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「リーンベイル、いきなりのことで申し訳ないがこの俺と付き合ってくれないか」
ある日のこと、伯爵令嬢リーンベイルはこんな風に突然告白されたのだった。
それも相手は学園のアイドルでもあり、ひそかに彼女も焦がれていたマルスから。
「一目見たときから、お前のことがいいと思っていた」
学園内におけるイケメン令息四天王に君臨する彼は、令嬢たちが黄色い歓声を上げるその眼差しを今はただリーンベイルにのみ注ぎ、そして彼女の返答を待っていた。
「……駄目、か?」
そんな捨てられた子犬みたいに切なそうな感じで言われてはズルい。
だからこそ、リーンベイルの返事は――。
「……はい、私で良ければ喜んで」
◆
「よかったわねリーベル、あのマルスと交際するんでしょ? あたしは興味ないけど、あんたは彼に憧れてたもんね。きっと明日には学園中の噂になるわよ」
「うふふ、ありがとうミネルバ。でも本当はまだ疑ってるんだ。私がマルス様とお付き合いするだなんて夢みたい」
リーンベイルは例の交際の件についてさっそく親友であるミネルバに報告した。
詳しいことはこのあとランチで話そうと二人は学園のカフェに向かっている途中だったが、
「おいおいマルス、告白って正気かー? そんなの聞いたらファンの子たちが泣いちゃうだろ」
「なんだよ、友人の幸せを素直に祝ってくれよ」
廊下の曲がり角の方からマルスの声が聞こえてきた。
どうやら彼もまた、リーンベイルとの付き合いを同じイケメン令息四天王の一人に報告しているところらしい。
「いやだってお前の方から告白って、んなことをしなくても女なんていくらでも向こうからやって来るじゃん。しかも相手はあの地味顔令嬢だろ」
その言葉を聞いて、ひそかにショックを受けるリーンベイル。
確かに自分の容姿は地味だし、眼鏡をかけてて野暮ったい自覚はあるのだが、それにしたって影でこう学園の人気者から呼ばれているのを知ると辛いものがあった。
「しかも一目惚れぇ? ゲーッ、お前マジかよ。趣味悪いわー、よくあんなんに惚れんなぁ」
「ばーか、本気にすんなよ。こんなの暇つぶしの嘘告に決まってんだろ、嘘告に」
(……えっ?)
マルスの口をついて出た嘘告という単語に動揺を禁じ得ないリーンベイル。
(嘘告って、つまりあの告白は嘘だってこと?)
「えっマジ、彼女かわいそー。なんだってそんなことをしたん。イジメ、ヨクナイヨ(裏声)?」
「だってよ、最近なんか刺激がなくて学園生活もつまんねぇじゃん? だから、あの地味顔令嬢に一番面白いタイミングで『実はあれ、嘘告でしたー』ってドッキリを仕掛けようかなって。ほら、仮に婚約相手だと婚約破棄だなんだのは色々面倒が起きるけど、ただの交際なら別にやっぱり合わなかったで済むだろ。だからこうやって弄ぶのに気兼ねもいらないし」
「いや少しは気兼ねしろし(笑)」
「そんであいつに嘘告した時もよー、あんなんがこの俺に釣り合うわけないってのに浮かれてさ、マジで笑いを堪えるのに必死だったわ」
「うーわやっぱ趣味悪ぃわお前。あ、これ、褒め言葉ね」
「そういうお前だってこういうの好きだろ?」
「まあな、バレたか。――では我らがマルス殿、友人代表としてその件についての経過報告をこれからも楽しみにしておりますぞ、なんつって」
「任せとけって! もっとあのマヌケな女を俺に入れ込ませてやるからよ。ついでに嘘告ドッキリ大成功のプラカードも用意しておかないとな」
そう言ってぎゃはぎゃはと下品に笑うマルス。
これが友人に対する照れ隠しならまだいいが、そのあっけらかんとした彼の口振りからは明らかに悪意しか感じられない。
「……っ」
そしてリーンベイルも言われるがままに黙って聞いていたのもそこまでだった。
ここが廊下であることも忘れてその場から駆け出し、マルスたちから離れるように去ってゆく。
ある日のこと、伯爵令嬢リーンベイルはこんな風に突然告白されたのだった。
それも相手は学園のアイドルでもあり、ひそかに彼女も焦がれていたマルスから。
「一目見たときから、お前のことがいいと思っていた」
学園内におけるイケメン令息四天王に君臨する彼は、令嬢たちが黄色い歓声を上げるその眼差しを今はただリーンベイルにのみ注ぎ、そして彼女の返答を待っていた。
「……駄目、か?」
そんな捨てられた子犬みたいに切なそうな感じで言われてはズルい。
だからこそ、リーンベイルの返事は――。
「……はい、私で良ければ喜んで」
◆
「よかったわねリーベル、あのマルスと交際するんでしょ? あたしは興味ないけど、あんたは彼に憧れてたもんね。きっと明日には学園中の噂になるわよ」
「うふふ、ありがとうミネルバ。でも本当はまだ疑ってるんだ。私がマルス様とお付き合いするだなんて夢みたい」
リーンベイルは例の交際の件についてさっそく親友であるミネルバに報告した。
詳しいことはこのあとランチで話そうと二人は学園のカフェに向かっている途中だったが、
「おいおいマルス、告白って正気かー? そんなの聞いたらファンの子たちが泣いちゃうだろ」
「なんだよ、友人の幸せを素直に祝ってくれよ」
廊下の曲がり角の方からマルスの声が聞こえてきた。
どうやら彼もまた、リーンベイルとの付き合いを同じイケメン令息四天王の一人に報告しているところらしい。
「いやだってお前の方から告白って、んなことをしなくても女なんていくらでも向こうからやって来るじゃん。しかも相手はあの地味顔令嬢だろ」
その言葉を聞いて、ひそかにショックを受けるリーンベイル。
確かに自分の容姿は地味だし、眼鏡をかけてて野暮ったい自覚はあるのだが、それにしたって影でこう学園の人気者から呼ばれているのを知ると辛いものがあった。
「しかも一目惚れぇ? ゲーッ、お前マジかよ。趣味悪いわー、よくあんなんに惚れんなぁ」
「ばーか、本気にすんなよ。こんなの暇つぶしの嘘告に決まってんだろ、嘘告に」
(……えっ?)
マルスの口をついて出た嘘告という単語に動揺を禁じ得ないリーンベイル。
(嘘告って、つまりあの告白は嘘だってこと?)
「えっマジ、彼女かわいそー。なんだってそんなことをしたん。イジメ、ヨクナイヨ(裏声)?」
「だってよ、最近なんか刺激がなくて学園生活もつまんねぇじゃん? だから、あの地味顔令嬢に一番面白いタイミングで『実はあれ、嘘告でしたー』ってドッキリを仕掛けようかなって。ほら、仮に婚約相手だと婚約破棄だなんだのは色々面倒が起きるけど、ただの交際なら別にやっぱり合わなかったで済むだろ。だからこうやって弄ぶのに気兼ねもいらないし」
「いや少しは気兼ねしろし(笑)」
「そんであいつに嘘告した時もよー、あんなんがこの俺に釣り合うわけないってのに浮かれてさ、マジで笑いを堪えるのに必死だったわ」
「うーわやっぱ趣味悪ぃわお前。あ、これ、褒め言葉ね」
「そういうお前だってこういうの好きだろ?」
「まあな、バレたか。――では我らがマルス殿、友人代表としてその件についての経過報告をこれからも楽しみにしておりますぞ、なんつって」
「任せとけって! もっとあのマヌケな女を俺に入れ込ませてやるからよ。ついでに嘘告ドッキリ大成功のプラカードも用意しておかないとな」
そう言ってぎゃはぎゃはと下品に笑うマルス。
これが友人に対する照れ隠しならまだいいが、そのあっけらかんとした彼の口振りからは明らかに悪意しか感じられない。
「……っ」
そしてリーンベイルも言われるがままに黙って聞いていたのもそこまでだった。
ここが廊下であることも忘れてその場から駆け出し、マルスたちから離れるように去ってゆく。
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