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しおりを挟む「えっと、僕も、詳しくは知らないんだけど……黒瀧君のお家は名家で、一人息子の黒瀧君は昔から英才教育を施されてるって噂なんだ。だから初等部の頃から結構頻繁に留学したり、休学してお家の仕事を経験してたんだけど……その、今回は半年間、フランスに留学しちゃったみたい」
「…………ぴ」
やや心配そうな面持ちで俺の方を見た杉崎君は、説明を聞いて抜け殻になっている俺にわかりやすくあたふたした。
「ご、ごめんね、僕も黒瀧君と話したことないから、噂でしかないんだけど…もしかしたら、半年より早く帰ってくるってことも…」
「……い、いや、うん、そうだよな、うん。もしかしたらがあるよな!!」
予定より早まって帰ってくるということも無きにしもあらずだよな、うん。諦めんな俺。留学なのに予定早めて帰るとか可能性低いなんて思うな俺。大事なのは不屈の心。
でも、そっか、留学かぁ……。
「マジかー……正直その可能性は考えてなかったわ。黒瀧君って、俺が思うよりもずっとすげぇ奴だったんだなぁ」
「……僕も内部生だからずっとこの学園にいるけど、黒瀧君は留学や休学が多くてあんまり接点がなくて…だからすごくミステリアスな人なんだ」
それに、と杉崎君は声を落として、殊更真剣な顔つきになって言った。
「黒瀧君は、すっごく美形なんだ」
「……お、おお。そう、なんだ?」
「うん。この学園には美形な人がすごくたくさんいるんだけど、黒瀧君はその中でもトップクラスにかっこよくて、生徒会並みの大規模な親衛隊があるほどなんだよ。黒瀧君本人が断ったから、親衛隊そのものは非公式なんだけど」
Oh…そんなに美形で留学するようなハイスペックな人が俺と同室なの?やばいな俺、黒瀧君から見たらジャガイモにしか見えないかもしれない。
おけ、とりあえず把握した。俺の同室のやつはハイスペックスーパーイケメンで、現状は留学してるからルームメイトいないボッチってことね。
ほう、へぇ、そっかそっか。
あのクソ広い部屋に俺一人ってか。
ふーん。あっそう。
「いや、さみしっ!!!」
いやいや嘘だろ!?まだ入学したてのひよっこなんですけど!?
オレ、ガイブセイ。コノガクエンノコトナニモワカラナイ。
「ちょっ、杉崎君いや、深春君!!お願いだから俺と友達になってください!!」
ちょっとボッチになる危機と、この学園のことが何も分からなくて生活できる気がしない危機の両方を感じたので急いでガシッと両手を掴む。杉崎君は少しキョトンとした後に、戸惑ったように眉を下げた。
「えっ、と……成瀬君みたいなかっこいい人が、僕とお友達になっても、良いの、かな」
「え、サラッと褒めてくれるのめっちゃ優しい、泣きそう…じゃないや、いやいや、むしろ俺が良いんですかというか、その、もちろん君が良ければなんだけど!!」
もしかしてこれはめちゃくちゃ遠回しに断ってるという可能性も捨て切れなかったので慌てて付け足すと、彼はそっと首を振って、
「ううん、僕は成瀬君が良いなら、大丈夫……あっ、僕のこと、深春で大丈夫だよ」
とはにかんだ。
は?かわい。何だこの小動物みたいな子、絶対いい子じゃんか。
「うう……マジでありがと!!俺この学園のこと全然知らないからめっちゃ聞いたりするかもしれないんだけど、ごめんな」
「ううんっ、全然大丈夫だよ。僕が答えられることだったら、何でも答えるから!」
「深春、良い子すぎない?騙されたりしないように気ぃつけてなほんと!!かわいいんだから」
「ぼ、僕みたいな平凡な人引っ掛けようとしてくる人いないよ!…僕よりも、成瀬君の方がずっと危ないような気が……」
えー俺は大丈夫だって。中身23歳成人男性だし。いざとなったら何とかなるって。
しかもどうせモブだし。登場人物の誰かとどうこうとかなるわけないから、付き合うとすればまぁ同じモブとかエキストラと付き合うことになるんだろうけど、俺物語に関係ない人の顔すぐ忘れちゃうから…って、ん!?
待って!!!!
俺、そういえばこの学園に来てから、みんなの顔覚えてる……。
栗原先輩なんかは物語に出てきてない、今の時点での生徒会長だって登場してないはずなのに今でも普通に思い出せる。初日に絡んできたレッドホットチキン野郎だって明らかなモブ(笑)なのに顔覚えてるし……え、物語に無関係なやつの顔忘れる補正、いつの間にかなくなってる?まぁ、俺はそっちの方がすごく助かるんだけど。もしかして、『破滅』の舞台である学園に来たから、学園のことは忘れないようになってたんだろうか?それか最初から『破滅』の学園に関係する人物の顔しか記憶できないような感じになってたとか?転生特典謎すぎでしょ。
…………まぁ、何でもいっか!!!
どっちにしても俺には好都合だし。深春の顔も忘れないってことだよね、ラッキー。
俺はそんなに細かいことは気にしない質なのでニッコニコホクホクで深春とお話しした。機嫌の良い俺を不思議そうに深春が見てる、かーわい、なんか俺の弟の棗とは全然違う大人しいタイプなんだけど、何というか仕草とかは似てて弟感出てんだよなぁ。俺が守らなきゃ……。
「深春、俺のことはお兄ちゃんだと思ってくれて良いからね…」
「き、急にどうしたの成瀬君!?」
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