【電子書籍1〜2巻発売中】ダジャレ好きのおっさん、勇者扱いされる~昔の教え子たちが慕ってくれるけど、そんなに強くないですよ?~

歩く魚

文字の大きさ
47 / 154
おっさん、村へ行く

しおりを挟む
 教会や貴族の家、夜にはプディングなんていう面白い食べ物を堪能した俺たちは翌日、エドガーのいるフォックスデンに向かうために城下町を出ることになっていた。
 宿を出ると、いつぞやのようにシャーロットが待機していた。
 しかし、王国内を移動するだけだからか他に団員はいない。
 シャーロットは俺たちを視界に入れると、行儀良く礼をする、

「おはようございます先生。昨夜はよく眠れましたか?」
「あぁ、ここの宿のベッドは快適で――」
「快適で夜も盛り上がったというものだ」
「べ、別に何もしてないよ!? そう、ただ話が盛り上がっただけだから!」
「何を言っているジオ。シャーロットほどの歳にもなれば大人の――ぐふぅ!?」

 軽く肘で小突いてルーエを黙らせる。
 せっかく誤魔化せそうなのに、どうして俺の努力を無駄にしようとするのか。
 両親との記憶の薄い俺でも、肉親の情事を聞くのはキツイとわかる。
 もちろんシャーロットも成長しているし、おそらく「意味」は理解しているから気まずい思いをさせたくない。

「……くつろげたようなら何よりです。はい」

 ほら見ろ。
 表情こそにこやかだが、額に青筋が浮かんでいる。
 朝から興味のない下品な話を聞かされて怒っているのだ。

「ご、ごめんねシャーロット。今日はよろしく」
「大丈夫です。時間には余裕がありますが、フォックスデンの案内もあるので出発しましょうか」

 そういうわけで、俺とルーエ、そしてシャーロットはフォックスデンへ向かうことにした。
 今回は馬に乗って行くようだ。

「どれでも好きな馬を選んでください」
「馬か……見るのは子供の頃以来だな」

 故郷の村で飼われていたのを見たことはあるが、もちろん乗ったことはない。
 目の前にいる三頭の馬は、それぞれ黒、白、茶色に分かれている。
 どの馬も毛並みが美しく、日光を浴びて艶めかしすら醸し出していた。
 特に茶色い馬が美しく、後ろ足の方……股だろうか。
 その部分の流れるような毛に惹かれた。

「俺はこいつにしようかな」

 そう言って横から馬に触れようとすると、茶馬は華麗に身を翻して避けてしまった。

「ふふっ……嫌われてしまったようですね。馬は視界が広く、真後ろ以外は見えているそうですよ」
「ほう、視野の広さは生存に繋がるからな。良いことだ」
「そ、そうなんだ……」

 馬に触れるのを拒否されたショックに胸が重くなったが、人と人に相性があるように、馬と人間にも相性があるのだろう。
 残りの2頭にも嫌われていないといいんだが。

「……そこの黒いのはジオを気に入ってるんじゃないか?」
「え?」

 黒い馬を見てみると、彼と視線が重なった。
 そのまま二、三秒目を合わせていると黒馬は俺の方に歩いてきて、目を細めて頭を擦り寄せてくる。

「懐かれているみたいですね。どうでしょう、その馬にしてみては?」

 俺がこんなに凛々しい馬に乗って笑われないだろうかと思ってしまうが、彼の瞳は優しく、見ていると落ち着く。

「……そうだな、こいつにしようと思う。よろしくな」

 黒馬は鼻を鳴らし、軽快な足取りで俺の周囲を駆け始めた。

「それじゃあ私はこの白い馬にします。ルーエさんはその子で良いですか?」
「何でも良い。馬の違いなど分からないからな。それより、この茶色いのはメスじゃないか? 私についてこれるといいのだがな」
「確かに、競争させるなら牡の方が強いらしいですが、その茶馬はかなり力持ちですよ」
「……ふん、そうか」

 気に入らない様子のルーエだったが、ひとまず納得したように馬に跨った。
 俺もルーエ、そしてシャーロットに続いて馬に乗る。

「お……おお……」

 浮遊魔術で浮くのとはまた違う視点の高さ。
 身体を使って跨るのに慣れていないからか、やや不安定に感じる。
 しかし、そこに不快感はなく、馬が歩くたびに揺れる感覚もまた心地よい。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...