愛が重いだけじゃ信用できませんか?

歩く魚

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番外編

時間

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 食堂で生島と合流し、適当な席に座る。
 そこまでは良いんだが、彼は妙に落ち着かない様子だった。

「あ、あの……古庵先生」
「どうした?」

 そわそわしている理由は確定している。
 マッチングしたら呼んでほしいと言っている以上、誰かしらとマッチしたのだ。
 人数はどれほどだろうか。一般的に、男性が一月でマッチする異性の数は五人……多くて二十人ほど。
 この人数には、いわゆる「サクラ」も含まれている。
 まぁ、人数なんてあまり関係のない要素でもある。一人としかマッチしなくても、その一人と深い関係になることができれば勝ちだし、百人とマッチしても、その全員がサクラだったり、誰とも会うことができなければ負け。量も重要だが、質を追うことも忘れてはいけない。
 俺の予想としては、生島は三人とマッチしている。
 アプリを始めてから三日ほどはブースト……システム的な優遇が受けられることもあって、女子側への露出が多いはず。
 写真とプロフィールも全て無難にまとめてあるから、質はともかく山札からカードが引けないなんてことはない。
 気になる正解発表だが……。

「何人とマッチした?」
「えっと……よ、四人です」

 予想よりも一人多い。

「やったじゃないか。これまで学んだ事が一つでも抜けてると、0マッチもザラだからな。少なくとも四人は、生島の見た目や内面に惹かれたって事だ」
「そ、それは……嬉しいです!」

 後から確認したが、四人のうちの一人はサクラだった。
 だから俺の予想はピッタリ当たっていたわけだが、幸先が良いのに変わりはない。
 ようやく次のステップに進める

「俺が言った通りにファーストメッセージを送ったか?」
「送りました。先生の言うとおり、十時過ぎに」

 恋愛は男がリードするものというアナログタイプな常識があり、それはマッチングアプリにも適応されている。
 女子の大半が、自分からメッセージを送らず、相手からのアプローチを待つ「受け身」の人間が。
 気持ちが悪い事この上ないが、大衆の認識に合わせる事が賢く生きることでもある。
 ということで、生島には自分からメッセージを送るように伝えてある。
 これには時間帯も重要で、マッチした瞬間を狙い撃つ事ができなければ、自分の生活で送ってはいけない。

「復習だ。どうして十時過ぎに送った?」
「それは……暇してる可能性が高いから、ですよね」
「正解」

 何度も繰り返して生島に伝えているが、恋愛は女性の方が優位だ。
 いつ何時でも、ひっきりなしに飢えた獣からアプローチをかけられている。
 ということは、当然メッセージ欄も未読で埋まり、数分単位で更新され、新しいものでも埋もれていってしまう。
 真面目な女子であれば、最初こそ律儀に全ての文章に返していくが、だんだんと面倒になってきてしまい、上の方にあるメッセージだけか、外見が好みの相手にしか返事をしなくなる。
 なら、外見でイニシアチブを握れないユーザーには勝ち目はないのか?
 そんなことはない。ここで有用な手段が「相手の生活を読み取る」事だ。
 相手が学生か、社会人か。それだけでもメッセージを送る時間帯は変わってくる。
 夜更かしができる学生には深夜のメッセージが効くし、反対に次の日が早い社会人には意味がない。
 職業によっても時間帯、曜日が変わってくる。
 不動産系は水曜が休みな事が多いし、夜職や居酒屋で働いている子は生活リズムが夜型だ。
 つまり、相手の容姿やプロフィールから職業を読み取り、対応した時間帯にメッセージを送る事で、返信がくる可能性を爆発的に上げる事ができるのだ。
 ただ、ある程度の経験を積まなければ難しい芸当。なので、初心者は十時を狙うのがいいだろう。
 学生から社会人まで、多くの人間が暇している時間帯が十時から十二時だからだ。

「メッセージは返ってきたか?」
「二人は返ってきました。二人はまだです」

 返ってきていない二人のうち、一人はサクラだ。
 つまり66%が返事をくれたことになる。

「ちょっと、スマホ借りるぞ」

 生島のメッセージを確認する。
 俺は先日、彼にファーストメッセージの指示を出しておいた。
 メッセージの初めに「マッチありがとうございます」と書かないこと。ありきたりな文章にしないこと。相手のプロフィールに絡めたフックをつけること。
 これらを守って文章を組み立てられているのか、早速チェックだ。
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