松上左京とその相棒が、推理困難な殺人事件を解決していく様子を描く。
 Wikipediaを読んでみるとこう書かれている。

 それはもう人気のシリーズで、隆輝のモノマネがあまりにも微妙な出来だったからピンと来なかったが、俺も見たことがあった。

「俺は何代目のブラザーなわけ?」
「まぁ……女子に嘘が見抜かれそうっていう点では初代かな」
「今から赤いスカジャン買って来るから待っててな」
「あれってスカジャンじゃなくてMA-1……じゃなくてさ。悟、ヤバくないか?」
「……そうだよなぁ」

 お互いに軽口が止まり、深刻な雰囲気が漂い始める。

「こんな高いもの、プレゼントでも貰っちゃいけなかったよな」
「いやいやいや、そこじゃないんだわ」
「ん? 東堂先輩に買ってもらった服の額が問題なんだろ?」

 問いかけると、隆輝は口を半開きにして俺を見る。

「なんだよその、この馬鹿は何も分かってねぇんだなぁ……みたいな顔は」
「御名答。この馬鹿は何にも分かってねぇんだなぁ……の顔だよ」

 こういうのは正解できるようだ。

「ちょっと解説してもらっても?」

 分からないことをいつまでも考えていても無駄だ。
 俺は名探偵隆輝に解読を依頼する。

「俺が言いたいことは三つある。いや、本当は三つあるか分からんけど、カッコいいから三つあるって言わせてくれ」
「分かった」

 俺も同じ立場ならそう言いたくなる。

「よし。俺が言いたいことは三つある。一つ目が東堂先輩についてだ」
「先輩がどうしたんだ?」

 隆輝は人差し指を立てながら話を続ける。

「彼女はお前に……巻島さんとの諸々の練習のために私を使ってと、要はそう言ったわけだ」
「そうだな」
「これは嘘だ」
「……嘘ぉ?」

 首を捻る。

「とはいえ、これは俺が明かすのも野暮というものだろう。なぁサトソン君」
「全然明かしてほしいんですけどホームズ先生」

 しかし、隆輝は頷いてくれない。

「次に二つ目だ。お前のことだからきっと、軽い気持ちで巻島さんに送ったんだろ? 『今日新しい服を買ったんだけど、どうかな?』とか言って」
「お前……俺のスマホにバックドアを!?」
「仕込むまでもないね。スケスケだよお前のスマホは」

 そんな、俺のスマホがスケルトン仕様だなんて……カッコいいじゃないか。

「でも、このメッセージのなにが悪いんだよ」
 
「巻島さんはこう考える。
 えぇっ!? 悟くんかっこいい~!
 でも、この服なんだか質が良さそう。
 私はアイドルだしモデルもやったことがあるから見る目はあるのっ!
 よぉーし検索検索っと……んんっ?
 悟くんのこの服、かなり高い……。
 …………もしかして、女? ってな」

「そ、そんなまさか……」

 いくらなんでも検索はやりすぎだろう。
 俺のそんな考えもお見通しと言いたげに、隆輝は指を左右に振る。

「悟を体育倉庫にブチ込んで襲い、自宅で襲った隠れ肉食系女子だぜ? お前の情報はなんであっても知りたいんだろ。たとえ布切れであってもな」

 背筋に冷たいものが走る感覚。
 信じたくはないが、こういう所で隆輝の勘が冴えるのは体験済みだ。

「じゃあ……俺はどうすればいいんだ?」
「このままだと、間違いなくお前は殺され……はしないだろうけど、監禁くらいはされるだろうな」
「監禁ならもうされたよ」

 二日間、じっくりと。

「そんなもんじゃない。月単位だね」
「月単位!? で、でも流石に学校があるから誰か気付いてくれるだろ」
「本当にまったく……お前はまったくってやつだよ」

 まったくがゲシュタルト崩壊しそうになってきた。

「もうじき俺たちを苦しめにやって来るもの、なんだと思う?」
「ええっと……高二病?」
「それはもうなってる。違くて、あるだろほら、もっと身近なものが」
「…………期末試験か」

 その通り、と隆輝は指を鳴らす。

「そして、期末試験が終わった俺たちの楽園は?」
「夏休みだ!」
「ビンゴ! お前の夏休みは巻島さんに支配されるッ!」
「その一ヶ月ってことか!?」

 確かに俺が監禁されていても誰も不審に思ってくれないではないか。

「いいのか? 夏休みには『アメイジング・ファイブ』が公開されるんだぞ?」
「『ハイパーメン』もだ……」
「今年の夏はヒーロー映画が豊作。それを檻の中から観たいのか?」
「ヒーローは俺を助けてくれないのか……」
「痴情のもつれに付き合ってるほど暇じゃないんだよ」

 世界を救わなきゃいけないんだから、そりゃそうだ。

「ってことでお前のやることは決まってる。次の東堂先輩とのデートで意図を聞き出すことと、巻島さんに早いとこプレゼントを渡すこと。もうそろそろプレゼントの存在を忘れかけてきてるだろ?」
「……机の上には置いてある」

 なにも俺は、巻島から目を逸らしているつもりはない。
 ただ、行動がよろしくないのも事実なようだ。

「よし、俺はやるぞ隆輝」
「それでいいッ!」
「ありがとなブラザー!」
「あぁッ! お安い誤用よッ!」

 ガッチリと硬い握手を交わす。
 東堂先輩との約束は明日の放課後。
 俺はやるぞ! やってやる!
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