185 / 210
第二章 王国動乱
離反
しおりを挟む
青々と生い茂る木々の向こうにぽっかりと空いた剥き出しの大地が広がっている、そこに聳え立つ威容カンパーベック砦を睨みながら陣を構えている野営地には、活気が溢れていた。
それは彼らが、連戦連勝を続けているからだろう。
そんな彼らからすれば、これから難攻不落と謳われるカンパーベック砦を攻めるとしても意気消沈することはない。
何故なら彼らには、あの「軍神」ジーク・オブライエンがついているのだから。
「あぁ、どうして・・・どうしてこんな事に」
そんな沸き上がる陣中にあって、一人まるで絶望するかのように頭を抱えている者の姿があった。
その者の名前はユーリ・ハリントン、気がついたら敵方へと寝返ってしまっており、その現実を受け止められない哀れな男だった。
「あんのクソ親父、あのタイミングで裏切るか普通?そんなの予想出来ないって・・・今までと同じ感じで指令きたしさぁ、まさかそれが敵に寝返る命令だとか思わないじゃん。はぁ、何なのあいつ?」
ユーリ達が敵方に寝返ることになったのは、ジーク直筆の指令に従ったからだった。
それを思えば、彼自身もこちら側に寝返ったことは容易に想像でき、実際にユーリは父親の噂をこの陣中の至る所で耳にしていたが、会いに行って問いただそうという気は起きなかった。
「・・・やっぱり向こうに戻ろう。うん、決めた!あの親父に義理とかないし!向こうにはヘイニーさんにオリビア、リリーナ・・・陛下もいるしな!あの子達がどうなってるかも気になるし・・・よし、そうとなれば善は急げだ!」
向こうの戻ろう、そう決意したユーリの表情は明るい。
元々彼は父親であるジーク・オブライエンから勘当された身なのだ、彼の命令を律義に守る義理はない。
今まではそれでもヘイニーやリリーナ、そして娘達という大切な人を守ることに繋がるという大義名分があったが、敵に寝返ってしまえばそんな理由もなくなってしまう。
「あ、でも・・・皆が」
決断を下せば早い方がいいと、少ない荷物をすぐにまとめた彼はそのままここを出て行こうとしていた。
しかし自らの幕舎の幕へと手を掛けた彼はそこで立ち止まると、後ろを振り返る。
共にここまで一緒に戦ってきた懲罰部隊、彼らは今や彼にとって掛け替えのない仲間になっていたのだ。
「駄目、だよな。俺の勝手な事情に皆を巻き込む訳にはいかないし・・・うん、一人で行こう」
向こう側に戻りたいという事情は、ユーリ個人のものだ。
他の人間からすれば、明らかに勝ち馬であるこちら側に残りたいと思うのが自然だろう。
皆を巻き込む訳にはいかない、そう考えたユーリは幕舎の幕を捲り一人前へと足を踏み出していく。
「・・・水臭いじゃない、一人で行くなんて」
そんな彼の背中に艶のある、しかしどこか芯の強さを感じさせる声が響く。
振り返ればそこには、まるでユーリが出て行くのが分かっていたかのように幕舎の外に寄りかかっているシャロンの姿があった。
「姉さんの言う通りですぜ、兄さん!あっしらを置いていこうなんて、そんな簡単に出来ると思ってもらっちゃ困りやす!へへっ、兄さんと一緒に居ればまだまだ稼げそうなんでね」
「・・・俺も一緒だ、ユーリ」
その脇からは以前ユーリが絡んだ賭け事で儲けた金だろうか、ずっしりと重そうな袋を抱えたエディと、いつもようにむっつりとした表情のデズモンドが現れていた。
「ば、馬鹿!押すなって・・・ふわわ!?え、えっと・・・あ、あたいもあんたについてくからねユーリ!べ、別にあんたと一緒にいたいからとかじゃなくて・・・か、勝ち馬に乗るなんて、あたいの主義に反するんでね!!」
そして最後には、誰かに押されたかのようにして出てきたケイティまでもが彼の前に現れていた。
彼女はその髪の色と同じ色に顔を染めながら、誰も聞いてもいないようなことまで勝手に喋ってはユーリについていくと宣言していたのだった。
「シャロンさん、エディ、デズモンド。それにケイティまで・・・」
ユーリの下に集まり、彼一人では行かせないと囲む仲間達にユーリは思わず涙ぐむ。
「ふふっ、あたし達だけじゃないのよ?ほら、皆!」
「え?」
涙ぐむユーリの肩をポンポンと叩くデズモンドと、あわあわと慌てているケイティ。
そんな二人の様子を眺めながらウインクをして見せたシャロンは、高らかに声を上げると後ろへと手を広げる。
「隊長、俺達を置いていこうなんて・・・水臭いですぜ!!」
「そうだそうだ!俺達、一生隊長についていこうって決めてんだ!」
「ジーク・オブライエンがなんだ!俺達の隊長の方が凄ぇに決まってんだろ!!」
そこには、口々に彼の事を叫ぶ懲罰部隊の面々の姿があった。
「皆・・・いいのか、俺なんかについて来て!?こっちは泥船かもしれないんだぞ、すぐ沈んじゃうかもしれないんだぞ!?このままここにいれば勝ち馬に乗れるのに・・・それでも、それでもいいのか!?」
捨てて逃げようと思っていた者達が、自らを慕って追い駆けてくる。
その状況にふるふると震え、涙を溢れさせるユーリはそれでもこちらは楽な道じゃないんだぞと必死に叫んでいた。
「構やしねぇ!!俺らは隊長についてくぜ!!」
誰かが叫んだその言葉に、続くように雄たけびが響く。
「あぁ、あぁ!じゃあ行こう、皆!!」
ユーリは乱暴に涙を拭う、腕が擦れて目蓋がヒリヒリと痛んだ。
「いざ、カンパーベック砦へ!!」
そしてユーリは告げる、あのカンパーベック砦にもう一度向かおうと。
◇◆◇◆◇◆
雄たけびを上げながら去っていく懲罰部隊、その姿を近くの木陰から眺めていた男は、そこからスッと離れてどこかへと向かおうとする。
「あら、貴方は来ないのかしらシーマス・チットウッド?いえ、エミール・レンフィールドと呼ぶべきかしら?」
その男、シーマス・チットウッドにどこかから現れたシャロンが意味深な表情で声を掛ける。
「っ!?貴様、どこでそれを!?」
シャロンはシーマスの本名、エミール・レンフィールドの名を口にした。
まだ誰にも明かしていない筈のその名を口にしたシャロン、シーマスが彼から距離を取り厳しい表情で睨みつけるには、それだけで十分だった。
「うふふっ、乙女に秘密を尋ねるなんて野暮ねぇ・・・綺麗な女には秘密は付き物だって、教わらなかった?」
シーマスの鋭い視線は嘘を許すような色をしていない、それでもシャロンは唇に指を添えては怪しく微笑むばかりであった。
「それにしても、助かったわ。だって貴方、ユーリちゃんとの絡みに興奮する振りをしただけ騙されてくれるんだもの、本当は貴方の事を監視していたかっただけなのに・・・あ、でも安心してね。貴方の顔が好みなのは本当よ?」
「何だと?」
シャロンがユーリとシーマスの絡みに興奮していたのは、それに性的なものを感じていた訳ではなく、彼の監視が目的だったのだと彼は口にする。
彼の演技にまんまと騙されてしまっていたシーマスは、青い顔を浮かべた。
「でも拍子抜けよね。だって貴方、全然裏切る様子を見せないんだもの。あぁ、一回だけ危ない時があったけど・・・あれだけよね?ねぇシーマス、貴方本当は楽しんでいたんじゃないの?」
「馬鹿な、俺が楽しんでいただと?そんな訳がない!!」
「あらそう?」
シーマスをずっと監視していたシャロン、しかし彼は拍子抜けしていた、何故なら彼が全く裏切る素振りを見せないから。
シャロンはその理由を、彼が本心ではこの生活を楽しんでいたからだと指摘する。
シーマスはその言葉を、吠えるようにして否定していた。
「・・・この話、どこまで話した?」
「え?あぁ、安心してまだ誰にも話してないわよ?」
「なら・・・お前を消せば終わりだな」
背中に隠した短剣は、今も確かにそこにある。
シーマスはそれを手にすると、距離を測っていた。
大丈夫、ちゃんと一歩で仕留められる距離だ。
シーマスは踏み込みと共に、短剣を抜き放つ。
「―――今なら、まだ許してあげる」
抜き放った筈の短剣が、鞘へと戻される。
その声は背後から、耳元に向かって囁かれていた。
シーマスの背後、その無防備な位置にシャロンは回り込んでいたのだ、彼が抜き放とうとした短剣を手で押さえるという余裕を見せて。
「っ!?これだけの実力・・・何者だ、お前は!?」
「あら、ただのオカマちゃんよ?ただし、飛び切り美人のね」
猛烈な死の予感に、すぐさま飛び退いたシーマスは冷や汗を伝わせながらシャロンに尋ねる。
その質問にシャロンはにっこりと微笑むと、彼にウインクを返すだけだった。
「おーい、シャロンさーん!どこですかー?置いてっちゃいますよー!」
「ふふっ、これまでのようね。それじゃ、向こうに行っても頑張ってね。エミール・レンフィールドちゃん」
部隊の中にシャロンの姿がない事に気がついたユーリが、彼の事を探して声を張り上げている。
その声に振り返ったシャロンはシーマスに手を振ると、気軽な足取りでその場を後にしていくのだった。
「あれ、そう言えばシーマスもいないな・・・」
「あぁ、彼ならちょっと用事があるんですって。だから今回は同行出来ないみたいよ」
「そうですか、じゃあ仕方ないですね・・・」
ユーリ達の下へと戻ったシャロンは、シーマスがいないことにも気がついた彼に適当な理由をでっち上げていた。
「俺が、楽しんでいた?まさか、な・・・」
最後にこちらにウインクをして去っていくシャロンの姿を眺めながら、シーマスはそう呟いていた。
そしてやがて彼もその場を後にしていく、彼が本来いるべき場所、レンフィールド家へと向かって。
それは彼らが、連戦連勝を続けているからだろう。
そんな彼らからすれば、これから難攻不落と謳われるカンパーベック砦を攻めるとしても意気消沈することはない。
何故なら彼らには、あの「軍神」ジーク・オブライエンがついているのだから。
「あぁ、どうして・・・どうしてこんな事に」
そんな沸き上がる陣中にあって、一人まるで絶望するかのように頭を抱えている者の姿があった。
その者の名前はユーリ・ハリントン、気がついたら敵方へと寝返ってしまっており、その現実を受け止められない哀れな男だった。
「あんのクソ親父、あのタイミングで裏切るか普通?そんなの予想出来ないって・・・今までと同じ感じで指令きたしさぁ、まさかそれが敵に寝返る命令だとか思わないじゃん。はぁ、何なのあいつ?」
ユーリ達が敵方に寝返ることになったのは、ジーク直筆の指令に従ったからだった。
それを思えば、彼自身もこちら側に寝返ったことは容易に想像でき、実際にユーリは父親の噂をこの陣中の至る所で耳にしていたが、会いに行って問いただそうという気は起きなかった。
「・・・やっぱり向こうに戻ろう。うん、決めた!あの親父に義理とかないし!向こうにはヘイニーさんにオリビア、リリーナ・・・陛下もいるしな!あの子達がどうなってるかも気になるし・・・よし、そうとなれば善は急げだ!」
向こうの戻ろう、そう決意したユーリの表情は明るい。
元々彼は父親であるジーク・オブライエンから勘当された身なのだ、彼の命令を律義に守る義理はない。
今まではそれでもヘイニーやリリーナ、そして娘達という大切な人を守ることに繋がるという大義名分があったが、敵に寝返ってしまえばそんな理由もなくなってしまう。
「あ、でも・・・皆が」
決断を下せば早い方がいいと、少ない荷物をすぐにまとめた彼はそのままここを出て行こうとしていた。
しかし自らの幕舎の幕へと手を掛けた彼はそこで立ち止まると、後ろを振り返る。
共にここまで一緒に戦ってきた懲罰部隊、彼らは今や彼にとって掛け替えのない仲間になっていたのだ。
「駄目、だよな。俺の勝手な事情に皆を巻き込む訳にはいかないし・・・うん、一人で行こう」
向こう側に戻りたいという事情は、ユーリ個人のものだ。
他の人間からすれば、明らかに勝ち馬であるこちら側に残りたいと思うのが自然だろう。
皆を巻き込む訳にはいかない、そう考えたユーリは幕舎の幕を捲り一人前へと足を踏み出していく。
「・・・水臭いじゃない、一人で行くなんて」
そんな彼の背中に艶のある、しかしどこか芯の強さを感じさせる声が響く。
振り返ればそこには、まるでユーリが出て行くのが分かっていたかのように幕舎の外に寄りかかっているシャロンの姿があった。
「姉さんの言う通りですぜ、兄さん!あっしらを置いていこうなんて、そんな簡単に出来ると思ってもらっちゃ困りやす!へへっ、兄さんと一緒に居ればまだまだ稼げそうなんでね」
「・・・俺も一緒だ、ユーリ」
その脇からは以前ユーリが絡んだ賭け事で儲けた金だろうか、ずっしりと重そうな袋を抱えたエディと、いつもようにむっつりとした表情のデズモンドが現れていた。
「ば、馬鹿!押すなって・・・ふわわ!?え、えっと・・・あ、あたいもあんたについてくからねユーリ!べ、別にあんたと一緒にいたいからとかじゃなくて・・・か、勝ち馬に乗るなんて、あたいの主義に反するんでね!!」
そして最後には、誰かに押されたかのようにして出てきたケイティまでもが彼の前に現れていた。
彼女はその髪の色と同じ色に顔を染めながら、誰も聞いてもいないようなことまで勝手に喋ってはユーリについていくと宣言していたのだった。
「シャロンさん、エディ、デズモンド。それにケイティまで・・・」
ユーリの下に集まり、彼一人では行かせないと囲む仲間達にユーリは思わず涙ぐむ。
「ふふっ、あたし達だけじゃないのよ?ほら、皆!」
「え?」
涙ぐむユーリの肩をポンポンと叩くデズモンドと、あわあわと慌てているケイティ。
そんな二人の様子を眺めながらウインクをして見せたシャロンは、高らかに声を上げると後ろへと手を広げる。
「隊長、俺達を置いていこうなんて・・・水臭いですぜ!!」
「そうだそうだ!俺達、一生隊長についていこうって決めてんだ!」
「ジーク・オブライエンがなんだ!俺達の隊長の方が凄ぇに決まってんだろ!!」
そこには、口々に彼の事を叫ぶ懲罰部隊の面々の姿があった。
「皆・・・いいのか、俺なんかについて来て!?こっちは泥船かもしれないんだぞ、すぐ沈んじゃうかもしれないんだぞ!?このままここにいれば勝ち馬に乗れるのに・・・それでも、それでもいいのか!?」
捨てて逃げようと思っていた者達が、自らを慕って追い駆けてくる。
その状況にふるふると震え、涙を溢れさせるユーリはそれでもこちらは楽な道じゃないんだぞと必死に叫んでいた。
「構やしねぇ!!俺らは隊長についてくぜ!!」
誰かが叫んだその言葉に、続くように雄たけびが響く。
「あぁ、あぁ!じゃあ行こう、皆!!」
ユーリは乱暴に涙を拭う、腕が擦れて目蓋がヒリヒリと痛んだ。
「いざ、カンパーベック砦へ!!」
そしてユーリは告げる、あのカンパーベック砦にもう一度向かおうと。
◇◆◇◆◇◆
雄たけびを上げながら去っていく懲罰部隊、その姿を近くの木陰から眺めていた男は、そこからスッと離れてどこかへと向かおうとする。
「あら、貴方は来ないのかしらシーマス・チットウッド?いえ、エミール・レンフィールドと呼ぶべきかしら?」
その男、シーマス・チットウッドにどこかから現れたシャロンが意味深な表情で声を掛ける。
「っ!?貴様、どこでそれを!?」
シャロンはシーマスの本名、エミール・レンフィールドの名を口にした。
まだ誰にも明かしていない筈のその名を口にしたシャロン、シーマスが彼から距離を取り厳しい表情で睨みつけるには、それだけで十分だった。
「うふふっ、乙女に秘密を尋ねるなんて野暮ねぇ・・・綺麗な女には秘密は付き物だって、教わらなかった?」
シーマスの鋭い視線は嘘を許すような色をしていない、それでもシャロンは唇に指を添えては怪しく微笑むばかりであった。
「それにしても、助かったわ。だって貴方、ユーリちゃんとの絡みに興奮する振りをしただけ騙されてくれるんだもの、本当は貴方の事を監視していたかっただけなのに・・・あ、でも安心してね。貴方の顔が好みなのは本当よ?」
「何だと?」
シャロンがユーリとシーマスの絡みに興奮していたのは、それに性的なものを感じていた訳ではなく、彼の監視が目的だったのだと彼は口にする。
彼の演技にまんまと騙されてしまっていたシーマスは、青い顔を浮かべた。
「でも拍子抜けよね。だって貴方、全然裏切る様子を見せないんだもの。あぁ、一回だけ危ない時があったけど・・・あれだけよね?ねぇシーマス、貴方本当は楽しんでいたんじゃないの?」
「馬鹿な、俺が楽しんでいただと?そんな訳がない!!」
「あらそう?」
シーマスをずっと監視していたシャロン、しかし彼は拍子抜けしていた、何故なら彼が全く裏切る素振りを見せないから。
シャロンはその理由を、彼が本心ではこの生活を楽しんでいたからだと指摘する。
シーマスはその言葉を、吠えるようにして否定していた。
「・・・この話、どこまで話した?」
「え?あぁ、安心してまだ誰にも話してないわよ?」
「なら・・・お前を消せば終わりだな」
背中に隠した短剣は、今も確かにそこにある。
シーマスはそれを手にすると、距離を測っていた。
大丈夫、ちゃんと一歩で仕留められる距離だ。
シーマスは踏み込みと共に、短剣を抜き放つ。
「―――今なら、まだ許してあげる」
抜き放った筈の短剣が、鞘へと戻される。
その声は背後から、耳元に向かって囁かれていた。
シーマスの背後、その無防備な位置にシャロンは回り込んでいたのだ、彼が抜き放とうとした短剣を手で押さえるという余裕を見せて。
「っ!?これだけの実力・・・何者だ、お前は!?」
「あら、ただのオカマちゃんよ?ただし、飛び切り美人のね」
猛烈な死の予感に、すぐさま飛び退いたシーマスは冷や汗を伝わせながらシャロンに尋ねる。
その質問にシャロンはにっこりと微笑むと、彼にウインクを返すだけだった。
「おーい、シャロンさーん!どこですかー?置いてっちゃいますよー!」
「ふふっ、これまでのようね。それじゃ、向こうに行っても頑張ってね。エミール・レンフィールドちゃん」
部隊の中にシャロンの姿がない事に気がついたユーリが、彼の事を探して声を張り上げている。
その声に振り返ったシャロンはシーマスに手を振ると、気軽な足取りでその場を後にしていくのだった。
「あれ、そう言えばシーマスもいないな・・・」
「あぁ、彼ならちょっと用事があるんですって。だから今回は同行出来ないみたいよ」
「そうですか、じゃあ仕方ないですね・・・」
ユーリ達の下へと戻ったシャロンは、シーマスがいないことにも気がついた彼に適当な理由をでっち上げていた。
「俺が、楽しんでいた?まさか、な・・・」
最後にこちらにウインクをして去っていくシャロンの姿を眺めながら、シーマスはそう呟いていた。
そしてやがて彼もその場を後にしていく、彼が本来いるべき場所、レンフィールド家へと向かって。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる