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おっさん、パーティに行く
完成
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「あなたは落ち着いた方のようですが、身体はまさしく戦士のそれですね。滑らかな黒ではなく、質感にもこだわってみましょう」
ロバートはジオのサイズを測定しながら、どんなスーツを作るか考えていた。
彼の想像力はジオという逸材の力によって爆発的に膨らんでいき、彼が年甲斐もなく興奮しているのがわかる。
「ショルダーラインは少し強めに、かと言ってスマートさを損なわないものにしましょう。スリムな方が似合うと思います」
「そ、そうですか……?」
自分が何を言われているのかイマイチ理解していないジオは相槌を打つことしかできない。
楽し気なロバートと居心地が悪そうなジオ。
二人のやりとりはしばらく続き、ようやく採寸が終わる。
「それでは、パーティの前日には出来上がるように調整しますので、お好きな時間にお越しください」
「あ、あの……お代なんですが……」
恐る恐る手をあげて問いかける。
「はい、お代でしたらざっと……」
ロバートは紙に数字を書いていく。
「材料やスーツの形式を含めてこのくらいでしょうか」
「……こっ、こんなに…………」
ここは知る人ぞ知る名店。
実は王室も利用しているという噂もある店である。
値段に価値を見出さないとしても、当然値は張る。
外界に出てきて少なくない常識を得たジオが、目玉が飛び出さんばかりに驚くほどの値段。
「あ、あのっ! 申し訳ないのですが、私には払うことが――」
「私が払いますので大丈夫ですよ」
シャーロットが横から声をかける。
「えっ!? いやいや、こんな高価なもの!」
「お気になさらないでください。敬愛する先生と再会できたのです。このくらい安いものですよ」
「そ、それでも申し訳なくて――」
「でしたら後で王に払ってもらいましょう。二つ返事で頷いてくれますよ」
「えぇ……」
「……身分の高い者に好かれるのは何かと都合がいいな。よし、俺も貴族に媚を売ってみるか」
そんなこんなでジオのパーティ参加の準備は進んで行った。
・
パーティ前日。
「ジオ様、いかがですか?」
件の店にて、完成したスーツに袖を通したジオ。
彼は試着室を出て、3人に姿を見せた。
「おお! かなりイカしてると思うぞ!」
増幅された執筆対象の男らしさを称賛する小説家。
「……素敵です、先生……」
頬を赤らめ、ぽーっと見惚れている騎士団長。
「流石は私の夫だ。ただ黒いだけではなく、目を凝らさねば分からない模様がお前の底の深さを表しているようだ。素晴らしい出来だぞ、ロバートとやら」
「ありがとうございます。そう言っていただけて幸せです。ジオ様はご満足いただけましたかな?」
「え、えっと……」
ジオは鏡に映る自分を見つめ、身を翻してみる。
「す、すごく良いスーツなんですけど、私が地味だからか服に着られている気がして……」
「そんなことはありませんよ」
「いくら良い服だとしても、着る人に似合っていなければ意味がないのです。逆に、良い服でなくとも、その人に似合っていれば値段以上の価値があります」
心配そうな顔をするジオに、ロバートは優しく諭すように言う。
「安心してください。このスーツは最高の素材を使い、かつ貴方に完璧にフィットするように仕立てました。間違いなくパーティで一番輝いているのは貴方ですよ」
「……はい、ありがとうございます!」
深く、説得力のあるロバートの言葉を聞き、ジオは自信を得たようだった。
深く礼をして仕立て屋を出た彼は、そのまま宿に戻ることができなかった。
美しいスーツを手に入れた喜び、そして新しい自分との邂逅に心が躍って仕方がない。
「ちょ、ちょっと散歩してこようかな。ほ、ほら、服を慣らした方がいいかもだし」
そう行って歩き出したジオ。
残された3人は笑みを浮かべる。
「それじゃあ俺は王に挨拶に行ってくるよ。金もたかりたいしな」
「私は宿に帰ろう。そこの小娘と出かけてきたらどうだ?」
「わ、私ですか!?」
いつもは鉄面皮のシャーロットが狼狽えている。
「ジオにはいろんな女を知ってほしいからな。ほら、行ってこい」
ルーエに背中を押され、シャーロットは小さくなったジオの背中を追いかけていった。
ロバートはジオのサイズを測定しながら、どんなスーツを作るか考えていた。
彼の想像力はジオという逸材の力によって爆発的に膨らんでいき、彼が年甲斐もなく興奮しているのがわかる。
「ショルダーラインは少し強めに、かと言ってスマートさを損なわないものにしましょう。スリムな方が似合うと思います」
「そ、そうですか……?」
自分が何を言われているのかイマイチ理解していないジオは相槌を打つことしかできない。
楽し気なロバートと居心地が悪そうなジオ。
二人のやりとりはしばらく続き、ようやく採寸が終わる。
「それでは、パーティの前日には出来上がるように調整しますので、お好きな時間にお越しください」
「あ、あの……お代なんですが……」
恐る恐る手をあげて問いかける。
「はい、お代でしたらざっと……」
ロバートは紙に数字を書いていく。
「材料やスーツの形式を含めてこのくらいでしょうか」
「……こっ、こんなに…………」
ここは知る人ぞ知る名店。
実は王室も利用しているという噂もある店である。
値段に価値を見出さないとしても、当然値は張る。
外界に出てきて少なくない常識を得たジオが、目玉が飛び出さんばかりに驚くほどの値段。
「あ、あのっ! 申し訳ないのですが、私には払うことが――」
「私が払いますので大丈夫ですよ」
シャーロットが横から声をかける。
「えっ!? いやいや、こんな高価なもの!」
「お気になさらないでください。敬愛する先生と再会できたのです。このくらい安いものですよ」
「そ、それでも申し訳なくて――」
「でしたら後で王に払ってもらいましょう。二つ返事で頷いてくれますよ」
「えぇ……」
「……身分の高い者に好かれるのは何かと都合がいいな。よし、俺も貴族に媚を売ってみるか」
そんなこんなでジオのパーティ参加の準備は進んで行った。
・
パーティ前日。
「ジオ様、いかがですか?」
件の店にて、完成したスーツに袖を通したジオ。
彼は試着室を出て、3人に姿を見せた。
「おお! かなりイカしてると思うぞ!」
増幅された執筆対象の男らしさを称賛する小説家。
「……素敵です、先生……」
頬を赤らめ、ぽーっと見惚れている騎士団長。
「流石は私の夫だ。ただ黒いだけではなく、目を凝らさねば分からない模様がお前の底の深さを表しているようだ。素晴らしい出来だぞ、ロバートとやら」
「ありがとうございます。そう言っていただけて幸せです。ジオ様はご満足いただけましたかな?」
「え、えっと……」
ジオは鏡に映る自分を見つめ、身を翻してみる。
「す、すごく良いスーツなんですけど、私が地味だからか服に着られている気がして……」
「そんなことはありませんよ」
「いくら良い服だとしても、着る人に似合っていなければ意味がないのです。逆に、良い服でなくとも、その人に似合っていれば値段以上の価値があります」
心配そうな顔をするジオに、ロバートは優しく諭すように言う。
「安心してください。このスーツは最高の素材を使い、かつ貴方に完璧にフィットするように仕立てました。間違いなくパーティで一番輝いているのは貴方ですよ」
「……はい、ありがとうございます!」
深く、説得力のあるロバートの言葉を聞き、ジオは自信を得たようだった。
深く礼をして仕立て屋を出た彼は、そのまま宿に戻ることができなかった。
美しいスーツを手に入れた喜び、そして新しい自分との邂逅に心が躍って仕方がない。
「ちょ、ちょっと散歩してこようかな。ほ、ほら、服を慣らした方がいいかもだし」
そう行って歩き出したジオ。
残された3人は笑みを浮かべる。
「それじゃあ俺は王に挨拶に行ってくるよ。金もたかりたいしな」
「私は宿に帰ろう。そこの小娘と出かけてきたらどうだ?」
「わ、私ですか!?」
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ルーエに背中を押され、シャーロットは小さくなったジオの背中を追いかけていった。
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