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13.バイドルSide〜バカ王子の無様な末路まであと1話〜

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「あ……」

 恐る恐る声の聞こえた方に顔だけを向けると、見たことのない形相をしている父上が俺の部屋の入り口に立っていた。

 いつの間にか扉が開かれているが、事に夢中になっていてまったく気が付かなかった。
 部屋の中にドカドカと入り込んできた父上と、それから母上の姿に背筋が凍る。

「おっ、お二人とも、なぜここに⁉」

「儂はお主になにをしておるのかと聞いている」

 父上の口調こそ穏やかだが、あれはどう見ても怒っている。

「あっ、いえ、違うんですこれは誤解で、そう、これは教育係を務めてくれたメリーヌタに今までの感謝を込めてマッサージしていたんですよ!」

「誤解? はてわたくしにはあなたが彼女を無理やり手込めにしようと組み敷いているようにしか思えませんが」

 慌てて言いわけを取り繕ったが、母上まで俺を冷めた目つきで見ている。
 なんだよその目は、我が子のことをまるで信用していないのかこのクソババア!

「――あなたはこの状況をどう判断しますか?
元婚約者として忌憚なき意見を聞かせてくださいイーリス」

「はい、王妃様」

 なんでこれまで姿の見せなかったイーリスまでこのタイミングで来やがるんだ⁉
 今日で俺の教育が終わると聞いて、まさかそれでお祝いにきてくれたのか?

 ……いやでも、だとしたらあいつなら分かってくれるはずだ。
 あの女のしたことを考えると、こんな風に復讐されて当然だって。

 だからこっちの味方になって擁護してくれるに決まっている! なにせこの俺は、お前が愛してやまない超イケメンの王子様なんだからな!

 さあ父上と母上の誤解を解くために、さっさと俺のことを精いっぱい庇えイーリス!

「……一応様々な可能性を考慮してみましたが、バイドル殿下が今されていることはどう考えても婦女暴行としか思えません」

 しかしまさかのイーリスからの裏切りに、狼狽を隠しきれない。

「はあ⁉ おいちょっと待て、なに血迷ってんだよイーリス、そんなわけねーだろ! それになんだ殿下って、今まで俺を呼ぶ時は様付けだったじゃねーか!」

「敬称など、そのように些末なことはどうだっていいでしょう! では逆にお尋ねしますが、なぜメリーヌタの頬は赤く腫れて、鼻と口から大量の血を流しているのですか? ちょうど今のようにバイドル殿下が馬のりになったまま彼女のその顔を執拗に殴打されたからではないですか!」

 たかがメイド如きのことで、なんでそんな風に憎しみを込めたような目で俺を睨んでくるんだ。

「だから殿下じゃなくて様付けで呼べっつってるだろうが!」

 おかげで、つい同じことを繰り返してしまう。

「うるさいこの馬鹿王子のバカイドル、いいから私の質問に納得のいく返答をしろ!」

「なっ、バカイドルだと! なんだその呼称は⁉ この俺に向かって不敬だぞ、すぐに訂正しろ!」

「だったら不敬罪として罰でもなんでも与えればいい! だけど私はもうアンタみたいな最低最悪のクソ男にもう二度と遠慮なんかしない! ええそうよ、私の大切なメリーヌタを傷つけたアンタなんか大嫌い! 大嫌い‼ だいっきらいっ!!!」

 泣きながらそう叫ぶイーリス。

 まだこっちは反論していないのに、完全に俺がやったと決めつけてやがる。
 ふざけんなよ、メイドと俺のどっちが信用に値すると思っていやがるんだ。
 くそっ! もういい!

「このアマ、ちょっとこっちが甘い顔してれば調子に乗りやがって! ――ああそうだよ、こいつは俺がぶん殴ったし、なんならこれから犯すところだったんだ! けどそれはしょうがないだろ? 下女の分際でこの国の第一王子である俺に生意気な態度取ってたんだからよ! だから躾けてやるのは高貴な身分として当然だろうが、ああっ⁉」

「それでやることが暴力なの⁉ そうやって権力を誇示することが第一王子アンタの仕事なの⁉ だったら、そんな人の心をもたない王子なんかいらない! 追放されてしまえ、この女の敵!」

「……っ、さっきからいい加減にしろよてめぇ、ぶっ殺されてぇのか!」

 完全に頭に血が上った俺は、あのクソ生意気なイーリスを力で黙らせるべく立ち上がろうとして――。

「二人ともよさぬか!」

 これまで静観していた父上が突然発した怒号に気圧され、中腰姿勢のままその場に踏み留まる。
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