愛が重いだけじゃ信用できませんか?

歩く魚

文字の大きさ
122 / 124
番外編

真実

しおりを挟む
 雛が巣立つまでは長いから、巣立ってからは早く感じる。
 きっと、巣で子供を育てる親鳥も同じように思っているだろう。
 一度目のデートを成功させた生島は、その後二度目のデートでもそれなりの成果を得た。
 その後、反省会のために一度、生島とファミレスで落ち合ったからデート前とは顔つきがまるで違っていた。
 自信に満ちている、とまではいかないが、表情は明るくなっている。
 だが、さらに一週間後に彼からの連絡があった時、その文面は戸惑いに染まっていた。

「――おっ、来たな。おはよう生島」

 学内に設置されているベンチに座っていると、約束通りの時間に生島が現れた。
 手を挙げて挨拶してみると、昼だというのに彼は礼儀正しく「おはようございます」と返してくれたが、やはり浮かない顔。
 ひとまず隣に座るように促し、数回ほど肺の中に澄んだ空気を入れてから、問いかける。

「んで、どうした?」
「……佐藤さんと、デートに行ったんです」
「おお、良かったじゃないか。当初の目標の一つだったからな。俺も自分のことのように嬉しいよ」
「そう、なんです。本当に全部、古庵先生のおかげなんです。でも……」
「――楽しくなかった、だろ?」

 どうして分かるのか。そう聞いてくることも、手に取るように理解していた。

「よし、多分これが最後のアドバイスになるだろうから、心して聞くといい」

 そう言うと、生島は口を固く結んだ。

「佐藤さんとのデートは、アプリで会った一人目や二人目……生島の反応的に、もう一人は会えると思うが、その誰よりも楽しくなかった」
「も、もう一人会えたのも見抜かれてたんですね……。後で先生を驚かせようと思ったのに」
「全部顔に表れてるよ。その三人目に、今一番惹かれてるってことも」
「――すごいや。先生というより、もはやマジシャンみたいです」

 おだてるのが上手いな、なんて考えつつ、話を続ける。

「まず俺は、サークル活動に参加した時点で佐藤さんとの未来はないと思ってた。その理由は簡単で、二つの大きなマイナスポイントがあるからだ」

 俺は、佐藤さんへの疑念を抱いた部分を語り始めた。
 まず、ギャルとの会話を思い出す。
 
『――でさぁ、いきなり肩に手回してくるやつがめちゃくちゃ多くて。そういうやつに限ってかっこよくないんだよね』
『クラブかぁ、俺も二十歳になったら行ってみたいなぁ』
『いいじゃん、君モテそうだし』
『ありがとうございます。えっと、モカ先輩の方はそういうエピソードあるんですか?』
『ええっ、私?』
『ほら、あるじゃんモカも――』
『ちょっと、違うから!』

 この時の反応は、間違いなく男絡みのやらかしだ。
 ギャルが知っているということは、二人が同じ場所にいたということ。
 普段から二人でどこかに行く関係性ではなさそうだと感じることから、たまたまクラブで出くわしたとか、初めて二人で遊んでクラブに行ったとか、そんなところだろう。
 そこで、酒を飲んだにしろ飲まないにしろ、他人に言えないような不埒な体験をしたのは間違いない。要はガードが緩い。
 次に、彼女の収入源だ。
 
『そういえば、モカ先輩のネックレス可愛いですね。どこのなんですか?』
『Viorだよ』
『マジですか! なんのバイトしてるんですか!?』
『バイト? バイトは普通にカフェだよ~』

 この時にしていたネックレスは、定価15万。
 二回生だろうが三回生だろうが不釣り合いの代物。
 もちろん、彼女が努力して購入したという考え方もできるが、カフェのバイトでそこまで貯められる我慢強さがあるのか。
 そして、バイト「は」普通にカフェと言っていたことから、別の収入源があるのは明らかだった。
 佐藤さんはパパ活をしている。大人ありか大人なしかは関係なく、そういった行動に手を染めることで、人間は金銭感覚や倫理観が少しずつかけていく。

「生島がデートの時に読み取り、疑問を抱いたのはこれらだ」
「ぱ、パパ活をしてるってことは言ってませんでしたけど、それっぽい言葉は何度か出てきました。先生の話を聞いて納得しました……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ
恋愛
 俺は知ってしまった。 まさか今更こんな真実を知ってしまうとは。 その日は何故かリビングのテーブルの上に戸籍謄本が置いてあり、何気なく目を通して見ると⋯⋯。  養子縁組の文字が目に入った。  そして養子氏名の欄を見てみると【天城リウト】俺の名前がある。  う、嘘だろ。俺が養子⋯⋯だと⋯⋯。  そうなると姉の琴音ことコト姉と妹の柚葉ことユズとは血が繋がっていないことになる。  今までは俺と姉弟、兄妹の関係だったからベタベタしてきても一線を越えることはなかったが、もしこのことがコト姉とユズに知られてしまったら2人の俺に対する愛情が暴走するかもしれない。もしコト姉やユズみたいな美少女に迫られたら⋯⋯俺の理性が崩壊する。  親父から日頃姉妹に手を出したらわかっているよな? と殺意を持って言われていたがまさかこういうことだったのか!  この物語は主人公のリウトが姉妹に血が繋がっていないことがバレると身が持たないと悟り、何とか秘密にしようと奔走するラブコメ物語です。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...