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育成の始まり
ゴブリン遭遇戦
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金属を殴打する音は、低く鈍い。
向かい合う小柄な人影は、二つの集団に分かれている。
色とりどりの服装と髪の色をした人間達と、粗末な衣服を見に纏い茶褐色の肌を露出させたゴブリン達だ。
彼の体色は森の木々の間にあっては保護色ともなるが、纏まって対峙する状況にそれを心配する必要はないだろう。
「アンナ!大丈夫!?」
「任せて!クラリッサは魔法を!!」
ゴブリンの棍棒の一撃を受け止めたアンナは、その衝撃を地面を踏みしめて耐えている。
彼女は片手で握ったメイスで反撃を試みるが、耐えるのに必死だったため機会を逸してしまう。
心配の声を上げたクラリッサにアンナは、力強く自分の役割に専念するように答えていた。
『こいつら、強いぞ!』
『小さいのに、なんで!?』
自分達とそう体格の変わらない少女達の姿に、狩りの対象だと襲い掛かってきたゴブリン達は、思惑とは違う彼女らの実力に戸惑いの声を上げる。
「彼らはなんと言っていますか、クロード様!?私達を追ってきたのですか!?」
「いや、違うと思う!たまたま遭遇して、襲ってきた感じだ!」
青い顔をしたクラリッサが、ゴブリン達の会話の内容をクロードへと尋ねる。
追っ手から逃れて数日ほどしか経ってない状況に、彼らの姿はそれを想起させる、彼女の不安も当然の事だった。
しかし遭遇してからこれまでの会話を踏まえると、彼らは野良のゴブリン達で間違いないだろう。
クロードの憶測にクラリッサは安堵の表情を見せる、それは一瞬の事で、すぐに彼女はゴブリン達へと厳しい視線を向けていた。
「そうですか・・・しかし彼らが追っ手と合流しないとも限りません。確実に仕留めないと」
「・・・分かった」
クラリッサが冷たく言い放った懸念は、目の前のゴブリン達の殲滅を示していた。
逃げ出した彼らは今だに不安定な状態だ、それを脅かす存在に厳しく当たる必要があるのは当然の事だった。
彼女の冷たい口調にクロードは静かに唾を呑み込むだけだったが、彼女の傍に控えていたイダは小さく了承を返すと腕を振るう。
『ぎゃあ!!?』
『な、なんだ!?』
「・・・当たった」
投げつけたナイフは、ゴブリンの顔へと突き刺さる。
その攻撃にゴブリン達も驚きの声を上げるが、当の本人もびっくりしたように目を丸くしていた。
「私が前に出る!その間にっ!!」
「・・・了解」
顔へと突き刺さったナイフは、重要な部分を外れており致命傷にはならないだろう。
しかしそのゴブリンは戦意を失っているように見え、無事なゴブリン達も動揺していた。
その隙にアンナが勇気を振り絞って前へと進み出る、彼女はイダも追従するように声を掛けた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
構えた盾を肩で押すようにして突撃していくアンナは、振り絞る勇気に叫び声を上げる。
動揺していたゴブリン達は、その突進に対処する事が出来ずに弾き飛ばされてしまう。
そのほとんどが体勢を崩した程度だったが、彼らがそれを立て直す事はなかった。
「・・・そこ」
アンナの後ろに隠れていたイダが、地面に倒れた彼らの喉や急所を狙ってナイフを突き出していく。
両利きの彼女はその両手に構えたナイフで、左右に弾き飛ばされたゴブリン達を次々に仕留めていった。
『まずい、このままじゃ・・・』
『あいつだ、あいつを仕留めろ!!』
前だけを見て突進していったアンナは、ゴブリン達の集団を突き抜ける。
彼女に突き飛ばされたゴブリンは多かったが全てではない、イダのナイフもそれらを全て仕留めたわけではなかった。
彼らは態勢を立て直すと、脅威となるイダへと狙いを定める。
全力での突進を終えたアンナはまだ肩で息をしている、囲まれつつある状況にイダは背中に括りつけた大盾へと手を伸ばしていた。
「っ!?まずい!」
「・・・絶体絶命」
徐々に迫り来るゴブリン達に、後退していく二人は背中を木にぶつけてしまう。
追い詰められた彼女らに、ゴブリンが襲い掛かる。
その時、どこかから声が掛かった。
「アンナ、イダ!!避けなさい!!」
杖を構えたクラリッサは、その周りに拳大の石塊を漂わせている。
彼女が上げた鋭い声に、幾匹かのゴブリンが後ろへと注意を向けた。
「間に合わない!?イダ、後ろに!」
「・・・任せた」
クラリッサが魔法を発動しようとしている事は、明らかだった。
囲まれている状況に避けるほどのスペースはなく、逃げるには時間があまりに足りない。
アンナはイダへと声を掛けると、盾を地面へと突き立て姿勢を低くした。
彼女は魔法を受け止める覚悟を決めたのだ、イダはその背中へとそっと手を添える。
「リーンフォース・アーマー」
「ストーン・バレット!!」
腰に括りつけた短杖へと手を添えたアンナが、自らに強化魔法を掛けるのとクラリッサが魔法が放つのは、ほぼ同時だった。
クラリッサの周囲から放たれた石のつぶては、ゴブリン達の頭部を射抜きながらアンナへと迫る。
慌てて両手を盾へと添えたアンナに、その腰を支えるイダは両足へと力を込めた。
「ぐっ!ぐぅ!!このままじゃ・・・!!」
「・・・大丈夫」
盾へとぶつかる衝撃に必死に歯を食いしばって耐えているアンナは、浮いてくる身体に弱音を吐く。
彼女はどうにか身体を地面に留めるのに必死で、前の様子を窺う暇はなかった。
イダは諦めを口にしようとしていた彼女の背中を優しく撫でると、もう終わったと声を掛けていた。
『魔法だ、魔法!!』
『あいつだ、あいつが使った!!』
クラリッサが放った魔法は何匹かのゴブリンの戦闘能力を奪うのに成功したが、未熟な彼女にまだそれなりの数が戦う力を有していた。
彼らは一様に彼女へと警戒の声を上げる、魔法を使う者への脅威はどんな種族も同じだった。
「クラリッサ!!?」
一斉にクラリッサへと襲い掛かっていくゴブリン達に、アンナの悲鳴が響く。
慌ててそちらに駆け寄って間に合うわけもない、小柄なクラリッサの姿はゴブリンの集団に呑みこまれて、見えなくなってしまっていた。
「・・・舐めないでもらえる?」
『こ、こいつ、強いぞ!?』
『なんで!?魔法使いなのに、なんで!!?』
片手にナイフを構えたクラリッサが、喉を貫いたゴブリンからそれを引き抜きながら、冷たく言い放つ。
魔法使いは接近されれば弱いという確信を持って突っ込んでいたゴブリン達は、予想だにしない反撃に面食らい、足を止めてしまう。
「・・・今の内に」
「え、えぇ・・・クラリッサ、今行くから」
動揺したゴブリン達が後ろへと引き下がった隙間に、クラリッサの姿を見つけたアンナは安堵の息を吐く。
イダは彼女へと注意が向いている内に、後ろから襲い掛かろうとアンナの服を引いた。
彼女の冷静な判断に若干気後れしたアンナも、気合の込めた声を呟くと駆け出していく。
「お、俺はここにいればいいのか!?」
「はい、クロード様はそこで見守っていてください!・・・いいタイミング!!」
クラリッサが背中を預けている木の裏側から声を上げたクロードに、彼女は前方から注意を逸らさずに答えていた。
彼女の言葉に安堵の表情を作った彼のすぐ傍に、ナイフが突き刺さる。
それは、イダが放ったナイフだ。
ゴブリン達は後方から突如襲い掛かってきた彼女達に対応できていない、クラリッサはそれに合わせて前へと進み出る。
「ひぃぃぃ!!?」
『ぎゃぁぁ!!?』
ゴブリン達の断末魔の悲鳴が、クロードが思わず上げた悲鳴と重なる。
混乱の極みにある彼らが完全に殲滅されるまで、そう時間は掛からなかった。
向かい合う小柄な人影は、二つの集団に分かれている。
色とりどりの服装と髪の色をした人間達と、粗末な衣服を見に纏い茶褐色の肌を露出させたゴブリン達だ。
彼の体色は森の木々の間にあっては保護色ともなるが、纏まって対峙する状況にそれを心配する必要はないだろう。
「アンナ!大丈夫!?」
「任せて!クラリッサは魔法を!!」
ゴブリンの棍棒の一撃を受け止めたアンナは、その衝撃を地面を踏みしめて耐えている。
彼女は片手で握ったメイスで反撃を試みるが、耐えるのに必死だったため機会を逸してしまう。
心配の声を上げたクラリッサにアンナは、力強く自分の役割に専念するように答えていた。
『こいつら、強いぞ!』
『小さいのに、なんで!?』
自分達とそう体格の変わらない少女達の姿に、狩りの対象だと襲い掛かってきたゴブリン達は、思惑とは違う彼女らの実力に戸惑いの声を上げる。
「彼らはなんと言っていますか、クロード様!?私達を追ってきたのですか!?」
「いや、違うと思う!たまたま遭遇して、襲ってきた感じだ!」
青い顔をしたクラリッサが、ゴブリン達の会話の内容をクロードへと尋ねる。
追っ手から逃れて数日ほどしか経ってない状況に、彼らの姿はそれを想起させる、彼女の不安も当然の事だった。
しかし遭遇してからこれまでの会話を踏まえると、彼らは野良のゴブリン達で間違いないだろう。
クロードの憶測にクラリッサは安堵の表情を見せる、それは一瞬の事で、すぐに彼女はゴブリン達へと厳しい視線を向けていた。
「そうですか・・・しかし彼らが追っ手と合流しないとも限りません。確実に仕留めないと」
「・・・分かった」
クラリッサが冷たく言い放った懸念は、目の前のゴブリン達の殲滅を示していた。
逃げ出した彼らは今だに不安定な状態だ、それを脅かす存在に厳しく当たる必要があるのは当然の事だった。
彼女の冷たい口調にクロードは静かに唾を呑み込むだけだったが、彼女の傍に控えていたイダは小さく了承を返すと腕を振るう。
『ぎゃあ!!?』
『な、なんだ!?』
「・・・当たった」
投げつけたナイフは、ゴブリンの顔へと突き刺さる。
その攻撃にゴブリン達も驚きの声を上げるが、当の本人もびっくりしたように目を丸くしていた。
「私が前に出る!その間にっ!!」
「・・・了解」
顔へと突き刺さったナイフは、重要な部分を外れており致命傷にはならないだろう。
しかしそのゴブリンは戦意を失っているように見え、無事なゴブリン達も動揺していた。
その隙にアンナが勇気を振り絞って前へと進み出る、彼女はイダも追従するように声を掛けた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
構えた盾を肩で押すようにして突撃していくアンナは、振り絞る勇気に叫び声を上げる。
動揺していたゴブリン達は、その突進に対処する事が出来ずに弾き飛ばされてしまう。
そのほとんどが体勢を崩した程度だったが、彼らがそれを立て直す事はなかった。
「・・・そこ」
アンナの後ろに隠れていたイダが、地面に倒れた彼らの喉や急所を狙ってナイフを突き出していく。
両利きの彼女はその両手に構えたナイフで、左右に弾き飛ばされたゴブリン達を次々に仕留めていった。
『まずい、このままじゃ・・・』
『あいつだ、あいつを仕留めろ!!』
前だけを見て突進していったアンナは、ゴブリン達の集団を突き抜ける。
彼女に突き飛ばされたゴブリンは多かったが全てではない、イダのナイフもそれらを全て仕留めたわけではなかった。
彼らは態勢を立て直すと、脅威となるイダへと狙いを定める。
全力での突進を終えたアンナはまだ肩で息をしている、囲まれつつある状況にイダは背中に括りつけた大盾へと手を伸ばしていた。
「っ!?まずい!」
「・・・絶体絶命」
徐々に迫り来るゴブリン達に、後退していく二人は背中を木にぶつけてしまう。
追い詰められた彼女らに、ゴブリンが襲い掛かる。
その時、どこかから声が掛かった。
「アンナ、イダ!!避けなさい!!」
杖を構えたクラリッサは、その周りに拳大の石塊を漂わせている。
彼女が上げた鋭い声に、幾匹かのゴブリンが後ろへと注意を向けた。
「間に合わない!?イダ、後ろに!」
「・・・任せた」
クラリッサが魔法を発動しようとしている事は、明らかだった。
囲まれている状況に避けるほどのスペースはなく、逃げるには時間があまりに足りない。
アンナはイダへと声を掛けると、盾を地面へと突き立て姿勢を低くした。
彼女は魔法を受け止める覚悟を決めたのだ、イダはその背中へとそっと手を添える。
「リーンフォース・アーマー」
「ストーン・バレット!!」
腰に括りつけた短杖へと手を添えたアンナが、自らに強化魔法を掛けるのとクラリッサが魔法が放つのは、ほぼ同時だった。
クラリッサの周囲から放たれた石のつぶては、ゴブリン達の頭部を射抜きながらアンナへと迫る。
慌てて両手を盾へと添えたアンナに、その腰を支えるイダは両足へと力を込めた。
「ぐっ!ぐぅ!!このままじゃ・・・!!」
「・・・大丈夫」
盾へとぶつかる衝撃に必死に歯を食いしばって耐えているアンナは、浮いてくる身体に弱音を吐く。
彼女はどうにか身体を地面に留めるのに必死で、前の様子を窺う暇はなかった。
イダは諦めを口にしようとしていた彼女の背中を優しく撫でると、もう終わったと声を掛けていた。
『魔法だ、魔法!!』
『あいつだ、あいつが使った!!』
クラリッサが放った魔法は何匹かのゴブリンの戦闘能力を奪うのに成功したが、未熟な彼女にまだそれなりの数が戦う力を有していた。
彼らは一様に彼女へと警戒の声を上げる、魔法を使う者への脅威はどんな種族も同じだった。
「クラリッサ!!?」
一斉にクラリッサへと襲い掛かっていくゴブリン達に、アンナの悲鳴が響く。
慌ててそちらに駆け寄って間に合うわけもない、小柄なクラリッサの姿はゴブリンの集団に呑みこまれて、見えなくなってしまっていた。
「・・・舐めないでもらえる?」
『こ、こいつ、強いぞ!?』
『なんで!?魔法使いなのに、なんで!!?』
片手にナイフを構えたクラリッサが、喉を貫いたゴブリンからそれを引き抜きながら、冷たく言い放つ。
魔法使いは接近されれば弱いという確信を持って突っ込んでいたゴブリン達は、予想だにしない反撃に面食らい、足を止めてしまう。
「・・・今の内に」
「え、えぇ・・・クラリッサ、今行くから」
動揺したゴブリン達が後ろへと引き下がった隙間に、クラリッサの姿を見つけたアンナは安堵の息を吐く。
イダは彼女へと注意が向いている内に、後ろから襲い掛かろうとアンナの服を引いた。
彼女の冷静な判断に若干気後れしたアンナも、気合の込めた声を呟くと駆け出していく。
「お、俺はここにいればいいのか!?」
「はい、クロード様はそこで見守っていてください!・・・いいタイミング!!」
クラリッサが背中を預けている木の裏側から声を上げたクロードに、彼女は前方から注意を逸らさずに答えていた。
彼女の言葉に安堵の表情を作った彼のすぐ傍に、ナイフが突き刺さる。
それは、イダが放ったナイフだ。
ゴブリン達は後方から突如襲い掛かってきた彼女達に対応できていない、クラリッサはそれに合わせて前へと進み出る。
「ひぃぃぃ!!?」
『ぎゃぁぁ!!?』
ゴブリン達の断末魔の悲鳴が、クロードが思わず上げた悲鳴と重なる。
混乱の極みにある彼らが完全に殲滅されるまで、そう時間は掛からなかった。
応援ありがとうございます!
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