現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 探索者パーティーのお兄さん達に見送られながら、初の3階層へと足を踏み入れた俺。

 1.2階と変わらない精巧な石造りのダンジョン内部は、自分が何階に居るのか分からなくなる。

 俺はポケットから折り畳んだ地図を取り出して、目標地点を設定する事にした。

 階段室は階層のボスが討伐されるとモンスターの出現しない、セーフティルームになると言われている。

 ファントムナイトの特殊な例はあるが、2階から3階に降りる階段室では何も出て来なかった。

 だから今夜の寝床を3階から4階に降りる階段室に定め、今日の最終目標地点を3階の階段室にする事にした。

 そして気になる出現モンスターは、コボルト、ファングボアに加え新たなモンスターでオークが出現するとされている。

 なのでオークとの戦闘も目標に加え、ついでにモンスターハウスの中を覗いて、いけそうならモンスターハウスの攻略も視野に入れて動こうと思う。

 今日の行動目標が決まったので、3階層の探索を開始する。

 見た目は上階と変わらないが、出てくるモンスターがちがうので、緊張感がある。

 武器はファングボアが出るそうなので、バトルメイス。

 金属製の柄の先端に直径20cm程の鉄球が付いており、その鉄球には鋭く尖った鉄製のスパイクが大量に付いている、見た目にも痛く破壊力が抜群の武器だ。

 俺はメイスを片手にモンスターハウス目指してダンジョンを進んだ。

 しばらく歩いていると、前方から重たい足音が聞こえて来た。

 慎重に歩き進めると前方から、身長が2mはある豚の顔をした、二足歩行のモンスターの姿が見えて来た。

 腰には臭そうな汚れた布を巻いており、手には俺の相棒とは違う[蛮族的なデザインの棍棒]を持っていた。

 オークだ!

 3階での初戦闘がまさかオークだとは思ってもみなかったが、出て来た以上は全力で戦わせて貰おう。

 俺はメイスを構えてオークに駆け寄った。

 本当なら頭をバチコーンとやりたい所だが、諸般の事情により頭には届かない。

 なのでオークのブヨブヨの土手っ腹にメイスのフルスイングを叩き込む事にした。

 全力で振ったメイスはオークの土手っ腹に見事命中し、オークは『プギョッ!』と変な声を出して蹲った。

 今がチャンスと言わんばかりにオークの脳天目掛けてメイスを叩き込む、メイスがオークの脳天に吸い込まれる様に命中すると、その直後オークは光の粒子になり、ドロップ品を残して消えていった。

 オークのドロップ品は、そこそこのサイズの魔石と、ご丁寧に葉っぱ包まれた肉塊だった。

 そう言えばオークの肉も地上では高級食材として扱われている。

 庶民万歳の我が家の食卓にダンジョン産の肉が並んだ記憶は無いが、お高いレストランでは地上の食材よりも、ダンジョン産の食材を売りにしている所が多いと聞く。

 ならばこのオーク肉も美味しく召し上がる事が出来るのであろう。

 俺はドロップ品を収納して、モンスターハウスに向かって歩き出した。

 そしてファングボアやコボルトと何度か遭遇し、戦闘をこなしていると、再びオークが現れた。

 先程同様に腹に一発、頭に一発で余裕だろうと、オークにむかったが、腹に一発入れたところで思わぬ反撃を喰らった。

 先程のオークと違い、俺の攻撃に耐えて棍棒で反撃して来たのだ。

 野球の右打ち打者の様な体勢でフルスイングをしたのだが、それでオークが蹲ると思っていた俺は、攻撃に全振りしていて防御なんて全く考えていなかった。

 オークはお留守になった俺の頭に向かって、蛮族棍棒を振り下ろして来たのだ!

 咄嗟の事で頭をずらして頭部へのダメージを避ける事で精一杯だった俺は、左の肩に蛮族棍棒の一撃をモロに喰らってしまった。

 2mの身長から振り下ろされる蛮族棍棒の一撃は強烈で、喰らった瞬間は死を覚悟したが、ここで怯んだら本当に殺られると思い、痛みに耐えながらメイスでの追撃を放った。

 俺は目の前にあるオークの右膝に向けてメイスを叩き込み、オークの右膝を破壊する。

 右膝を壊されて痛みに耐えきれないオークは、蛮族棍棒を手放して膝を押さえながら蹲った。

 今こそ本当のチャンス!

 俺は全力でオークの頭にメイスを振り下ろし、オークを倒した。

 ドロップ品を残して消えたのを確認すると、先程のオークから受けた攻撃の痛みが襲って来た。

 痛い・・・、めちゃくちゃ痛い・・・、めちゃくちゃ痛いが耐え切れない程ではない。

 俺は痛む左肩を何度か揉んでから、ドロップ品を拾い集めて収納し、先程の戦闘を振り返りながら休憩をした。

 リュックから飲み物を取りだして、口に流し込む。

 自分が思っていた以上に口の中がカラカラに乾いていた。

 初めての本格的なダメージを受けた事により、思っていた以上に緊張していたようだ。

 くちの中を飲み物で潤してから、先程の戦闘を振り返る。

 オークは身長もあり、武器も持っている。

 武器を持った腕を壊したくても、振りかぶられたら身長以上に高い位置に腕が上がるので、俺の身長では届かない。

 ではどうすればいい?

 出来る事なら一撃、多くても2.3撃で戦闘を終わらせたい。

 贅沢を言っているかもしれないが、モンスターハウスにオークが出て来る事を想定したら、これ以上1匹に時間も労力も掛ける事が出来ないからだ。

 打撃の破壊力で言えばメイス一択だが、棍で喉や胸、もしくは股間を突くのはどうだ?

 俺はそう考えて、装備を一旦棍に戻してみる事にした。

 棍に装備を戻してしばらく歩くと、ファングボアが出て来た。

 しまった・・・メイスは収納してしまった・・・、装備を変えた事を後悔したが、かつては棍で戦っていたモンスター。

 俺はファングボアに駆け寄り、棍での突きをファングボアの眉間に向かって放った。

 金属で補強された棍の強烈な突きは、ファングボアの眉間に命中し、ファングボアは一撃で光の粒子に変わった。

 俺は勘違いに気付いた。

 いつから棍は[叩く武器]だと思い込んでいたのだろう・・・、山本さんは言っていた。

 突いて良し、叩いて良し、守って良しと・・・。

 ファングボアを撲殺する事に執心していた俺は、棍の潜在能力を忘れてしまっていたようだ。

 思い込みは良くない、視野が狭くなる、学生時代に先生から何度も注意をされた。

 思い込みから生まれる視野狭窄で何度も失敗をして来たのに、命のやり取りをする場面でまた同じ事をしていた。

 気付かせてくれたオークとファングボアに感謝し、オークを探しながらモンスターハウスへの移動を再開した。

 思い込みから生まれる視野狭窄は良くないと再認識させてくれた授業料は、オークからの攻撃をもろに喰らうという決して安くない物だったが、ダメージを受けた事が信じられないほど身体は軽く感じて、手に握っている棍棒が頼もしく感じた。

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