オッドアイの守り人

小鷹りく

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合図

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 伊集院家のゲートについた染谷は、守衛に顔を見せて車のまま玄関まで走る。守衛が無線機で中に連絡をしているのがサイドミラーで見えた。

玄関までだけでもセキュリティーカメラが何台も立っているのを知っている。秋成さんはきっと私たちを見ているだろう、染谷は警戒した。

「相変わらず仰々しい家じゃの。ワシは洋館は嫌いじゃ。畳の匂いが好きなのに、最近はどこも畳をおいとらんな…。匂いだけは意識のなかでも感じとれるのにのぉ…。」

喋り方もそうなのだが、容姿は海静の若さなのに爺臭い事を言うので、ギャップに笑ってしまいそうになり、染谷は笑いを堪えた。

『この状況で笑えるのはさすがじゃの、良臣。肝が据わっておるわ。体をそれだけ鍛えておれば怖いものも少なかろうが、頭の中は防御できんぞ。ふふ。』

にやりと赤い目を光らせて赤乃は染谷の頭の中に話しかける。

『今からは聞かれたくない会話は頭の中に話しかけるから、同意の際は目を一度閉じ、反意の場合は二度閉じるのを回答とせよ、良いな。』

バックミラー越しに、染谷は目を一度閉じて御意の合図を返した。

『よし。』

車が玄関へ着くと、そこには石原と東が居た。染谷は彼らが来る事など知らなかった。

「この二人の頭に入るから、降りるのは少し待て。」

染谷はハンドルを握り待機する。

――――

赤乃はじぃっと石原と東の顔を見て、なにやら問いかけているようだ。

二人はギョッとした顔をして赤乃を見ている。

『ワシは海静の頭の中におる意識体、初代能力者赤乃じゃ。先祖返りをして海静はこの容姿じゃ。おぬし等の頭の中は覗かせてもらった。海静を護る決意を見たが、ここからはワシの言うとおりに動け。良いな。』

二人は目を一度閉じ、赤乃の指示に従う。

染谷は赤乃が頭の中で指示するとおり、車を降りた。

染谷「石原、東、お前たち何故ここに?」

石原「はい、海静様が伊集院家に来られるとお聞きして参りました。」

東「私も石原より聞き伝い参りました。」

赤乃「仲良く揃って海静を護ろうと考えておるようじゃが、女子を危険に晒すのは余り関心せんな石原よ。恋人であろう?」

赤乃に心を読まれた二人は真っ赤だ。

「だから来るなって言っただろう!」と石原はいつも淡々としているのに、東には感情的なようだ。

「だって、海静様が心配だもの。私にも護る使命がある。」

東は石原の抗議に何の痛さも感じないと言ったようにひょうひょうと言い返した。

「おうおう、東が石原と恋仲なのを海静が知れば悲しむじゃろうな。海静は東に淡い想いを抱いておったからのぉ。」

「え?初耳です。知りませんでした。海静様はそんな事何も…」

染谷は完全にショックを受け、東は光栄とばかりに頬を染めた。
そして石原は頬を染める東を睨む。何だこの四角関係は…。赤乃は溜息をついた。

「まぁ子供が親戚の女子に恋心を抱くような感情とでも言えば分かりやすいかの?……。良臣…、そうあからさまに悲しむでない。海静はお主を一番信頼しておるのだからの。それに海静にあんな事までしておいて、そんな事も気付かんとは、お前はほんに海静のこととなると盲目になっていかん。」

あんな事と言われて、石原と東は染谷を見た。

「赤乃様!」

「おぉ、繊細な話じゃったな、すまんすまん。緊張感がほぐれすぎじゃの。さぁ敵陣へいざっ。」

玄関でひと悶着したが、染谷が先導し、海静を挟むように石原と東が続き、四人は中へ入っていった。




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