鎮静のクロッカス

第５章 トレジャー・ガール

第１８話・・・VS暴走＿共闘か利用か＿本物（オリジナル）・・・

「………非常にまずいね」
「……うん。まさかここまで怒るなんて…」
　湊と愛衣は亜氣羽によって破壊され破片と化した倉庫の物陰に隠れていた。
　亜氣羽の気質を見抜き、毒を盛っても大事には至らないと判断したのだが、思いっきり大事に至ってしまった。
　染み付いたポーカーフェイスの裏側では、これ以上ないほど焦っている。
　湊が慎重な面持ちで告げる。
「絶気法オフ・アーツで気配を忍ばせているが、見付かるのも時間の　　　　　」
　問題、と言う暇もなく、
　湊と愛衣は「ッ！？」と顔を強張らせた瞬間、全力でその場から跳び離れた。
　……直後、二人が隠れていた付近に嵐を丸めて放ったような風の塊が落下し、辺り一帯を更地にした。
　軽いクレーターと化した更地を、風圧で転がりながらも湊と愛衣は受け身を取った。
「「……ッッ！！？」」


　その二人の視線の先、クレーターの中心にいつの間にか亜氣羽が佇んでいた。


　湖面に緑と赤のインクを垂らして軽くかき混ぜたような紋様の水晶の『源貴片オリハルコン』が赤黒い気エナジーの糸で胴体に巻かれている。
　水晶は明滅を繰り返しており、まるで血管と鼓動する心臓のようである。
　虚ろで狂気を孕んだ瞳が湊と愛衣を捉えている。
「……分身とはいえ、『源貴片オリハルコン』と半融合して理性を完全に失ってるな…」
「Ｓ級鬼獣みたいなものね…。やばいよ、湊。これかなり厳しい展開」
　湊と愛衣が顔を引き攣らせる。
　しかしそんな二人の会話をぶった切るように亜氣羽が「アアアアアアアアアアアアァァァァァアアアアッッ！」ともはや獣の雄叫びを上げて右腕を掲げ、ここら一帯を更地クレーターにした風の塊を生成する。
　Ｆ級という体ていの湊と愛衣が喰らえば今度こそ粉微塵であるが、二人とも動かなかった。
　……そして亜氣羽が風の塊を放とうとした瞬間、


「『氷河の檻アイス・プリズン』ッッ！！」

　
　亜氣羽を氷の結界が覆った。
　通常の結界なら空間固定により景色も同一化して目視も困難になるが、氷が混ざった結界はスモークガラスのような見た目になって、亜氣羽の周囲１０メートルに張られているように見える。
「ちょっとっっっ！！　これどういうことなのよッッ！？」
　そして二人の盾になるように、筋肉質で胸元が大きく開いた大男、綺羅星桜が現れた。
　湊と愛衣の隣には万全とは程遠い様子の乙吹礼香も姿を見せた。
　乙吹が二人に視線を合わせ。
「漣湊に…そちらは速水愛衣さんですねッ？　どういう状況か説明できますかッ？　綺羅星さんの『氷河の檻アイス・プリズン』を三重トリプルで張っていますが、そう長くは持ちません。できれば手短にお願いします」
　簡潔に質疑する乙吹に、湊と愛衣は「えーとですね…」と淀みながら、説明した。
「なるほど…」乙吹が薄目になる。「つまり、私達の戦いを観戦していて、その観戦に亜氣羽さんを誘い、差し出した食べ物に毒を入れたら狂暴化した、と」
　最後まで聞いた綺羅星が湊と愛衣に叫んだ。
「悪趣味ねッ！」
「「返す言葉もございません…」」
　湊と愛衣が居たたまれない表情で非を認める。
「あの……ちなみに勇士は…？」
　一応、という感じで湊が聞くと。
「とっくに倒して向こうで伸びてるわよ！」
（勇士…）
　本当に申し訳ない、と勇士にも心の中で謝罪した。
「……しかし、どうしますか」
　乙吹が気を取り直して整理する。
「正直、手に余りますよ。…この中でまともに戦えそうなのは綺羅星さんだけですが、亜氣羽さんはＳ級相当。……おそらく歯が立たないでしょう。……それに、この亜氣羽さんは分身とのことですが、源貴片オリハルコンと半融合したとなれば、本物オリジナルでもなんとかできるかどうか…。ここは最悪の事態を考えるべきです」
　乙吹の冷静な分析に、綺羅星は眉間に皺を寄せた。
　自分では勝てないと自覚し、歯痒い思いをしているのだろう。
「『士フォーサー協会』に連絡して応援を呼びますか」
　誰よりも『士フォーサー協会』の力を借りたくないであろう乙吹がそう提案する。
「…………そうね」
　綺羅星が固く閉じていた口を開く。
「仕方ないですよ」その綺羅星の気持ちを汲んだ上で乙吹が首を振る。「私達だけならともかく、学生である彼らを危険に晒すわけにはいきません」
「ええ…」
　と、綺羅星が納得を示した時、

　パリンッ！　と綺羅星の『氷河の檻アイス・プリズン』が砕け散った。

　亜氣羽が壊したのだ。
　再び姿を現した亜氣羽に、綺羅星は瞠目した。
「そんな…ッ、まだ１０分も経ってないのに…ッ！　いくらなんでも早過ぎるッ！」
「『洸血家オーブ・エナジー』の特性『歪曲』は結界の構築を乱す乱流法クランブル・アーツの数倍の効力がありますからね…ッ」
「くっ…！」
　綺羅星が歯軋りをすると、こちらに考える余裕など与えないというかのように、亜氣羽がまた風の塊を掌に生成する。
　先程ここら一帯を更地にした時よりも大きく、赤黒い気エナジーの割合も数段上がっている。半端に守れば致命傷は免れない。
　綺羅星は覚悟を決め、すぐにとある決断をした。
「礼香！　二人を連れて逃げて！　そして『士フォーサー協会』に助けを！　……私はここで、亜氣羽ちゃんを食い止めるわッ！」
「……はいッ！」
　乙吹が「さあ、行きますよ」と湊と愛衣に声を掛ける……が。

「まあ待ってよ」
「そうそう、まだ諦めるのは早いかなっ」
　
　湊と愛衣は離れようとしないどころか、綺羅星の両脇に並んだ。
「何してるの！？　カッコ付けてる場合じゃないのよ！？」
　綺羅星が本気で激怒するが、亜氣羽が生成する風の塊がまた一段と巨大化し、危機感のあまり言葉が止まった。
（まずい…まずいまずいまずいッ！　どうやって防ぐべき！？　私の『一面結界』を張っても、あんな巨大な風塊ふうかいじゃ意味がない…！　避けようにも範囲が広すぎて躱し切れるか怪しいし、この子達が巻き込まれてしまう…ッ！　………全力の『氷の五重壁クイントプル・アイス・ウォール』なら守れると思うけど……そこで私の気エナジーは尽きてしまう…ッッ！　それでもとにかく生き残るべき…ッ！？）
　コンマ数秒の間に膨大な思考を巡らせるが、答えが出ない綺羅星。
　そんな綺羅星に、愛衣が言った。
「綺羅星さん！　『水の壁ウォーター・ウォール』張って下さい？　できるだけ大きいの！」
「…なに言ってるの！？　そんなので防げるとでも！？」
　氷アイスではなく水ウォーター？
　防御力が格段に落ちる。
　言いたいことはたくさんあったが、それを湊が切る。
「言いたいことはたくさんあると思いますが、お願いします！」
「……んもうッ！」
　綺羅星は直感で湊を信じると決断し、両手を地面に当てて「『水の壁ウォーター・ウォール』ッ！」と技を発動する。
　地面から聳えるように水が湧き上がっていく。綺羅星の系統である拡張の特性を１００％発揮し、視界前面をすっぽり覆うほどの壁が瞬時に形成されていく。
　……その壁が形成される瞬間、湊と愛衣が動いた。
「「『一体技いったいぎ・暴風雨の壁ハリケーン・ウォール』ッッ！」」
「「ッッッッッ！？」」
　綺羅星と乙吹が、息を呑んだ。
　今、湊と愛衣は形成途中の綺羅星の『水の壁ウォーター・ウォール』に横から風と水を追加した。
　Ｆ級にしては頑張った量だったが、綺羅星も乙吹も焼け石に水だと落胆した。
　………しかし、結果的には綺羅星が作るはずだった水の壁より倍以上巨大で分厚い、全長２０メートル以上の暴風雨の壁を作り上がった。
（これは…一体法ユナイト・アーツッ！？）

　以前、学園試験でも湊と愛衣が猪本に対しても使った一体法ユナイト・アーツ。
　複数の士フォーサーの気エナジーを掛け合わせることで本来の実力以上の威力を発揮する法技スキルだ。

　しかし法技スキルがわかっても綺羅星の疑問は消えなかった。
（一体法ユナイト・アーツは長い鍛錬を共にした仲間同士だからこそできる気エナジーの掛け算よッ！？　……それなのに、この二人！　私の技の気エナジーの構築や流れを見切って、ほとんど初見で合わせてきたの！？　そもそもＦ級の気エナジーなんて一体法ユナイト・アーツしても無駄って言われてるのにッ！？　どう分析すればそんなことができるのよッ！！！）
　滅茶苦茶過ぎるが、事実として目の前に呈示されている以上、受け入れるしかない。
　そして、亜氣羽がが風の塊を放ったが、『暴風雨の壁ハリケーン・ウォール』が十分壁の役割を果たし、鼓膜に響く衝突音が鳴り轟いた後、無事に止んだ。
「………あ、ありがとう…。助かったわ」
「いえいえ。Ａ級の力をありがたく利用させてもらったこっちが御礼を言いたいぐらいです」
　綺羅星の御礼に、湊が御礼で返す。
「余所見してる暇ないみたいよー」
　愛衣が疲労の混ざった声で注意を促す。
　見れば、技を防がれた亜氣羽が獣装法レグド・アーツで両手両足に獣の手足を具象装備し、チーターのようにしなる右脚を一歩、大きく前に踏み出して突進の構えを取っていた。更に赤黒い気エナジーを漲らせている。
　乙吹が顔を歪ませた。
「ッ！『洸血気オーブ・エナジー』を溜めています！　単調な突進でも空間を『歪曲』して不規則な攻撃になりますよッ！」
『洸血気オーブ・エナジー』を扱う乙吹だからこそ、危険性に早く気付いた。
「綺羅星さん！　今度は『水の壁ウォーター・ウォール』、今より８メートル奥に張れますか！？　初速段階ならそこまで威力も不規則度も乗り切っていません！　トップギアに入る前に壁をぶつけて失速させます」
「ＯＫ！　任せなさい！！」
　綺羅星にもう迷いはなかった。
　湊の要求通り、亜氣羽に近い奥側に『水の壁ウォーター・ウォール』を張り、そこに湊と愛衣が風と水を加算して、『暴風雨の壁ハリケーン・ウォール』を形成する。
　その直後に亜氣羽が駆け出したが、全長２０メートル以上ある暴風雨の壁の右上角近くに激突し、湊達が見上げる位置で衝撃波が巻き起こった。

　………しかし、それでも止めることはできず、『暴風雨の壁ハリケーン・ウォール』から亜氣羽が飛び出してきた。

　ほとんど無傷だが、それでも勢いは失速している。
　だが、空中に現れた亜氣羽は理性を失いながらも、空間に気エナジーを固定する歩空法フロート・アーツで足場を作り、そのまま第二疾走を始めんとする。
　その時。
　ちょうど亜氣羽が足場にするべく固めた気エナジーに、ビリッと雷が飛んできた。
「…ッ」
　亜氣羽が踏み込みが空を切り、バランスが崩れる。
「『剛氷の美落撃ビューティー・ドロップ』ッッ！」
　その亜氣羽の脳天に、いつの間にか肉迫していた綺羅星が氷で硬度を極限まで高めたクーラーボックスにより振り下ろしの豪打を見舞わせた。
　相手の気エナジーを吸収透過する衝直法ストライク・アーツを纏った渾身の一撃だ。
　諸に直撃し、亜氣羽が隕石の如く地面に叩きつけられた。
　……今、湊と愛衣は綺羅星と乙吹にそれぞれ指示を出していた。
　亜氣羽が『暴風雨の壁ハリケーン・ウォール』を突破し、さらに現・れ・る・位・置・と読み、乙吹には足場にする『歩空法フロート・アーツ』の破壊を、綺羅星には先んじて亜氣羽が現れる場所へ接近するすよう言っていたのだ。
（……本当に言われた場所に現れたわね…。……恐ろしい坊や達。さすがにその才能は嫉妬しちゃうわっ！）
　綺羅星は湊と愛衣の才能に慄きながら、亜氣羽への追撃を試みた。
　地面に叩きつけられた亜氣羽は獣装法レグド・アーツが解かれ、頭を振っていて多少ダメージが入っているようだが、まだまだぴんぴんしている。
（ここで決めるッ！）
　再び亜氣羽に肉迫し、更にもう一発、クーラーボックスによる豪打を入れる。
　しかし亜氣羽はそれを左片手で受け止めた。
　衝直法ストライク・アーツにより気エナジーの防御力は半減しているはずだが、それでもブレることなく掴み止めてしまった。
　そして右片手にまた獣装法レグド・アーツで獣の手を具象装備し、綺羅星の首を掻かんと切りかかった。

「甘いわよッ。『霜氷の囚晶フロスト・バン・パウダー』ッッ！」

　その時、綺羅星がクーラーボックスを開け、中から氷の粉が舞い、瞬時に亜氣羽に纏わりついた。
　以前勇士との戦いで見せた『霜氷の囚晶フロスト・バン・パウダー』だ。
　拡張系特有の接着法ペースト・アーツで対象者の気エナジーに吸収・吸着し、貼り付く法技スキルで凍り付かせ、身動きを取れなくする技。
　勇士に使用した時より速く精密な操作で亜氣羽の全身を覆っていき、獣の手を装備した右手の動きも止まった。
　亜氣羽は洸血気オーブ・エナジーを増幅させ、歪曲の力で一気に脱出しようとするが……できなかった。
「…ッッ」
　理性のない亜氣羽が思い通りにならず動揺を見せる。
（無駄よッ！　私はここ数年、『指定破狂区域ハザード・エリア』に潜り込んで洸血気オーブ・エナジーを持つ鬼獣を相手にずっとこの司力フォースで拘束し、極め続けてきたのよッ！　貴女がどれだけ強かろうと、そう簡単には解かせない！）
　綺羅星は後ろに跳んで距離を取り、更に『霜氷の囚晶フロスト・バン・パウダー』を撒く。
「『霜氷の送葬墓バン・ピラミッド』ッッッ！」
　技を発動する。
　すると、撒いた氷粉ひょうふんが拡張の特性で大気中の気エナジーを吸収し、どんどん肥大化していき、あっという間に亜氣羽の全身を包む氷の三角錐ピラミッドが形成された。
　亜氣羽が凍り付き、動きが止まった。
　ハァ、ハァ、と綺羅星が息を切らす。
（……さすがに、気エナジーごっそり持っていかれたわね…）
　でも。
（でも、『霜氷の送葬墓バン・ピラミッド』が決まった。どんな生物も体温が低下すれば本調子とはいかなくなるッ！　このまま仮死状態にして、その後ゆっくり『源貴片オリハルコン』を回収させてもらうわッ！）


「綺羅星さんッ！！　横に跳んでッ！！」

　
　その時、湊が叫んだ。
　綺羅星は一瞬戸惑ったが、すぐに危・険・を感じ取り、言われるがまま横に跳んだ。
　

　……直後、綺羅星が立っていた足下の地面から、巨大な獣の手が抉る飛び出た。


　亜氣羽の獣装法レグド・アーツだ。
　綺羅星が瞠目し、『霜氷の送葬墓バン・ピラミッド』に拘束された亜氣羽に目を向ける。
　すると、氷の中の亜氣羽が霞のように薄れていき、数秒もしない内に消滅した。
「別己法アナザー・アーツではないですね。超高精度な分身法フロック・アーツです。地面に叩き付けられた時に分身を置いて、地面に潜ったんでしょう」
　湊が綺羅星の疑問に先回りして答えた。
「そんな…ッ。理性がないのに…！？」
　その疑問には愛衣が答える。
「ええ。つまり亜氣羽さんには『分身を使う』ことや『囮にする』ことは本能に刻み込まれてるってことです。『慟魔の大森林』で育って染み付いた習性かもしれませんね」
「分析もいいですが、どうするんですか！？」
　乙吹が切羽詰まった声を張り上げる。
「今綺羅星さんが使用した『霜氷の送葬墓バン・ピラミッド』は奥の手の一つです！　かなりの気エナジーを消費したはず！　……それなのに当の亜氣羽さんは大したダメージも入ってない！　いよいよ詰みですよ！？　やはり『士フォーサー協会』に連絡して応援を呼ぶべきでは…！？」
　
　

　…………その時だった。


　空から降ってきたそ・の・人・物・が、亜氣羽（理性を失った分身）へ隕石の如く直撃し、地面に深い亀裂が走った。

「ッッッ！？」
「なにが……ッッッ！？」
　綺羅星と乙吹は動揺して状況に付いていけていないが、湊と愛衣はホッと安堵していた。
　先程乙吹は『源貴片オリハルコンと半融合したとなれば、本物オリジナルでもなんとかできるかどうか…』と危惧していたが、湊と愛衣はそんなことはないとわかっていた。
　本物オリジナルがちゃんと現れてくれれば、それで丸く収まる、と。


「実は途中から見てたんだけど、ボクの分身とここまでやりあえるなんてすごいねっ！　びっくりした！」


　その人物……本物オリジナルの亜氣羽は、下敷きになった分身から緑と赤の水晶の『源貴片オリハルコン』を拾い、分身を解いて気エナジーを回収しながら明るい声を出す。

「なんかボクの正体とか大体分かってるみたいだから隠さず言うけどね。……この水晶はとある滅茶苦茶強い『鬼獣』の心臓の一部が結晶化したものなんだ。これに気エナジーを流し込めば、その滅茶苦茶強い『鬼獣』の存在を感じ取って、森の中を歩いてても『鬼獣』が寄り付かなくなるんだよ。虫除けスプレーみたいなものかな。すごいでしょ？　……まあそれも弱い『鬼獣』だけにしか効かないんだけどね」
　亜氣羽がクスリと笑って続ける。
「それにこの水晶って長時間傍に置いておくと『洸血気オーブ・エナジー』が心を侵食し始めるから、その制御が大変だったりして、中々扱いが難しいんだ。………今回はボクの分身の心が弱んで、制御が効かなくなって呑まれちゃったってことかな」
　亜氣羽が苦笑しつつ、「でもね」と少し視線を強める。
「でもね、そっちだってイケないんだよ？　……せっかく楽しく観戦してたのに、毒を盛るなんてさ。仲良くなれたと思ったのに、そんなことされたらボクだって深く傷付くよ」

　ぷくっと、頬を膨らませる亜氣羽を見て、綺羅星と乙吹は状況整理するために頭を必死に回転させて硬い表情を浮かべている……………が。


　湊と愛衣はというと。


（（……………………………………………………ああ～。…………なるほど））
　
　
　ようやく現れてくれた本物《オリジナル》の亜氣羽の心を読んで、どうして予想通りに事が運ばなかったか、理解した。


（これは１００ひゃく俺が悪いな）
　湊はこっ恥ずかしい気持ちと罪悪感で居たたまれなくなった。