現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

文字の大きさ
52 / 96

44

しおりを挟む
 ダンジョンの帰りに寄ったコンビニで、鮨屋と探索者を兼業している北川に声を掛けられた。

 声を掛けて来た内容は、スカイフィッシュと魔イカを協会よりも高く買い取るので売って欲しいとの事だった。

「ダンジョン産の資源を協会を通さずに売買するのはOKなんですか?他にも色々な面倒事が生じる気がしますが。それに俺はダンジョンでドロップしたまんまの姿でしか渡せないので、北川さんが扱う重量が増えますし、それに比例して金額も高くなります。今まで通り業者から購入された方が良いのでは?」

 俺にしてはまともな事を言った。

 ダンジョン産の食材は、魔力を内包しているので日持ちが良いとは言われているが、劣化が完全に止まってくれなくなる訳ではないので、地上産の物よりも遅いが確実に腐敗していく。

 それにスカイフィッシュなら1ブロックがだいたい15kgくらい、魔イカなら30kgの重さで丸々一杯での販売だ。

 結果かなり高つく事になり、魔イカに至っては歩留りが大きく下がるのでロスも大きいと思う。

 俺はそんな事を北川に伝えたのだが、北川納得してくれず食い下がって来る。

 ダンジョン産の食材を普及させたいとか、高級品として扱われているダンジョン産食材を色々な人に気軽に食べて貰いたいなどであれば協力したんだけどな・・・。

 話を聞く限り利益率を上げたいから、仕入れを抑えたいって風にしか聞こえない。

 正直金には困っていないので、協会よりも高く買い取ると言われてもその気にはならない。

 色々考えた末、今回の話を丁重に断って帰宅する事にした。

 それにしても、本職の鮨屋が本気になる程スカイフィッシュや魔イカは美味いのだろうか?

 豚系の肉は美味かった。

 となれば魚も?

 とりあえず帰ってからスカイフィッシュを食べてみよう。

 俺は今夜はマグロづくしだ!と意気込んで自宅までの短い距離の運転を楽しんだ。

 帰宅してからオカンに「今夜はお刺身の気分です」と伝えると、オカンは「それなら自分で買ってきなさい」と言ってきたので、俺はキッチンにスカイフィッシュのブロックを一つ出した。

 それを見たオカンは「マグロ?マグロの塊?」と興奮し、動画サイトを参考に柵取りし、無事に刺身へと変身する事に成功した。

 因みにスカイフィッシュのブロックを見たウメは、『ブブブブブブブッ』っと鼻を鳴らして興奮しておられた。

 大量の刺身になったスカイフィッシュは、オカンとウメと時々親父と俺のお腹の中に美味しく納められた。

 味の感想はマグロの超絶美味いやつ。

 スーパーの刺身やお手軽価格な寿司屋でしか食べた事は無かったが、そのマグロが足元にも及ばない程の味わいだった。

 魚特有の生臭さはなく、血の臭いもしない。

 ただひたすらにマグロの旨味が凝縮されいて、脂の甘味が強くなって、絹の様な滑らかな口当たりの刺身だった。

 赤みは適度な食感と強い旨味、大トロはマグロの旨味と脂の旨味が口の中で溶けていく鳥肌物の美味さ、中トロは赤身と大トロの良いとこ取りの美味さだった。

 親父は赤身で俺は中トロを好み、オカンとウメは大トロが気に入った様で、一口目の「うんまっ!」や「美味しい!」の言葉以外、食事を終えるまで誰も言葉を発する事はなかった。

 本当に美味しい物を食べると人間は無言になるって事と、ダンジョン産食材の底力は尋常ではない事がわかる食事だった。

 オカンには「こんな物を食べたら、スーパーの肉や魚が食べられなくなるでしょう!」、と言われたが親父には「これからもダンジョン食材お願いします」と、親父の少ない小遣いの中から5千円も俺に渡して来た。

 その後は風呂にゆっくり浸かり、ダンジョン探索の疲れを取ってから、我が家の魔界に戻る。

 黒級探索者になった俺の今夜の気合いは一味違う。

 俺は収納から[マップ]と[必中]のスキルオーブを取り出し、左右の手に一つずつ持つと、ベッドに横になり[スキル取得]と念じた。

 [スキル取得]と念じてから徐々に頭痛が激しくなり、頭が割れそうな痛みを感じたのを最後に意識を手放した。

 翌朝の目覚めはいつものスキルを取得した翌朝の目覚めとは違い、目覚めても現在進行形で激しい頭痛に襲われていた。

 気絶する程ではないが、このまま運転や探索が出来るか?って言われると100%無理なレベルの頭痛だ。

 俺はオカンに朝御飯は要らないと伝えてから、もう一度寝る事にした。

 それから数時間後、スマホの着信音に俺の睡眠が妨げられた。

 スマホの着信画面には【錦織さん】と表示されていたが嫌な予感しかしない。

 寝起きの声で電話を取ると、電話の向こうからは珍しく焦った彼女の声が聞こえ来る。

『ダンジョンにイレギュラーが発生しました!銀級以上の探索者には緊急招集がかけられたので、準備が出来次第協会支部に来てください!』

 錦織さんは用件だけ伝えると、『失礼します』と言って電話を切ってしまった。

 電話を切った俺は急いで身支度を整えてから桜ダンジョンに向かった。

 桜ダンジョンの駐車場は普段と変わらない感じだったのだが、協会の建物に入った瞬間空気が変わる。

 武装した職員が走り回っており、いつも笑顔だった受付嬢ですら、強ばった表情で受付に立っていた。

 俺は受付嬢に探索者証を提示して、錦織さんに呼ばれて来た事を伝える。

 俺の言葉を聞いた受付嬢は、受付カウンターから出て来て、「ご案内いたします」と言って俺を奥へと案内してくれた。

 案内されたのは支部長室、受付嬢がノックをして俺が来た事を伝えてから、支部長室の扉を開いて入室する様伝えてくる。

 俺が支部長室に入ると受付嬢は元来た方へ引き返して行き、支部長室の中には俺と青笹さん、錦織さんの三人だけになった。

「急にお呼び立てして申し訳ない。桜ダンジョンにイレギュラーが発生したので、急遽ご足労いただきました」

 青笹さんはそう言いながらソファーに座る様に勧めて来た。

 俺はソファーに座りながら青笹さんの次の言葉を待つ。

「現在到達している最深部は9階層なのですが、9階層よりも深い階層から、人型のモンスターが浅い層に向かって進行していると報告を受けました。それにより現在探索中の探索者以外のダンジョンへの立ち入りを禁止にし、現在人型のモンスターへの迎撃体勢を整えているところです」

 青笹さんがそう言い終わると、錦織さんがそれに続けて話を始めた。

「お呼び立てしたのは、その人型モンスターの対応に向かっていただきたいからです。今回は探索者協会からの緊急依頼として、報酬もお支払いいたします」

 話はこうだ。

 突如現れて階層を移動する人型モンスターの迎撃に、黒級探索者の俺が向かいう。

 銀級以上の探索者と迷宮機動隊、それに加えて戦闘可能な協会職員が1階層の階段室で防衛線を張る。

 現在招集可能な黒級は俺のみで、近隣の支部にも応援要請は出しているが、こちらに着くまで最短でも半日はかかるとの事。

 近隣の上位探索者の到着を待っている間にも、人型モンスターは浅い層に向かって来ているので、俺に先行して対応をして欲しいそうだ。

 あまり時間が残されていない様なので、俺はすぐに迷宮に潜る事にした。








※ストックガキレソウデス

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

処理中です...