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トージロー
初めての光景 1
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「は、はぁ!?ちょっと、そんなの聞いてないわよ!?」
完全に脱力していたカレンが意識を取り戻すまで、一体どれくらいの時間が掛っただろう。
その間にドラクロワはすっかりトージローの目前にまで迫り、彼に呼び出されたヴァーデと呼ばれた少年もこちらに迫ろうとしていた。
「おや、聞いていなかったのかね?私は眷属とティータイムを楽しんでいた所をあの男に踏み込まれた言ったのだよ?その眷属が彼、ヴァーデだ。その意味、君に分かるかね?娘よ」
今、目の前に迫ろうとしているヴァーデと呼ばれた少年は、明らかにただの少年ではない。
そんな少年の存在など聞いていないと抗議の声を上げるカレンに、ドラクロワは肩を竦めると私の話を聞いていなかったのかと、意外そうな表情をしていた。
「な、何よ?」
「彼は強いという事だ。用心したまえ、油断するとあっという間にやられてしまうぞ?」
「嘘でしょ、そんな訳・・・ごくり」
目の前の少年が自らの側近だと語るドラクロワに、カレンはその事実を否定したいと首を横に振っている。
しかしどんなにそれを否定しようとしても、目の前のその少年の姿は、どう見ても只者のそれでは有り得なかった。
「ご紹介に預かりました、ヴァーデと申します。お相手の方は・・・カレン様、お一人でよろしかったでしょうか?」
その迫力に思わず生唾を飲み込んだカレンに、ヴァーデと呼ばれた少年は優雅にお辞儀をして見せている。
その余裕たっぷりな態度も、彼を強者であると証明しているようだった。
「・・・一人、なわけねぇだろ!!」
「おや、これは元気のいい少年ですね。これもお仲間でしょうか、カレン様?」
戦いの相手がカレン一人かと確認し、丁寧にお辞儀してくるヴァーデの姿は確かに隙だらけだろう。
腕の立つ冒険者であるならば、当然その隙を狙って仕掛ける筈だ。
そして実際にそれは、実行に移される。
しかし問題は、それを実行に移した者がまだ年端もいかない少年であった事だ。
「ちょ!?ちょっとルイス!!?あんた、何をやって―――」
「今だ、メイ!!」
それを実行したのは、周囲に倒れている冒険者の剣を拾ったルイスであった。
それに驚き声を上げるカレンに、彼はそんなことお構いなしと合図を送ると、ヴァーデの下から転がり落ちるように飛び退いていた。
「・・・了解」
その合図に答えたのは、またしても年端もいかない少女であった。
彼女もまた倒れた冒険者のものを拾ったのか金属製の杖を掲げており、その先からは大きな炎を燃え上がらせていた。
「・・・は?ちょ、ちょっと待ってメイ!?貴方、いつの間にそんな事を―――」
それは、まだカレンが完全には習得していない即席魔法の姿に見える。
それを使いこなしているように見えるメイの姿にカレンは呆気に取られると、信じられないという表情でそれを否定しようとしていた。
「・・・メイファイヤー」
しかし無情にも、そんな彼女の目の前でメイの気の抜けた声が響く。
メイはその掛け声と共にゆっくりと杖を振り下ろすと、その先端から燃え盛る火球を放つ。
それは完全に、カレンが夢見た即席魔法の姿であった。
「おっと、危ない危ない。これをまともに食らっては危なかったですね・・・お嬢さん、どこでこのような魔法を?」
呆気に取られた表情のままあんぐりと口を開けているカレンの前で、メイが放った魔法はヴァーデが立っていた場所に着弾し、凄まじい火柱を燃え上がらせている。
そしてヴァーデは、それを軽々と躱してはまともに直撃したら危なかったと肩を竦めて見せていた。
「・・・師匠との修行の成果」
そんな彼の涼しい表情にムッとした態度を見せていたメイも、それをどこで覚えたのかと尋ねられれば、トージローとの修行だと胸を張って答えていた。
「はぁ!?師匠との修行って、あのトージローとやってた滅茶苦茶な奴の事!?あんなのでそれが出来るようになるわけ・・・!!」
「出来た、これは事実。師匠は凄い、むふー」
メイが口にする師匠との修行とは、あのトージローとやっていた意味の分からない行為の事だ。
そんな事で、こんな凄い魔法が習得出来るわけがないと叫ぶカレンに、メイは胸を張っては今目の前で起きた出来事を示していた。
彼女が誇らしそうな表情で漏らした鼻息に、カレンの前髪が揺れる。
「ちっ、どんな身体してんだよ・・・一発で剣が駄目になっちまった」
図ったタイミングに、一撃必殺を狙った攻撃を簡単に躱されてしまったルイスは、悔しそうに自らが手にした得物へと目をやっていた。
そこにはヴァーデの固すぎる身体にひん曲がり、もはや用の足さなくなった剣の姿があった。
「ルイスさん、これを使ってください!!」
「おぅ!シア姉、サンキュー!!」
そんな彼の姿に、どこかから声が掛かる。
そして飛んできた新しい剣を受け取り声を上げるルイスの視線の先には、彼を応援するように手を振っているレティシアの姿があった。
「レティシアまで・・・一体どうなってんのよ?」
ルイスに新しい剣を投げて寄越し、その彼を応援しているレティシアの姿は、完全に彼の実力を信じているものであった。
それを信じられないと頭を抱えるカレンに、鋭い金属音が響く。
「・・・そんなものでは、私を傷つけることは出来ませんよ?」
「そんなん分かってんよ!メイ!!」
レティシアから貰った剣で早速ヴァーデへと切りかかったルイスは、またしても彼に易々と受け止められている。
しかしそんな事は始めから計算ずくだと口にする彼は、メイへと合図を送る。
「・・・連発は、無理」
しかしそんな彼に返ってきたのは、静かに首を横に振るメイの姿だった。
「そーかよ!!」
「くっ!?やりますね!」
思惑が外れたそのメイの姿にもルイスは落ち込むことなく、それはそれでと剣を振るう。
それは鋭く、ヴァーデのその整った顔へと刃を迫らせていた。
「はぁ?嘘でしょ、ルイスまでこんな・・・あの意味の分かんない修業に、そんな効果があったっての?」
顔へと迫った刃は、ヴァーデが何とか手を掲げて防いでいる。
それは例え防がなくとも、大したダメージにはならなかっただろう。
しかしその二人の姿に、ルイスが彼と戦えているという事実は間違いなかった。
その事実に、カレンは信じられないと再び目を丸くしてしまっていた。
「へぇ、やるじゃねぇかあの坊主・・・おい、俺も混ぜてくれよ!」
そんなルイスの姿に、触発される男がここにもまた一人。
レティシアの周りで、今にも飛び出してしまいそうな彼女の事を押さえていたグルドは、ルイスの戦いっぷりに腕を組んで称賛すると、自分もそれに加わろうと一歩踏み出していた。
「おい、グルド!何言ってんだ!?俺達の仕事は、このお嬢ちゃんを守る事で―――」
「おいおい・・・あんな坊主が命張ってんのに、俺達ゃここで高みの見物か?そんなダサい真似してたらよぉ、このバッジが泣いちまうだろぉ!?」
自らの得物である斧を担いで、戦いの場所へと向かおうとしているグルドを、自分達の仕事は別にあると彼の仲間であるタックスが必死な表情で止めている。
そんな彼に対して、グルドは自らの胸元に輝くエクスプローラー級冒険者の証であるコンパスのバッジを示しては、ここで退いてはそれを誇れないと豪語していた。
「・・・そうか、そうだな。グルド、俺達も行くよ」
「へ、最初からそうしろってんだ・・・後ろは任せたぞ」
「あぁ、任せてくれ。それじゃ悪いけど、ここは任せたよエステル」
グルドの一見無茶苦茶に思える主張もタックスの心には響いたのか、彼はグルドを止める手を引くと、逆に彼についていくと前へと進んでいた。
それに遅いんだよと鼻を擦ったグルドはしかし、タックスに背中を向けると完全にそこを彼へと任せていた。
「は?ちょ、ちょっと待ってよタックスさん!?私達はお手伝いだけでいいって聞いて、ここに・・・あぁ、もう行っちゃった。あー、もう!!どうすんのよこれ!?領主の娘に怪我でもさせたら責任問題に・・・」
「しょうがないじゃないですか。『楽して領主の娘とコネを作れるチャーーーンス!』ってこの仕事に飛びついたの、先輩なんですから」
「うるさい!!何が、楽してよ!こんなの、全然楽じゃないじゃない!!」
ヴァーデとの戦いに向かうタックスは、彼の本来の仕事であるレティシアの護衛をその場についてきていたギルドの職員であるエステルに任せていた。
それにそんな事は聞いていないと慌てるエステルに、彼女と一緒にこの場についてきていたピーターは自業自得だと冷めた様子を見せている。
それはエステルがレティシアとのコネを狙ってこの仕事を引き受けたからであったが、それを指摘してくるピーターに、彼女は不満をぶつけるように怒鳴りつけるばかりであった。
完全に脱力していたカレンが意識を取り戻すまで、一体どれくらいの時間が掛っただろう。
その間にドラクロワはすっかりトージローの目前にまで迫り、彼に呼び出されたヴァーデと呼ばれた少年もこちらに迫ろうとしていた。
「おや、聞いていなかったのかね?私は眷属とティータイムを楽しんでいた所をあの男に踏み込まれた言ったのだよ?その眷属が彼、ヴァーデだ。その意味、君に分かるかね?娘よ」
今、目の前に迫ろうとしているヴァーデと呼ばれた少年は、明らかにただの少年ではない。
そんな少年の存在など聞いていないと抗議の声を上げるカレンに、ドラクロワは肩を竦めると私の話を聞いていなかったのかと、意外そうな表情をしていた。
「な、何よ?」
「彼は強いという事だ。用心したまえ、油断するとあっという間にやられてしまうぞ?」
「嘘でしょ、そんな訳・・・ごくり」
目の前の少年が自らの側近だと語るドラクロワに、カレンはその事実を否定したいと首を横に振っている。
しかしどんなにそれを否定しようとしても、目の前のその少年の姿は、どう見ても只者のそれでは有り得なかった。
「ご紹介に預かりました、ヴァーデと申します。お相手の方は・・・カレン様、お一人でよろしかったでしょうか?」
その迫力に思わず生唾を飲み込んだカレンに、ヴァーデと呼ばれた少年は優雅にお辞儀をして見せている。
その余裕たっぷりな態度も、彼を強者であると証明しているようだった。
「・・・一人、なわけねぇだろ!!」
「おや、これは元気のいい少年ですね。これもお仲間でしょうか、カレン様?」
戦いの相手がカレン一人かと確認し、丁寧にお辞儀してくるヴァーデの姿は確かに隙だらけだろう。
腕の立つ冒険者であるならば、当然その隙を狙って仕掛ける筈だ。
そして実際にそれは、実行に移される。
しかし問題は、それを実行に移した者がまだ年端もいかない少年であった事だ。
「ちょ!?ちょっとルイス!!?あんた、何をやって―――」
「今だ、メイ!!」
それを実行したのは、周囲に倒れている冒険者の剣を拾ったルイスであった。
それに驚き声を上げるカレンに、彼はそんなことお構いなしと合図を送ると、ヴァーデの下から転がり落ちるように飛び退いていた。
「・・・了解」
その合図に答えたのは、またしても年端もいかない少女であった。
彼女もまた倒れた冒険者のものを拾ったのか金属製の杖を掲げており、その先からは大きな炎を燃え上がらせていた。
「・・・は?ちょ、ちょっと待ってメイ!?貴方、いつの間にそんな事を―――」
それは、まだカレンが完全には習得していない即席魔法の姿に見える。
それを使いこなしているように見えるメイの姿にカレンは呆気に取られると、信じられないという表情でそれを否定しようとしていた。
「・・・メイファイヤー」
しかし無情にも、そんな彼女の目の前でメイの気の抜けた声が響く。
メイはその掛け声と共にゆっくりと杖を振り下ろすと、その先端から燃え盛る火球を放つ。
それは完全に、カレンが夢見た即席魔法の姿であった。
「おっと、危ない危ない。これをまともに食らっては危なかったですね・・・お嬢さん、どこでこのような魔法を?」
呆気に取られた表情のままあんぐりと口を開けているカレンの前で、メイが放った魔法はヴァーデが立っていた場所に着弾し、凄まじい火柱を燃え上がらせている。
そしてヴァーデは、それを軽々と躱してはまともに直撃したら危なかったと肩を竦めて見せていた。
「・・・師匠との修行の成果」
そんな彼の涼しい表情にムッとした態度を見せていたメイも、それをどこで覚えたのかと尋ねられれば、トージローとの修行だと胸を張って答えていた。
「はぁ!?師匠との修行って、あのトージローとやってた滅茶苦茶な奴の事!?あんなのでそれが出来るようになるわけ・・・!!」
「出来た、これは事実。師匠は凄い、むふー」
メイが口にする師匠との修行とは、あのトージローとやっていた意味の分からない行為の事だ。
そんな事で、こんな凄い魔法が習得出来るわけがないと叫ぶカレンに、メイは胸を張っては今目の前で起きた出来事を示していた。
彼女が誇らしそうな表情で漏らした鼻息に、カレンの前髪が揺れる。
「ちっ、どんな身体してんだよ・・・一発で剣が駄目になっちまった」
図ったタイミングに、一撃必殺を狙った攻撃を簡単に躱されてしまったルイスは、悔しそうに自らが手にした得物へと目をやっていた。
そこにはヴァーデの固すぎる身体にひん曲がり、もはや用の足さなくなった剣の姿があった。
「ルイスさん、これを使ってください!!」
「おぅ!シア姉、サンキュー!!」
そんな彼の姿に、どこかから声が掛かる。
そして飛んできた新しい剣を受け取り声を上げるルイスの視線の先には、彼を応援するように手を振っているレティシアの姿があった。
「レティシアまで・・・一体どうなってんのよ?」
ルイスに新しい剣を投げて寄越し、その彼を応援しているレティシアの姿は、完全に彼の実力を信じているものであった。
それを信じられないと頭を抱えるカレンに、鋭い金属音が響く。
「・・・そんなものでは、私を傷つけることは出来ませんよ?」
「そんなん分かってんよ!メイ!!」
レティシアから貰った剣で早速ヴァーデへと切りかかったルイスは、またしても彼に易々と受け止められている。
しかしそんな事は始めから計算ずくだと口にする彼は、メイへと合図を送る。
「・・・連発は、無理」
しかしそんな彼に返ってきたのは、静かに首を横に振るメイの姿だった。
「そーかよ!!」
「くっ!?やりますね!」
思惑が外れたそのメイの姿にもルイスは落ち込むことなく、それはそれでと剣を振るう。
それは鋭く、ヴァーデのその整った顔へと刃を迫らせていた。
「はぁ?嘘でしょ、ルイスまでこんな・・・あの意味の分かんない修業に、そんな効果があったっての?」
顔へと迫った刃は、ヴァーデが何とか手を掲げて防いでいる。
それは例え防がなくとも、大したダメージにはならなかっただろう。
しかしその二人の姿に、ルイスが彼と戦えているという事実は間違いなかった。
その事実に、カレンは信じられないと再び目を丸くしてしまっていた。
「へぇ、やるじゃねぇかあの坊主・・・おい、俺も混ぜてくれよ!」
そんなルイスの姿に、触発される男がここにもまた一人。
レティシアの周りで、今にも飛び出してしまいそうな彼女の事を押さえていたグルドは、ルイスの戦いっぷりに腕を組んで称賛すると、自分もそれに加わろうと一歩踏み出していた。
「おい、グルド!何言ってんだ!?俺達の仕事は、このお嬢ちゃんを守る事で―――」
「おいおい・・・あんな坊主が命張ってんのに、俺達ゃここで高みの見物か?そんなダサい真似してたらよぉ、このバッジが泣いちまうだろぉ!?」
自らの得物である斧を担いで、戦いの場所へと向かおうとしているグルドを、自分達の仕事は別にあると彼の仲間であるタックスが必死な表情で止めている。
そんな彼に対して、グルドは自らの胸元に輝くエクスプローラー級冒険者の証であるコンパスのバッジを示しては、ここで退いてはそれを誇れないと豪語していた。
「・・・そうか、そうだな。グルド、俺達も行くよ」
「へ、最初からそうしろってんだ・・・後ろは任せたぞ」
「あぁ、任せてくれ。それじゃ悪いけど、ここは任せたよエステル」
グルドの一見無茶苦茶に思える主張もタックスの心には響いたのか、彼はグルドを止める手を引くと、逆に彼についていくと前へと進んでいた。
それに遅いんだよと鼻を擦ったグルドはしかし、タックスに背中を向けると完全にそこを彼へと任せていた。
「は?ちょ、ちょっと待ってよタックスさん!?私達はお手伝いだけでいいって聞いて、ここに・・・あぁ、もう行っちゃった。あー、もう!!どうすんのよこれ!?領主の娘に怪我でもさせたら責任問題に・・・」
「しょうがないじゃないですか。『楽して領主の娘とコネを作れるチャーーーンス!』ってこの仕事に飛びついたの、先輩なんですから」
「うるさい!!何が、楽してよ!こんなの、全然楽じゃないじゃない!!」
ヴァーデとの戦いに向かうタックスは、彼の本来の仕事であるレティシアの護衛をその場についてきていたギルドの職員であるエステルに任せていた。
それにそんな事は聞いていないと慌てるエステルに、彼女と一緒にこの場についてきていたピーターは自業自得だと冷めた様子を見せている。
それはエステルがレティシアとのコネを狙ってこの仕事を引き受けたからであったが、それを指摘してくるピーターに、彼女は不満をぶつけるように怒鳴りつけるばかりであった。
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