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冒険の始まり
新たな英雄の誕生
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「・・・随分と、時間が掛ったんですね」
くたくたの身体を引きずり、何とか冒険者ギルドまで辿り着き、依頼の達成を報告したカレンの耳に飛び込んできたのは、そんな声であった。
「えっ!?あぁ、うん。確かにそうかもね・・・」
散々苦労した後で浴びせかけられたそんな冷たい言葉に、カレンは思わず面食らってしまっていたが、言われてみればもっともだ。
窓の外へと目を向ければすっかり日も落ち、このギルドの中の様子ももはや仕事という雰囲気ではなく、仕事終わりの打ち上げに興じる冒険者の姿の方がメインといった空気になっている。
そんな彼らの方へと視線を向けたカレンは、思わず漏れ出してしまったお腹の鳴き声に、慌ててそこへと手をやっていた。
「あれだけ大見得を切っといて、この程度なんて・・・正直、ちょっとがっかりです。あ、これ報酬です。ここに置いときますね」
その音が聞こえてはいないかと見上げた先からは、ギルドの受付嬢であるエステルの冷たい視線が待っていた。
彼女はその可愛らしい顔には似つかわしくないほどの不機嫌な表情を浮かべており、口にした通りカレンの行動にがっかりしているようだった。
確かにカレンはトージローの凄まじい実力を豪語しており、それをごり押ししては依頼を掠め取っていったのだ。
それがこんな駆け出し用の依頼すら満足にこなせないようでは、期待外れもいい所だろう。
「えっと、それでね。もう一つ報告したい事があるんだけど・・・」
「何ですか?私、本当はもう勤務時間終わってるんです。でも任せた仕事は最後まで面倒見ろって言われて、こうして残ってるんですよ?そんな私を、まだ拘束するって言うんですか!?」
「えっ!?いや、でも・・・」
ぞんざいな手つきで放り出された報酬を受け取ったカレンは、恐る恐るといった様子でまだ報告することがあるのだと語り掛ける。
そんなカレンの姿に、エステルは明らかに不機嫌な表情を作ると、そっぽを向いてはその二つに括った赤い髪の先端をクルクルと弄り始めている。
そして再びカレンへと向き直ったエステルは、カウンターへと激しく手の平を叩きつけると、これ以上時間を取らせるなと叫んでいた。
「おっと、それについちゃ俺から話させてもらうぜ?いいだろ、嬢ちゃん?」
「はぁ・・・別に構いませんけど」
残業に苛立っている、社会人の迫力は凄まじい。
その迫力に気圧された思わず言葉を詰まらせていたカレンの背後から、見上げるような大男が割り込んできていた。
その大男、グルドはカレンに代わってその件について話をしようと立候補している。
その提案に、エステルに睨みつけられ若干気まずい思いを抱えていたカレンは、あっさりとその場を譲っていた。
「はぁ?何で、グルドさんが出てくるんです?大体、危ないから様子を見に行くって話だったじゃないですか?それなのに、こんな時間まで掛かって・・・あっ!やっぱりそれは口実で、本当はやり返しに行ったんじゃ・・・」
「まぁまぁ、その話はまた後にしてくれよエステル。今はそんな事より先に話さなきゃならねぇことがあるんだからよぉ!」
「・・・何ですか、その話って?」
急に割り込んできたグルドの姿に、エステルは疑いの視線を向けている。
そもそも彼らは、危険な状態にあるカレン達の様子に見に行くといって、この場を後にした筈なのだ。
それがどうして、こんな時間にまで掛かってしまったのかと、エステルは新たな疑問を口にしている。
その話はグルドにとっても痛い所なのか、彼はそれを強引に誤魔化すと、それよりも大事な話があると強調していた。
「聞いて驚くなよ?この嬢ちゃん達はなぁ・・・何とあのヒーロー級冒険者、デリック・キングスガーターが倒すべき魔物を討伐しちまったんだ!!」
「・・・・・・はぁ?」
グルドは一度声を潜めて勿体づけると、今度は身体を仰け反らせ隣に並んだカレンとトージローを示して叫ぶ。
彼らがヒーロー級冒険者が出張ってくるような、強大な魔物を討伐したのだと。
「いや、そんな訳ないでしょ?何言ってんの、グルドさん?ついに頭おかしくなったんじゃない?」
「嘘じゃねぇって!!俺ぁ、この目でしっかりと見たんだ!あのオーガトロルが、葬り去られる姿を!!!」
「オーガトロル!?あー、完全に化けの皮が剥がれちゃいましたね!!そんな強力な魔物、偶然でもこんな子達が倒せる訳じゃないですか!!正体不明の魔物って話だったから、もしかしてって思いましたけど・・・流石にそれは、ないない!」
まるで自分の事のようにカレン達の事を誇るグルドの言葉に、エステルは目を細めると疑いの視線を向けている。
そしてそんな事は有り得ないと否定するエステルに、グルドはさらに言葉を重ねるが、それはさらに彼女の疑いを強める結果となっていた。
「それが、まんざら嘘でもないんだエステル。何せ、俺も見たからねそれを」
「タックスさん・・・いやいや、ないですって!!オーガトロルって言ったら、遭遇情報が少ないってだけで特級の魔物じゃないですか!?出没したら、それこそヒーロー級冒険者の出動が必要になるような・・・・それを新人冒険者が倒した?有り得ないですって!!それじゃまるで、御伽噺の中の勇者様じゃないですか!?」
グルドの言動にさらに疑いを強めたエステルに、彼の後ろから一人の人影が声を掛けてくる。
それはグルドのパーティのメンバーである、エクスプローラー級冒険者のタックスのものであった。
粗暴でいい加減なグルドの言葉ならばともかく、普段温厚で冷静なタックスの言葉は説得力が違う。
そんなタックスの言葉に若干納得しそうになっていたエステルはしかし、やはり有り得ないとそれを全力で否定する。
新人冒険者が初依頼でいきなり、高名な冒険者も手こずるような魔物を討伐してしまう。
そんなのは、御伽噺の勇者物語でしか有り得ないと彼女は叫んでいた。
「―――俺も保証するよエステル、彼らがあの魔物を・・・オーガトロルを討伐したんだ」
そしてそんな彼女の下に、さらにもう一人カレン達の功績を保証する者が現れる。
それは身の丈ほどもある大剣を担いだ、眼帯の男であった。
「デリック・キングスガーター・・・」
それはヒーロー級冒険者、七位のデリック・キングスガーターであった。
「デリックさん・・・そんな、じゃあ本当に?」
「あぁ、間違いない。俺は決着がついた後に現場についたから、どういう戦いがあったかは知らねぇが・・・こいつらがオーガトロルを倒したのは間違いない。そう・・・」
元々その依頼を受けた冒険者であり、圧倒的な実力を有するヒーロー級冒険者であるデリックの言葉は重い。
その言葉にエステルは信じられないという表情をすると、ゴクリと唾を飲み込み彼へと確認する。
それに軽く頷いたデリックは、つかつかとカレン達の下へと近づいていく。
「こいつがオーガトロルを倒した、新たな英雄様さ」
そうしてカレン達の下にまでやってきたデリックは、ギルドに併設された酒場で騒ぐ冒険者を羨ましそうに眺めているトージローを素通りし、彼を必死に止めようとしているカレンの肩へと手を掛ける。
そして周りへと紹介するように、彼女の姿を示していた。
新たな英雄だと。
「・・・え?」
そんなデリックの言葉に、カレンはポカンとした様子で彼のことを見上げていた。
くたくたの身体を引きずり、何とか冒険者ギルドまで辿り着き、依頼の達成を報告したカレンの耳に飛び込んできたのは、そんな声であった。
「えっ!?あぁ、うん。確かにそうかもね・・・」
散々苦労した後で浴びせかけられたそんな冷たい言葉に、カレンは思わず面食らってしまっていたが、言われてみればもっともだ。
窓の外へと目を向ければすっかり日も落ち、このギルドの中の様子ももはや仕事という雰囲気ではなく、仕事終わりの打ち上げに興じる冒険者の姿の方がメインといった空気になっている。
そんな彼らの方へと視線を向けたカレンは、思わず漏れ出してしまったお腹の鳴き声に、慌ててそこへと手をやっていた。
「あれだけ大見得を切っといて、この程度なんて・・・正直、ちょっとがっかりです。あ、これ報酬です。ここに置いときますね」
その音が聞こえてはいないかと見上げた先からは、ギルドの受付嬢であるエステルの冷たい視線が待っていた。
彼女はその可愛らしい顔には似つかわしくないほどの不機嫌な表情を浮かべており、口にした通りカレンの行動にがっかりしているようだった。
確かにカレンはトージローの凄まじい実力を豪語しており、それをごり押ししては依頼を掠め取っていったのだ。
それがこんな駆け出し用の依頼すら満足にこなせないようでは、期待外れもいい所だろう。
「えっと、それでね。もう一つ報告したい事があるんだけど・・・」
「何ですか?私、本当はもう勤務時間終わってるんです。でも任せた仕事は最後まで面倒見ろって言われて、こうして残ってるんですよ?そんな私を、まだ拘束するって言うんですか!?」
「えっ!?いや、でも・・・」
ぞんざいな手つきで放り出された報酬を受け取ったカレンは、恐る恐るといった様子でまだ報告することがあるのだと語り掛ける。
そんなカレンの姿に、エステルは明らかに不機嫌な表情を作ると、そっぽを向いてはその二つに括った赤い髪の先端をクルクルと弄り始めている。
そして再びカレンへと向き直ったエステルは、カウンターへと激しく手の平を叩きつけると、これ以上時間を取らせるなと叫んでいた。
「おっと、それについちゃ俺から話させてもらうぜ?いいだろ、嬢ちゃん?」
「はぁ・・・別に構いませんけど」
残業に苛立っている、社会人の迫力は凄まじい。
その迫力に気圧された思わず言葉を詰まらせていたカレンの背後から、見上げるような大男が割り込んできていた。
その大男、グルドはカレンに代わってその件について話をしようと立候補している。
その提案に、エステルに睨みつけられ若干気まずい思いを抱えていたカレンは、あっさりとその場を譲っていた。
「はぁ?何で、グルドさんが出てくるんです?大体、危ないから様子を見に行くって話だったじゃないですか?それなのに、こんな時間まで掛かって・・・あっ!やっぱりそれは口実で、本当はやり返しに行ったんじゃ・・・」
「まぁまぁ、その話はまた後にしてくれよエステル。今はそんな事より先に話さなきゃならねぇことがあるんだからよぉ!」
「・・・何ですか、その話って?」
急に割り込んできたグルドの姿に、エステルは疑いの視線を向けている。
そもそも彼らは、危険な状態にあるカレン達の様子に見に行くといって、この場を後にした筈なのだ。
それがどうして、こんな時間にまで掛かってしまったのかと、エステルは新たな疑問を口にしている。
その話はグルドにとっても痛い所なのか、彼はそれを強引に誤魔化すと、それよりも大事な話があると強調していた。
「聞いて驚くなよ?この嬢ちゃん達はなぁ・・・何とあのヒーロー級冒険者、デリック・キングスガーターが倒すべき魔物を討伐しちまったんだ!!」
「・・・・・・はぁ?」
グルドは一度声を潜めて勿体づけると、今度は身体を仰け反らせ隣に並んだカレンとトージローを示して叫ぶ。
彼らがヒーロー級冒険者が出張ってくるような、強大な魔物を討伐したのだと。
「いや、そんな訳ないでしょ?何言ってんの、グルドさん?ついに頭おかしくなったんじゃない?」
「嘘じゃねぇって!!俺ぁ、この目でしっかりと見たんだ!あのオーガトロルが、葬り去られる姿を!!!」
「オーガトロル!?あー、完全に化けの皮が剥がれちゃいましたね!!そんな強力な魔物、偶然でもこんな子達が倒せる訳じゃないですか!!正体不明の魔物って話だったから、もしかしてって思いましたけど・・・流石にそれは、ないない!」
まるで自分の事のようにカレン達の事を誇るグルドの言葉に、エステルは目を細めると疑いの視線を向けている。
そしてそんな事は有り得ないと否定するエステルに、グルドはさらに言葉を重ねるが、それはさらに彼女の疑いを強める結果となっていた。
「それが、まんざら嘘でもないんだエステル。何せ、俺も見たからねそれを」
「タックスさん・・・いやいや、ないですって!!オーガトロルって言ったら、遭遇情報が少ないってだけで特級の魔物じゃないですか!?出没したら、それこそヒーロー級冒険者の出動が必要になるような・・・・それを新人冒険者が倒した?有り得ないですって!!それじゃまるで、御伽噺の中の勇者様じゃないですか!?」
グルドの言動にさらに疑いを強めたエステルに、彼の後ろから一人の人影が声を掛けてくる。
それはグルドのパーティのメンバーである、エクスプローラー級冒険者のタックスのものであった。
粗暴でいい加減なグルドの言葉ならばともかく、普段温厚で冷静なタックスの言葉は説得力が違う。
そんなタックスの言葉に若干納得しそうになっていたエステルはしかし、やはり有り得ないとそれを全力で否定する。
新人冒険者が初依頼でいきなり、高名な冒険者も手こずるような魔物を討伐してしまう。
そんなのは、御伽噺の勇者物語でしか有り得ないと彼女は叫んでいた。
「―――俺も保証するよエステル、彼らがあの魔物を・・・オーガトロルを討伐したんだ」
そしてそんな彼女の下に、さらにもう一人カレン達の功績を保証する者が現れる。
それは身の丈ほどもある大剣を担いだ、眼帯の男であった。
「デリック・キングスガーター・・・」
それはヒーロー級冒険者、七位のデリック・キングスガーターであった。
「デリックさん・・・そんな、じゃあ本当に?」
「あぁ、間違いない。俺は決着がついた後に現場についたから、どういう戦いがあったかは知らねぇが・・・こいつらがオーガトロルを倒したのは間違いない。そう・・・」
元々その依頼を受けた冒険者であり、圧倒的な実力を有するヒーロー級冒険者であるデリックの言葉は重い。
その言葉にエステルは信じられないという表情をすると、ゴクリと唾を飲み込み彼へと確認する。
それに軽く頷いたデリックは、つかつかとカレン達の下へと近づいていく。
「こいつがオーガトロルを倒した、新たな英雄様さ」
そうしてカレン達の下にまでやってきたデリックは、ギルドに併設された酒場で騒ぐ冒険者を羨ましそうに眺めているトージローを素通りし、彼を必死に止めようとしているカレンの肩へと手を掛ける。
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