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おっさんと和の村
団子
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「食べる?」
「ああ、ありがとう」
団子をつまんでルーエの方に持っていくと、嬉しそうに手に取った。
「……ふむ、これは、かなり、美味いな」
幸せそうに頬を緩めている。
ルーエの前に置かれている団子に視線を向ける。
彼女が注文した抹茶団子は、深い緑色をした団子が三つ、連続して串に刺さっている。
それが三本皿に乗せられていて、月見団子と同じくなかなかのボリュームがありそうだった。
「お返しだ、ほら」
俺が眺めていたのに気が付いたのか、団子の串を一本手に取ると、俺の口に持ってくる。
白昼堂々食べさせてもらうのは恥ずかしく感じたが、特にやましい気持ちがあるわけでもなく、彼女の善意からの行動だと納得して口を開けた。
柔らかい団子が歯に触れ、抹茶の香りが鼻に抜けていく。
ほろ苦い風味はあるが、決して渋くはない。
丁寧に育てられているのが、まろやかな甘さとコクから感じ取れた。
苦味と甘味という相反するような二つが絶妙なバランスを保っていて、カグヤノムラの豊かな自然を思わせる。
「……どうぞ」
またもや背後から何かを差し出される。
それはコップのような容器に入っていたが、器が波打っていて、厚みがあった。
入れられている液体からは湯気が立っている。
手に取って匂いを嗅いでみると、思考を落ち着かせてくれそうな、穏やかな茶の香りがした。
ずずず、と茶を啜ってみる。
どんな名前の茶葉を使っているかはわからないが、抹茶に比べて苦味が強調されていて、甘くなった口内をフラットな状態に戻してくれた。
団子を食べ終えると、店内に流れる静かな音楽に耳を傾けることにした。
演奏したものを魔術で保存し、それを流しているのかはわからないが、店内に楽器を持った人の姿はない。
いや、楽器の音どころか、木の葉が風にそよぐ音や、鳥の声が遠く聞こえてくる。
つまりこの店は、カグヤノムラの伝統的な風景を五感で感じられるように工夫しているのだ。
なんという努力。
ただ古いから残っているわけでなく、多くの試みの上に生き残っている。
「大変お待たせしてしました。ごめんなさいねぇ、今日は外の席がえらい混んでて……」
そう思っていると、背後から声が聞こえた。
振り返ると、俺たちを案内してくれたおばあさんの姿。
彼女は片手に月見団子、もう片手に抹茶団子を持っている。
「え? もう団子は食べましたよ」
「美味かったぞ。誇っていい」
おそらく、おばあさんは自分が注文を捌いたことを忘れてしまっているのだ。
特に怒るようなことではない。
俺だってやるべきことを忘れたり、昨晩何を食べたか失念してしまうことが多々あるからな。
人間が歳を感じる最たる例と言えるだろう。
しかし、おばあさんは俺たちの言葉が耳に届いているはずなのに、どうにも不思議そうだ。
「今日は私しか働いていないんだけど、さっきまでずっと外の席と行き来していたから……おかしいわねぇ」
「……え?」
彼女が嘘を言っているようにも、忘れているようにも見えなかった。
となると、本当におばあさんは俺たちに団子を提供していないのか?
でも、団子を食べたのは、茶を飲んだのは確かだ。
「よく分からないけど、今日は特別サービスってことで食べていいですよ。そちらのお姉さんも褒めてくれたしねえ」
「おお! ありがたくいただく!」
ことの真相は不明だが、運良く追加で団子をいただいてしまったので、それを平らげることにした。
意外と腹にたまるようで、食べ終わる頃には二人とも顔が虚ろになっていたのは秘密だ。
「ああ、ありがとう」
団子をつまんでルーエの方に持っていくと、嬉しそうに手に取った。
「……ふむ、これは、かなり、美味いな」
幸せそうに頬を緩めている。
ルーエの前に置かれている団子に視線を向ける。
彼女が注文した抹茶団子は、深い緑色をした団子が三つ、連続して串に刺さっている。
それが三本皿に乗せられていて、月見団子と同じくなかなかのボリュームがありそうだった。
「お返しだ、ほら」
俺が眺めていたのに気が付いたのか、団子の串を一本手に取ると、俺の口に持ってくる。
白昼堂々食べさせてもらうのは恥ずかしく感じたが、特にやましい気持ちがあるわけでもなく、彼女の善意からの行動だと納得して口を開けた。
柔らかい団子が歯に触れ、抹茶の香りが鼻に抜けていく。
ほろ苦い風味はあるが、決して渋くはない。
丁寧に育てられているのが、まろやかな甘さとコクから感じ取れた。
苦味と甘味という相反するような二つが絶妙なバランスを保っていて、カグヤノムラの豊かな自然を思わせる。
「……どうぞ」
またもや背後から何かを差し出される。
それはコップのような容器に入っていたが、器が波打っていて、厚みがあった。
入れられている液体からは湯気が立っている。
手に取って匂いを嗅いでみると、思考を落ち着かせてくれそうな、穏やかな茶の香りがした。
ずずず、と茶を啜ってみる。
どんな名前の茶葉を使っているかはわからないが、抹茶に比べて苦味が強調されていて、甘くなった口内をフラットな状態に戻してくれた。
団子を食べ終えると、店内に流れる静かな音楽に耳を傾けることにした。
演奏したものを魔術で保存し、それを流しているのかはわからないが、店内に楽器を持った人の姿はない。
いや、楽器の音どころか、木の葉が風にそよぐ音や、鳥の声が遠く聞こえてくる。
つまりこの店は、カグヤノムラの伝統的な風景を五感で感じられるように工夫しているのだ。
なんという努力。
ただ古いから残っているわけでなく、多くの試みの上に生き残っている。
「大変お待たせしてしました。ごめんなさいねぇ、今日は外の席がえらい混んでて……」
そう思っていると、背後から声が聞こえた。
振り返ると、俺たちを案内してくれたおばあさんの姿。
彼女は片手に月見団子、もう片手に抹茶団子を持っている。
「え? もう団子は食べましたよ」
「美味かったぞ。誇っていい」
おそらく、おばあさんは自分が注文を捌いたことを忘れてしまっているのだ。
特に怒るようなことではない。
俺だってやるべきことを忘れたり、昨晩何を食べたか失念してしまうことが多々あるからな。
人間が歳を感じる最たる例と言えるだろう。
しかし、おばあさんは俺たちの言葉が耳に届いているはずなのに、どうにも不思議そうだ。
「今日は私しか働いていないんだけど、さっきまでずっと外の席と行き来していたから……おかしいわねぇ」
「……え?」
彼女が嘘を言っているようにも、忘れているようにも見えなかった。
となると、本当におばあさんは俺たちに団子を提供していないのか?
でも、団子を食べたのは、茶を飲んだのは確かだ。
「よく分からないけど、今日は特別サービスってことで食べていいですよ。そちらのお姉さんも褒めてくれたしねえ」
「おお! ありがたくいただく!」
ことの真相は不明だが、運良く追加で団子をいただいてしまったので、それを平らげることにした。
意外と腹にたまるようで、食べ終わる頃には二人とも顔が虚ろになっていたのは秘密だ。
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