現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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閑話1

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 私は探索者協会桜ダンジョン支部の支部長を勤める青笹という。

 セミオーダースーツをバシッと着こなすナイスミドルだが、こう見えて元は銀級探索者だ。

 今日も探索者や探索状況、ドロップ品の報告を受けたり、迷宮機動隊と打ち合わせをしたり、秘書の錦織さんにセクハラしたりする、いつもと変わらない日常を過ごしていた。

 本来であれば、現在の最高到達階層9階の記録が塗り替えられましたとかの報告を喜んで、新たな階層の情報収集や報告書の作成に追われたいところだが、探索に進展が無いのでそうもいかない。

 まぁ現状の探索状況でも黒字だから、支部の運営的にはなんの焦りも無いのだ。

 政府と協会の調整、ドロップ品の卸先との折衝、各部門から上がって来る要望への対応などは、錦織さんがやってくれるから、私がやる事はそこまで多くない。

 あれっ??私ってこの支部に必要なのか??

 新たな疑問が生まれたが、それは時間が解決してくれるだろう。

 そう言えば昨日持ち込まれたドロップ品に、ヒュージスライムの魔石なんてレアな物があったな。

 しかもそれを持ち込んだのは探索初日の探索者で、出現したのは1階層と言っていた。

 ヒュージスライム自体、桜ダンジョンでは8階以降それも滅多に出て来ない、希少なモンスターだから、そこまで気にする事はないだろう。

 大型の魔石という事で昨日中に協会のエリア統括本部に送ったから、私の仕事はこれ以上発生しないはずだ。

 そう思いながらコーヒーを啜っていると、錦織さんが血相を変えて私の部屋に飛び込んで来た。

 いつもなら上品なノックをして、いいカホリを振り撒きながら入室して来るのだが、今日は違うな。

 そんなに私に会いたかったのだろうか?

「支部長大変です!」

「何が大変なのかね?」

「昨日安達さんから買い取ったヒュージスライムの魔石、ヒュージスライムの魔石ではなかったらしいです!」

 大きさといい、説明を受けたモンスターの見た目といい、ヒュージスライムで間違いはないはずだ。

「あれはヒュージスライムで間違いないだろう?どう違ったのか聞いたのか?」

「はい。大きさはヒュージスライムの魔石と同じ様なのですが、内包する魔力量を測定したところ、ヒュージスライムの倍以上の魔力が検知されたそうです。そのデータをデータベースに照合した結果・・・」

「結果???」

「ヒュージスライムの亜種、超希少種のグラトニースライムで間違いないそうです!」

 グラトニースライム・・・、この桜ダンジョンでの討伐例は無い。

 討伐例どころか目撃例すら無い。

 私は焦った。

 本来なら内包魔力検査とデータベース照合をしてから、モンスター種を同定しないといけないのだが、彼の証言と桜ダンジョンのモンスター出現例だけで断定してしまった・・・。

 まずい・・・これはまずい・・・、本部からのお叱りは勿論の事、グラトニースライムなんて物が私の管理するダンジョンに現れたとしたら・・・、

「事の顛末とダンジョンの様子を確認する為に、本部から査察団がこちらに来られるそうです!」

 ほら来た~~~!!!

 本部の奴等っていつもは「現場で対応してくださってよろしくってよ。お任せ致しますわ」、なんて顔に似合わない事言ってくるクセに、何が美味そうな匂いがするとすぐに現場に介入して来やがる!

「グラトニースライムの魔石と判明した為、魔石の買取金額は500万円ではなく、5000万円に修正する様に本部から指示を受けました。差額の4500万円を本日中に安達さんに振り込むようにと厳命されております。こちらに高額決済の承認印をお願いいたします」

 錦織さんはそう言いながら私の前に一枚の書類を置いた。

 高額決済の申請書だ。

 協会では日々ダンジョン資源の買取を行っている為、1000万円未満の買取に関しては経理担当に決済権限を与えている。

 勿論当日中の振り込みだ。

 だが1000万円以上の高額決済に関しては[高額決済申請書]の提出が、義務付けられている。

 内容を精査し、背景の調査をし、問題が無ければ最短で3日、長くても1週間で振り込みを行っている。

 高額決済申請書には、案件受理者、経理部長、そして支部長の承認印が3つ必要で、一つでも欠けていたら未承認となり、決済は行われない事になっている。

 だが今回の件は、昨日持込みの本日中の振り込み、特例中の特例だ。

 それに申請書を良く見ると、案件受理者の欄に本部の資源管理部部長の電子印、経理部長の欄には本部の経理部長の電子印が押印してある。

 なるほど・・・、これは本部案件になったんだな・・・・。

 キリキリと痛む胃を押さえながら、机の引き出しから印鑑を出して押印した。

 承認印の揃った申請書を錦織そんに渡して、私は再びコーヒーを啜った。

「あぁ~、本部の人達が来たら凄い怒られるんだろうな・・・。本部案件になったって事は私はどうなるんだろうな・・・」

 私の呟きだけが、探索者協会桜ダンジョン支部支部長室に響き渡っていた。
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