最低な貴方との結婚はこちらから願い下げです

日々埋没。

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10.彼女に対するこの気持ちはなんなのでしょう?

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 私がバイドル殿下(もはや親しくする間柄でもないために様ではなく殿下に敬称を改めた)から理不尽な理由で婚約破棄を告げられてから早くも一ヶ月ほどが経過した。

 その間になにをしていたかといえば、私は特にこれといってなにもしていない。
 ああ誤解がないように言っておけば、バイドル殿下に対してなにもしていないということ。
 だって私の代わりに彼を矯正してくれている人がいるのだから。

 あれから私はその人、メリーヌタと少なからず交流を重ねている。
 経過報告と称して彼女がバイドル殿下の様子を伝えにきてくれるからだ。

 教育係初日から彼を投げ飛ばしたと聞いた時は思わずくすりと笑ってしまった。
 そのせいかメリーヌタに対する態度も変わったようで、最近はあのプライドの塊が彼女のことを女王様と呼んでいるらしい。

 もちろんだからといって彼女はまったく手心を加えたりはしないみたいで、全力でスパルタ教育を続けているから安心してほしいと言っていた。

 彼女のその一言に励まされ、私もまた前に進むための勇気をもらえた。
 本当に不思議で、かっこいい人。

 そうそう、メリーヌタはこれだけじゃなくて他にもすごいのよ。
 なんとあのバイドル殿下の浮気相手だった男爵令嬢のナターシャが一人で私に謝罪しにきたの。

 本人はこれまでのことを反省し、支払った代償は大きかったがなんとかメリーヌタのおかげで心を入れ替えることができたと言っていた。

 ナターシャのまるで憑き物の取れたかのような朗らかな笑顔を見て、彼女もまたバイドル殿下に騙された憐れな被害者なのだと悟った。

 だから、悪いのはすべてあの男。
 あとはメリーヌタの厳しい教育でどこまで彼が変われることができるかなのだが……。

「イーリスお嬢様、本日もメリーヌタ様がお屋敷に参られましたよ」

 我が家の侍女が彼女の訪問を知らせてくれた。

「分かった、今行くわ」

 玄関に向かう足取りが自然と軽くなる。

 ここのところメリーヌタと世間話も兼ねた会話をするのを心待ちにしている自分がいた。
 彼女はただのメイドにしておくには惜しいほどに教養が豊かで話術も巧み。

 それでいて周辺諸国で起きた貴族の面白い時事ネタにも精通しており、一緒にいるとこれが全然飽きないのだ。

 口を開けばシモの話、またはいかに自分が優れているかといった自慢話しかしないバイドル殿下とまるで違う。

 ……思い返してみれば、あの人と一緒にいた時は話を弾ませたり気が緩んだことはなかったように感じる。

 もっとお偉いはずの国王様と王妃様とお話していた時はそんなことはまったくなかったのに。

 考えるに、どこまでいってもバイドル殿下とは水と油のような関係だったのだろう。
 もしメリーヌタが男性で自分の婚約者だったら――って、私は一体なにを考えているのだろう。
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