57 / 127
2
しおりを挟む─────
「うわでっか……」
後ろ髪を思いっきり引かれながらも家を出て、駅前から出ている学園行きのバスに揺られること4時間。
あれよあれよという間に見渡す限り木、木、木!みたいな山奥に入るバスに、ちょっと慄いているとそれは俺の困惑を嘲笑うかのようにズドンと現れた。
見渡す限り森です、というような都会のとの字も見つからないような環境の中、堂々と聳え立つ鉄の門。上には中世ヨーロッパの城でしか見たことないほど鋭く尖ったかえしがついていて、それでいてありえないくらいデカい。黒塗りにされてるのがオシャレではあるが、それはそれとして普通に怖い。あれに刺さったらどうなるんだろう、ひょえっ。
王道学園というと、モジャモジャ頭に変装した美少年が柵越えて生徒会役員(大体副会長)とチュ、こんにちは♡するのが定番らしいけど、いやこれいくら身体能力高くても無理だろ。奇跡的に登れたとしてもあのかえしに靴ブッ刺さりそうだぞ。まぁ、『破滅の一途』には王道転校生は出ないし、幽谷学園も別に王道学園の設定を基にしてるってファンの間で言われてるだけだから門がどんなのでも関係ないんだけどさ。
気を取り直して再び観察。その大層な鉄の門の奥には、門の西洋の感じとは全く違う近未来的な建物が聳え立っている。灰色のシックな建物にたくさん窓がついていてさながら何かの会社みたい。都心にこういうオフィスありそう。一体何階建てだろうだろうと上の方を見上げる。建物は全部で7つくらいはありそうで、敷地内もテーマパークか?ってくらい広い。事実、バスは自動で開いた門をくぐり抜けてちょっと走って建物の前に停まったから、少なくとも門から学園への距離は結構あるっぽい。おんなじ敷地内なのにね。
さ、さすが私立……金持ちの匂いがそこら中から溢れてる…。
他の人も俺と同じように学園の最先端ぶりに驚いているらしくざわざわしている。なお、バスは学園専属なので俺以外の乗客はみんな幽谷学園の新一年生であろうことが分かっている。しかも当然だが全員俺と同じように外部生っていうね。部活で外部勧誘も盛んとはいえ、幽谷学園は8割の生徒が初等部からの内部生である。つまり俺達外部生は大変マイノリティな存在と。
うん、俺は外部生同士で友達作りたいかな!!!!
だって内部生とか絶対にもう小中高と一緒になって誰かしら友達いるじゃん!!二人組とかグループ出来ちゃってるやつじゃん!!俺入る隙ないやつじゃん!!!
ただでさえ精神年齢だけは歳食ってて日々ジェネレーションギャップとかに怯えてるのになんで内部生の間に割って入って精神削らなきゃなんねーんだ!!俺は絶対に外部生とお友達になってやるからな!!!
密かに心の中で決意をしてバスを降りる。よいしょ、っと。ずっと座ってたから凝りそう。
降りるとすぐに、上級生と思われる生徒がメガホン片手に声を張り上げているのが見えた。
「新入生の皆さんはこちらでーす!」
うわ、可愛い。
一瞬、女の子かな?と思うようなパッチリお目目で小柄な先輩がどうぞ!と校内地図を手渡してくれた。庇護欲をそそるってこういう人のこと言うんだろうな。これはあれだ、前世で姉貴がハスハス言いながら見てたチワワ男子ってやつだな。王道学園には多いんだったけ。
「入学式が行われる第一体育館は本館のすぐ隣にあるコンクリートの建物です!」
ふわ、と可愛らしい笑みで言われたので俺も地図を受け取って笑い返した。
「ありがとうございます!」
「はぇっ!あ、いえ!」
はえ?
奇声を上げて頬を赤らめたチワワ先輩(仮)に言い間違えたのかな?なんて首を傾げながら敷地内を進む。にしても広い…第一体育館の第一って、じゃあ第二もあんのかよとか思ってたら普通に第三まであったし見えてるのに中々到着しないし。この学園で生活するだけで健康になるんじゃね?
入学式、と筆調で荘厳に書かれている看板を発見して経路案内の矢印の通りに歩くと、第一体育館の中にはすでにもうたくさんの新入生が溢れていた。黒地にパキッとした金色のラインの入った制服をどこか照れくさそうに着こなした生徒達は席に座って話していたり、立って先輩っぽい生徒と話していたり、眠そうにあくびしたりと様々だ。内部生、こなれてる感すごい。キョロキョロしてる俺含めた外部生がめっちゃ目立つ。
……にしても、髪色特徴的なやつ多いな!!!
幽谷学園は髪色の指定がないらしく、さっきから視界に入る人の髪の毛はみんな派手だ。まぁ、それもそうか、ここは小説の中の世界なんだから髪の色が黒が普通なんて常識はないんだよな。そういえば小学校も中学校もやたら特徴ある髪型のやつ多かったわ。対して俺の髪は茶髪である。うーん平凡。
シビアな世の中だなぁ、と思いながらそそくさと椅子に座る。その瞬間驚愕した。なんだろう、ふわっふわなクッションに乗ってるみたいな。うわ!何これめっちゃ柔らかいんですけど!!座り心地良すぎじゃないか!?
思わず隣の空いてる椅子を見ると、なんと作りはパイプ椅子なのに座面がふかふかのクッション付きだった。しかもモダンなくすみカラー全3色。何これ俺が知ってるパイプ椅子じゃない……生地ふわふわすぎだろ…。
ふぉおおお!と奇声上げそうになりながらパイプ椅子を手ですりすり撫でていると、不意に椅子の上に影が落ちる。
「チッ!!おいクソ邪魔だどけ茶髪野郎!」
「……ん?」
お手本みたいな舌打ちとドスの効いた声に顔を上げる。するとあらびっくり、目の前にこれまたテンプレみたいなツンツン赤髪ヤンキー君が立っているじゃありませんか!わお、めっちゃ鮮やかな赤ですね。
なんて現実逃避しているとヤンキー君は眉間に皺を深く刻み込んでこちらに凄んで来る。デカっ。わざわざ隣の席選んでくるとかなんなんだこの不良、と思いつつ、やっぱちょっと怖いので愛想笑いして手を退けた。
「あ、はは…い、いやぁ、すみませ~ん」
「あ?気色悪い笑いしながらこっち見てんじゃねぇぞクソ田舎チビ野郎!」
……………怖いとか前言撤回、タイマン勝負だわこのツンツン野郎。
125
あなたにおすすめの小説
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
告白を全部ドッキリだと思って振ったら、三人のアイドルが壊れかけたので彼氏役をすることになりました
海野(サブ)
BL
大人気アイドルヘイロー・プリズムのマネージャーである灯也はある日、その担当アイドル 光留 輝 照真 に告白されるが、ドッキリだと思い、振ってしまう。しかし、アイドル達のメンタルに影響が出始めてしまい…
致してるシーンと受けが彼氏役を引き受けるとこしか書いてませんので悪しからず。
ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!
或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」
***
日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。
疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。
彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界!
リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。
しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?!
さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……?
執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人
ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー
※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇♀️
※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです
※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
不定期更新予定に変更させていただきます。
♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております!
感想も頂けると泣いて喜びます!
第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる