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8 古巣
「視察って何をするん……ですか?」
「通常の暮らしをしていますと、貴族の方々は平民と関わることがほとんどございません。しかし、平民の暮らしを左右する政策を決めるのは貴族です。基本的には部下が現状を纏めて報告し、報告の内容を精査するのが貴族の方のお仕事ですが、意識の高い方は実際に見に行かれます。領主様はとくに、ご自身で把握したいという気持ちがお強い方ですので、街のあちこちを視察されていらっしゃいます」
説明をするのは領主の侍従だ。シェンとはまた違う方向で領主に心酔しているので、少し聞くと長い説明に賞賛を混ぜて語られる。平民のベータだけど、実力主義になったため採用されたらしい。
使用人のほとんどは、シェンの作った魔道具を身に着けている。領主のもとで働いているという誇りであると同時に、彼らを監視し管理するために役立っているらしい。
領主がシェンはすごいんだと長々語ったから知っている。正反対に見える二人だが、互いへの重い感情は同等のようだった。
濃厚な人間関係に慣れない俺は、聞いているだけで疲れる。毎日詰め込まれる情報の量が多すぎて、個人の感情的なあれこれは二の次にしたいところだ。
ここでは情報の取りこぼしがあっても死ぬことはないから。
言葉遣いについては、サナン相手でなければ上品に話せるようになってきた。
「それで、視察する先はどちらですか?」
「西外郭区です」
あいつ、領主、何のつもりだ。
リゼバールの地図は文字を覚えてすぐに叩き込まれた。西外郭区は俺が育った、ロゴンが支配していたあたりだ。あんなところに、貴族ぶってのこのこと顔を出したらどんなことになるか……いや、それが俺への罰なのか。
ぬくぬくと過ごしてきたから忘れかけていた。俺はあいつらを捨てて、自分だけ逃げ出した。
学んだからわかるのは、把握できないものを管理することの難しさだ。移り住んで来たものの多くは、役所に行って登録する。非常に簡単な手続きですぐに終わるのにやらないのは、犯罪者だったり、後ろ暗いところがある奴だ。登録されると、いざという時に追われやすくなるから。
そういう奴らが産んだ子どもはさらに把握が難しい。捨てていく者も多く、たいていはすぐに死ぬ。ある程度まで生き延びた子どもは隠れ住んで、犯罪行為に手を出していく。
リゼバールの街は交易と工業が主となっているから、食べ物を手に入れるには買うしかない。でも、子どもには売らないのが一般的になっているから、俺たちのような大人の庇護のない孤児は飢えるか盗むことになる。
「西外郭区……は」
「以前は治安の穴になっていましたが、ここ半年ほどでずいぶん改善されています。その状況を確認しに行かれるのでしょう」
「そうですか」
この侍従は、俺が治安の悪い地域を怖がっていると思ったようだった。サナンが拾ってきて預けた子どもということにされて、出自を隠されているからだけど、かなり過保護に扱われている。
「大丈夫ですよ。今回はサナン様が護衛についてくださるそうですから」
「サナンが。わかりました」
自分からそこの出身だと言いだすこともできず、当たり障りのない言葉で誤魔化した。
それにしても、サナンがついてくるとは、過保護が過ぎないだろうか。いや、領主が心配で……というのはあり得ないか。
領主は鍛えている上に、シェンの作った魔道具でガチガチに守られている。俺のスリが成功した時、一人でフラフラ歩いていたのも、悪意を持って近付くだけで発動する防御魔法があるからだったらしい。悪意も危害を加える意思もなく、ただものを盗ることだけに集中していたから魔法が発動しなかったそうだ。今はそれも対策されている。つくづく、ヤバい奴に手を出してしまった。
視察の前にと、西外郭区の説明を受けた。
ロゴン一味と俺が捕まった後、大規模な調査が入り、大人から子どもまで状況が把握された。
大人は後回しで、まずは子どもの保護が行われた。比較的まともだった建物に補強工事をして孤児院とし、衣食住と教育を施されることになった。
最初は戸惑っていた子どもたちだったが、徐々に慣れて落ち着きつつあるという。
何よりも、彼らに仮ではあるものの、戸籍が与えられたことが嬉しかった。仮の戸籍にしたのは、いくら領主といえど簡単に制度を変えることが難しいかららしい。
◇
久々に見る街は、ずいぶん様変わりしていた。あちこちに落ちていたガラクタやゴミ、人間もなくなって、ずいぶんすっきりと明るくなっている。
「建物の建て替えはどの程度進んでいる?」
「そちらは……」
領主が案内の役人に説明を受けるのを聞き流して、じっと街並みを見る。
しばらくすると、軽い足音がたくさん聞こえてきた。振り向くと、見覚えのある子どもたちだ。俺よりも三~五歳ぐらい年下の。
「ネイジェだ。生きてる!」
「ほんとだ! ネイジェ、よかった!」
「すごい立派な格好してる。ネイジェがぼくたちを助けてくれたの」
わらわらとまとわりつかれて、どういうことだと戸惑う。
「俺は……何もしてない。ロゴンに殺されそうになったところを助けてもらっただけだ」
「ロゴン! あいつ!」
「だいっきらい!」
元気そうな子どもたちは俺の周りをぐるぐる回りながら、わいわいと話している。
ガリガリで色も悪かったのに、今は普通の街の子どもにしか見えない。服も、新しくはないけれど、穴も開いていないし破れてもいない。
「おまえら、いま、どうなんだ?」
「おふとんあったかい!」
「ぼく、スープが好き! パンも黒くなってないよ」
俺たちの手元に来るのはカビたパンと、運が良ければ干し肉があった程度だった。食い物が足りなくて死ぬ奴も多かったから、生き残っているのは、それなりに運が良かったり、身体が強めの奴ばかりだけど……
「領主サマのおかげだと言えよ、ネイジェ」
「……領主サマのおかげです。ありがとうございます」
後ろからかけられた声に、顔を見て言うことはできなかったけれど、感謝しているのは事実だった。
俺たちの苦しみは領主のせいだと恨んでいたのは事実だけど、領主だからって何もかもできるわけじゃないことも知ってしまったから。
「素直なのはいいことだ、息子よ」
後ろから頭を撫でられて、払いのけたいのをぐっと我慢する。
その様子を見た子どもたちが、食事の話よりもキラキラした瞳で聞いてきた。
「むすこ?」
「ネイジェ、領主サマの子どもになったの?」
「ああ、なんか、流れで」
「よかったね!」
あまりにも屈託なく祝福されるから、もしかして俺は喜ぶべき状況なのかと戸惑っていると。
「ネイジェがいるって本当!?」
「フルーカ」
一番顔を合わせたくなかった相手がやってきた。
「通常の暮らしをしていますと、貴族の方々は平民と関わることがほとんどございません。しかし、平民の暮らしを左右する政策を決めるのは貴族です。基本的には部下が現状を纏めて報告し、報告の内容を精査するのが貴族の方のお仕事ですが、意識の高い方は実際に見に行かれます。領主様はとくに、ご自身で把握したいという気持ちがお強い方ですので、街のあちこちを視察されていらっしゃいます」
説明をするのは領主の侍従だ。シェンとはまた違う方向で領主に心酔しているので、少し聞くと長い説明に賞賛を混ぜて語られる。平民のベータだけど、実力主義になったため採用されたらしい。
使用人のほとんどは、シェンの作った魔道具を身に着けている。領主のもとで働いているという誇りであると同時に、彼らを監視し管理するために役立っているらしい。
領主がシェンはすごいんだと長々語ったから知っている。正反対に見える二人だが、互いへの重い感情は同等のようだった。
濃厚な人間関係に慣れない俺は、聞いているだけで疲れる。毎日詰め込まれる情報の量が多すぎて、個人の感情的なあれこれは二の次にしたいところだ。
ここでは情報の取りこぼしがあっても死ぬことはないから。
言葉遣いについては、サナン相手でなければ上品に話せるようになってきた。
「それで、視察する先はどちらですか?」
「西外郭区です」
あいつ、領主、何のつもりだ。
リゼバールの地図は文字を覚えてすぐに叩き込まれた。西外郭区は俺が育った、ロゴンが支配していたあたりだ。あんなところに、貴族ぶってのこのこと顔を出したらどんなことになるか……いや、それが俺への罰なのか。
ぬくぬくと過ごしてきたから忘れかけていた。俺はあいつらを捨てて、自分だけ逃げ出した。
学んだからわかるのは、把握できないものを管理することの難しさだ。移り住んで来たものの多くは、役所に行って登録する。非常に簡単な手続きですぐに終わるのにやらないのは、犯罪者だったり、後ろ暗いところがある奴だ。登録されると、いざという時に追われやすくなるから。
そういう奴らが産んだ子どもはさらに把握が難しい。捨てていく者も多く、たいていはすぐに死ぬ。ある程度まで生き延びた子どもは隠れ住んで、犯罪行為に手を出していく。
リゼバールの街は交易と工業が主となっているから、食べ物を手に入れるには買うしかない。でも、子どもには売らないのが一般的になっているから、俺たちのような大人の庇護のない孤児は飢えるか盗むことになる。
「西外郭区……は」
「以前は治安の穴になっていましたが、ここ半年ほどでずいぶん改善されています。その状況を確認しに行かれるのでしょう」
「そうですか」
この侍従は、俺が治安の悪い地域を怖がっていると思ったようだった。サナンが拾ってきて預けた子どもということにされて、出自を隠されているからだけど、かなり過保護に扱われている。
「大丈夫ですよ。今回はサナン様が護衛についてくださるそうですから」
「サナンが。わかりました」
自分からそこの出身だと言いだすこともできず、当たり障りのない言葉で誤魔化した。
それにしても、サナンがついてくるとは、過保護が過ぎないだろうか。いや、領主が心配で……というのはあり得ないか。
領主は鍛えている上に、シェンの作った魔道具でガチガチに守られている。俺のスリが成功した時、一人でフラフラ歩いていたのも、悪意を持って近付くだけで発動する防御魔法があるからだったらしい。悪意も危害を加える意思もなく、ただものを盗ることだけに集中していたから魔法が発動しなかったそうだ。今はそれも対策されている。つくづく、ヤバい奴に手を出してしまった。
視察の前にと、西外郭区の説明を受けた。
ロゴン一味と俺が捕まった後、大規模な調査が入り、大人から子どもまで状況が把握された。
大人は後回しで、まずは子どもの保護が行われた。比較的まともだった建物に補強工事をして孤児院とし、衣食住と教育を施されることになった。
最初は戸惑っていた子どもたちだったが、徐々に慣れて落ち着きつつあるという。
何よりも、彼らに仮ではあるものの、戸籍が与えられたことが嬉しかった。仮の戸籍にしたのは、いくら領主といえど簡単に制度を変えることが難しいかららしい。
◇
久々に見る街は、ずいぶん様変わりしていた。あちこちに落ちていたガラクタやゴミ、人間もなくなって、ずいぶんすっきりと明るくなっている。
「建物の建て替えはどの程度進んでいる?」
「そちらは……」
領主が案内の役人に説明を受けるのを聞き流して、じっと街並みを見る。
しばらくすると、軽い足音がたくさん聞こえてきた。振り向くと、見覚えのある子どもたちだ。俺よりも三~五歳ぐらい年下の。
「ネイジェだ。生きてる!」
「ほんとだ! ネイジェ、よかった!」
「すごい立派な格好してる。ネイジェがぼくたちを助けてくれたの」
わらわらとまとわりつかれて、どういうことだと戸惑う。
「俺は……何もしてない。ロゴンに殺されそうになったところを助けてもらっただけだ」
「ロゴン! あいつ!」
「だいっきらい!」
元気そうな子どもたちは俺の周りをぐるぐる回りながら、わいわいと話している。
ガリガリで色も悪かったのに、今は普通の街の子どもにしか見えない。服も、新しくはないけれど、穴も開いていないし破れてもいない。
「おまえら、いま、どうなんだ?」
「おふとんあったかい!」
「ぼく、スープが好き! パンも黒くなってないよ」
俺たちの手元に来るのはカビたパンと、運が良ければ干し肉があった程度だった。食い物が足りなくて死ぬ奴も多かったから、生き残っているのは、それなりに運が良かったり、身体が強めの奴ばかりだけど……
「領主サマのおかげだと言えよ、ネイジェ」
「……領主サマのおかげです。ありがとうございます」
後ろからかけられた声に、顔を見て言うことはできなかったけれど、感謝しているのは事実だった。
俺たちの苦しみは領主のせいだと恨んでいたのは事実だけど、領主だからって何もかもできるわけじゃないことも知ってしまったから。
「素直なのはいいことだ、息子よ」
後ろから頭を撫でられて、払いのけたいのをぐっと我慢する。
その様子を見た子どもたちが、食事の話よりもキラキラした瞳で聞いてきた。
「むすこ?」
「ネイジェ、領主サマの子どもになったの?」
「ああ、なんか、流れで」
「よかったね!」
あまりにも屈託なく祝福されるから、もしかして俺は喜ぶべき状況なのかと戸惑っていると。
「ネイジェがいるって本当!?」
「フルーカ」
一番顔を合わせたくなかった相手がやってきた。
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