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止まらない連鎖
飯野巡を探して
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「やばいやばいやばい、やばいって!!」
逃げ出した距離に僅かに理性を取り戻したのか、必死に足を動かしている滝原は今の状況について一人叫びながら逃げ続けていた。
しかしその足取りは、当て所なく彷徨うもののそれだ。
怯えるように何度も後ろを振り返る彼は、前方への注意を怠ってしまう。
そこにはもう一人、周りをきょろきょろと伺い、前方への注意を怠っている男の姿があった。
「うわっ!?す、すみません!!」
前方不注意の二人は、当然の如く正面から衝突してしまう。
そうしてすぐに謝罪の声を上げたのは、もう一人の前方不注意な男、匂坂であった。
「ひぃぃっ!?お、お助けぇぇぇ!!」
すぐに謝罪の声を上げた匂坂と違い、ぶつかった衝撃に床へと倒れ付した滝原は、そのまま身を丸めて悲鳴を上げてしまっていた。
その反応は彼がこの直前に目にした光景を考えれば、仕方のないものだろう。
しかしそれを知らない匂坂には、それはとても不自然な振る舞いに見えた。
「た、滝原?どうしたんだ、一体?」
「匂坂・・・?匂坂なのか?た、助けてくれ!!あいつが、あいつがっ!!!」
尋常ではない様子の滝原に、匂坂は彼に何があったのかと尋ねている。
その声に、ようやく目の前の存在があの少女ではないと気がついた滝原は、彼にしがみつくように縋りついていた。
「落ち着け滝原!とにかく、まず何があったか説明してくれ!」
「あぁ・・・そ、そうだな。その・・・殺されたんだ、秋穂と夏香が。お、俺はそこから・・・」
怯えきった様子の滝原にも、匂坂は訳が分からないとまず彼に事情の説明を求めている。
その言葉に少しだけ落ち着き、訥々と語りだした滝原はしかし、それにより自らの振る舞いを思い出したのか、徐々に言葉を失っていく。
「は、早く逃げないと奴がっ!匂坂、逃げよう早く!!」
しかし思い出したのは、自らの後ろめたい振る舞いだけではない。
彼はそうならざるをえなかった存在についても思い出し、後ろを振り返っては匂坂に一刻も早く逃げようと急かしていた。
「そうか、あの二人が・・・分かった、滝原。この先に九条一華の部屋がある。君はそこに隠れているんだ!」
しかしそんな滝原の言葉を耳にしても、匂坂はその場から逃げようとはしない。
彼は滝原一人で安全な場所に向かうように指示をし、自らはまた別の場所へと向かおうとしていた。
「ど、どこに行くんだ匂坂!?俺を、俺を一人にしないでくれ!!」
「あの殺人鬼が、また現れたんだろう!?なら飯野さんの身が危ない!彼女を放っておく訳には・・・!」
どこかへと向かおうとしている匂坂に、滝原は一人にしないでくれとすがり付いている。
その腕をすぐに振り払った匂坂は、何故そうまで急いでいるのかという理由を語り、彼にこれ以上邪魔をするなと諭していた。
しかしその内容は、滝原にとっても無視出来ないものであった。
「・・・飯野の身が危ない?どういう事だ、巡の身に何かあったのか!?答えろよ、匂坂!!」
「それは・・・少し目を離した隙に、いなくなったんだ。今は、どこにいるのかも分からない・・・」
自らの彼女の身の危険に、滝原は声を荒げている。
そんな彼の問い詰める声に、匂坂が僅かに気まずそうに顔を背けたのは、その唇に残った湿り気のせいだろうか。
「どこにいるかも分からないって・・・ここには、殺人鬼が潜んでいるんだぞ!」
「分かってる、分かってるからこうして・・・」
このロッジには殺人鬼が潜んでいる。
その事実を先ほど、まざまざと見せ付けられた滝原は、そんな場所で一人になる危険を訴えている。
彼の責めるような口調に、後ろめたさのある匂坂はうまく言い返せずにいた。
「―――でよ!!」
そんな時、どこかから女性の声が聞こえてくる。
その怒鳴りつけるような強気な声は、彼らが求めていた存在の声ではないだろうか。
「・・・今のは?」
「巡ちゃんだ!間違いないって!!どっちから聞こえてきた!?」
聞こえてきた声に耳を澄ませ、それが誰かと突き詰めようとした匂坂に、滝原はそれが飯野の声で間違いないと断言する。
それが付き合いの長さの違いなのか、それとも願望によるものなのか分からない。
しかし今は、その直感に従うしか他に術がなかった。
「向こうだ、行こう!」
「おぉ!」
澄ました耳に響く残響は、その音の方向を特定させる。
目を瞑り、僅かに集中した匂坂は、聞こえてきた音の方角を特定し、そちらへと指を差す。
一緒に行こうという彼の呼びかけに、滝原もまた威勢よく答えていた。
逃げ出した距離に僅かに理性を取り戻したのか、必死に足を動かしている滝原は今の状況について一人叫びながら逃げ続けていた。
しかしその足取りは、当て所なく彷徨うもののそれだ。
怯えるように何度も後ろを振り返る彼は、前方への注意を怠ってしまう。
そこにはもう一人、周りをきょろきょろと伺い、前方への注意を怠っている男の姿があった。
「うわっ!?す、すみません!!」
前方不注意の二人は、当然の如く正面から衝突してしまう。
そうしてすぐに謝罪の声を上げたのは、もう一人の前方不注意な男、匂坂であった。
「ひぃぃっ!?お、お助けぇぇぇ!!」
すぐに謝罪の声を上げた匂坂と違い、ぶつかった衝撃に床へと倒れ付した滝原は、そのまま身を丸めて悲鳴を上げてしまっていた。
その反応は彼がこの直前に目にした光景を考えれば、仕方のないものだろう。
しかしそれを知らない匂坂には、それはとても不自然な振る舞いに見えた。
「た、滝原?どうしたんだ、一体?」
「匂坂・・・?匂坂なのか?た、助けてくれ!!あいつが、あいつがっ!!!」
尋常ではない様子の滝原に、匂坂は彼に何があったのかと尋ねている。
その声に、ようやく目の前の存在があの少女ではないと気がついた滝原は、彼にしがみつくように縋りついていた。
「落ち着け滝原!とにかく、まず何があったか説明してくれ!」
「あぁ・・・そ、そうだな。その・・・殺されたんだ、秋穂と夏香が。お、俺はそこから・・・」
怯えきった様子の滝原にも、匂坂は訳が分からないとまず彼に事情の説明を求めている。
その言葉に少しだけ落ち着き、訥々と語りだした滝原はしかし、それにより自らの振る舞いを思い出したのか、徐々に言葉を失っていく。
「は、早く逃げないと奴がっ!匂坂、逃げよう早く!!」
しかし思い出したのは、自らの後ろめたい振る舞いだけではない。
彼はそうならざるをえなかった存在についても思い出し、後ろを振り返っては匂坂に一刻も早く逃げようと急かしていた。
「そうか、あの二人が・・・分かった、滝原。この先に九条一華の部屋がある。君はそこに隠れているんだ!」
しかしそんな滝原の言葉を耳にしても、匂坂はその場から逃げようとはしない。
彼は滝原一人で安全な場所に向かうように指示をし、自らはまた別の場所へと向かおうとしていた。
「ど、どこに行くんだ匂坂!?俺を、俺を一人にしないでくれ!!」
「あの殺人鬼が、また現れたんだろう!?なら飯野さんの身が危ない!彼女を放っておく訳には・・・!」
どこかへと向かおうとしている匂坂に、滝原は一人にしないでくれとすがり付いている。
その腕をすぐに振り払った匂坂は、何故そうまで急いでいるのかという理由を語り、彼にこれ以上邪魔をするなと諭していた。
しかしその内容は、滝原にとっても無視出来ないものであった。
「・・・飯野の身が危ない?どういう事だ、巡の身に何かあったのか!?答えろよ、匂坂!!」
「それは・・・少し目を離した隙に、いなくなったんだ。今は、どこにいるのかも分からない・・・」
自らの彼女の身の危険に、滝原は声を荒げている。
そんな彼の問い詰める声に、匂坂が僅かに気まずそうに顔を背けたのは、その唇に残った湿り気のせいだろうか。
「どこにいるかも分からないって・・・ここには、殺人鬼が潜んでいるんだぞ!」
「分かってる、分かってるからこうして・・・」
このロッジには殺人鬼が潜んでいる。
その事実を先ほど、まざまざと見せ付けられた滝原は、そんな場所で一人になる危険を訴えている。
彼の責めるような口調に、後ろめたさのある匂坂はうまく言い返せずにいた。
「―――でよ!!」
そんな時、どこかから女性の声が聞こえてくる。
その怒鳴りつけるような強気な声は、彼らが求めていた存在の声ではないだろうか。
「・・・今のは?」
「巡ちゃんだ!間違いないって!!どっちから聞こえてきた!?」
聞こえてきた声に耳を澄ませ、それが誰かと突き詰めようとした匂坂に、滝原はそれが飯野の声で間違いないと断言する。
それが付き合いの長さの違いなのか、それとも願望によるものなのか分からない。
しかし今は、その直感に従うしか他に術がなかった。
「向こうだ、行こう!」
「おぉ!」
澄ました耳に響く残響は、その音の方向を特定させる。
目を瞑り、僅かに集中した匂坂は、聞こえてきた音の方角を特定し、そちらへと指を差す。
一緒に行こうという彼の呼びかけに、滝原もまた威勢よく答えていた。
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