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17 手枷を外して
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運命の日、手枷を壊すために特別な紙に描かれ大量の魔法陣が用意された。魔法陣は、魔力を効率よく動かすために、小さな魔力でも最大の効果を出すために研究されている。
というのを、現物を見てから思い出した。魔法陣があれば自力でも枷を壊せたかもしれない。今言っても仕方ないが。
魔道具師は魔法陣の上に、魔力を貯められる石、魔石を置いていった。魔法陣は中心に向かって五重程度の円を形成している。これは外側にある起点の魔法陣を起動させて、順に隣の魔法陣へ力を送るうちに、魔力を大きくするための布陣となっている。
これならば強大な魔力を用いずとも、最後の魔法陣に到達した時点でかなり大きな魔力が完成する。最後の魔法陣には鍵が乗せられている。
本物の鍵ではなく、鍵のある魔道具を開けるための魔道具だ。魔法はイメージが大事だから、鍵を開けたい場合は鍵型の魔道具が相応しい。
鍵の魔道具と枷の魔道具が反応して、魔力が強いほうが勝つ。俺の枷になっている魔道具は、捕らえた者の魔力を活用する魔法陣が組み込まれているようだが、俺の魔力が高すぎてすでに少し壊れている。放っておいても壊れてくれるならいいが、年単位で待たないと無理そうだから、いま外してもらえるなら任せたほうが楽だ。
魔石もそうだが魔道具の魔力は、一度満たされても時の経過で少しずつ減っていくものだ。今回、目の前で鍵に魔力を込めるのは、魔道具の威力を最大にするためだろう。
俺の枷は常に俺から魔力を吸っているから強い。この枷は、魔道具として非常に希少価値の高いものだ。鍵の魔道具を使うのも、できれば壊さずに外したいというところだろう。
今日、俺の力は完璧に取り戻される。
じわじわと蘇っているヒューゴという人間と、俺という人間は同じなのに同じではない。ヒューゴを封じられたせいで、ベースになっていた前世の人格が浮き上がってしまったようだ。少し楽天的な”俺”だが、ヒューゴはストイックで真面目な性格だった。
記憶が完璧になったところで、作り替えられてしまった身体は変わらないのだから、ダールが不安に思うことはないはずだ。
いや、むしろ、記憶の戻った俺の性格が気に食わないなんて事態もあるのではないか。だけど俺の外見は美しいから、嫌うことなどできないだろう。俺の感情にしても、人間の本質がそう簡単に変わるとも思えない。
今だってダールとの新婚生活を真面目に楽しんでいるし、以前投獄される時だって無実の妹、アイリーンを救うために頑張った。ヒューゴも俺も実際には同じものだから、ダールへの気持ちが変わるようなことはないはずだ。
そのダールは今日、立ち会わない。
急遽大事な客が来るとかで、この俺様の一大事に仕事に行ってしまった。信用されていると思えばいいのだろうか。
「用意ができたぞ、ダールの伴侶」
「ヒューゴだ。俺は何をすればいい」
スャイハーラの連中はダールの伴侶が男になったことを、諸手を上げて歓迎しているわけではない。だが、排除するほどでもないし、ダールもその父親もスャイハーラの英雄だから、その決定に反対するほどでもないという感じらしい。
その結果、認めたくないけどダールのおまけとして認めてやるという意味合いで、伴侶と呼ばれている。名前を呼んだ方が楽だと思うのだが、いまのところ俺はごく潰しでしかないから仕方ないのかもしれない。
魔力が戻ったら、すっごい魔法を見せてやろう。
「手枷を前に出したら、魔力を集めた鍵を重ねる。魔力が足りれば枷は外れるはずだ」
あまり動じない俺だが、少しだけドキドキして魔法陣が順に光っていくのを見た。
そして――。
というのを、現物を見てから思い出した。魔法陣があれば自力でも枷を壊せたかもしれない。今言っても仕方ないが。
魔道具師は魔法陣の上に、魔力を貯められる石、魔石を置いていった。魔法陣は中心に向かって五重程度の円を形成している。これは外側にある起点の魔法陣を起動させて、順に隣の魔法陣へ力を送るうちに、魔力を大きくするための布陣となっている。
これならば強大な魔力を用いずとも、最後の魔法陣に到達した時点でかなり大きな魔力が完成する。最後の魔法陣には鍵が乗せられている。
本物の鍵ではなく、鍵のある魔道具を開けるための魔道具だ。魔法はイメージが大事だから、鍵を開けたい場合は鍵型の魔道具が相応しい。
鍵の魔道具と枷の魔道具が反応して、魔力が強いほうが勝つ。俺の枷になっている魔道具は、捕らえた者の魔力を活用する魔法陣が組み込まれているようだが、俺の魔力が高すぎてすでに少し壊れている。放っておいても壊れてくれるならいいが、年単位で待たないと無理そうだから、いま外してもらえるなら任せたほうが楽だ。
魔石もそうだが魔道具の魔力は、一度満たされても時の経過で少しずつ減っていくものだ。今回、目の前で鍵に魔力を込めるのは、魔道具の威力を最大にするためだろう。
俺の枷は常に俺から魔力を吸っているから強い。この枷は、魔道具として非常に希少価値の高いものだ。鍵の魔道具を使うのも、できれば壊さずに外したいというところだろう。
今日、俺の力は完璧に取り戻される。
じわじわと蘇っているヒューゴという人間と、俺という人間は同じなのに同じではない。ヒューゴを封じられたせいで、ベースになっていた前世の人格が浮き上がってしまったようだ。少し楽天的な”俺”だが、ヒューゴはストイックで真面目な性格だった。
記憶が完璧になったところで、作り替えられてしまった身体は変わらないのだから、ダールが不安に思うことはないはずだ。
いや、むしろ、記憶の戻った俺の性格が気に食わないなんて事態もあるのではないか。だけど俺の外見は美しいから、嫌うことなどできないだろう。俺の感情にしても、人間の本質がそう簡単に変わるとも思えない。
今だってダールとの新婚生活を真面目に楽しんでいるし、以前投獄される時だって無実の妹、アイリーンを救うために頑張った。ヒューゴも俺も実際には同じものだから、ダールへの気持ちが変わるようなことはないはずだ。
そのダールは今日、立ち会わない。
急遽大事な客が来るとかで、この俺様の一大事に仕事に行ってしまった。信用されていると思えばいいのだろうか。
「用意ができたぞ、ダールの伴侶」
「ヒューゴだ。俺は何をすればいい」
スャイハーラの連中はダールの伴侶が男になったことを、諸手を上げて歓迎しているわけではない。だが、排除するほどでもないし、ダールもその父親もスャイハーラの英雄だから、その決定に反対するほどでもないという感じらしい。
その結果、認めたくないけどダールのおまけとして認めてやるという意味合いで、伴侶と呼ばれている。名前を呼んだ方が楽だと思うのだが、いまのところ俺はごく潰しでしかないから仕方ないのかもしれない。
魔力が戻ったら、すっごい魔法を見せてやろう。
「手枷を前に出したら、魔力を集めた鍵を重ねる。魔力が足りれば枷は外れるはずだ」
あまり動じない俺だが、少しだけドキドキして魔法陣が順に光っていくのを見た。
そして――。
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