オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

離さない

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二人でジェスを部屋まで送り届けると、カイは彼女にお休みと言った。ジェスはありがとうと、照れ臭そうに部屋に入ったが少し泣いた様で目が赤かった。そりゃそうだ。惚れてる男に子供みたいなもんだと言われて失恋したかと思えば、家族のように大切に思っていると言われて、嬉しいやら切ないやら内心複雑だろう。思春期だから尚更だ。
 そして俺だって複雑だ。大切だと言われて嫌な訳がない。だが家族の様だと言われると俺には僅かな望みさえ持ってはいけないと言われているようで辛い。いや待てよ、家族って事は相当な信頼度なんじゃないか。…都合よく考えすぎか。

 ジェスを送り届けた後、彼は俺の手を離そうとしたが、俺は離さなかった。その代わりに指を絡めて手を握った。カイはびっくりして俺を見たがすぐに目を逸らした。自分が始めた事だから振りほどけなかったのかも知れない。

 大の男二人が手を繋いで変な光景だ。しかも恋人繋ぎ。後進国ではタブー視される行為だろう。ジェスという中和要素がないから尚更だ。だが誰に気を使って何がどうなるというんだ。ここはまだ自由の国だ。

「じゃあな…フィン、おやすみ…。」
 カイは鍵をポケットから出してドアを開け、離れようとしたが俺はその手を離さなかった。刹那に彼の綺麗な眉根が歪み、俺を見る。潤んだ双眼を伏し目がちにして顔を逸らすカイは照れていた。

「なんだよ、恥ずかしいのかよ、お前から手を繋いで来たんだぞ。」
「…わかってるよ。その…手を繋ぎたい気分だったんだ。でもジェスが居ないと、大人…男二人だと…気まずいな…ははっ。」
 苦笑いする。

「そろそろ離せよ。部屋に入れない。」
 カイはオレの顔を見ないまま言う。
「いやだ。」
 俺は拒否してそのまま玄関に足を割り入れた。俺がいるせいで玄関のドアは閉まらない。赤くなってカイは俺を見た。

「おいっ、離せって…。」
「離さねぇ。」

 俯く彼の肩は少し震えている。
 俺がまるでいじめてるみたいに見えるじゃないか。
 なんだろう、胸の辺りがざわざわする。
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