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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて
香港空港
しおりを挟む香港の空港はドバイ、ロンドンのヒースロー空港に次いで世界第三位の乗降人口を誇る空港だ。この空港を使うのは初めてだが想像以上に設備が整っている。
よく香港映画で見かける雑多な街からは想像できない洗練された建物で空港内のあちこちにハイブランドの免税店が並ぶ。
東は喜びを隠せないようだった。
「ねぇ!思ってたより全然近代的だね!香港てこんなにも都会だなんて知らなかったわぁ~。私の好きなブランド目白押し!帰りが楽しみー!」
「そりゃアジアのハブ空港だからな。遊びにきたんじゃないんだからな、はしゃぎ過ぎるなよ?わかってんのか…。」
「分かってますよー!でもせっかく来たなら、少しくらい羽伸ばしてもいいじゃない。あんまり硬い事言うと嫌われるよ?」
「誰にだよ?」
「さぁ誰にでしょうね?」
「おい、また喧嘩する気か?あんまり東を虐めてやるなよ。この国でコミュニケーションのキーとなるのは北京語が喋れる東だ。彼女の負担は大きいんだ。少しぐらい楽しんでもバチは当たらないよ。」
「…そうですが。」
「ほらぁ。染谷さん、ありがとうー。私通訳頑張ります!」
そう言って敬礼の真似をすると東は我先にと電車の乗り場へと重そうなスーツケースを引っ張りながら進んだ。
私や石原の倍以上はありそうな大きさのスーツケースを颯爽と引きずる彼女のバイタリティには驚嘆する。あんなに何を持ってきたんだ…。石原と顔を見合わせてテンションの高い東に続く。
思ったりより軽そうに運ぶから、力持ちだな、というと、中身の半分は空だと言う。お土産を入れて帰る為に大きな物を選んだそうだ。ちゃっかりしている。
市内へはエアポートエクスプレスという電車に乗って向かう。空港から市内に直結しており、30分と経たずに目的の駅である九龍駅に着くそうだ。ここまできっちり整備されていると動きやすい。MTR、日本でいう地下鉄、の本数も多く混雑した感じがしない事に驚く。乗降人口世界三位だ言われるとごった返しているのでは想像していたが、経由地として使われる事が多い為か、電車の本数が多いからか、市内へ行く人の数は日本の国際空港と比べれば少ないのかも知れない。人混みに疲れる事なく移動できて有難い。
目的の九龍駅には25分程で着いた。荷物を置きに取り敢えずホテルへ向かう。シャムロックホテルは駅から一キロ程あるとの事でタクシーを拾う。タクシーの運転手の英語は片言だが、英語が通じるだけでも有難い。早速海静様の昔の写真を加工した物を見せて、運転手にも聞いてみる。元々の写真は茶髪だったが、銀髪が肩まで伸びた様に修正している。
「この青年を見た事ありませんか?」
私が英語で聴くと、運転手はチラリと写真を見て、知らないと手を横に振り、
「I don't know」
と言った。
東が北京語でもう一度聞く。
「我正在寻找一个家庭。你见过这个人吗?」
私にはもう何を言っているか分からなかったが、運転手は大変そうですね、でも知りません、と返事をしたそうだ。
こんな感じで延々と続けていけるのか早速不安になるが、私には時間もお金もある。気長にやっていくしかない。石原と東は滞在しても最高一ヶ月の予定だ。私は最初は三ヶ月、ビザが不要な最長滞在期間を予定している。
居るか居ないかわからない所を三ヶ月探すのはきっと骨が折れるだろうな。だが何か少しでも分かればいい。前に進んで行くんだ。
私はなにかを掴むまでは帰らない覚悟でいた。
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