148 / 308
初めてのお客様
露見した正体にカイ・リンデンバウムは焦る 5
しおりを挟む
『話しても、よろしいか?』
「あぁ、頼む」
『うぉっほん・・・実はその時に、コンソール?というんじゃろうか、ダンジョンの操作端末をヴェロニカが叩いてしまって・・・ほれ、こういうのは叩くと不味いんじゃろう?』
ダミアンが話したのは、カイがクリスから殴られてしまった時の出来事だろう。
あの時どこからか響いてきたような物音は、どうやらヴェロニカが操作端末を殴りつけてしまった時のものだったようだ。
あくまで扱う者が操作しやすいようにと具現化されている端末に、物理的な衝撃で壊れてしまうような内部構造は存在しないだろう。
しかしその行動によって、訳の分からないコマンドが入力されてしまう可能性はあった。
「あ~・・・確かにそれは不味いかもしれないな。う~ん・・・どうしたものか。ヴェロニカ、どうにか出来そうにないのか?」
『は、はい・・・その、申し訳ありません。私にはちょっと、手に負えそうもありません』
大分操作に慣れてきたといっても、ヴェロニカはまだそれに触れて一週間とちょっとといったところに過ぎない。
ダンジョンの操作に限っていえばカイも同様であったが、彼にはそれの元となったパソコンの操作経験があった。
そもそもそれらの操作方法は、彼の記憶や知識に基づいて最適化されたものであろう。
その操作に彼が一番適しているのは、もはや自明の理ともいえた。
「そうか・・・そうとなれば、私がそこに戻るしかないだろうな。急いで戻る、だから安心して待っているといい」
意図しない入力によって陥った事態は、もはやヴェロニカの手には負えないようだ。
そうなればカイ自ら赴いて、手を下すよりは他にないだろう。
『は、はい!お待ちしております、カイ様!』
自らの主人が、自分の失敗を拭いにやってくる。
その宣言を耳にして、ヴェロニカは陶酔したような声を漏らしている。
彼女はその興奮に忘れてしまったのだ。
カイに伝えるべき事があったことを。
『・・・伝えなくて、良かったのかの?』
『何、ダミアン?今はちょっと黙っていて欲しいのだけど』
主の格好いい振る舞いに、ヴェロニカはうっとりと頬を押さえている。
そんな時に無粋な声を掛けてきたダミアンなどには、彼女は冷たくあしらうだけだ。
しかし彼はそんなあしらわれかたをしても、喋りかけるのを止めようとはしない。
それは、どうしても伝えなければならない事があったからだ。
『いやなに、あの者達がもうすぐ近くまで迫ってると、カイ様に伝えなくて良かったのかと思ったのだが・・・もう遅かろうな』
『・・・あっ!?』
カイが立ち去ったボス部屋に、賑やかな話し声が近づいてきている。
それの主は、今更説明しなくとも分かっているだろう。
一刻も早くと最奥の間に急ぐカイは、もはや壁に触手を伸ばすこともなく、ただひたすらに走り続けていた。
「あぁ、頼む」
『うぉっほん・・・実はその時に、コンソール?というんじゃろうか、ダンジョンの操作端末をヴェロニカが叩いてしまって・・・ほれ、こういうのは叩くと不味いんじゃろう?』
ダミアンが話したのは、カイがクリスから殴られてしまった時の出来事だろう。
あの時どこからか響いてきたような物音は、どうやらヴェロニカが操作端末を殴りつけてしまった時のものだったようだ。
あくまで扱う者が操作しやすいようにと具現化されている端末に、物理的な衝撃で壊れてしまうような内部構造は存在しないだろう。
しかしその行動によって、訳の分からないコマンドが入力されてしまう可能性はあった。
「あ~・・・確かにそれは不味いかもしれないな。う~ん・・・どうしたものか。ヴェロニカ、どうにか出来そうにないのか?」
『は、はい・・・その、申し訳ありません。私にはちょっと、手に負えそうもありません』
大分操作に慣れてきたといっても、ヴェロニカはまだそれに触れて一週間とちょっとといったところに過ぎない。
ダンジョンの操作に限っていえばカイも同様であったが、彼にはそれの元となったパソコンの操作経験があった。
そもそもそれらの操作方法は、彼の記憶や知識に基づいて最適化されたものであろう。
その操作に彼が一番適しているのは、もはや自明の理ともいえた。
「そうか・・・そうとなれば、私がそこに戻るしかないだろうな。急いで戻る、だから安心して待っているといい」
意図しない入力によって陥った事態は、もはやヴェロニカの手には負えないようだ。
そうなればカイ自ら赴いて、手を下すよりは他にないだろう。
『は、はい!お待ちしております、カイ様!』
自らの主人が、自分の失敗を拭いにやってくる。
その宣言を耳にして、ヴェロニカは陶酔したような声を漏らしている。
彼女はその興奮に忘れてしまったのだ。
カイに伝えるべき事があったことを。
『・・・伝えなくて、良かったのかの?』
『何、ダミアン?今はちょっと黙っていて欲しいのだけど』
主の格好いい振る舞いに、ヴェロニカはうっとりと頬を押さえている。
そんな時に無粋な声を掛けてきたダミアンなどには、彼女は冷たくあしらうだけだ。
しかし彼はそんなあしらわれかたをしても、喋りかけるのを止めようとはしない。
それは、どうしても伝えなければならない事があったからだ。
『いやなに、あの者達がもうすぐ近くまで迫ってると、カイ様に伝えなくて良かったのかと思ったのだが・・・もう遅かろうな』
『・・・あっ!?』
カイが立ち去ったボス部屋に、賑やかな話し声が近づいてきている。
それの主は、今更説明しなくとも分かっているだろう。
一刻も早くと最奥の間に急ぐカイは、もはや壁に触手を伸ばすこともなく、ただひたすらに走り続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる