ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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ダンジョン経営の始まり

アトハース村へ 2

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「エスパニオ銀貨か、珍しいな」
「ん?何か不味いのか?もしかして、使えない?」

 銀貨をひっくり返して、そこに描かれている肖像を確認した店主は、ぼそりと何事かを呟いていた。
 その独り言のような言葉を何とか聞き取ったカイは、その響きに含まれる不吉な予感を感じ取り焦りを浮かべている。

(何だ、何が不味かった?それにエスパニオだと?それって最近魔王軍が進攻し始めた、あの?でもそれって、海の向こうの国だった筈じゃ・・・何でそんな国の硬貨を、あの商人が?)

 店主の反応にあたふたと慌て始めるカイはその実、外面上は身じろぎ一つしていない。
 ドッペルゲンガーとしての能力で表情を固定した彼は、少しでも情報を集めようと視線だけを必死に動かしていた。

「いや、ここでこんなもんを使うのはアダムスさんだけだと思ってな。あんたも商人なのかい?」
「・・・あぁ、そうだ」

 店主はここではあまり目にすることのない硬貨に驚いていただけだと軽く笑うと、カイに職業を尋ねる。
 それに軽く答えたカイは、和やかな雰囲気にも内心かなりの焦りを感じてしまっていた。

(アダムス?アダムスって誰の事だ?あの商人の事か?この男の口ぶりからして、多分そうなんだろうな。これは・・・不味いか?そこから俺の正体がばれたりは・・・いやいや、ないない。同じ商人なら、同じ硬貨を持っていても不思議じゃない筈・・・うん、大丈夫!だよな?)

 異なる人物が同じ物を持っていたことで、関係を疑われるなどよくある話だ。
 それが珍しい物であるならば、尚更。
 しかしまさか硬貨がそれに当たるとは思っていなかったカイは、動揺に震えてしまいそうな身体を何とか抑えてみせる。
 同じ商人ならば大丈夫だという考えも、ここいらの事情を知らないカイからすれば、おまじないに等しい言い訳だ。
 それでも彼は、その設定が通用すると信じる事しか出来なかった。

「それで、使えるのか?」
「勿論だとも。しかしこの額を使いきろうと思うと、大量に料理を作る羽目になっちまうな。あんた、食い切れるのかい?」
「いや、軽めで頼む」
「ははは、分かったよ」 

 さっさと会話を済ませて、一人になりたいカイの言葉はそっけない。
 それに対して店主の男は、愛想よく答えていた。
 その振る舞いから店主と、そのアダムスとかいう商人は親しい間柄だったのではないかと感じる。
 カイとその商人の共通点が、彼に親しみを錯覚させているようだった。
 それがカイにとって喜ばしい事なのか、気がかりな事なのか、それはまだ分からない。

「・・・しかし、寂れた村だな」

 注文の料理を作るために厨房へと歩いていった店主に、カイは後ろを振り返り店内を見回す。
 その行動に彼へと好奇の視線を向けていた客達は、慌てて視線を別の方向へと戻していた。
 しかしその数も多くはなく、ほとんどの者は彼がここに来たときと同じく、陰気な表情で食事の残りを穿るばかり。
 それはまさしく、寂れたという表現にぴったりの光景であった。
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