現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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「あのデッカイ貝柱を食べやすいサイズに切って、貝殻の上に並べて貝殻ごと火にかけて焼くの。いい感じに火が通って来たら、そこに醤油を回し掛けてやると、その醤油が熱くなった貝殻の熱で焦げて香ばしくなる訳。その醤油の香ばしさと、焼かれた貝柱の香り、それが同時に襲って来る事を想像してみて」

「主様・・・。貴方は世界を滅ぼすおつもりですか?主様のお話だけで絶命する種族がいてもおかしくはないでしょう。かくいうこの私も、先程から口内に湧き出す唾液で何度窒息しかけた事か・・・。竜人族を滅ぼしたらすぐに作りましょう!私もお手伝いさせて頂きますのですぐに作りましょう!」

 俺とカミュは、なんとも緊張感の無い話をしていた。

 そして竜人族は正座をしたまま震えている。

 改めて考えると、魔王軍の四天王である、カミュも童子も、魔界では立場があり、敬われる存在なのだと気付いた。

 家ではオカンの手伝いをしたり、親父と酒を酌み交わしたり、オカンの作る料理を夢中になって食べたりと、戦いとは程遠い感じだったのだが、実際は空間が歪んで見える程の闘気を放ち、強者とわかる竜人族をガクブルさせるほどの存在だったのだ。

 そんなカミュとする会話は、ダンジョンキャンプ飯の話題ばかりなのが、これまた不思議な感じがする。

 そんな話で盛り上がっていると、空間が切り裂かれて、その中から童子と巨大な竜、そして竜人族が数名現れた。

「待たせてしまって申し訳ない。こいつが竜族の長だ。こいつには向こうで色々と説明をしてある。その説明をした上で、ここに竜人族の長と幹部も連れて来た。意味はわかるな?」

 童子は俺とカミュに説明をして来た。

 その説明を聞いて、正座をしている竜人族の震えはさらに強くなり、連れて来られた竜人族も震えている。

『ファントムナイトと鬼人族の主様。お初にお目にかかります。私は魔王軍四天王と竜族の長をしております。この度は我が眷属が大変な失礼を働いたと聞きました。その非礼をどうお詫びすれば良いか悩みましたが、鬼人族の長より竜人族を根切りにする事で手を打つと言われましたので、まずは取り急ぎ竜人族の長と幹部を連れて参りました。残りの者達は、私が向こうに戻ってから責任を持って片付けさせていただきますので、今回の事はこれでお許しいただけますと・・・』

 巨大な竜は頭を下げながら、俺へと話をしてくる。

 驚いたのはその声が、透き通った女性の声だった事だ。

 見た目と声とのギャッブで、俺の脳はバグっているが、話の中身は血なまぐさい話だった。

 正直、竜人族を滅ぼすほどの事ではないと思う。

 何も事情を知らない竜人族が、たまたま俺の前に現れて、結果的にカミュや童子を侮辱してしまっただけの事だ。

 俺的には大切な仲間を侮辱されたので気分は良くないが、多数の命で償って貰うほどの事では無いと思う。

「カミュも童子も俺の為に怒ってくれてありがとうね。俺も大切な[仲間を]侮辱されて、正直気分が良くないけど、この人達の命で償って貰うほどの事では無いと思うんだよね。この竜人族の人も、魔王様からの命令を忠実にこなそうとしただけで、最初からカミュと童子を侮辱していた訳じゃないんだし・・・」

「しかし主様のお命を奪うなどと、この竜人族は申しておりました。それを許せと?」

 カミュが言いたい事はわかる。

 その言葉が有難く感じるが、それで多数の命が失われるのは、俺は違うと思った。

「それはたまたま俺に言われたから、カミュも童子も怒ってくれたんでしょ?他の人族なら怒った?そういう事だよ。今回はたまたま俺だから、二人とも怒ってくれた。でも俺はこの人達の命までは欲しくないし、カミュ達と同じ魔王軍の一員でしょ?行方不明中の魔王様が戻った時に、竜人族が消えてたら、カミュ達も説明に困るでしょ?だから今回は俺の顔を立てて、竜人族を許して貰えないかな?この通り!」

 俺はそう言って、二人と竜族に頭を下げた。

 頭を下げた俺の姿を見たカミュと童子は、顔を見合わてから跪いた。

「頭をお上げください。我が主にそこまで言われたら、我等は受け入れるしかありません。我等も少し先走り過ぎました」

「人族である主と、儂ら魔族は価値観が違うのだが、自分を殺そうとして来た奴の命を救う為に、従魔である儂らに頭を下げる主の意を汲んで、今回は竜人族の命は奪わない事にしよう。竜族の長もそれで良いな?」

 カミュと童子の言葉を聞いた竜族は、俺に頭を下げてから童子の言葉に答える。

『それで構いません。主様からのご配慮、ありがたく受け取らせていただきます。・・・・ですがこのまま何もしないのは、我が種族としても示しが付きませんので、竜人族には私から罰を与えたいと思います』

 竜族の長はそう言うと、竜人族の方に顔を向けた。

 先程から気になっていたのだが、竜人族の面々は、何故全員正座をしているのだろうか?

 魔界でも反省をするべきシーンでは、正座がデフォルトなのだろうか?

『竜人族への罰は私が良いと言うまで、ファントムナイトと鬼人族の主様にお仕えする事です。鬼人族の長に話を聞く限り、理不尽な要求をされたりする事は無い様です。主様はダンジョンを探索されているそうなので、ダンジョン内で主様に危険が迫らない様に、竜人族が一丸となって主様をお助けする事が、今回の件で竜人族がする償いとします。良いですね?』

 竜族の長の言葉に、竜人族一同は平伏し、従う意志を見せた。

 その姿を確認したカミュは童子に、

「主様がお許しになられたのならば仕方がありませんね。申し訳ありませんが竜族の長とこの者達を向こうに送っていただいてもよろしいでしょうか?私は今後この様な事が起きない様に、主様に具申させて頂く事がありますので、後ほど戻ります。・・・・竜人族の者よ、戻る前に主様がダンジョンの先に進める様にしてから戻ってくださいね。今後どうするかは竜族の長を通じて連絡させていただきます」

 カミュは童子達にそう伝えると、童子もカミュの言葉を理解し、皆を連れて空間の裂け目に入り消えて行った。


 その姿を確認したカミュは、

「主様!それでは始めましょうか!」

 そう言って、デビルスカラップの料理を催促して来た。

 だが俺は考えた。

 デビルスカラップの刺身と焼きだけでは味気無いと・・・。

 そこで俺はブラックカウの肉やスカイフィッシュの肉も取り出し、さらにBBQコンロも取り出して、焼き貝柱とブラックカウはBBQで楽しみ、貝柱の刺身はスカイフィッシュの刺身と盛り合わせる事にした。

 デビルスカラップを二つ取り出し、貝を開いてからウロを外し、一つは全て刺身で、もう一つは全て焼きのサイズに切り、それからスカイフィッシュも刺身にして貝殻に洗った盛り付ける。

 その間にカミュにはBBQコンロの火起こしを頼んだのだが、カミュは魔法も使えたらしく、掌から出るほのおで簡単に火起こしを終えてしまっていた。

 肉も切り終わる頃には、コンロの上の焼き網には、既に焼き貝柱用の貝殻が乗せられていた。

 さすがカミュは仕事が早い。

 カセットコンロでお湯を大量に沸かして、鍋には大量のパックご飯が温められている。

 準備は整った。

 俺とカミュは顔を見合わせて頷き合う。

 その間も徐々に焼け始める貝柱の香ばしい香りが、俺とカミュの鼻を襲って来ていた。

 いよいよ肉を網に乗せようとしたその時、俺達の前に異変が起きたのだった。

 


 
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