現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 俺の記念すべき第一回ダンジョン飯の最中に、モンスターが現れないはずの階段室の中に謎の生物が現れた。

 最初は、四足歩行で白い体毛から連想した、伝説上の神獣[フェンリル]が現れたと思っていたが、実はサイズも見た目も地上にいる[パグ]と寸分変わらない生物だった。

 殺気は感じなかったが、俺に向かって走って来たので、俺は迎撃する為に愛用の棍を構えて待ったが、間合いに入る直前にパグの愛らしい瞳と目が合ってしまい、迎撃のチャンスを失する事になった。

 パグは俺に体当たりなどの攻撃を加えて来る事は無く、俺を通り過ぎて行った。

 俺は通り過ぎたパグの姿を確認すると、『フガフガ』と鼻を鳴らしながら、オークステーキの匂いを嗅いでいた。

 警戒しながらオークステーキの匂いを嗅ぐパグに近付いてみたが、全く俺を気にしていない。

 俺は気にならない様だが、オークステーキは気になる様で、ずっと『フガフガ』と鼻を鳴らしながら匂いを嗅いでいる。

 俺は棍の先端でパグをつついてみた。

 パグはつつかれても攻撃の素振りは見せず、首を傾げながら俺の顔を見て来る。

 敵意は無さそうだ。

「お前も一緒にオークステーキ食べるか?」

 パグに声を掛けると、『ワンッ』と吠えて答えて来た。

 言葉は理解出来る様だ。

 リュックからプラスチックの皿を出し、オークステーキを1枚分盛り付けて、パグの前に置いてやる。

 短いシッポをブンブン左右に振り、涎を垂らしながら俺の顔を見て来る。

 可愛い・・・。

 俺はパグの頭を撫でてから「食べていいよ」と言うと、パグは凄い勢いでオークステーキを食べ始めた。

 パックご飯の残りをフライパンに入れて、空になったパックご飯の容器に水を入れてオークステーキの横に置いてあげた。

 そしてフライパンを持って、俺も夕食を再開した。

 ダンジョンの中で、探索者とパグが並んで食事を取る光景・・・、凄く面白い絵面になっている事だろう。

 だが、パグの見た目の謎生物と一緒に食べる夕食は、一人で食べる夕食よりも美味しく感じてしまった。

 俺もパグも食べ終わったので、使った食器やフライパンをビニール袋に入れてから収納し、パックご飯の容器に水を足してあげてから、俺はマットの上に座ってパグを観察していた。

 俺の持ち物の匂いを嗅いだり、俺の側に来て座ったりしている姿は、地上にいるパグと何ら変わらない。

 だがダンジョン内に、探索に入る人間以外の地上の生物が居るとは聞いた事が無い。

 食事が終わったら何処かに行くだろうと思っていたが、俺の側を離れる気配は無く、むしろマットの上でうつ伏せになり寝る寛いでいる。

 パグの正体もわからないし、このまま一緒に居ていいのかもわからない。

 いよいよ困った俺は、ファントムナイトを呼び出して、色々と教えて貰う事にした。

 『ファントムナイト、手が空いてたら来て!』っと念ずると、目の前の空間に裂け目が出来て、裂け目の中からファントムナイトが現れた。

「主の命を受け、ファントムナイト参上いたしました!」

 ファントムナイトは跪いて俺に挨拶をして来た。

「そんなに固くならなくていいよ。急に呼び出してごめんね。ちょっと聞きたい事があったから来て貰ったんだけど、忙しくなかった?呼んでも大丈夫だった?」

「はい。常に手は空いております故、もう少し主とご一緒させて頂けますと幸いです。して、何かお困りの様子ですが、私でよろしければお答えさせていただきます」

 ファントムナイトがそう言ってくれたので、俺はファントムナイトに疑問を投げかけた。

「俺の後ろに犬が居るでしょ?少し前にいきなり現れて、敵意が無いみたいで俺のマットの上で寛いでるんだけど、あれは地上の生物なの?それともダンジョンのモンスターなの?見た感じ、地上にいるパグって種類の犬と同じなんだけど」

「このお方は・・・」

 なんだ?ファントムナイトがパグを見て絶句した。

 そしてパグはファントムナイトを一瞬チラッと見たが、興味無さげに目を逸らすと、大の字に、なって寛ぎ始めた。

「このお方は・・・、ダンジョンのモンスターではなく、もっと高次元におられる方です。申し訳ありませんが、これ以上は私の口から申し上げる事は出来ません」

 ファントムナイトはそう言って頭を下げて来た。

「そっか・・・。無理矢理聞く事でもないし、ファントムナイトにも事情があるんでしょ?だったら仕方ないよ」

 俺がそう言うと、ファントムナイトは再度頭を下げて来た。

「この子は俺がご飯をあげたり、俺が連れて歩いても大丈夫なの?」

「主が強制されたりせずに、このお方がそれをお望みであれば、問題は無いかと思います」

 ファントムナイトはガチガチになりながら答えてくれた。

 そもそも全身を鎧で覆われているから、常にガチガチなのだが。

「あと、この前スキルオーブを2個くれたじゃん?あれってファントムナイト的には貴重な物なの?」

「あれは貴重な物ではありません。魔力の高い魔族やモンスターが、余剰な魔力を使って手慰みに作り出す、ただの玉でございます」

 なんだと?貴重な物ではKnight?

「じゃあさ、余ってたら欲しいなって言ったら少し分けて貰えたりするの?」

「あんな物でよろしければ、いくらでもお贈りさせていただきます。しかしながら、主に忠誠を受け取っていただいて、全盛期を凌ぐほど強くなりました。あんな物では、そのお礼にも、なりまさんが、よろしいのですか?主が望まれるのであれば、ドラゴンを狩って来たり、モンスターが溜め込んだ財宝を主に納める様に言いますが」

 あんな物がいいんです!

 それにモンスターに財宝を納めさせるってファントムナイトはそんなに偉いの?と思ったが、欲を出したら負けだ。

「あの玉でいいよ。俺の為にドラゴンを狩ったり、モンスターに財宝を出させなくても、俺にとってはファントムナイトが作ってくれた玉が一番価値がある物だから」

 俺がそう言うとファントムナイトは、「なんと・・・なんとありがたい・・・」といいながら、固まってしまった。

 こいつ良い奴なんだけど、いちいち大袈裟なんだよな・・・。

「ファントムナイトってどんな存在なの?ダンジョンで偉い人なの?」

 先程新たな感じた疑問をぶつけてみた。

 ファントムナイトはパグの方に頭を向けてから、俺に答えてくれた。

「私はモンスターではなく、モンスターよりも遥かに位の高い[魔族]になります。一応はダンジョンを含めた魔界を支配されている魔王様の軍に籍を置いており、魔王軍の四天王と呼ばれていますが、主に捧げた忠誠は変わりません。魔王軍の四天王は魔界で有力な魔族が魔王様に指名されてなる物で、魔王様と四天王の間には主従関係は存在しておりませんが、強い存在に惹かれる魔族は、魔王様を慕って魔王軍に参じております。魔王軍は色々と複雑な組織ですが、主やこの世界に仇なす存在では無いと言う事は断言出来ますのでご安心を」

 出たよ!魔王が出たよ!魔界も出たよ!

 俺が忠誠を受けた騎士は、とんでもなく大物だった。
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