オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

SUITE 1

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フェリーからMGMカジノホテルまでは無料シャトルバスが出ていたので、私達はそれに乗り込んだ。

 大きな金のライオンに出迎えられて巨大な建物に入る。入り口にも金色のヤギが居た。文化の違いに圧倒される。待ち合わせ場所は指定されていないが、付いた時間は既に19:30を過ぎていた。黒服を来たイヤホンをつけている警備員があちこちにいる。その内の一人が私達をじっと見たかと思うと近づき英語で話しかけてきた。

「ミスターソメヤ?」

「ええ、そうです。」

「付いてきて下さい。」

 黒服の男性に誘導されエレベーターに乗り、フロアを進むとどんどん人気が少なくなっていく。それに連れてどんどん床や壁が豪華な造りに変わっていった。小さなロビーの泉を過ぎ、有名画家の石像の横を通り、壁が金色のブロックで出来た廊下を通ると、SUITEと書かれた部屋の前に着いた。

「ミスターカナミが待っています。」

 そう言うと黒服の男はドアを2回ノックした。
 中で少し物音が聞こえ、重厚なドアが開いていく。一気に緊張が走った。

少し日に焼けた髭を蓄えた男性に出迎えられる。

「良臣君だね?」 

「はい、お初にお目にかかります。染谷良臣です。」

「石原 拓海です。」

「東 志津香です。」

 それぞれ頭を下げた。

「御三家勢ぞろいか、中へ入りたまえ。君、もういいよ。」  

 春成様は男性に手払いをすると私達は中へ通され、ドアが閉められた。
 部屋の中にシャンデリアがあり、天井がピカピカ光って部屋がそのまま天井に映る。ダイニング用の円卓に洋風の椅子が六つほど並び、その奥にソファセットがあった。

「正式に言うと初めてでもないけどね。忠臣(染谷の父)と会ったときに少しだけ見たことがあるんだが、小さかったから覚えていないだろう。まぁ掛けなさい。」  

 そう言って豪華なソファセットを指差した。全てを見てきたかの様な目に見据えられて私達三人はそっと席に着く。

 春成様は背こそ左程高くは無いが、がっしりとした体格をしていて、歳は重ねているけれども私と肉弾戦で戦えばいい勝負をするかもしれないと思わせる程戦い慣れた体つきに見えた。蓄えた口髭と顎鬚も銀色で、同じ色の長髪を後ろで一つに綺麗に束ねている。"銀髪の日本人"として衝撃的な印象を与える風貌だ。私達の捜索に直ぐに彼が浮上してきたのもよく分かる。一度見たら忘れないだろう。

「小さい時の事はあまり覚えておらず申し訳ありません。」

「いや、当たり前だ、そんなことはいいんだ。で、情報屋を紹介して欲しいんだな?」

 彼は棚から背の短いグラスを四つ取り出し、テーブルに置くと自分も座り込み、氷を入れてブランデーを注いでいく。彼は海静様と同様酒豪だと聞いている。

「ええ、香港で有能な方をご紹介頂きたいんです。」

「今香港に来るとはいい度胸だね。この混乱直前に…。」

「混乱直前とは…?」

「もう直ぐデモが始まる。香港政府が中国の法律制度を受け入れようとしているんだ。前にもあったんだが、当局側の法律を受け入れるときは、毎回学生達が大きなデモを開始する。今回の件に関しては外国人である君たちにも関係ある法律さ。大きな動きになるだろう。巻き込まれないように気をつけないとね。」

「はい…。」

 話している中身は初耳でまだよく分からないが近くデモが起こるらしい。捜索に影響が出なければいいのだが…。

「で、紹介してやるのはいいが、ただで教える訳には行かない。」

 出来上がったブランデーのロックをそれぞれに渡して、一口飲みながら彼は言った。



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