現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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閑話8

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 俺達は桜ダンジョンをホームにしている探索者パーティーの[チェリーブロッサム]だ。

 銀級中年親父が二人と、青級の綺麗どころが二人の四人でパーティーを組んでいる。

 パーティー名はホームにしている桜ダンジョンの桜から取らせていただいた。

 おっさんには似合わないパーティー名だが、うちには桜の花よりも綺麗な女性探索者が二人いるからな。

 名前負けはしていない!・・・はずだ。

 俺達がメインでモンスターを狩っている階層は3階層と4階層で、高級食材をドロップしてくれるモンスターのお陰でそこそこ良い稼ぎを得る事が出来ている。

 そんな階層をメインで回っているのもあって、周囲にはチェリーブロッサムは食材ハンターと呼ばれる様になり、協会からの食材納入依頼を指名で貰える程になっていた。

 いつもは4階層で肉になるモンスターを狩っていたが、魚介類も需要があって良い金になると聞いたので、5階層に進んでみる事にした。

 5階層で出て来たスカイフィッシュをなんとか狩る事が出来、持ち帰ったスカイフィッシュの肉は驚く程高額で協会が引き取ってくれた。

 その金額は4人で割っても暫くは生活していける程に高額だった。

 それに味を占めた俺達は、5階層のスカイフィッシュだけでなく、6階層の魔イカも狙ってみる事にした。

 その為にダンジョンに潜り、6階層で初めて魔イカを見た時は、スカイフィッシュよりも小さいから楽勝だと思っていたが、いざ戦ってみると離れた所から水を吐き出して攻撃してきやがった。

 うちのパーティーは基本的にモンスターの攻撃は貰わない事を徹底している。

 パーティーによっては盾を装備したタンクが、わざとモンスターの攻撃を受けてモンスターの気を引いて、その隙に他のメンバーが攻撃をするってパーティーもあるらしいが、うちはモンスターの攻撃は貰わずに避けて、全員で攻撃を行うスタイルだ。

 それに伴って、おのずと防御力よりも機動力重視になり、必要最低限しか身を守る物を身に付けなくなっていた。

 それが命取りになってしまった。

 魔イカと戦っていた時に、魔イカの吐き出した水流が、俺の嫁さんの脇腹を掠めてしまった。

 所詮は水が掠めただけだと思っていたが、嫁さんは倒れ込んで大量の血を流していた。

 俺はすぐに嫁さんに駆け寄ったが、嫁さんの脇腹からの出血は激しかった。

 それを見た俺は撤退する事を決め、気を失った嫁さんを担ぎ上げて、5階層の階段室を目指して走り出した。

 運良く魔イカは追撃して来なかったので、5階層の階段室まで逃げる事が出来たのだが、新たな問題が発生してしまった。

 回復薬のを使い果たしており、回復薬が無いのだ!

 嫁さんの出血は止まらず、止血をして地上に連れ帰っても助からないのは見てわかる。

 俺達は焦った。

 特に俺が焦った。

 どうしても嫁さんを生きたまま地上に連れて帰りたい。

 絶望の中階段室を見渡すと、切羽詰まった俺達とは違って、気持ち良さそうに爆睡している男の姿が見えた。

 この階層まで潜って来られる探索者って事は、回復薬もしっかり用意しているはずだ。

 何よりこの探索者は俺達と違って、探索や戦闘でくたびれた感じが一切出ていない。

 俺は意を決して爆睡中の探索者を起こして、回復薬を持っていないか聞く事にした。

 どんな夢を見ているかは知らないが、「えへへっ、次は僕の番だよ♡」なんて寝言を言うくらいだから、相当幸せな夢を見ているんだろう。

 兄ちゃん申し訳ない!人の命がかかっているから勘弁してくれ!

 俺は心の中で盛大にお詫びを伝えてから兄ちゃんを起こした。

 勇気を出して兄ちゃんを起こして良かった。

 嫁さんは助かったし、地上に戻るまでの保険にって、兄ちゃんは低級回復薬を俺に押し付ける様に渡してから、6階層に進んで行った。

 名前も名乗らずに立ち去った兄ちゃんは、俺達チェリーブロッサムの英雄で、俺と嫁さんにとっては世界で一番大切な恩人になった。

 その後は戦闘を極力避けて進んで、無事に地上に戻る事が出来た。

 地上に戻った後は、協会職員に未帰還探索者の救助依頼が出されてい事を教えて貰ったが、無事に救助されたそうなので他人事ながら一安心した。

 それからドロップ品を買取して貰う為に買取カウンターへ行き、ドロップしたアイテムを査定して貰いながら、ダンジョンで危険な目に遭った事や、回復薬を無償で提供してくれて名前も名乗らずに立ち去ったソロ探索者に出会った事を話した。

 買取担当者に「その探索者さんって凄く若い男性の探索者さんじゃないですか?」と聞かれたので、その通りだと伝えると、何かを納得した様に笑顔で頷いていた。

 あの兄ちゃんは有名人なのか?

 気になって買取担当者に兄ちゃんの事を聞いても、

「あのお方がご自分で名乗らなかったのであれば、我々協会職員があのお方の名前を申し上げる事は出来ません。この桜ダンジョンをホームにされているので、いずれ再会する事が出来ると思いますよ」

 買取担当者はそう言って微笑んでいた。


 俺達チェリーブロッサムは、いずれ再会出来る日を願って、その日まで探索者として恥ずかしくない日々を送ろうと固く決意した。

 
 
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