現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 今朝確認した協会職員の錦織さんからのメッセージで、ヤル気が爆上がりした俺は、先代愛車のランボルギーニから、T社製の高級ミニバンに乗って桜ダンジョンに来た。

 ダンジョンの駐車場は高い柵に囲まれており、探索者証が無いと入れない。

 24時間体制で駐車場の入口に居る警備員の人に、探索者証を見せないと中に入る事は出来ないのだ。

 探索者は一度ダンジョンに入ると、一週間以上地上に戻らないのもザラである。

 その間、探索者協会に利益を齎してくれる探索者の資産を守る為に、探索者協会の駐車場は関係者以外は入られない様になっている。

 俺はランボルギーニ専用になっていた駐輪場ではなく、自動車の駐車枠に車を停めた。

 それからミニバンの後部座席で探索する為の身支度を整えてからゲートに向かう途中、顔見知りの探索者に「おっ!車買った?いいじゃん!カッコいいじゃん!」と声を掛けられたので、「めっちゃ頑張りました!維持する為に死ぬ気で働きます」と返しておいた。

 そしてゲートを通ってダンジョンに入り、今日の目標を決める。

 今日の目標は4階層のモンスターハウスの攻略と、出来る事なら5階層への到達だ。

 納車までの数日間はブラックカウとの戦闘の効率化と、新しい腰周りの装備に慣れる事と、右膝に固定したポーチに入れてある収納袋を使った使用武器の切替の練習に注力した。

 その甲斐もあって、ブラックカウは余裕を持って倒せる様になり、武器の切替もスムーズに出来る様になっていた。

 納車するまでモンスターハウスに潜らなかった理由は、万が一があったら初めてのマイカーに乗れなくなると思ったからだ。

 何を隠そう俺は、チキンで小市民だ。

 だから人生初の大きな買い物の、結果を見るまで大きな勝負に出られなかったのだ。

 無事に車も納車され、チョット・・・いや、凄くいい事もあったので、今日からの俺はヤル気が違う。

 ヤル気に満ちた俺は4階まで転移をして、メイスを片手にモンスターハウスへと向かった。

 途中戦闘をこなしながらモンスターハウスに辿り着くと、前回同様にモンスターハウスの中にはコカトリスとブラックカウが共存していた。

 俺はメイスを手に持ちモンスターハウスの中へと足を踏み入れた。

 足を踏み入れた瞬間、モンスターハウスと通路の境目に見えない壁が出来、モンスターハウス内のモンスター達は俺の方を一斉に見てきた。

 開戦だ。

 モンスター達が向かって来る前に、俺はモンスターの群れに飛び込んで、メイスを振り回した。

 コカトリスは頭を潰し、ブラックカウも頭に向かってメイスの強烈な打撃を入れる。

 数日間、ひたすら4階層を中心に戦闘を繰り返していたので、コカトリスもブラックカウも今の俺にとっては驚異となる敵ではない。

 順調にコカトリスとブラックカウの数を減らして、残るは前回居なかった巨大なブラックカウだけになった。
 
 俺はブラックカウの足を潰す為に、ブラックカウとの間合いを一気に詰めた。

 そしてブラックカウの左前足の関節にメイスを叩き込むと、左前足の関節が壊れてブラックカウは重たそうな音を立てて崩れ落ちる様に倒れた。

 安全に倒す為に左後ろ足の関節も壊してから、頭部へと近付き渾身の力を込めてブラックカウの頭にメイスを叩き込む。

 メイスはクリーンヒットしたが、ブラックカウは光の粒子にはならなかった。

 さすが大きいだけあって、耐久力が他のブラックカウよりも高い。

 追撃する為にメイスを振りかぶったその時、ブラックカウは頭を持ち上げて俺の足に向かって角を降ってきた。

 咄嗟の事で避ける事も防ぐ事も出来なかった俺は、体重を乗せる為に一歩踏み出していた右足の太腿の内側に、ブラックカウの角での一撃を貰ってしまった。

 角での一撃を貰った太腿は、燃え上がる様な熱さと鈍い痛みと共に、出血していたが、目の前の驚異を排除しなければ相手からの追撃が来るので、俺は痛みに耐えながらもブラックカウの頭にメイスを何度も叩き込んだ。

 ブラックカウは光の粒子になり、ドロップ品を残して消えていったが、俺の足のダメージは消えなかった。

 モンスターハウス内にモンスターが残っていないのを確認してから、痛みと出血に耐えながらドロップ品をかき集めて、収納袋に収納した。

 壁際に宝箱が出ていたので、宝箱を開けてみると、中には真っ黒なバスタードソードが一振入っていた。

 俺は手早くバスタードソードを収納してから、応急処置をする為に、その場に座りこんだ。

 収納袋から水と消毒用アルコール、応急処置の為に買っておいたガーゼと包帯を取り出してから、応急処置をする為にスボンを脱いでパンツ一枚になった。

 出血した傷に水をかけて血を洗い流すと、怪我の程度が見えて来た。

 幸いな事に切り傷は浅く、重要な血管の損傷は無い様だ。

 俺は血を洗い流した傷にガーゼを押し当てて、圧迫止血を始めた。

 最初はガーゼがすぐに血だらけになっていたが、何度か交換しながら止血を続けていると、血が止まって来た様でガーゼに血が染み込まなくなって来た。

 圧迫止血に使っていたガーゼを取り覗いて傷を見ると、非常に浅かったのだが傷は20cn近い長さがあった。

 傷に消毒用アルコールをぶっかけ、消毒用アルコールが傷に着いた痛みに悶絶する事暫く、痛みが収まってきたので、傷が拡がらない様に傷を寄せて蝶型絆創膏で傷を塞いでからガーゼを当て、テープで固定してから包帯を巻いた。

 包帯を巻き終わってから、血の着いたズボンを履いて、立ち上がろうとするも、太腿の鈍い痛みと包帯を巻いた事による圧迫感で、上手く立ち上がる事が出来なかった。

 今まではダンジョン内で自分が怪我をする事を考えていなかったので、応急処置は考えても治療をする事を考えていなかった。

 だが、自分が怪我をした事によって治療の必要性を考えさせられた。

 確か武器屋の横にある、探索用アイテムを取り扱っている[ダンジョンショップ]に回復薬が売っていると聞いた事がある。

 ダンジョンショップは、ダンジョン探索専用の探索用品を取り扱っているのだが、専用の探索用品なだけあって全てが割高と聞いていたので、俺はホームセンターで使えそうな物を揃えていた。

 だから一度もダンジョンショップには入った事が無いのだ。

 ヤル気に満ち溢れて探索に入ったが、予想だにしなかった受傷により、テンションが急降下したので、モンスターハウスで数時間呆けた後、1階層のモンスターハウス付近まで転移して、痛む足を引きづりながらゲートを通って地上に戻った。



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