オッドアイの守り人

小鷹りく

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橙色ー恐怖

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「精神の逆撫では今回必要なさそうだ、良臣。中野は恐怖で怯えた橙色に見える。このまま中野を落ち着かせてみるよ。」


海静はややもすれば微笑むかと思うほどの余裕を見せて中野の前に立ちはだかり、凛としたままま染谷息子を振り向いて言った。中野との距離5メートル。海静の危険な香りが中野に届く。


「よ、良臣って、染谷と名前で呼びあうようになったんですか、海静様。」


冷や汗を拭えぬまま、時間稼ぎをするように中野が割り入る。揶揄うような口調で話しかけるが、相変わらず心と体を襲う震えは止まらない。


「あぁ、染谷のお父さんが居るからな、染谷って呼びかけるとどっちを呼んでいるのか混乱するんだ。もっとも前からそうしたかったんだが…」


海静は良臣に目配せをした。


明らかに違うその雰囲気に中野は狼狽うろたえた。


なんだ?前に会った時に感じなかった恐怖心が襲う。海静に帯びる不思議な艶と普通の人と対面する時には感じない殺気にも近いそれは、中野の背筋を凍らせた。


こいつ、本当に俺がどうなっても構わないんだな…。最悪俺が死んだとしても、伊集院家は何も困らない。このままでは無駄に練習台で苦しんで犬死だ!そう感じた中野はついに白状し始めた。


中野「お、俺は秋成さんに雇われたんだよ、い、伊集院家の!伊集院家の中じゃ今一番実権を握っている政治的にも力のある人だ。頼まれて海静様の身辺に不穏な事がないか逐一報告しろと言われていたんだ。そ、それに春成さんの動向も気にしてたから、報告するように言われてた。春成さんの身辺報告は染谷から依頼された事だぜ?!俺はただ、言われた事をしていただけだって!」


海静「さぁな、お前がどう言おうとも、何を言おうとも、俺には練習が必要なんだ。さっき染谷から説明があったろう?」

中野「ま、待て、待ってくれ、まだ話はあるんだ。秋成さんは外交官だ。海静様の力を借りたいと言っていた。だから力が使えるようになったらすぐに連絡をしてくるように言われているんだ。」


染谷「それならば何故我らの報告が待てない?つじつまが合わんぞ。我々は海静様をお守りする階位第二の立場であるのに、何故秋成様が秘密裏にそれを知る必要が有る?どの道知る事になる立場のお方でもあるのだ。伊集院家の能力者保護の管轄以外は、春成様が伊集院家へ戻らぬ限り秋成様が長おさである。それをお前のような部外者を通して、海静様を内偵するなど裏切り行為も同然。」

中野「・・・。」


海静「もういいよ、俺には練習が必要だ。中野は俺の力で吐かせよう。」


海静は染谷に合図をして中野の顔を上げさせた。どこかしら楽しみにしているようにも見える海静に、染谷は自分の知らない主人あるじの顔を見た気がした。



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