最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく

文字の大きさ
54 / 61
アランとアレクシア

作戦開始

しおりを挟む
「おい、アレクシア。それの修繕は、いい加減終わってもいい頃だろ?」

 ヒリヒリと漂う緊張感は、先ほどまでのものとは比べ物にならない。
 それはそれだけ、敵対している者が本気になったことを示してした。
 そんな守護者に対して警戒の視線を向けながら、アランはアレクシアへと話しかけている。
 彼女と彼の距離は、大きく飛び退いた関係で小声で話しても声が届く距離にまで近づいていた。

「えっ?う、うん。もう大体終わったけど・・・」
「なら戦えるな。あいつを倒すのに協力してくれ」
「はぁ?あんな奴、倒せる訳ないでしょ!?馬鹿じゃないの!?」

 元々、アランが守護者と対峙していたのは、彼女が鞄を補修するための時間を稼ぐ意味合いが大きい。
 それを無事達成したのならば、後は散乱してしまった荷物を回収してこの場から逃げ出せばいい。
 そうアランから提案されることを期待していたアレクシアに、彼は全く別の言葉を掛けていた。

「そんな事より、ここからさっさと逃げた方がいいに決まってるじゃない!あんたもそのために、私に鞄を直させたんじゃないの?だから荷物を回収して―――」
「いいから聞け!俺に考えがある!それにあれを回収しときたいのは、お前も同じだろう?あれを持って帰るには、あいつを倒すしかねぇぞ?」
「うぅ・・・確かにそうだけど」

 逃げ出すための算段を既に考え始めていたのであろうアレクシアは、アランの言葉に信じられないと驚いている。
 しかしアランはそんな彼女に、ここまで苦労して運んできた遺物の存在を引き合いにだし説得しようと試みている。
 確かにアレクシアも。浄水施設の可能性もあるその施設を手放すには惜しいと感じており、先ほどまでよりも明らかに反論の勢いがなくなってしまっていた。

「はいはい、分かったわよ!とにかく聞いてあげるから、話してみないよね!つまらない話だったら、承知しないから!」
「おし!それじゃあまずは―――」

 井戸が枯れてしまった村に、残りのそれらもいつ枯れてしまうか分からない。
 それを考えれば、恒久的な飲み水の確保はアレクシア達にとって至上命題であった。
 その可能性のある遺物を手放すのは惜しいと考えるのは、自然なことだろう。
 アランの説得に渋々といった様子で折れて見せたアレクシアは、彼の計画を聞いてから判断するという態度を見せている。
 それに早速とばかりに、アランは身を乗り出して自らの計画を披露し始めていた。

「はぁ!?そんなの無理に決まってるでしょ!?」

 アランから計画の詳細を説明されたアレクシアは、そのとんでもない内容に驚きの声を上げている。
 それは、否定の意味を持った態度だろう。

「いやいや、いけるって!アレクシアなら、出来る出来る!」
「そ、そう?やっぱりそう思う?」
「思う思う!!いやー、アレクシアがここにいてくれて助かったなぁ!!飛び切り優秀な奴にしか、こんな役目任せられないからなー」

 アレクシアのそんな態度に、アランは慌てて彼女をおだて始めている。
 それはあからさまなおべっかであったが、どうやら彼女にはそれがお気に召したようで、もっと言って欲しそうにチラチラとこちらに視線を向けていた。

「ふーん、そうなんだ。まぁ?そこまで言うんならやってやらないこともないわよ?そこまで言うんならね?」
「お願いします、アレクシア・ハートフィールド様!!」
「ふふーん、仕方ないわねぇ!そこまで言われちゃ、やるしかないじゃない!」

 明らかに自らを讃える言葉を欲しがっているアレクシアに、アランは素早く頭を下げると彼女を持ち上げる言葉を吐いている。
 それを受けて頬を上気させたアレクシアは、腰に手を当てるとはっきりと了承を告げる。
 その表情からは、この計画の困難さなど完全に忘れさられてしまっていることが窺えた。

「・・・ちょろいな」
「?何か言った?」
「い、いや!何でもないっすよ!」

 そんなアレクシアの姿に、思わず漏れてしまったアランの余計な一言は、どうにか彼女には聞かれずに済んだようだ。

「ふーん、まぁなんでもいいけど。それより、早く始めるわよ!私の実力、見せてやるんだから!」
「期待してるぞ、アレクシア!」
「まっかせなさい!!」

 作戦の始まりに合図と上げた声は、守護者の鉄槌によってかき消された。
 しかしその攻撃を二人は当然のように読んでおり、当初の予定通りに素早く左右へと分かれている。
 それは図らずとも、作戦の開始を告げていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...