ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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初めてのお客様

一方その頃セッキ達は 1

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 春めく季節に萌える若葉は、その色の鮮やかさを増していく。
 木々の間から差してくる日差しは少なくとも、その暖かさは確かに感じられた。
 彼らゴブリンがグラトキの森と呼ぶ場所で、レクスは地面へと顔を近づけてある植物を探していた。

「なぁ、レクス。これは本当に俺らがやらなきゃならない事なのか?」

 彼の背後から、どこかやる気がなさそうに声を掛けてきたのは、彼の相棒であるニックだろう。
 地面に近い所に顔を置き、必死に目的の薬草を探しているレクスと違い、彼は近くの木に背中を預けては、手にした木の棒で適当な草木を払ってばかりいた。

「ニック・・・君も納得した筈だろう、彼らに逆らっても無駄だって。なら今は少しでも彼らに気に入られるように、一生懸命働いてアピールすべきだろう?」

 あからさまに不満な態度を見せているニックに、レクスは疲れた様子で説得を開始していた。
 彼の背中には薬草採取のためだろうか、草を編んだような簡易的な籠が背負われている。
 しかしニックはそれすら身につけるは嫌だと、籠を地面へと放り投げてしまっていた。

「それは俺だって分かってるさ。でもそれが薬草採取?こんな事、ちんたらやってられるかっての!」
「それは、僕もそう思うけど。でもこれはあい・・・リンデンバウム様、直々のご指示なんだ。従わない訳にはいかないだろう?」

 レクスの言い分に理解を示したニックはしかし、こんな仕事はやってられないとその手に握っていた木の棒を放り投げる。
 適当に放り投げた筈のそれが案外近くを通り、軽く顔を背けてそれを避けたレクスは、ニックの不満に同意を示しながらも、仕方がないだろうと諦めを口にしていた。
 彼らが薬草採取に赴いているのはあの恐ろしい怪物達の主、カイ・リンデンバウム直々の要請によってだ。
 それを断る事など、今の彼らに出来る訳がない。

「それだよそれ!何であいつは俺達に、そんな事命令したんだ?確かに俺達にとってここは地元だ、だから多少は薬草やら何やらの知識はある・・・だが、俺達は戦士だ!村から選りすぐられた勇気ある者達の筈だ!!それをこんな・・・ガキや女共の仕事やらせるなんて、馬鹿にしてやがる!」
「それは・・・不味いっ!ニック、声を控えて!!」

 彼らは、村でも選りすぐりの戦士であった。
 そんな彼らにとって薬草採取など子供や女、もしくは戦士になれなれなかった軟弱者の仕事でしかない。
 そんな仕事に宛がわれて、戦士としてのプライドを激しく傷つけられたニックは、その不満に声を荒げている。
 彼と同じく自らも戦士としてのプライドを胸に抱いているレクスも、それに同意する姿勢をみせていた。
 しかしそれは、周りで彼らと同じく薬草採取しているゴブリン達の姿を目にするまでだ。
 彼らもレクス達と同じく、戦士としての選りすぐられた者達であったのだろう。
 彼らはニックの言葉に賛同の態度を見せ、薬草採取の手を止めようとしていた。
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