12 / 308
プロローグ
別れを告げる者達 3
しおりを挟む
「さて、どれどれ・・・『前略、アルバロお兄様へ。山の緑も芽吹き始めるこの頃、いかがお過ごしでしょうか?』ね。中々、情緒溢れる書き出しじゃないか?」
「そこらへんは、飛ばしていい大将。最後の方・・・そう、その辺りを呼んでくれ」
能力を発動させたカイは、アルバロそっくりな姿へと変異している。
ドッペルゲンガーの力は、姿を盗んだ相手の技能をある程度模倣する。
そのため今の彼の目には、オークが使う文字がすんなりと読めるようになっていた。
「ん、ここか?どれどれ・・・『昨夜、立派な鶏冠を持った雄鶏が息を引き取りました。ですのでお兄様、ディエゴ兄とフェルナン兄も連れて至急お戻りください』って、これは・・・それほどの事か?」
「それは符丁だ。親父が死んだという、な」
アルバロの指定によって、手紙の最後の方の部分へと目線を動かしたカイは、その内容を読み上げる。
しかしそこに書かれていた内容は、日常のちょっとした出来事に過ぎなかった。
その出来事と、その後に続く帰郷を急がせる内容のギャップにカイが首を捻っていると、アルバロがポツリと言葉を呟いていた。
それは手紙の内容を補足する言葉だ、その内容に周りの者達もざわざわと騒ぎ始める。
「それは、大事だな。確かお父上は、多数のオークの一族を束ねる大族長だったのではなかったかな?」
「あぁ、親父がやっとの思いで島を統一したんだ。それが死ねば、また戦乱の時代に逆戻りしてしまうかもしれない。俺達が、それを止めねば」
彼らが故郷ホワイトホール島は、数百年間争いを続けていたオーク達の島だ。
それを彼らの父である、ヘラルド・ミラモンテスがようやく統一したばかりであった。
偉大なる彼が死ねば、統一して間もない島は再び戦乱の時代へと舞い戻るだろう。
彼の子であるアルバロ達には、それを止める義務があった。
「それは、止められないな。だが、約束してくれアルバロ。それにディエゴとフェルナンも。必ず生きて帰ると」
「あぁ、必ず。戻って来る時は、オークの一軍を引き連れていく。その時は凱旋式でもやってくれよ、大将」
「・・・その時を楽しみにしているよ」
役割の終えた手紙を折り畳んでアルバロへと返却したカイは、自らの姿を元のものへと戻す。
いつもの黒髪の男性の姿へと戻り、どこか安心したように息を吐いたカイは、足早に立ち去ろうとしていたアルバロに声を掛けていた。
それは彼の悲壮な覚悟を読み取ったものであろうか、カイの声にその表情を崩したアルバロは、冗談めかして唇を吊り上げる。
その言葉に、カイも薄く笑みを返していた。
「行くぞ、お前ら!」
「おぅ!」
「あぁ」
カイとのやり取りによってその表情から悲壮さの消えたアルバロは、強い決意を秘めて歩みを進めていく。
その後ろを、二人の弟達が付き従っていた。
(えぇ~・・・俺、そんな大事を手助け出来ると思われるの?いやいやいや、無理でしょそれは!確かにさぁ、親父さんの事は一回助けたことはあるかもしれないけど・・・それも偶々だし。もう一回やれって言われても無理だって!!良かったぁ、これから辺境に行くことになって。それなら遠くにいて手が出せなかったって、言い訳できるしな)
立ち去っていった彼らに軽く手を振っていたカイは、表情に出す事なく内心胸を撫で下ろしていた。
戦乱の終結など、彼の手に余るというどころの話ではない。
それに関わらずに済みそうな状況に、彼は今回の辞令へと密かに感謝していた。
「そこらへんは、飛ばしていい大将。最後の方・・・そう、その辺りを呼んでくれ」
能力を発動させたカイは、アルバロそっくりな姿へと変異している。
ドッペルゲンガーの力は、姿を盗んだ相手の技能をある程度模倣する。
そのため今の彼の目には、オークが使う文字がすんなりと読めるようになっていた。
「ん、ここか?どれどれ・・・『昨夜、立派な鶏冠を持った雄鶏が息を引き取りました。ですのでお兄様、ディエゴ兄とフェルナン兄も連れて至急お戻りください』って、これは・・・それほどの事か?」
「それは符丁だ。親父が死んだという、な」
アルバロの指定によって、手紙の最後の方の部分へと目線を動かしたカイは、その内容を読み上げる。
しかしそこに書かれていた内容は、日常のちょっとした出来事に過ぎなかった。
その出来事と、その後に続く帰郷を急がせる内容のギャップにカイが首を捻っていると、アルバロがポツリと言葉を呟いていた。
それは手紙の内容を補足する言葉だ、その内容に周りの者達もざわざわと騒ぎ始める。
「それは、大事だな。確かお父上は、多数のオークの一族を束ねる大族長だったのではなかったかな?」
「あぁ、親父がやっとの思いで島を統一したんだ。それが死ねば、また戦乱の時代に逆戻りしてしまうかもしれない。俺達が、それを止めねば」
彼らが故郷ホワイトホール島は、数百年間争いを続けていたオーク達の島だ。
それを彼らの父である、ヘラルド・ミラモンテスがようやく統一したばかりであった。
偉大なる彼が死ねば、統一して間もない島は再び戦乱の時代へと舞い戻るだろう。
彼の子であるアルバロ達には、それを止める義務があった。
「それは、止められないな。だが、約束してくれアルバロ。それにディエゴとフェルナンも。必ず生きて帰ると」
「あぁ、必ず。戻って来る時は、オークの一軍を引き連れていく。その時は凱旋式でもやってくれよ、大将」
「・・・その時を楽しみにしているよ」
役割の終えた手紙を折り畳んでアルバロへと返却したカイは、自らの姿を元のものへと戻す。
いつもの黒髪の男性の姿へと戻り、どこか安心したように息を吐いたカイは、足早に立ち去ろうとしていたアルバロに声を掛けていた。
それは彼の悲壮な覚悟を読み取ったものであろうか、カイの声にその表情を崩したアルバロは、冗談めかして唇を吊り上げる。
その言葉に、カイも薄く笑みを返していた。
「行くぞ、お前ら!」
「おぅ!」
「あぁ」
カイとのやり取りによってその表情から悲壮さの消えたアルバロは、強い決意を秘めて歩みを進めていく。
その後ろを、二人の弟達が付き従っていた。
(えぇ~・・・俺、そんな大事を手助け出来ると思われるの?いやいやいや、無理でしょそれは!確かにさぁ、親父さんの事は一回助けたことはあるかもしれないけど・・・それも偶々だし。もう一回やれって言われても無理だって!!良かったぁ、これから辺境に行くことになって。それなら遠くにいて手が出せなかったって、言い訳できるしな)
立ち去っていった彼らに軽く手を振っていたカイは、表情に出す事なく内心胸を撫で下ろしていた。
戦乱の終結など、彼の手に余るというどころの話ではない。
それに関わらずに済みそうな状況に、彼は今回の辞令へと密かに感謝していた。
0
あなたにおすすめの小説
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる