最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく

文字の大きさ
56 / 61
アランとアレクシア

決着 1

しおりを挟む
 ミシミシと響く音が、他人事のように聞こえる。
 近く、聞いたことのないような、それでいてとてもよく聞いたことのあるような言葉を誰かが喋っていた。
 それが自分に対して向けられている言葉だという事は分かっていたが、今はとにかくこのまま眠ってしまいたい。

「―――ン!?アラン!?ねぇ、起きてよ!返事しなさいよ、アラン・ブレイク!!」

 それでも、目覚めよと呼ぶ声がする。
 それはいつしかこの耳にうるさいほどに響いて、眠りに落ちようとしていた意識を無理やり揺り動かしてしまっていた。

「アレクシア?うるせぇぞ、ちったぁ静かに出来ねぇのか。おちおち眠れも・・・うわぁぁぁ!?」

 微睡みの中から目覚めた意識は、まだ半分眠りの中にいる。
 しかしそれも、現実の痛みによって本当の意味で目覚めを知るだろう。
 骨が軋み音を立てるほどの痛みは、それを理解せずとも叫び声を上げてしまうほどの激痛であった。

『対象への過剰な痛みを確認。捕縛を継続しつつ、苦痛を与えない整合点を模索・・・完了』
「ぁぁぁぁっ!?な、何だ・・・痛みが、ぐっ!?」

 ミシミシと響いていた痛みは、やがて収まっていく。
 それは捕らえたアランを、詳しく観察するようにそのガラス状の瞳を向けている守護者の仕業だろう。
 それに一度は安堵しかけたアランは、今度は完全に向けだせないように拘束を強めた守護者に、息の詰まる音を吐いていた。

「アラン!?目が覚めたんなら、さっさと抜け出しなさいよ!!」
「いや、んなこと言ったって・・・」

 アランが目覚めたことに気が付いたアレクシアが、彼を拘束する守護者の腕を叩きながらそこから抜け出すように求めている。
 しかし強い痛みはないもののがっちりと拘束されてしまったそれに、抜け出すのは容易ではないようだった。

『解析不能対象の分析を開始』

 アランを拘束した守護者は、その両手へと自らの顔を近づけている。
 そのガラス状の瞳は激しく回転し、何やら奇妙の音を立てていた。

「えっ・・・ひぃぃ!?」

 そしてそれでアランの事を注視し、分析するかに思われた守護者の顔をが四方に分かたれる。
 そこから出てきたのは、大小さまざまな触手状の何かであった。
 それらは明らかにアランを狙いを定め、うねうねと蠢いていた。

「た、助けろアレクシア!!」
「言われなくったって!!」

 完全に拘束されてしまっているアランには、それを逃れる術などない。
 そのため彼にはそれを他の人に、つまりはアレクシアに頼む他なかったのである。

「くっ、このっ!!何よこれ!めちゃくちゃ固いんだけど!!」

 うねうねと動く触手状の物体は、守護者と同じように未知の物質で出来ているのか、アレクシアがその手にした短剣で切りつけても傷つく様子がない。
 寧ろそれを切りつけたアレクシアの短剣の方が、刃を欠けさせてしまう事態となっていた。

「あ、ごめーん。これ無理だわ」
「何諦めてんだよ!?ふざけんじゃねぇぞ、てめぇ!!ぐぁ!?」

 数が多く傷つく様子もない触手に、アレクシアの刃は到底アランの近くまでは届きそうもない。
 それを早々に悟ったアレクシアは、両手を投げ出しては諦めのポーズを取ってしまっている。
 それを目にしたアランは、大声で文句を叫んでいたが、それもすぐに塞がれてしまう。

『解析、開始』

 アランの口の中へと触手状の物体を突っ込んだ守護者は、そのガラス状の目の中を何やら動かして、さらに彼への注目を強めている。

「ぅぅー!ぅぅぁー!!」
「うわー、何か残念な絵図らねー・・・」

 無理やり得体のしれないものを体内へと突っ込まれたアランは、その異物感を拒絶して激しく暴れている。
 それでも彼の身体を拘束する、守護者の手が緩むわけはない。
 そんな彼の姿を他人事のように眺めるアレクシアは、どこかドン引きしたような視線をそちらへと向けていた。

『変性因子、確認出来ず。遺伝子変異、想定範囲内。汚染因子、確認・・・排除対象、認定』

 アランの体内にて、そのサンプルを採取し分析している守護者は、その一つ一つを確実に確定させていく。
 その過程で彼は、決して見逃すことが出来ない情報を見つけてしまっていた。

「ほひぃ、へへぇ!はひ、ひへんあよ!!」
「うーん、何言ってんのか分かんないのに何か伝わって来るなー。だって、何か大丈夫そうなんだもん。ならしばらく様子を見ても・・・あ、不味!」

 傍観を決め込んでいるアレクシアに、アランは必死な表情で何とかしろとアピールしている。
 そんな彼の姿にもやる気のない姿を見せていたアレクシアはしかし、何かに気が付くと慌てて駆けだしていた。

「はんはよ・・・?ひぃぃ!!?」

 今までやる気のなかったアレクシアが急に慌てだしたことを不思議に思ったアランも、すぐにその理由を目にすることなる。
 必要な情報を集め終わったのか、アランの体内から触手状の物体を引き抜いた守護者は、代わりにその顔を再び彼へと近づけている。
 そのままぶつかるに思われた距離感はある所で止まり、守護者はアランから引き抜いた触手状の物体で何かを作り始めていた。
 それが何かは分からないが、武器であることはこの響き渡る高周波が証明している。

『採取細胞から汚染因子の性質を解析、優先度低・・・対象の脅威度の低いため、継続を推奨』

 アランの身体から引き抜いた触手状の物体から、一つを自らの身体の中へと戻した守護者は、それに付着していた彼の細胞に対して解析を始めている。
 しかしそれは、アレンに対する攻撃を控える事を意味してはいない。
 高周波音を撒き散らしているその先端は、いつしか不自然なほどに真白な光を帯び始めており、それが臨界に達した時にはアランの命がなくなると、誰の目にも明らかであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...