愛が重いだけじゃ信用できませんか?

歩く魚

文字の大きさ
88 / 124
第3章 秘密

意見

しおりを挟む
「それではぁぁあ! 結果発表といきましょう!」

 凛の相談の傍ら料理を作り続けたいたはずだが疲れを全く見せない坊主。
 彼が声高らかに宣言した。
 俺たちは席に座ったまま、それぞれフリップを持たされる。

「めちゃくちゃ用意いいよな」
「多分演劇サークルのを貸してくれてるんだろ。知らんけど」

 確かにフリップなんてテレビ番組でしか見たことがない。
 用意が良すぎるな。

「フリップが行き渡ったところで、今回白熱した戦いを繰り広げてくださった選手たちの入場です!」
 
 教場の外で待たされていた四人が続々と入場してくる。
 七緒はなんとも言えぬ面倒そうな表情。
 加賀美は悔しそうな、半ば諦めているような顔。
 紫はポーカーフェイスだが、その瞳には達成感が浮かんでいた。
 そして凛は一点の曇りもなく、ただ真っ直ぐ正面を見つめている。
 今更だが選手って言ってやるなよ。

「さて皆様」

 こちらへ向き直った坊主が手を挙げる。

「再び選手たちを目の前で見て、誰がナンバーワンメイドに相応しいか記憶を思い起こせたかと思います。その名前をフリップにお書きください!」

 三人は一斉に各々が一番良いと思ったメイドの名を記入し、ほぼ同じタイミングでペンを置いた。

「御三方書けたようですね。では! 運命の結果発表!」

 楽人が唾を飲み込む音が聞こえた。
 なんでお前が緊張してるんだ。

「まずは山本様! フリップを表にお願いします!」

 蓮はゆっくりと、言われた通りにする。

「――紫様に一票!」

 紫は深く息を吸う。
 やはり蓮は紫に入れたか。
 何がハマったのかはわからないが、その反応は他のメイドを前にした時と大幅に違っていた。

「次に古庵様! フリップを表にお願いします!」
「俺は……」

 自分の選択に間違いはないと思う。
 俺は堂々とそれを目の前の人々に見せる。

「――――座長に一票!」

 一瞬場がどよめく。
 しかし、その中で凛だけが凛々しく俺を見つめていた。

「……信じていたぞ、瑠凪」

 聞こえなかったが小さく何かを呟いていた。

「さぁ現在は紫様と座長の一票ずつ! 次の一票で勝者が決まるのか、はたまた三人目の票の獲得者が現れるのか! 二階堂様、フリップを表にお願いします!」

 全員の視線が楽人に集中する。
 彼は1度目閉じて精神統一し、その手を返した。

「――――――紫様! よってメイド合戦優勝は……二票を獲得した紫様です!」

 男子陣、七緒、そして凛が拍手をする。
 紫は誰が優勝したのか暫し理解していない様子だったが、やがて口を開いた。

「私が……優勝。嬉しい」

 彼女の顔は確かに微笑んでいる。
 だが、その隣に立つ加賀美は心底悔しそうな、理解が及ばないという表情。

「えーでは最後に、各々の選手たちの良かった点や改善点などお聞かせ願えればと思います。まずはナナ様からですね」
「仕方ないけど俺たちに全く興味なかったからな」
「それに尽きる」
「メイドが客に連絡先を聞くな」

 三者三様だが彼女を褒める意見がないのは一致している。

「先輩以外に媚びるなんて考えられませんし、私は最初からこの勝負にら勝てるとは思ってませんでした。……まぁ、目的は達成できたと思いますし」

 不敵な笑みのせいで負け惜しみのようには聞こえない。

「次に座長ですね。私としてはとても良かったと思うのですが……」
「確かにめちゃくちゃ良かったんですけど、メイドさんというよりは敏腕上司みたいな気がしちゃって……」
「俺はそういうところが良かったけどな。主人の健康管理を考えてくれるなんてモロメイドさんじゃないか?」

 だから俺は凛に投票した。

「よく分かっているな。勝負に負けてしまったのは悔しいが、他でもない瑠凪から票をもらえたのだ。実質勝者と言っても過言ではないだろう」

 いや過言だと思う。
 一番関わりのある後輩に票をもらえたらまぁ……嬉しいのか?

「次にミカン様ですね。本職とあって行動に迷いが見られませんでしたが、いかがでしたか?」
「正直、私がなんで負けたのかわからないんだけど……」

 加賀美は首を傾げている。
 流石に七緒と比べならまともな接客だったが、ここは褒めるのではなく真っ直ぐ意見をぶつけるべきだろう。
 まずは楽人が口を開いた。

「ミカンちゃんはスポーツの話をした時に露骨に興味ないのがわかっちゃったんだよな。そもそも現実と違う世界を味わいたいのに普段何してるか聞くのもあんまり……って感じだ」

 自分から日頃の行動を聞いておいて、興味がないから話を切り上げるというのはなんとも辛いものだしな。
 次に蓮が優しく話しだす。

「アイドルにしろメイドさんにしろ、やっぱり清純でいてほしいんだよな。もちろん実生活でもそうあれとは言わないけど、せめて接客中は夢見てたいんだよ。ミカンちゃんがアイドルにハマってるって言うだけでも男だと思っちゃうし、できるだけ隠したほうがいいと思う」

 確か「かっこいい」というワードも使っていたはずだ。
 こういう部分で敗北感が生まれる場合もある。
 そして最後に俺の番だ。
 
「言いたいことは二人と同じだよ。まとめると、一見すると盛り上がっているように見えるけど、それが表面的だから打ち解けてる感じがしないんだと思う」
「そっ……か……」

 一度に三人分の否定意見を聞けば落ち込むだろう。
 彼女は浮かない顔をしている。
 でも、これは彼女が成長する上では必要なことなはず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ
恋愛
 俺は知ってしまった。 まさか今更こんな真実を知ってしまうとは。 その日は何故かリビングのテーブルの上に戸籍謄本が置いてあり、何気なく目を通して見ると⋯⋯。  養子縁組の文字が目に入った。  そして養子氏名の欄を見てみると【天城リウト】俺の名前がある。  う、嘘だろ。俺が養子⋯⋯だと⋯⋯。  そうなると姉の琴音ことコト姉と妹の柚葉ことユズとは血が繋がっていないことになる。  今までは俺と姉弟、兄妹の関係だったからベタベタしてきても一線を越えることはなかったが、もしこのことがコト姉とユズに知られてしまったら2人の俺に対する愛情が暴走するかもしれない。もしコト姉やユズみたいな美少女に迫られたら⋯⋯俺の理性が崩壊する。  親父から日頃姉妹に手を出したらわかっているよな? と殺意を持って言われていたがまさかこういうことだったのか!  この物語は主人公のリウトが姉妹に血が繋がっていないことがバレると身が持たないと悟り、何とか秘密にしようと奔走するラブコメ物語です。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...