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第5章 トレジャー・ガール
第8話・・・言葉の雨_毎度あり_ずっと・・・
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「水を差すようで悪いんですけど、そのイベント? 俺達参加する意味ないですよね?」
亜氣羽が気分で開こうとしたバトルイベント(?)に湊達を当然のように巻き込みそうだったので、湊は空気を読まずに言い放った。
「え? え? ………え?」
亜氣羽が目をぱちくりと瞬きする。
断られると思っていなかったのだろう。
「え? どうして…? すごい宝も用意してるよ…?」
「いや、いらないし。…どうぞ、亜氣羽さんと綺羅星さん達で争って下さいって感じ」
「なっ…」
亜氣羽が衝撃を受けて固まってしまう。
「ちょっと坊や!」
そこで綺羅星桜が声を張り上げた。
湊や勇士達が参加しなければ亜氣羽がバトルイベントを開かなくなってしまう、宝を得られるチャンスを不意にするわけにはいかない、そんなことを考えてるのだろう。
「怖いのはわかるけど、参加する価値あると思うわよ? ……言っちゃうとね、宝って源貴片に匹敵する代物なのよ。……どう? 興味湧かない?」
「全然湧きません」
『宝具』の源となる源貴片。
子供からすれば夢とロマンの塊であるが、湊は即否定した。
「綺羅星さん、もったいぶった言い方と源貴片なんてインパクト強い単語でこっちの欲を煽ってるつもりですか? さすがに見抜けますって。……貴方が言ってくれたんですよ? 俺は頭が良いって」
「……ッ」
綺羅星は息を呑む。
そして、湊に向ける視線を勇士の時以上に、油断のないものへと変える。
「…あらあら。想像以上に頭が切れるようね。……どうやら、適当な言葉で言いくるめられる器ではないみたい」
「……」
特に何も言わない湊に、綺羅星は声のトーンを下げて告げた。
「だったら、手っ取り早く交渉しましょう」
「交渉? へー、どんな?」
綺羅星が悪辣さを増した笑みを浮かべ。
「簡単よ。……貴方の仲間、四月朔日紫音ちゃんを殺されたくなかったら、大人しく参加しなさい」
「「……ッ!? 紫音ッッ!?」」
叫んだのは、勇士と琉花だ。
亜氣羽に大打撃を喰らわされて離れた所で膝をついている勇士と、綺羅星に人質に取られて体力を削られた琉花が力の限り大声を張り上げた。
「ま、まさか…紫音が負けたのか!?」
勇士の声に、綺羅星が得意げな笑みを浮かべて反応した。
「ええ。さっき私の仲間から連絡があったわ。結界内でも上級士器でなら連絡は取り合えるからね」
「な…!? う、嘘だ…! 紫音が負けるなんて…」
「逆に聞きたいんだけど、勝てると思ったの? 一介の学生の分際で?」
「…っっ」
信じたくはなかったが、自分が勝てなかった現状もあり、心とは裏腹に認めてしまう自分がいた。
「認められなくても後でしっかり証拠を提示して上げるわよ。四月朔日紫音の体そのもの、でね。……私達としても『御十家』のご息女を殺めるのは今後大きなリスクを背負うことになるから、できれば生かしておくつもりよ。………だから、」
綺羅星は勇士の心を叩き潰した後、再度湊に目を向けた。
「この亜氣羽さんが開催するバトルイベントに参……っ」
その言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
「……な、何よその目は…っ」
湊は半開きの目で感情薄げに綺羅星を見詰めており、それはまるで全てを丸裸にするような、フラットな瞳だった。
「いや、その演技は上手だなって」
「……ッッ」
湊がなんてことないように述べると、綺羅星の表情が曇った。
「え、演技…?」
湊の近くにいる琉花が何回も瞬きしながら聞いてくる。
「そう。悪党の演技。……本当は悪人でも裏組織でもなんでもないよ、この人」
湊は綺羅星から視線を外さないまま、断定した。
「俺の目から見れば勇士のこと全然殺す気なかったり、なんならしっかりと説教したりと、悪党を演じてる善人感がひしひしと伝わってくるんだよね」
「……ふん、何それ? 全部貴方の認識じゃない。証拠も何もないわ」
湊の見識であることに言及する綺羅星に。
「じゃあ殺せば? 四月朔日を」
「…ッッ!」
肝の据わった湊の言葉に、綺羅星が少しの怯みを表情に出してしまう。
「お、おい湊!」
そんな二人の駆け引きの場に、勇士が割って入った。
「もしそいつが 」
「勇士! 今は漣に任せて!」
勇士の言葉を遮ったのは琉花だった。
きょとんと目を丸くする勇士に、琉花は強い想いを込めた目で訴えた。
琉花はわかっているのだ。こういう時は湊に任せるべきだと。
「……本当に殺すわよ?」
綺羅星が殺気を高めて再度、重く告げる。
「うん。早く四月朔日の首持ってきてよ」
しかし湊は心揺れることなくはっきりと返した。
「……………………………っ」
綺羅星が渋い表情を浮かべて何も言えずにいる。
それが全ての答えだった。
横で見ていた琉花は(本当に裏組織の人間じゃないのね…っ)と驚き、勇士は目を見開いて琉花以上に驚いている。
「……亜氣羽さん」
湊が亜氣羽の名を呼ぶ。
「……っ?」
亜氣羽は咄嗟に言葉が出てこなかったのか、目を向けて反応を示す。
「妄想の世界に浸るのもいいけど、あんまり人を舐めちゃいけないよ」
湊が軽く忠告すると、亜氣羽はハッと目を開き、声を張った。
「あ、あの!」
亜氣羽は続けて言った。
「どうしたら、戦ってくれる…?」
亜氣羽の真っすぐな質問に、湊は多少感心した。
(ふーん…ここで自分の考えを押し付けず、しっかりこっちの要望を聞くんだ…)
心の中で思考をまとめつつ、湊は答えた。
「まずこっちにメリットが無さ過ぎるんだよね。…ちなみにどういう〝宝〟なのか、教えてもらえるの? 綺羅星さんが言うには源貴片らしいけど」
「……それは…あ…」
「ああ別にいいよ。教えられないならそれで。……正直、出所が怪しい宝を景品にされてもモチベーション上がらないし」
言い辛そうな亜氣羽にきっぱり言い切る湊。
「………ただ、そうだなぁ」
するとそこで、湊の口調が変わった。
その変化に、亜氣羽が「な、なに…?」食いつく。
湊がにっこりと屈託ない笑みを浮かべて、言った。
「〝宝〟はいらないけどさ、〝現金〟なら欲しいなって」
中性的な美少年である湊の晴れやかな笑顔は目を惹く魅力があり、だからこそ生々しい言葉が脳に響いた。
「げん…きん…」
亜氣羽が喉を鳴らす。
湊の一言で、自分が今まで踏み込んだことのない領域に引きずり込まれたことを自覚したのだろう。
「そっ、やっぱ現金の方が信頼性高いからね。………亜氣羽さんは用意できる? お金」
「………っ」
口をぎゅっと閉じる亜氣羽を見て、湊は「だよね」とわかっていたように頷き、……別の人物に顔を向けた。
「それじゃあ、綺羅星さんはどうです? お金、用意できます?」
「……ッッ!? わ、私!?」
ここで白羽の矢が立ったのは、綺羅星桜だった。
「どうして私が用意しなくちゃいけないのよ!?」
「だって綺羅星さんもこのバトルイベント、開きたいんじゃないんですか?」
「……ッ!」
図星を突かれた綺羅星の表情が強張った。
(……なんなのこの子!? 頭の切れが異常過ぎる!)
綺羅星は湊への評価を再度上方修正した。
(〝宝〟が景品のバトルイベントを開いてくれるのは願ったり叶ったり。……どうにもこの亜氣羽って子は隙が無くて奪う機会がないまま二ヵ月以上経っちゃったし、…覚悟を決めたとはいえ、難癖付けて強奪するのに抵抗が無かったと言えば嘘になる…)
だから。
(……だから、『多少お金をかけることで宝が手に入るなら、払ってもいい』と、思ってるのも事実。……この漣湊って子は、そんな私の考えを見透かして、こんな提案をしている…ッ! 憎たらしいぐらい交渉上手ね!)
綺羅星は荒ぶる気持ちを抑え込み、一旦湊から視線を外して、亜氣羽の方を向いた。
「貴女、ちゃんとあれを景品にするって、約束できる?」
「…うん! 約束する! するよ!」
食い気味に亜氣羽が答える。
その余裕のある瞳から、綺羅星は正確に彼女の心の内を読み取った。
(……多分、負けるなんて思っていないんでしょうね)
綺羅星は湊に視線を戻す。
「いくら、欲しいの?」
「そうだねぇ…」
湊が唇に指を当てながら思案する。
そんな湊を見ながら、綺羅星も頭を回転させた。
(数十万…少なくとも50万以上は覚悟しておくべきでしょうね……100万でもまあ…)
綺羅星が計算していると、湊も何やら呟いていた。
「1…2…3……4……5……6……7……うん」
ぶつぶつ数字を呟きながら結論が出たようで、こくりと頷いて、言った。
「800万」
「「「ッッッッッッッッッッッッッッ!!?」」」
湊の提示した大金に、綺羅星だけでなく勇士や琉花も驚いている。ちなみに亜氣羽だけは反応は淡泊だった。
「800!? 貴方ふざけてるの!?」
「話は最後まで聞きなって」
突拍子もない金額に綺羅星が叫ぶと、湊が手で制す。
「800万は最終金額だよ。……最初、俺達へ払うのはその四分の一の200万でいいよ」
「にひゃく…ッ!」
「そう。参加要望金として200万を最初俺達に支払い、バトルイベントで俺達が勝ったら800万を受け取る。……それなら文句ないでしょ?」
「……ッッッ!」
やり手のセールスマンのような軽快な口調で条件を説明する湊に、綺羅星が即答できず、必死に思考を加速させた。
(…800万ッ! 私達の軍資金のほぼ全額…! 勝てば払わなくていいと言っても、200万も痛い…けど、100万なら払ってもいいと思ってたからその倍ではギリギリ許容範囲内か……ッ? ………くッ! 全くこの子は! どうしてこんなに私達の譲歩できるラインの瀬戸際を攻められるのよ! ……だけど、200万で〝宝〟が手に入ると考えれば安いもの…ッ!)
バッと桜は顔を上げ、覚悟を決めた顔で告げた。
「わかった! 200万払う! だから真剣に戦いなさいよ!」
「毎度ありっ」
………こうして、湊はこの特殊な状況を利用して200万得ることに成功した。
■ ■ ■
その後も湊主導で話は進み、「やるならちゃんとやろう」ということで詳細な内容は後日詰めることになり、一旦解散する運びとなった。
翌日同じ場所で集合する約束をした時、綺羅星は肝を据えた眼光を放ち、亜氣羽はしおらしく頷いていた。
湊達は獅童学園に戻っていた。
綺羅星の柄の悪い仲間が連れてきた満身創痍の紫音は他の学生にあまり見せられないと考え、学園内の救護室で寝かせている。
「……そのようなことがあったのか」
「めっちゃ面倒なことに巻き込まれてんじゃん!」
重々しく唸ったのは学園長の武者小路源得だ。
その部屋には湊と学園長、そして愛衣の三人だけだ。
全ての事情を把握する湊と、第三者視点役として愛衣を呼び、少数の方がベストだと考えたのだ。
そして今日起きたことを説明し、源得は渋い表情を浮かべている。
「……その亜氣羽という少女の正体は気になるところじゃが、まずは漣くんが今後どうするつもりなのか聞いてもよいかな? いくら裏組織の人間ではないから殺される心配はないとしても、女性の紫音くんをあそこまで容赦なく痛めつける連中だ。万が一ということもある。……その辺の危険がわからない漣くんではないと思うのじゃが」
ちらり、と湊は愛衣を見やった。
「愛衣ならわかる? 俺が何考えてるか?」
「ええ」
愛衣は頷き、続いて答えた。
「〝紅井くん達の成長〟、でしょ」
湊が「正解」と笑う。
「成長…?」
源得が復唱する。
愛衣が説明を引き継いで。
「最近紅井くん達、気持ちが逸ってたのか、ちょっと心に駄肉が付いてた感じするからね。それを取り除くいい機会だと捉えたわけだよね」
「そう。勇士と戦った綺羅星って人も強かったけど、勇士の膂力ならもっと渡り合えたはずなんだ。それなのに終始防戦一方。四月朔日さんも自分だけ除け者にされて焦って油断しちゃったんだと思うしね」
源得が「の、除け者…ッ」と紫音の不安に気付いて思わず声を上げた。
湊が説明を続ける。
「友達から上から目線で〝お前慢心してるから正せ〟とか言われても中々言うこと聞けないだろうし、特に勇士は俺に複雑な気持ちでいるだろうし。………だからまあその辺俺はノータッチでいくつもりだったんだけど、ちょうど〝成長する為の絶好機〟に遭遇したからね。是非利用させてもらおうと思いました」
湊の説明を聞いた愛衣がこてんと首を傾げる。
「じゃあ最初から参加する気だったんだ? ……それなのに、興味ないフリして200万取ったんだ? 小悪魔~っ」
愛衣がにんまりとした笑みを浮かべる。
湊も似たようなにんまり笑みを浮かべて。
「俺自身にメリットないのは本当だし? 200万もちゃんとみんなで分配するつもりだから、そう言わないでよっ、あははっ」
「………その、」
そこに源得がおずおずと割って入る。
「勇士くんが漣くんに複雑な気持ちだというのは…?」
どうやら湊がさらりと言ったことが気になるようだ。
その疑問に、愛衣が簡潔に答えた。
「紅井くん、私のこと好きなんですよ。だから私と仲の良い湊に嫉妬してるんです」
「………………………………え!? ……………………え!? ………??」
「それで明日また集まって内容を詰めるんですけど、その時の内容がですね……」
「いや! 待っ…!」
何事もなかったかのように話を進める湊の言葉を慣れない声を出して遮る源得。
「……ゆ、勇士くんが速水くんのことに好意を寄せてる…と…!?」
慌てる源得を前にして、湊は愛衣に視線を向けた。
「……言ってよかったの? 俺が含みのある言い方しちゃったのもあるけど…」
「別にいいわよ。学園長には知っておいてもらった方が今後何かの組分けとかでも融通が利いて都合がいいだろうし」
「それならいいけど…」
……二人のやり取りを見てようやく落ち着いた源得が深く息を吐いて。
「わかった。無粋なことは何も聞かない。……しかし……これは……んー」
どうしたものか、そう悩む源得に、二人が言った。
「安心して下さい、学園長。色恋で力が落ちるような真似は今後二度と起きないようにしますから」
「湊の言う通り、学園長は気にしないで下さい。こっちでなんとかしますから」
湊と愛衣の成熟した大人の対応に、源得は頷くしかなかった。
(……長年教職者として務めてきた身としては、生徒を応援したいが………こればっかりは諦めた方が良いかもしれんよ、勇士くん)
■ ■ ■
「……ごめんなさい、二人共。大事な軍資金を勝手に使って…っ」
綺羅星桜は乙吹礼香、尭岩涼度と合流し、借りているホテルの一室で頭を下げていた。
「いえ、それはもうその漣湊という子を賞賛すべきでしょう」
「乙吹もこう言うんです。次のことを考えましょう、綺羅星さん」
「……ありがとう」
綺羅星は素直にお礼を述べ、今後の作戦について三人で一晩話し合った。
(…………最後に勝つのは、私達よッ!!)
■ ■ ■
夜。
亜氣羽はネオンで照らされた街を一望できる高層ビルの屋上の端に、足をぶらぶらさせながら座っていた。
そして、今日起きたあることを、脳内で再生した。
何を思い返しているかというと……。
『俺達参加する意味ないですよね?』
『全然湧きません』
『その演技は上手だなって』
『じゃあ殺せば?』
『あんまり人を舐めちゃいけないよ』
『〝宝〟はいらないけどさ、〝現金〟なら欲しいなって』
『800万』
『毎度ありっ』
湊が発した言葉の数々。
解散して湊と別れてからずっと、ずっと、反芻している。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、ずぅっっっっっっっと。
(あぁぁぁぁあぁあぁああぁあああぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁあああぁああぁぁぁあっっっ、……さざなみ…みなと……っ!!)
その亜氣羽の瞳は、蕩けきった恋情に、深く染まっていた。
亜氣羽が気分で開こうとしたバトルイベント(?)に湊達を当然のように巻き込みそうだったので、湊は空気を読まずに言い放った。
「え? え? ………え?」
亜氣羽が目をぱちくりと瞬きする。
断られると思っていなかったのだろう。
「え? どうして…? すごい宝も用意してるよ…?」
「いや、いらないし。…どうぞ、亜氣羽さんと綺羅星さん達で争って下さいって感じ」
「なっ…」
亜氣羽が衝撃を受けて固まってしまう。
「ちょっと坊や!」
そこで綺羅星桜が声を張り上げた。
湊や勇士達が参加しなければ亜氣羽がバトルイベントを開かなくなってしまう、宝を得られるチャンスを不意にするわけにはいかない、そんなことを考えてるのだろう。
「怖いのはわかるけど、参加する価値あると思うわよ? ……言っちゃうとね、宝って源貴片に匹敵する代物なのよ。……どう? 興味湧かない?」
「全然湧きません」
『宝具』の源となる源貴片。
子供からすれば夢とロマンの塊であるが、湊は即否定した。
「綺羅星さん、もったいぶった言い方と源貴片なんてインパクト強い単語でこっちの欲を煽ってるつもりですか? さすがに見抜けますって。……貴方が言ってくれたんですよ? 俺は頭が良いって」
「……ッ」
綺羅星は息を呑む。
そして、湊に向ける視線を勇士の時以上に、油断のないものへと変える。
「…あらあら。想像以上に頭が切れるようね。……どうやら、適当な言葉で言いくるめられる器ではないみたい」
「……」
特に何も言わない湊に、綺羅星は声のトーンを下げて告げた。
「だったら、手っ取り早く交渉しましょう」
「交渉? へー、どんな?」
綺羅星が悪辣さを増した笑みを浮かべ。
「簡単よ。……貴方の仲間、四月朔日紫音ちゃんを殺されたくなかったら、大人しく参加しなさい」
「「……ッ!? 紫音ッッ!?」」
叫んだのは、勇士と琉花だ。
亜氣羽に大打撃を喰らわされて離れた所で膝をついている勇士と、綺羅星に人質に取られて体力を削られた琉花が力の限り大声を張り上げた。
「ま、まさか…紫音が負けたのか!?」
勇士の声に、綺羅星が得意げな笑みを浮かべて反応した。
「ええ。さっき私の仲間から連絡があったわ。結界内でも上級士器でなら連絡は取り合えるからね」
「な…!? う、嘘だ…! 紫音が負けるなんて…」
「逆に聞きたいんだけど、勝てると思ったの? 一介の学生の分際で?」
「…っっ」
信じたくはなかったが、自分が勝てなかった現状もあり、心とは裏腹に認めてしまう自分がいた。
「認められなくても後でしっかり証拠を提示して上げるわよ。四月朔日紫音の体そのもの、でね。……私達としても『御十家』のご息女を殺めるのは今後大きなリスクを背負うことになるから、できれば生かしておくつもりよ。………だから、」
綺羅星は勇士の心を叩き潰した後、再度湊に目を向けた。
「この亜氣羽さんが開催するバトルイベントに参……っ」
その言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
「……な、何よその目は…っ」
湊は半開きの目で感情薄げに綺羅星を見詰めており、それはまるで全てを丸裸にするような、フラットな瞳だった。
「いや、その演技は上手だなって」
「……ッッ」
湊がなんてことないように述べると、綺羅星の表情が曇った。
「え、演技…?」
湊の近くにいる琉花が何回も瞬きしながら聞いてくる。
「そう。悪党の演技。……本当は悪人でも裏組織でもなんでもないよ、この人」
湊は綺羅星から視線を外さないまま、断定した。
「俺の目から見れば勇士のこと全然殺す気なかったり、なんならしっかりと説教したりと、悪党を演じてる善人感がひしひしと伝わってくるんだよね」
「……ふん、何それ? 全部貴方の認識じゃない。証拠も何もないわ」
湊の見識であることに言及する綺羅星に。
「じゃあ殺せば? 四月朔日を」
「…ッッ!」
肝の据わった湊の言葉に、綺羅星が少しの怯みを表情に出してしまう。
「お、おい湊!」
そんな二人の駆け引きの場に、勇士が割って入った。
「もしそいつが 」
「勇士! 今は漣に任せて!」
勇士の言葉を遮ったのは琉花だった。
きょとんと目を丸くする勇士に、琉花は強い想いを込めた目で訴えた。
琉花はわかっているのだ。こういう時は湊に任せるべきだと。
「……本当に殺すわよ?」
綺羅星が殺気を高めて再度、重く告げる。
「うん。早く四月朔日の首持ってきてよ」
しかし湊は心揺れることなくはっきりと返した。
「……………………………っ」
綺羅星が渋い表情を浮かべて何も言えずにいる。
それが全ての答えだった。
横で見ていた琉花は(本当に裏組織の人間じゃないのね…っ)と驚き、勇士は目を見開いて琉花以上に驚いている。
「……亜氣羽さん」
湊が亜氣羽の名を呼ぶ。
「……っ?」
亜氣羽は咄嗟に言葉が出てこなかったのか、目を向けて反応を示す。
「妄想の世界に浸るのもいいけど、あんまり人を舐めちゃいけないよ」
湊が軽く忠告すると、亜氣羽はハッと目を開き、声を張った。
「あ、あの!」
亜氣羽は続けて言った。
「どうしたら、戦ってくれる…?」
亜氣羽の真っすぐな質問に、湊は多少感心した。
(ふーん…ここで自分の考えを押し付けず、しっかりこっちの要望を聞くんだ…)
心の中で思考をまとめつつ、湊は答えた。
「まずこっちにメリットが無さ過ぎるんだよね。…ちなみにどういう〝宝〟なのか、教えてもらえるの? 綺羅星さんが言うには源貴片らしいけど」
「……それは…あ…」
「ああ別にいいよ。教えられないならそれで。……正直、出所が怪しい宝を景品にされてもモチベーション上がらないし」
言い辛そうな亜氣羽にきっぱり言い切る湊。
「………ただ、そうだなぁ」
するとそこで、湊の口調が変わった。
その変化に、亜氣羽が「な、なに…?」食いつく。
湊がにっこりと屈託ない笑みを浮かべて、言った。
「〝宝〟はいらないけどさ、〝現金〟なら欲しいなって」
中性的な美少年である湊の晴れやかな笑顔は目を惹く魅力があり、だからこそ生々しい言葉が脳に響いた。
「げん…きん…」
亜氣羽が喉を鳴らす。
湊の一言で、自分が今まで踏み込んだことのない領域に引きずり込まれたことを自覚したのだろう。
「そっ、やっぱ現金の方が信頼性高いからね。………亜氣羽さんは用意できる? お金」
「………っ」
口をぎゅっと閉じる亜氣羽を見て、湊は「だよね」とわかっていたように頷き、……別の人物に顔を向けた。
「それじゃあ、綺羅星さんはどうです? お金、用意できます?」
「……ッッ!? わ、私!?」
ここで白羽の矢が立ったのは、綺羅星桜だった。
「どうして私が用意しなくちゃいけないのよ!?」
「だって綺羅星さんもこのバトルイベント、開きたいんじゃないんですか?」
「……ッ!」
図星を突かれた綺羅星の表情が強張った。
(……なんなのこの子!? 頭の切れが異常過ぎる!)
綺羅星は湊への評価を再度上方修正した。
(〝宝〟が景品のバトルイベントを開いてくれるのは願ったり叶ったり。……どうにもこの亜氣羽って子は隙が無くて奪う機会がないまま二ヵ月以上経っちゃったし、…覚悟を決めたとはいえ、難癖付けて強奪するのに抵抗が無かったと言えば嘘になる…)
だから。
(……だから、『多少お金をかけることで宝が手に入るなら、払ってもいい』と、思ってるのも事実。……この漣湊って子は、そんな私の考えを見透かして、こんな提案をしている…ッ! 憎たらしいぐらい交渉上手ね!)
綺羅星は荒ぶる気持ちを抑え込み、一旦湊から視線を外して、亜氣羽の方を向いた。
「貴女、ちゃんとあれを景品にするって、約束できる?」
「…うん! 約束する! するよ!」
食い気味に亜氣羽が答える。
その余裕のある瞳から、綺羅星は正確に彼女の心の内を読み取った。
(……多分、負けるなんて思っていないんでしょうね)
綺羅星は湊に視線を戻す。
「いくら、欲しいの?」
「そうだねぇ…」
湊が唇に指を当てながら思案する。
そんな湊を見ながら、綺羅星も頭を回転させた。
(数十万…少なくとも50万以上は覚悟しておくべきでしょうね……100万でもまあ…)
綺羅星が計算していると、湊も何やら呟いていた。
「1…2…3……4……5……6……7……うん」
ぶつぶつ数字を呟きながら結論が出たようで、こくりと頷いて、言った。
「800万」
「「「ッッッッッッッッッッッッッッ!!?」」」
湊の提示した大金に、綺羅星だけでなく勇士や琉花も驚いている。ちなみに亜氣羽だけは反応は淡泊だった。
「800!? 貴方ふざけてるの!?」
「話は最後まで聞きなって」
突拍子もない金額に綺羅星が叫ぶと、湊が手で制す。
「800万は最終金額だよ。……最初、俺達へ払うのはその四分の一の200万でいいよ」
「にひゃく…ッ!」
「そう。参加要望金として200万を最初俺達に支払い、バトルイベントで俺達が勝ったら800万を受け取る。……それなら文句ないでしょ?」
「……ッッッ!」
やり手のセールスマンのような軽快な口調で条件を説明する湊に、綺羅星が即答できず、必死に思考を加速させた。
(…800万ッ! 私達の軍資金のほぼ全額…! 勝てば払わなくていいと言っても、200万も痛い…けど、100万なら払ってもいいと思ってたからその倍ではギリギリ許容範囲内か……ッ? ………くッ! 全くこの子は! どうしてこんなに私達の譲歩できるラインの瀬戸際を攻められるのよ! ……だけど、200万で〝宝〟が手に入ると考えれば安いもの…ッ!)
バッと桜は顔を上げ、覚悟を決めた顔で告げた。
「わかった! 200万払う! だから真剣に戦いなさいよ!」
「毎度ありっ」
………こうして、湊はこの特殊な状況を利用して200万得ることに成功した。
■ ■ ■
その後も湊主導で話は進み、「やるならちゃんとやろう」ということで詳細な内容は後日詰めることになり、一旦解散する運びとなった。
翌日同じ場所で集合する約束をした時、綺羅星は肝を据えた眼光を放ち、亜氣羽はしおらしく頷いていた。
湊達は獅童学園に戻っていた。
綺羅星の柄の悪い仲間が連れてきた満身創痍の紫音は他の学生にあまり見せられないと考え、学園内の救護室で寝かせている。
「……そのようなことがあったのか」
「めっちゃ面倒なことに巻き込まれてんじゃん!」
重々しく唸ったのは学園長の武者小路源得だ。
その部屋には湊と学園長、そして愛衣の三人だけだ。
全ての事情を把握する湊と、第三者視点役として愛衣を呼び、少数の方がベストだと考えたのだ。
そして今日起きたことを説明し、源得は渋い表情を浮かべている。
「……その亜氣羽という少女の正体は気になるところじゃが、まずは漣くんが今後どうするつもりなのか聞いてもよいかな? いくら裏組織の人間ではないから殺される心配はないとしても、女性の紫音くんをあそこまで容赦なく痛めつける連中だ。万が一ということもある。……その辺の危険がわからない漣くんではないと思うのじゃが」
ちらり、と湊は愛衣を見やった。
「愛衣ならわかる? 俺が何考えてるか?」
「ええ」
愛衣は頷き、続いて答えた。
「〝紅井くん達の成長〟、でしょ」
湊が「正解」と笑う。
「成長…?」
源得が復唱する。
愛衣が説明を引き継いで。
「最近紅井くん達、気持ちが逸ってたのか、ちょっと心に駄肉が付いてた感じするからね。それを取り除くいい機会だと捉えたわけだよね」
「そう。勇士と戦った綺羅星って人も強かったけど、勇士の膂力ならもっと渡り合えたはずなんだ。それなのに終始防戦一方。四月朔日さんも自分だけ除け者にされて焦って油断しちゃったんだと思うしね」
源得が「の、除け者…ッ」と紫音の不安に気付いて思わず声を上げた。
湊が説明を続ける。
「友達から上から目線で〝お前慢心してるから正せ〟とか言われても中々言うこと聞けないだろうし、特に勇士は俺に複雑な気持ちでいるだろうし。………だからまあその辺俺はノータッチでいくつもりだったんだけど、ちょうど〝成長する為の絶好機〟に遭遇したからね。是非利用させてもらおうと思いました」
湊の説明を聞いた愛衣がこてんと首を傾げる。
「じゃあ最初から参加する気だったんだ? ……それなのに、興味ないフリして200万取ったんだ? 小悪魔~っ」
愛衣がにんまりとした笑みを浮かべる。
湊も似たようなにんまり笑みを浮かべて。
「俺自身にメリットないのは本当だし? 200万もちゃんとみんなで分配するつもりだから、そう言わないでよっ、あははっ」
「………その、」
そこに源得がおずおずと割って入る。
「勇士くんが漣くんに複雑な気持ちだというのは…?」
どうやら湊がさらりと言ったことが気になるようだ。
その疑問に、愛衣が簡潔に答えた。
「紅井くん、私のこと好きなんですよ。だから私と仲の良い湊に嫉妬してるんです」
「………………………………え!? ……………………え!? ………??」
「それで明日また集まって内容を詰めるんですけど、その時の内容がですね……」
「いや! 待っ…!」
何事もなかったかのように話を進める湊の言葉を慣れない声を出して遮る源得。
「……ゆ、勇士くんが速水くんのことに好意を寄せてる…と…!?」
慌てる源得を前にして、湊は愛衣に視線を向けた。
「……言ってよかったの? 俺が含みのある言い方しちゃったのもあるけど…」
「別にいいわよ。学園長には知っておいてもらった方が今後何かの組分けとかでも融通が利いて都合がいいだろうし」
「それならいいけど…」
……二人のやり取りを見てようやく落ち着いた源得が深く息を吐いて。
「わかった。無粋なことは何も聞かない。……しかし……これは……んー」
どうしたものか、そう悩む源得に、二人が言った。
「安心して下さい、学園長。色恋で力が落ちるような真似は今後二度と起きないようにしますから」
「湊の言う通り、学園長は気にしないで下さい。こっちでなんとかしますから」
湊と愛衣の成熟した大人の対応に、源得は頷くしかなかった。
(……長年教職者として務めてきた身としては、生徒を応援したいが………こればっかりは諦めた方が良いかもしれんよ、勇士くん)
■ ■ ■
「……ごめんなさい、二人共。大事な軍資金を勝手に使って…っ」
綺羅星桜は乙吹礼香、尭岩涼度と合流し、借りているホテルの一室で頭を下げていた。
「いえ、それはもうその漣湊という子を賞賛すべきでしょう」
「乙吹もこう言うんです。次のことを考えましょう、綺羅星さん」
「……ありがとう」
綺羅星は素直にお礼を述べ、今後の作戦について三人で一晩話し合った。
(…………最後に勝つのは、私達よッ!!)
■ ■ ■
夜。
亜氣羽はネオンで照らされた街を一望できる高層ビルの屋上の端に、足をぶらぶらさせながら座っていた。
そして、今日起きたあることを、脳内で再生した。
何を思い返しているかというと……。
『俺達参加する意味ないですよね?』
『全然湧きません』
『その演技は上手だなって』
『じゃあ殺せば?』
『あんまり人を舐めちゃいけないよ』
『〝宝〟はいらないけどさ、〝現金〟なら欲しいなって』
『800万』
『毎度ありっ』
湊が発した言葉の数々。
解散して湊と別れてからずっと、ずっと、反芻している。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、ずぅっっっっっっっと。
(あぁぁぁぁあぁあぁああぁあああぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁあああぁああぁぁぁあっっっ、……さざなみ…みなと……っ!!)
その亜氣羽の瞳は、蕩けきった恋情に、深く染まっていた。
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