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ダンジョン経営の始まり
支配者の振る舞いに新参者達は不信感を募らせる 3
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「よし!じゃあ、もう少し奴らが行ってから・・・」
「駄目だよ?」
レクスの同意に足を叩いて喜んだニックは、身を乗り出して逃げ出していく他の連中の事を観察しようとする。
しかしその瞬間、彼の耳元で聞き覚えのない囁きが響く。
「なっ!?がっ!!?」
「ニック!?ど、どうしたんだ!?」
その声に驚き身を翻そうとしたニックはしかし、その動きの途中で何かに引っ掛かるように身体を止めてしまっていた。
彼の不自然な動きに驚きの声を上げたレクスは次の瞬間、その首筋に凍えるような冷たい感触を感じることとなる。
「このゴブリンさんは、悪いゴブリンさん?」
「き、君は・・・!?」
首筋に突きつけられた刃から喉を伸ばして逃れようとするレクスは、その耳に無邪気な声を聞くことになる。
その状態で目だけを必死に動かしても、見えるのは突きつけられたナイフと、それを握る指先だけだ。
しかしその声の響きに、相手が女性という事だけは分かる。
彼女が誰かと問い掛けたレクスは、せめて最後に聞きたかったのかもしれない。
自らの命を奪うのが、誰なのかを。
「ま、いっか」
後ろから語り掛けてきた声は、何か急激に興味を失った様子を見せると、レクスの首筋に突きつけたナイフを離す。
彼女はそれを地面へと投げつけると、レクスの影を縫い止める。
その瞬間、彼は身じろぎ一つ出来なくなっていた。
凍りついた彼の視界に、猫耳の少女の姿が一瞬浮かび、そして消えていく。
「おらぁぁぁっ!!!何逃げてやがんだ、てめぇらぁぁぁ!!!」
動けなくなってしまった身体にも、その吹き飛ばされてくる同族達の姿は見えていた。
身も凍るような叫び声と共にこの広間へと突っ込んできた巨漢の鬼、セッキはその身体全体で逃げ出したゴブリン達を吹き飛ばしている。
そのほとんどはすでに意識を失っており、床で僅かに蠢いている残りの連中も、もはや逃げ出す気力はないだろう。
それだけ圧倒的な気配をその鬼、セッキは放っていた。
「やれやれ、よもやこんな早くに逃げ出す者が出るとは。これだから、忠義のなんたるかを分からん連中は・・・」
セッキが猛烈な勢いで通り過ぎた道を、ゆっくりと歩く人影があった。
その一匹の二本足で歩く猫は、広間で震えている者達へと視線を送ると、ぶつぶつと何やら嘆いている。
「おい、爺さん。説教は後で聞くからよ、他の連中は?」
セッキが気にしているのは、逃げ出した残りのゴブリンだろうか。
確かに彼が吹き飛ばした数は多いが、それが全てではない。
「ほれ、そこに置いといたわい」
彼の問い掛けに、ダミアンは何もない空間を指差す。
一瞬だけ首を捻って見せたセッキも、そこに現れたゴブリン達の姿を見れば納得するしかない。
「どうやら私の出番はなさそうね」
ダミアンに続いてゆっくりと広間に入ってきた妖艶な美女、ヴェロニカはなさそうな出番に溜め息を吐く。
「あぁでも、何匹か殺してしまったら言って頂戴。私が再利用させてもらうから」
彼女は怯える魔物達に一瞬だけ視線を送ると、セッキに向かってなんでもない事かのように語りかける。
その内容と、彼女の石ころでも見るようなあまりに無機質な瞳に、広場に集まった魔物達は怖気を感じて震え上がってしまっていた。
「駄目だよ?」
レクスの同意に足を叩いて喜んだニックは、身を乗り出して逃げ出していく他の連中の事を観察しようとする。
しかしその瞬間、彼の耳元で聞き覚えのない囁きが響く。
「なっ!?がっ!!?」
「ニック!?ど、どうしたんだ!?」
その声に驚き身を翻そうとしたニックはしかし、その動きの途中で何かに引っ掛かるように身体を止めてしまっていた。
彼の不自然な動きに驚きの声を上げたレクスは次の瞬間、その首筋に凍えるような冷たい感触を感じることとなる。
「このゴブリンさんは、悪いゴブリンさん?」
「き、君は・・・!?」
首筋に突きつけられた刃から喉を伸ばして逃れようとするレクスは、その耳に無邪気な声を聞くことになる。
その状態で目だけを必死に動かしても、見えるのは突きつけられたナイフと、それを握る指先だけだ。
しかしその声の響きに、相手が女性という事だけは分かる。
彼女が誰かと問い掛けたレクスは、せめて最後に聞きたかったのかもしれない。
自らの命を奪うのが、誰なのかを。
「ま、いっか」
後ろから語り掛けてきた声は、何か急激に興味を失った様子を見せると、レクスの首筋に突きつけたナイフを離す。
彼女はそれを地面へと投げつけると、レクスの影を縫い止める。
その瞬間、彼は身じろぎ一つ出来なくなっていた。
凍りついた彼の視界に、猫耳の少女の姿が一瞬浮かび、そして消えていく。
「おらぁぁぁっ!!!何逃げてやがんだ、てめぇらぁぁぁ!!!」
動けなくなってしまった身体にも、その吹き飛ばされてくる同族達の姿は見えていた。
身も凍るような叫び声と共にこの広間へと突っ込んできた巨漢の鬼、セッキはその身体全体で逃げ出したゴブリン達を吹き飛ばしている。
そのほとんどはすでに意識を失っており、床で僅かに蠢いている残りの連中も、もはや逃げ出す気力はないだろう。
それだけ圧倒的な気配をその鬼、セッキは放っていた。
「やれやれ、よもやこんな早くに逃げ出す者が出るとは。これだから、忠義のなんたるかを分からん連中は・・・」
セッキが猛烈な勢いで通り過ぎた道を、ゆっくりと歩く人影があった。
その一匹の二本足で歩く猫は、広間で震えている者達へと視線を送ると、ぶつぶつと何やら嘆いている。
「おい、爺さん。説教は後で聞くからよ、他の連中は?」
セッキが気にしているのは、逃げ出した残りのゴブリンだろうか。
確かに彼が吹き飛ばした数は多いが、それが全てではない。
「ほれ、そこに置いといたわい」
彼の問い掛けに、ダミアンは何もない空間を指差す。
一瞬だけ首を捻って見せたセッキも、そこに現れたゴブリン達の姿を見れば納得するしかない。
「どうやら私の出番はなさそうね」
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「あぁでも、何匹か殺してしまったら言って頂戴。私が再利用させてもらうから」
彼女は怯える魔物達に一瞬だけ視線を送ると、セッキに向かってなんでもない事かのように語りかける。
その内容と、彼女の石ころでも見るようなあまりに無機質な瞳に、広場に集まった魔物達は怖気を感じて震え上がってしまっていた。
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