13 / 17
13.バイドルSide〜バカ王子の無様な末路まであと1話〜
しおりを挟む
「あ……」
恐る恐る声の聞こえた方に顔だけを向けると、見たことのない形相をしている父上が俺の部屋の入り口に立っていた。
いつの間にか扉が開かれているが、事に夢中になっていてまったく気が付かなかった。
部屋の中にドカドカと入り込んできた父上と、それから母上の姿に背筋が凍る。
「おっ、お二人とも、なぜここに⁉」
「儂はお主になにをしておるのかと聞いている」
父上の口調こそ穏やかだが、あれはどう見ても怒っている。
「あっ、いえ、違うんですこれは誤解で、そう、これは教育係を務めてくれたメリーヌタに今までの感謝を込めてマッサージしていたんですよ!」
「誤解? はてわたくしにはあなたが彼女を無理やり手込めにしようと組み敷いているようにしか思えませんが」
慌てて言いわけを取り繕ったが、母上まで俺を冷めた目つきで見ている。
なんだよその目は、我が子のことをまるで信用していないのかこのクソババア!
「――あなたはこの状況をどう判断しますか?
元婚約者として忌憚なき意見を聞かせてくださいイーリス」
「はい、王妃様」
なんでこれまで姿の見せなかったイーリスまでこのタイミングで来やがるんだ⁉
今日で俺の教育が終わると聞いて、まさかそれでお祝いにきてくれたのか?
……いやでも、だとしたらあいつなら分かってくれるはずだ。
あの女のしたことを考えると、こんな風に復讐されて当然だって。
だからこっちの味方になって擁護してくれるに決まっている! なにせこの俺は、お前が愛してやまない超イケメンの王子様なんだからな!
さあ父上と母上の誤解を解くために、さっさと俺のことを精いっぱい庇えイーリス!
「……一応様々な可能性を考慮してみましたが、バイドル殿下が今されていることはどう考えても婦女暴行としか思えません」
しかしまさかのイーリスからの裏切りに、狼狽を隠しきれない。
「はあ⁉ おいちょっと待て、なに血迷ってんだよイーリス、そんなわけねーだろ! それになんだ殿下って、今まで俺を呼ぶ時は様付けだったじゃねーか!」
「敬称など、そのように些末なことはどうだっていいでしょう! では逆にお尋ねしますが、なぜメリーヌタの頬は赤く腫れて、鼻と口から大量の血を流しているのですか? ちょうど今のようにバイドル殿下が馬のりになったまま彼女のその顔を執拗に殴打されたからではないですか!」
たかがメイド如きのことで、なんでそんな風に憎しみを込めたような目で俺を睨んでくるんだ。
「だから殿下じゃなくて様付けで呼べっつってるだろうが!」
おかげで、つい同じことを繰り返してしまう。
「うるさいこの馬鹿王子のバカイドル、いいから私の質問に納得のいく返答をしろ!」
「なっ、バカイドルだと! なんだその呼称は⁉ この俺に向かって不敬だぞ、すぐに訂正しろ!」
「だったら不敬罪として罰でもなんでも与えればいい! だけど私はもうアンタみたいな最低最悪のクソ男にもう二度と遠慮なんかしない! ええそうよ、私の大切なメリーヌタを傷つけたアンタなんか大嫌い! 大嫌い‼ だいっきらいっ!!!」
泣きながらそう叫ぶイーリス。
まだこっちは反論していないのに、完全に俺がやったと決めつけてやがる。
ふざけんなよ、メイドと俺のどっちが信用に値すると思っていやがるんだ。
くそっ! もういい!
「この女、ちょっとこっちが甘い顔してれば調子に乗りやがって! ――ああそうだよ、こいつは俺がぶん殴ったし、なんならこれから犯すところだったんだ! けどそれはしょうがないだろ? 下女の分際でこの国の第一王子である俺に生意気な態度取ってたんだからよ! だから躾けてやるのは高貴な身分として当然だろうが、ああっ⁉」
「それでやることが暴力なの⁉ そうやって権力を誇示することが第一王子の仕事なの⁉ だったら、そんな人の心をもたない王子なんかいらない! 追放されてしまえ、この女の敵!」
「……っ、さっきからいい加減にしろよてめぇ、ぶっ殺されてぇのか!」
完全に頭に血が上った俺は、あのクソ生意気なイーリスを力で黙らせるべく立ち上がろうとして――。
「二人ともよさぬか!」
これまで静観していた父上が突然発した怒号に気圧され、中腰姿勢のままその場に踏み留まる。
恐る恐る声の聞こえた方に顔だけを向けると、見たことのない形相をしている父上が俺の部屋の入り口に立っていた。
いつの間にか扉が開かれているが、事に夢中になっていてまったく気が付かなかった。
部屋の中にドカドカと入り込んできた父上と、それから母上の姿に背筋が凍る。
「おっ、お二人とも、なぜここに⁉」
「儂はお主になにをしておるのかと聞いている」
父上の口調こそ穏やかだが、あれはどう見ても怒っている。
「あっ、いえ、違うんですこれは誤解で、そう、これは教育係を務めてくれたメリーヌタに今までの感謝を込めてマッサージしていたんですよ!」
「誤解? はてわたくしにはあなたが彼女を無理やり手込めにしようと組み敷いているようにしか思えませんが」
慌てて言いわけを取り繕ったが、母上まで俺を冷めた目つきで見ている。
なんだよその目は、我が子のことをまるで信用していないのかこのクソババア!
「――あなたはこの状況をどう判断しますか?
元婚約者として忌憚なき意見を聞かせてくださいイーリス」
「はい、王妃様」
なんでこれまで姿の見せなかったイーリスまでこのタイミングで来やがるんだ⁉
今日で俺の教育が終わると聞いて、まさかそれでお祝いにきてくれたのか?
……いやでも、だとしたらあいつなら分かってくれるはずだ。
あの女のしたことを考えると、こんな風に復讐されて当然だって。
だからこっちの味方になって擁護してくれるに決まっている! なにせこの俺は、お前が愛してやまない超イケメンの王子様なんだからな!
さあ父上と母上の誤解を解くために、さっさと俺のことを精いっぱい庇えイーリス!
「……一応様々な可能性を考慮してみましたが、バイドル殿下が今されていることはどう考えても婦女暴行としか思えません」
しかしまさかのイーリスからの裏切りに、狼狽を隠しきれない。
「はあ⁉ おいちょっと待て、なに血迷ってんだよイーリス、そんなわけねーだろ! それになんだ殿下って、今まで俺を呼ぶ時は様付けだったじゃねーか!」
「敬称など、そのように些末なことはどうだっていいでしょう! では逆にお尋ねしますが、なぜメリーヌタの頬は赤く腫れて、鼻と口から大量の血を流しているのですか? ちょうど今のようにバイドル殿下が馬のりになったまま彼女のその顔を執拗に殴打されたからではないですか!」
たかがメイド如きのことで、なんでそんな風に憎しみを込めたような目で俺を睨んでくるんだ。
「だから殿下じゃなくて様付けで呼べっつってるだろうが!」
おかげで、つい同じことを繰り返してしまう。
「うるさいこの馬鹿王子のバカイドル、いいから私の質問に納得のいく返答をしろ!」
「なっ、バカイドルだと! なんだその呼称は⁉ この俺に向かって不敬だぞ、すぐに訂正しろ!」
「だったら不敬罪として罰でもなんでも与えればいい! だけど私はもうアンタみたいな最低最悪のクソ男にもう二度と遠慮なんかしない! ええそうよ、私の大切なメリーヌタを傷つけたアンタなんか大嫌い! 大嫌い‼ だいっきらいっ!!!」
泣きながらそう叫ぶイーリス。
まだこっちは反論していないのに、完全に俺がやったと決めつけてやがる。
ふざけんなよ、メイドと俺のどっちが信用に値すると思っていやがるんだ。
くそっ! もういい!
「この女、ちょっとこっちが甘い顔してれば調子に乗りやがって! ――ああそうだよ、こいつは俺がぶん殴ったし、なんならこれから犯すところだったんだ! けどそれはしょうがないだろ? 下女の分際でこの国の第一王子である俺に生意気な態度取ってたんだからよ! だから躾けてやるのは高貴な身分として当然だろうが、ああっ⁉」
「それでやることが暴力なの⁉ そうやって権力を誇示することが第一王子の仕事なの⁉ だったら、そんな人の心をもたない王子なんかいらない! 追放されてしまえ、この女の敵!」
「……っ、さっきからいい加減にしろよてめぇ、ぶっ殺されてぇのか!」
完全に頭に血が上った俺は、あのクソ生意気なイーリスを力で黙らせるべく立ち上がろうとして――。
「二人ともよさぬか!」
これまで静観していた父上が突然発した怒号に気圧され、中腰姿勢のままその場に踏み留まる。
94
あなたにおすすめの小説
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
婚約破棄を申し込むも、殿下の説得がガチすぎて詰む?
ちゅんりー
恋愛
公爵令嬢リペは、厳しい王妃教育と窮屈な未来から逃れるため、ある画期的な計画を思いつく。それは、世にも恐ろしい「悪役令嬢」になりきって、完璧な第一王子カイルに婚約破棄を叩きつけること!
さっそくリペは、高笑いと共に「不敬な態度」「無駄遣い」「嫌がらせ」といった悪行の数々を繰り出すが……。
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
もう、あなたには何も感じません
たくわん
恋愛
没落貴族令嬢クラリッサは、幼馴染の侯爵子息ロベルトから婚約破棄を告げられた。理由は「家が落ちぶれた」から。社交界で嘲笑され、屈辱に打ちひしがれる彼女だったが――。
これって私の断罪じゃなくて公開プロポーズですか!?
桃瀬ももな
恋愛
「カタリーナ・フォン・シュバルツ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
卒業パーティーの最中、第一王子アルフォンスから非情な宣告を突きつけられた公爵令嬢カタリーナ。
生まれつきの鋭い目つきと、緊張すると顔が強張る不器用さゆえに「悪役令嬢」として孤立していた彼女は、ついに訪れた「お決まりの断罪劇」に絶望……するかと思いきや。
(……あれ? 殿下、いま小さく「よっしゃあ!」ってガッツポーズしませんでした!?)
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる