25 / 35
第5部 「東西学園闘争編」
しおりを挟む
25話 茜さす君
「・・・・ん・・・」
とある病院の一室にて。1人の少女が目を覚ました。
点滴を腕に付けてピンク色の病衣を着た少女はベッドからゆっくりと上体を起こし、目を少しこすった。
カラカラ・・・
「久しぶり」
病室のドアが開くと同時に1人の男性の声が聞こえた。そしてその声が耳に入った途端、少女の心拍数は上がった。
「う、瓜生さん!? 久しぶり・・です・・」
少女は頰をわずかに赤らめ、どこかソワソワした素振りを隠せない。
「これ、お見舞いだよ」
瓜生は見舞い用のフルーツバスケットを少女に手渡した。
「ありがとう、ございます」
少女は両手でフルーツバスケットを受け取りつつも、恥ずかしさからか瓜生からはプイッと目を逸らしてしまう。
「えぇと・・・」
瓜生は何から話せばいいのやらと自分のこめかみを人差し指でぽりぽりと掻いた。
「いやぁびっくりしたよ。あれだけの傷を負って生き延びれたなんて。」
瓜生は感心した様子で少女に言った。
「正確には、あの時点で” 私は死にました“。
もっと正確に言うと、『冥王』としての人格・精神と言ったものだけがこの肉体から消失しただけなんです。」
少女は瓜生とは目を合わせず、俯きながらフルーツバスケットのりんごを手に取って見つめた。
「なるほどね」
「だから今の私にかつての能力は行使出来ません。ただのいたいけな少女です。 それに、確かにあの時私は銃弾をモロに喰らいました。しかし幸い急所はギリギリ外れていて致命傷には至らなかったんです。」
「なるほどね」
少女の説明に瓜生が頷く。
「ねぇ、瓜生さん」
「ん?」
この時少女は片目に涙を浮かべていた。
「私・・なんでまだ生きているのかな・・」
ポツリ、ポツリと目から溢れた雫が少女の右手に握られたリンゴの上に滴る。
「茜ちゃん・・」
「 全く違う別人格の自分がやったこととはいえ、この手で友達を傷付けてしまった・・。この手が友達の1人を殺してしまったんだ」
ひっくひっくと肩を震わせてしゃくり上げる少女、白石茜の背中を瓜生は慰めるように優しくさすった。
「茜ちゃんは悪くなんかないさ。俺の『義弟』も言ってたろう? ” 冥王だろうが何だろうがお前はお前だ “ って。茜ちゃんは世界でたった1人の茜ちゃんなんだよ」
だが、瓜生の励ましの言葉が茜の涙腺を余計に刺激してしまう。
「う、うぅ・・うぇっ、うわぁああああん!うわぁあああああん!!」
白石茜は感情を抑えきれずに瓜生に抱きついてひたすら泣きじゃくった。
「あ、茜ちゃん。そんなに泣かなくても・・」
瓜生はやれやれと言った感じで茜の背中を引き続きさすってやった。
病室に泣き声が響くこと10分。
「もう泣き止んだ?」
「なんかごめんなさい。いきなり大泣きしてはしたない姿見せちゃって・・」
「いやいや。泣きたい時は思いっきり泣く方が体にいいんだよ。」
「そう・・ですね。あはは・・」
思う存分泣いたからか茜の顔からは何かアクのようなものが抜けたような感じがした。再びその表情には、チャームポイントでもある笑顔が戻る。
「うん、その方がいい。笑ってる茜ちゃんの方が茜ちゃんらしいよ。」
「ありがとうございます。ところで瓜生さん」
「なにかな」
「その、桐生は今元気ですか?」
自分の義弟(おとうと)であるその名前を聞いた瓜生は突如険しい顔になった。 茜は、え?と言わんばかりに首を傾げる。
「瓜生さん?」
「茜ちゃん。桐生に会いたいっていう気持ちはよく分かるけど・・・今は多分やめた方がいいかもしれない・・」
「え、どういうことですか?」
そして瓜生は苦い表情のまま茜に返した。
「最近のあいつは・・・どこか様子がおかしい」
「・・・・ん・・・」
とある病院の一室にて。1人の少女が目を覚ました。
点滴を腕に付けてピンク色の病衣を着た少女はベッドからゆっくりと上体を起こし、目を少しこすった。
カラカラ・・・
「久しぶり」
病室のドアが開くと同時に1人の男性の声が聞こえた。そしてその声が耳に入った途端、少女の心拍数は上がった。
「う、瓜生さん!? 久しぶり・・です・・」
少女は頰をわずかに赤らめ、どこかソワソワした素振りを隠せない。
「これ、お見舞いだよ」
瓜生は見舞い用のフルーツバスケットを少女に手渡した。
「ありがとう、ございます」
少女は両手でフルーツバスケットを受け取りつつも、恥ずかしさからか瓜生からはプイッと目を逸らしてしまう。
「えぇと・・・」
瓜生は何から話せばいいのやらと自分のこめかみを人差し指でぽりぽりと掻いた。
「いやぁびっくりしたよ。あれだけの傷を負って生き延びれたなんて。」
瓜生は感心した様子で少女に言った。
「正確には、あの時点で” 私は死にました“。
もっと正確に言うと、『冥王』としての人格・精神と言ったものだけがこの肉体から消失しただけなんです。」
少女は瓜生とは目を合わせず、俯きながらフルーツバスケットのりんごを手に取って見つめた。
「なるほどね」
「だから今の私にかつての能力は行使出来ません。ただのいたいけな少女です。 それに、確かにあの時私は銃弾をモロに喰らいました。しかし幸い急所はギリギリ外れていて致命傷には至らなかったんです。」
「なるほどね」
少女の説明に瓜生が頷く。
「ねぇ、瓜生さん」
「ん?」
この時少女は片目に涙を浮かべていた。
「私・・なんでまだ生きているのかな・・」
ポツリ、ポツリと目から溢れた雫が少女の右手に握られたリンゴの上に滴る。
「茜ちゃん・・」
「 全く違う別人格の自分がやったこととはいえ、この手で友達を傷付けてしまった・・。この手が友達の1人を殺してしまったんだ」
ひっくひっくと肩を震わせてしゃくり上げる少女、白石茜の背中を瓜生は慰めるように優しくさすった。
「茜ちゃんは悪くなんかないさ。俺の『義弟』も言ってたろう? ” 冥王だろうが何だろうがお前はお前だ “ って。茜ちゃんは世界でたった1人の茜ちゃんなんだよ」
だが、瓜生の励ましの言葉が茜の涙腺を余計に刺激してしまう。
「う、うぅ・・うぇっ、うわぁああああん!うわぁあああああん!!」
白石茜は感情を抑えきれずに瓜生に抱きついてひたすら泣きじゃくった。
「あ、茜ちゃん。そんなに泣かなくても・・」
瓜生はやれやれと言った感じで茜の背中を引き続きさすってやった。
病室に泣き声が響くこと10分。
「もう泣き止んだ?」
「なんかごめんなさい。いきなり大泣きしてはしたない姿見せちゃって・・」
「いやいや。泣きたい時は思いっきり泣く方が体にいいんだよ。」
「そう・・ですね。あはは・・」
思う存分泣いたからか茜の顔からは何かアクのようなものが抜けたような感じがした。再びその表情には、チャームポイントでもある笑顔が戻る。
「うん、その方がいい。笑ってる茜ちゃんの方が茜ちゃんらしいよ。」
「ありがとうございます。ところで瓜生さん」
「なにかな」
「その、桐生は今元気ですか?」
自分の義弟(おとうと)であるその名前を聞いた瓜生は突如険しい顔になった。 茜は、え?と言わんばかりに首を傾げる。
「瓜生さん?」
「茜ちゃん。桐生に会いたいっていう気持ちはよく分かるけど・・・今は多分やめた方がいいかもしれない・・」
「え、どういうことですか?」
そして瓜生は苦い表情のまま茜に返した。
「最近のあいつは・・・どこか様子がおかしい」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる