24 / 25
24 とんだ再会になりそうだ
しおりを挟む
力の入らない足腰は魔力で補強して、自分とダールを一瞬で綺麗にする。
「おお、なんかすごいな」
ダールが面白そうに自分の身体を見下ろしているのに服を投げつけて、自分の服は魔法で着た。有り余る魔力があるから、身体を鍛える必要もなかったし、身の回りの世話をする人間がなくても平気だった。
扉の外側で、アイリーンを横抱きにしていたのは、地下牢で彼女を託したオオルだ。しっかり守り通してくれたようでほっとする。が、どうしてここにいるのか。
そのオオルは俺を見て眉をひそめた。
「ヒューゴ様、ご無事で何よりです。しかし、アイリーン様にあのような場面を見せるなんて」
「見せる? 私はアイリーンがここに来るなんて聞いていない」
アイリーンはショッキングな場面を目撃して気絶してしまったようだ。夢だと思い込ませたいが、記憶や精神を操る魔法は、覚えたら使いたくなるから手を出さなかった。
眠っているだけのように見えるアイリーンに状態異常がないことを確認していると、後ろから元凶がすっとぼけた声をかけてきた。
「時間を間違えて悪かったな。もうちょっと後だと思っていたんだ」
「ダール……どういうことだ。来客とはもしや、アイリーンのことだったのか」
「そうだ。連絡は以前から来ていたが、本当にお前の妹かわからなかったから言わなかった」
顔を見たら一目瞭然だったから本物だとわかったけどな、と俺とアイリーンを見比べている。オオルも俺に非がないこを理解してくれたようだが、ダールに対して明らかに怒っている。立場上文句を言えないのだろうが、オオルが魔法を使えたら気付かれないように嫌がらせをしていたかもしれない。命の危険がなければ俺も目を瞑ってしまうだろう。
「アイリーンと私が兄妹だと確信したのなら、なぜ言わなかった」
「俺にとってお前と妹の再会よりも、魔力と記憶が戻ったお前が俺を変わらず愛するかどうかのほうが大事だからだ」
胸を張って堂々とされてしまうと、惚れた弱みで強いことは言えない。
「お前が妹と帝国に帰るとか言われても嫌だ。そうだ、帝国は崩壊寸前らしい」
「崩壊……そうか。あの王太子では無理だろう」
「発言をお許しいただけますか」
「許す」
「おい、なんでお前が仕切ってるんだ、ヒューゴ」
ダールが何かを言っているが、無視してオオルと話を続ける。オオルも長年帝国式の作法で仕えてきたのだから、スャイハーラ式のやり方は苦手だろう。おおらかと言えば聞こえはいいが、大雑把なのだ。かと思えば、スャイハーラの者にも帝国とは違う観念で譲らないポイントがあったりして難しい。
「帝国は崩壊寸前ですが、一部の国王派が最後の足掻きを見せていて膠着状態になっています。ヒューゴ様のお力添えを頂けないでしょうか」
「それはアイリーンの意向か」
「いいえ、アイリーン様はヒューゴ様の無事を確認でき、スャイハーラと同盟を結ぶことができればいいと仰っています」
「同盟を結びたいなら親父に話をつけてやる」
無視された形になっているダールだが、怒ることもなく話を聞いてくれている。
「オオルとアイリーンは、今日のところは休め。明日ゆっくり話をしよう。アイリーンが目覚めたら、全力で誤魔化せ。悪い夢を見たのだと思い込ませるんだ」
「もちろんです。では明日、よろしくお願いいたします」
「おお、なんかすごいな」
ダールが面白そうに自分の身体を見下ろしているのに服を投げつけて、自分の服は魔法で着た。有り余る魔力があるから、身体を鍛える必要もなかったし、身の回りの世話をする人間がなくても平気だった。
扉の外側で、アイリーンを横抱きにしていたのは、地下牢で彼女を託したオオルだ。しっかり守り通してくれたようでほっとする。が、どうしてここにいるのか。
そのオオルは俺を見て眉をひそめた。
「ヒューゴ様、ご無事で何よりです。しかし、アイリーン様にあのような場面を見せるなんて」
「見せる? 私はアイリーンがここに来るなんて聞いていない」
アイリーンはショッキングな場面を目撃して気絶してしまったようだ。夢だと思い込ませたいが、記憶や精神を操る魔法は、覚えたら使いたくなるから手を出さなかった。
眠っているだけのように見えるアイリーンに状態異常がないことを確認していると、後ろから元凶がすっとぼけた声をかけてきた。
「時間を間違えて悪かったな。もうちょっと後だと思っていたんだ」
「ダール……どういうことだ。来客とはもしや、アイリーンのことだったのか」
「そうだ。連絡は以前から来ていたが、本当にお前の妹かわからなかったから言わなかった」
顔を見たら一目瞭然だったから本物だとわかったけどな、と俺とアイリーンを見比べている。オオルも俺に非がないこを理解してくれたようだが、ダールに対して明らかに怒っている。立場上文句を言えないのだろうが、オオルが魔法を使えたら気付かれないように嫌がらせをしていたかもしれない。命の危険がなければ俺も目を瞑ってしまうだろう。
「アイリーンと私が兄妹だと確信したのなら、なぜ言わなかった」
「俺にとってお前と妹の再会よりも、魔力と記憶が戻ったお前が俺を変わらず愛するかどうかのほうが大事だからだ」
胸を張って堂々とされてしまうと、惚れた弱みで強いことは言えない。
「お前が妹と帝国に帰るとか言われても嫌だ。そうだ、帝国は崩壊寸前らしい」
「崩壊……そうか。あの王太子では無理だろう」
「発言をお許しいただけますか」
「許す」
「おい、なんでお前が仕切ってるんだ、ヒューゴ」
ダールが何かを言っているが、無視してオオルと話を続ける。オオルも長年帝国式の作法で仕えてきたのだから、スャイハーラ式のやり方は苦手だろう。おおらかと言えば聞こえはいいが、大雑把なのだ。かと思えば、スャイハーラの者にも帝国とは違う観念で譲らないポイントがあったりして難しい。
「帝国は崩壊寸前ですが、一部の国王派が最後の足掻きを見せていて膠着状態になっています。ヒューゴ様のお力添えを頂けないでしょうか」
「それはアイリーンの意向か」
「いいえ、アイリーン様はヒューゴ様の無事を確認でき、スャイハーラと同盟を結ぶことができればいいと仰っています」
「同盟を結びたいなら親父に話をつけてやる」
無視された形になっているダールだが、怒ることもなく話を聞いてくれている。
「オオルとアイリーンは、今日のところは休め。明日ゆっくり話をしよう。アイリーンが目覚めたら、全力で誤魔化せ。悪い夢を見たのだと思い込ませるんだ」
「もちろんです。では明日、よろしくお願いいたします」
69
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
強面龍人おじさんのツガイになりました。
いんげん
BL
ひょんな感じで、異世界の番の元にやってきた主人公。
番は、やくざの組長みたいな着物の男だった。
勘違いが爆誕しながら、まったり過ごしていたが、何やら妖しい展開に。
強面攻めが、受けに授乳します。
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件
水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。
赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。
目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。
「ああ、終わった……食べられるんだ」
絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。
「ようやく会えた、我が魂の半身よ」
それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!?
最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。
この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない!
そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。
永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。
敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる