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おっさん、パーティに行く
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ロバートさんの仕立ててくれたスーツは歩くたびに身体に馴染んでいき、今日初めて袖を通したものとは思えないほど自然だった。
俺が作り、自宅で着古していた服よりも心地良く感じるし、何より自分にもこんな一面があるのだと知れたことが嬉しい。
城下の古びていて歴史を感じさせる建物や石畳、それを照らす暖かい光。
自分に酔っていると言われてしまいそうだが、思わず笑みが溢れてしまう。
「――せ、先生! 待ってください!」
足を止めて振り返るとシャーロットの姿があった。
「どうしたの? もしかして忘れ物しちゃった?」
「い、いえ、そういうわけではなく……」
彼女はしどろもどろになっていたが、別れた場所から走ってきているはずなのに息一つ乱れていなかった。
「流石だね。先生として鼻が高いよ」
「……っ」
俺なりに賛辞の言葉を送ったつもりなのだが、シャーロットは悔しそうに唇を噛み締める。
そして、その言葉が決意の引き金になったかのように口を開いた。
「わ、忘れ物は私です!」
・
「なぁんだ。それならさっき言ってくれれば良かったのに」
「え、えぇ……それは……はい……」
一体何事かと思ったが、話を聞いてみるとどうやらシャーロットも夜の街を散歩したかったらしい。
夜の街と言ってもまだ8時かそこらだけど、やはり騎士団長ともなれば自分の時間を取るのが難しいのだろう。
いまだに残念そうな表情をしているが、その理由はわからない。
「って言っても、俺も何にも考えないで歩き出しちゃって……この辺りは何にもわからないんだよね」
「でしたら広場に行きませんか? 毎日のように楽器の演奏がありますし、そこで夕飯もとれるかと」
「いいね、そうしよう」
俺たちは並んで石畳の上を歩いていく。
自分の足元からカツカツという音が出ているのが新鮮だ。
隣を歩いているシャーロットはネクタイのような装飾のある白いブラウスを身につけている。
彼女にとっては普段着なのかもしれないが、ただ歩いているだけで高貴なオーラが出ていた。
「シャーロットは山を出てからはどうしていたの? すぐにケンフォードに?」
「いえ、最初の数年は冒険者をしておりました。途中でランドにも会いましたし、違う時期に先生に育てられたという方々にも何人かお会いしました」
「へぇ、ランドには俺も会ったよ。あんなにやんちゃしてたランドが働いてるっていうので感動してね……」
「どれもこれも先生のおかげですよ」
「そんなことないよ。みんなが頑張ったから」
ランドとシャーロットは正反対の性格をしていて、たまにランドが彼女に喧嘩を売りにいっては俺が止めていたのを思い出した。
だが、別に二人の仲が悪いというわけではなく、あの頃は少し気が立っていたというか、そういう感じだ。
「冒険者として名が売れた頃、私はエドワード王からスカウトを受けてこうして安定した職に就くことができたのです」
「うんうん。俺も自分のことのように嬉しいよ」
冒険者は実力主義的なところがあるだろうし、難易度の高い依頼をこなさないと生計を立てるのは難しいのだろう。
その点、騎士団に所属すれば平時の際にも賃金は発生する……のか?
勝手に納得しているが、本当のところはどうかわからない。
だが、シャーロットがこともなげにスーツを買おうとしてくれていたことから、生活に困窮しているわけではないのがわかる。
「でも、もちろん辛いことは多かったです。同じパーティの仲間が命を落としたり、騎士団に所属してからも、間に合わずに救えなかった人々を見てきました」
「……それでも折れなかったのがすごいよ」
人の死なんて慣れることじゃない。
母が亡くなった時は世界が終わりかのように感じたし、おそらく今でもそうだ。
それを乗り越えたシャーロットが力強い眼差しをしているのは当然だった。
「……でも、私が頑張れたのは、先生のお陰なんですよ?」
「俺の?」
彼女は距離を詰め、腕を組んでくる。
「……力強い先生の後ろ姿が、数々の言葉があったから、私は挫けずにいられたんです」
頬を染めてにこりと笑うシャーロット。
その笑顔を見て、胸が熱くなるのを感じた。
俺が作り、自宅で着古していた服よりも心地良く感じるし、何より自分にもこんな一面があるのだと知れたことが嬉しい。
城下の古びていて歴史を感じさせる建物や石畳、それを照らす暖かい光。
自分に酔っていると言われてしまいそうだが、思わず笑みが溢れてしまう。
「――せ、先生! 待ってください!」
足を止めて振り返るとシャーロットの姿があった。
「どうしたの? もしかして忘れ物しちゃった?」
「い、いえ、そういうわけではなく……」
彼女はしどろもどろになっていたが、別れた場所から走ってきているはずなのに息一つ乱れていなかった。
「流石だね。先生として鼻が高いよ」
「……っ」
俺なりに賛辞の言葉を送ったつもりなのだが、シャーロットは悔しそうに唇を噛み締める。
そして、その言葉が決意の引き金になったかのように口を開いた。
「わ、忘れ物は私です!」
・
「なぁんだ。それならさっき言ってくれれば良かったのに」
「え、えぇ……それは……はい……」
一体何事かと思ったが、話を聞いてみるとどうやらシャーロットも夜の街を散歩したかったらしい。
夜の街と言ってもまだ8時かそこらだけど、やはり騎士団長ともなれば自分の時間を取るのが難しいのだろう。
いまだに残念そうな表情をしているが、その理由はわからない。
「って言っても、俺も何にも考えないで歩き出しちゃって……この辺りは何にもわからないんだよね」
「でしたら広場に行きませんか? 毎日のように楽器の演奏がありますし、そこで夕飯もとれるかと」
「いいね、そうしよう」
俺たちは並んで石畳の上を歩いていく。
自分の足元からカツカツという音が出ているのが新鮮だ。
隣を歩いているシャーロットはネクタイのような装飾のある白いブラウスを身につけている。
彼女にとっては普段着なのかもしれないが、ただ歩いているだけで高貴なオーラが出ていた。
「シャーロットは山を出てからはどうしていたの? すぐにケンフォードに?」
「いえ、最初の数年は冒険者をしておりました。途中でランドにも会いましたし、違う時期に先生に育てられたという方々にも何人かお会いしました」
「へぇ、ランドには俺も会ったよ。あんなにやんちゃしてたランドが働いてるっていうので感動してね……」
「どれもこれも先生のおかげですよ」
「そんなことないよ。みんなが頑張ったから」
ランドとシャーロットは正反対の性格をしていて、たまにランドが彼女に喧嘩を売りにいっては俺が止めていたのを思い出した。
だが、別に二人の仲が悪いというわけではなく、あの頃は少し気が立っていたというか、そういう感じだ。
「冒険者として名が売れた頃、私はエドワード王からスカウトを受けてこうして安定した職に就くことができたのです」
「うんうん。俺も自分のことのように嬉しいよ」
冒険者は実力主義的なところがあるだろうし、難易度の高い依頼をこなさないと生計を立てるのは難しいのだろう。
その点、騎士団に所属すれば平時の際にも賃金は発生する……のか?
勝手に納得しているが、本当のところはどうかわからない。
だが、シャーロットがこともなげにスーツを買おうとしてくれていたことから、生活に困窮しているわけではないのがわかる。
「でも、もちろん辛いことは多かったです。同じパーティの仲間が命を落としたり、騎士団に所属してからも、間に合わずに救えなかった人々を見てきました」
「……それでも折れなかったのがすごいよ」
人の死なんて慣れることじゃない。
母が亡くなった時は世界が終わりかのように感じたし、おそらく今でもそうだ。
それを乗り越えたシャーロットが力強い眼差しをしているのは当然だった。
「……でも、私が頑張れたのは、先生のお陰なんですよ?」
「俺の?」
彼女は距離を詰め、腕を組んでくる。
「……力強い先生の後ろ姿が、数々の言葉があったから、私は挫けずにいられたんです」
頬を染めてにこりと笑うシャーロット。
その笑顔を見て、胸が熱くなるのを感じた。
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