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魔王軍が地上に攻め込んでいる間、俺は桜ダンジョン11階層の攻略に動いていた。
探索者としても、魔王軍としても戦争に参加をする気が無かったからだ。
10階層を超えると、ダンジョン内部の構造も変わってくる。
精巧に石材を積み上げて、表面を滑らかに仕上げてあった1~9階層までとは違い、11階層は平原タイプのフィールド型ダンジョンになっていた。
この階層、フィールド型に加え、なんと空まであり、空には太陽まである。
ダンジョンに潜っている事を忘れてしまいそうだ。
霊刀ヨコワと魔導拳銃を装備し、俺はダンジョンを歩き回っている。
9階層までとは違い、フィールド型は、進行する際の目標物が定められないので、自分の居る場所と目的地を把握しづらい。
こんな時に役に立つのが[マップ]スキルなのだが、構造物の無い所を歩き回ってマッピングしても、あまり達成感は得られなかった。
例えるなら、巨大なキャンバスを少しずつ塗り潰していくような感覚だ。
・・・っと、あまり愚痴を言っても始まらないので、とにかく歩き回ってみる事にする。
この平原、生えている草の高さは40cm程度で、他にはポツリポツリと木が生えている様な場所だ。
見通しは凄く良いが、見通しが良い割にモンスターはまだ見つかっていない。
成果と言えば、平原に生える気に実っていた果実[アッポル]を大量に収穫出来た事くらいだ。
このアッポル、見た目は20cm大のリンゴで、鑑定結果では[美味しい果実]と出たので、一つ食べてみる事にした。
表面をよく擦ってから齧りついてみると、爽やかなリンゴの香りと濃厚な甘さ、そして程よい酸味が口の中に広がった。
リンゴの超上位互換な果実だった。
それからは見つける度にアッポルを収穫しているのだが、11階層での収穫はアッポルだけで、モンスターには出会えてはいない。
だが俺は諦める事なく、ダンジョンを歩き続けた。
ーーーーーーーーーー
その頃、日本政府と探索者協会は、魔王軍からの【宣戦布告に応じる】の宣言が本物だった事を身をもって知り、その対応に追われていた。
国会の会期中だった事もあり、主要な政治家は国会議事堂への第一波攻撃で負傷しており、現在治療を受けている。
そこで防衛の空白を作らない為、自衛隊と探索者協会、それに警察と公安が加わり、対策会議が開かれた。
会議での議論は白熱したが、魔王軍の拠点が分からない為、偵察する事も攻める事も出来ないの現状なので、防衛に徹する事と、次に現れたら会談を申し入れる事が決まった。
そして自衛隊と探索者協会から公安に、黒級探索者 安達臣の捜索と任意同行、魔王軍から名前の出た探索者協会の木下の捜索と身柄確保が依頼された。
自衛隊は政府の重要施設を防衛する為に、各部隊に待機命令を出した。
探索者協会は、有事に備える為に、ダンジョン周辺に探索者を駐留させる事を決定し、探索者に招集命令を出した。
警察は有事の際に起きる治安悪化を防ぐ為に、警戒を強めて治安維持に務める事にし、全国の警察にその旨を伝えた。
公安は黒級探索者の捜索と、今回の戦争の原因を作ったと思われる協会職員の身柄確保の命令を出した。
政治家が居なくても日本は守れる!そう意気込んで会議に集まった面々は、自分の組織が担った責任を全うする為に一斉に動き出した。
だがそんな日本政府の動きを嘲笑うかの様に、魔王軍の攻勢は続く。
都内にある、政府関係者の中でもVIPが搬送された病院の一室に、隠密に長けた不死族の工作員は隠れている。
工作員の目の前には、日本国内閣総理大臣である岸破茂が治療を受ける為に横になっており、工作員はその岸破を害する為に岸破の監視を続けていた。
少し前に工作員が新たに念話で受けた任務の内容は、【殺さずに最大限の絶望を与える事。命と思考能力、言語能力さえあれば、四肢を欠損していようが構わない】だった。
不死族の工作員は任務遂行のチャンスが訪れるのを、岸破の病室の中でひたすら待った。
病室の外には警護のSP、病室の中には秘書や医療関係者がおり、中々チャンスが訪れない。
だが命令は絶対。
チャンスを作り出す為に、工作員は荒業に出る事にした。
隠形を保ったまま、工作員は魔法を使い病室内に居る人族の意識を刈り取る。
命を奪ったのではなく、皆眠らせただけだ。
そして岸破に近付き、岸破の四肢を腕は肘で、足は膝で切断し、切断面には回復魔法をかけて、出血と痛みを止める処置をする。
そして切断した四肢は、縫合される事を防ぐ為に風魔法で細かく切り刻み、岸破が横になっているベッドの横に放置した。
任務が完了した事を、念話で不死族の長へと報告すると、不死族の長からは労いの言葉と共に、身を隠したまま岸破が絶望する姿を確認してから戻る様に指示を受けた。
工作員は隠形を保ったまま、病室の天井に貼り付いて、病院内に居る人族達の睡眠状態を解除する魔法を唱えた。
睡眠から覚醒した人族は、岸破が手足を失った事に気付いていなかったが、岸破のベッド横に放置されている血塗れの山を見付けると絶叫した。
その絶叫を聞いて動こうとした岸破は、自分の両肘から先、両膝から先が無い事に気付き、叫び声を上げる。
そして病室内に居る人族達は、血塗れの山の正体が、岸破の手足だった事を知る事になった。
総理大臣である岸破は、魔王軍の恐ろしさを身を持って知る事になり、自衛隊に防衛出動の命令を出す事を決定し、魔王軍と少しでも早い停戦交渉を望むのであった。
ーーーーーーーーーー
ダンジョン11階層を歩き回る事数時間。
未だに収穫は大量のアッポルだけで、階段はおろかモンスターさえも発見出来ていなかった。
アッポルは美味しいので、大量にあっても困らないが、せっかくのダンジョン探索でモンスターと遭遇しないのは正直退屈だ。
マップスキルで自動作成されるマップは、まだまだ完成には程遠く、少し疲れた俺はダンジョン10階層に戻る事にした。
転移で10階層の魔王専用テント内に戻り、戦争の状況をウメちゃんに教えて貰う。
ウメちゃんから教えて貰った戦争の状況は、想像を遥かに超えていた。
国会議事堂を襲撃し、国会議員を負傷させ、日本の政治能力を一時的に麻痺させる事に成功。
事の発端である探索者協会桜ダンジョン支部の施設を完全破壊。
日本政府のトップ、内閣総理大臣の四肢を奪い、【いつでも命を奪う事が出来る】と恐怖を刷り込む事に成功。
そしていずれも死者は出していない・・・。
やり過ぎな感じはあるが、戦争の一部と捉えるならば、かなり手加減をしているのだろう。
魔王軍の攻撃を受けて日本政府は、自衛隊への防衛出動を要請し、公安には俺と木下の身柄確保を命じたらしい。
「追い込まれた人族は何をするか分かりませんので、主様はダンジョンから出ない様にお願いします。お母様やお父様には私の配下を護衛に付けていますので安心してください」
と言われたが、政府に俺が探されるのは正直あまりいい気がしない。
戦争を早く終わらせる為、そして俺や俺の関係者にこれ以上被害を出さない為に、新たな一手を打つ事にする。
「ウメちゃん、多分人族は今回の戦争が何故起きたのかを知らないと思うんだよね。だから俺が政府関係者の所に出向いて、戦争の原因になった事を説明してこようと思うけどいいかな?」
「そんな危険な事を主様にさせられません!」
予想通りの答えが帰って来た。
「戦争を続けるにしても、止めるにしても、一人の人間のエゴで起きた愚かな戦争って事を向こうに分からせないと、同じ様な考えの人間はいくらでも出て来ると思うんだよね。たぶん俺を探している組織も、このままの状態だったら俺を無事では済まさないはず。だから事態が悪化しない様に、一度説明だけして、政府に考える余地を与えようと思う。どうかな?」
俺の言葉を聞いたウメちゃんは、暫く考え込んでから、驚くべき返答をして来た。
その返答を聞いて、種族の違いを実感する事になる。
探索者としても、魔王軍としても戦争に参加をする気が無かったからだ。
10階層を超えると、ダンジョン内部の構造も変わってくる。
精巧に石材を積み上げて、表面を滑らかに仕上げてあった1~9階層までとは違い、11階層は平原タイプのフィールド型ダンジョンになっていた。
この階層、フィールド型に加え、なんと空まであり、空には太陽まである。
ダンジョンに潜っている事を忘れてしまいそうだ。
霊刀ヨコワと魔導拳銃を装備し、俺はダンジョンを歩き回っている。
9階層までとは違い、フィールド型は、進行する際の目標物が定められないので、自分の居る場所と目的地を把握しづらい。
こんな時に役に立つのが[マップ]スキルなのだが、構造物の無い所を歩き回ってマッピングしても、あまり達成感は得られなかった。
例えるなら、巨大なキャンバスを少しずつ塗り潰していくような感覚だ。
・・・っと、あまり愚痴を言っても始まらないので、とにかく歩き回ってみる事にする。
この平原、生えている草の高さは40cm程度で、他にはポツリポツリと木が生えている様な場所だ。
見通しは凄く良いが、見通しが良い割にモンスターはまだ見つかっていない。
成果と言えば、平原に生える気に実っていた果実[アッポル]を大量に収穫出来た事くらいだ。
このアッポル、見た目は20cm大のリンゴで、鑑定結果では[美味しい果実]と出たので、一つ食べてみる事にした。
表面をよく擦ってから齧りついてみると、爽やかなリンゴの香りと濃厚な甘さ、そして程よい酸味が口の中に広がった。
リンゴの超上位互換な果実だった。
それからは見つける度にアッポルを収穫しているのだが、11階層での収穫はアッポルだけで、モンスターには出会えてはいない。
だが俺は諦める事なく、ダンジョンを歩き続けた。
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その頃、日本政府と探索者協会は、魔王軍からの【宣戦布告に応じる】の宣言が本物だった事を身をもって知り、その対応に追われていた。
国会の会期中だった事もあり、主要な政治家は国会議事堂への第一波攻撃で負傷しており、現在治療を受けている。
そこで防衛の空白を作らない為、自衛隊と探索者協会、それに警察と公安が加わり、対策会議が開かれた。
会議での議論は白熱したが、魔王軍の拠点が分からない為、偵察する事も攻める事も出来ないの現状なので、防衛に徹する事と、次に現れたら会談を申し入れる事が決まった。
そして自衛隊と探索者協会から公安に、黒級探索者 安達臣の捜索と任意同行、魔王軍から名前の出た探索者協会の木下の捜索と身柄確保が依頼された。
自衛隊は政府の重要施設を防衛する為に、各部隊に待機命令を出した。
探索者協会は、有事に備える為に、ダンジョン周辺に探索者を駐留させる事を決定し、探索者に招集命令を出した。
警察は有事の際に起きる治安悪化を防ぐ為に、警戒を強めて治安維持に務める事にし、全国の警察にその旨を伝えた。
公安は黒級探索者の捜索と、今回の戦争の原因を作ったと思われる協会職員の身柄確保の命令を出した。
政治家が居なくても日本は守れる!そう意気込んで会議に集まった面々は、自分の組織が担った責任を全うする為に一斉に動き出した。
だがそんな日本政府の動きを嘲笑うかの様に、魔王軍の攻勢は続く。
都内にある、政府関係者の中でもVIPが搬送された病院の一室に、隠密に長けた不死族の工作員は隠れている。
工作員の目の前には、日本国内閣総理大臣である岸破茂が治療を受ける為に横になっており、工作員はその岸破を害する為に岸破の監視を続けていた。
少し前に工作員が新たに念話で受けた任務の内容は、【殺さずに最大限の絶望を与える事。命と思考能力、言語能力さえあれば、四肢を欠損していようが構わない】だった。
不死族の工作員は任務遂行のチャンスが訪れるのを、岸破の病室の中でひたすら待った。
病室の外には警護のSP、病室の中には秘書や医療関係者がおり、中々チャンスが訪れない。
だが命令は絶対。
チャンスを作り出す為に、工作員は荒業に出る事にした。
隠形を保ったまま、工作員は魔法を使い病室内に居る人族の意識を刈り取る。
命を奪ったのではなく、皆眠らせただけだ。
そして岸破に近付き、岸破の四肢を腕は肘で、足は膝で切断し、切断面には回復魔法をかけて、出血と痛みを止める処置をする。
そして切断した四肢は、縫合される事を防ぐ為に風魔法で細かく切り刻み、岸破が横になっているベッドの横に放置した。
任務が完了した事を、念話で不死族の長へと報告すると、不死族の長からは労いの言葉と共に、身を隠したまま岸破が絶望する姿を確認してから戻る様に指示を受けた。
工作員は隠形を保ったまま、病室の天井に貼り付いて、病院内に居る人族達の睡眠状態を解除する魔法を唱えた。
睡眠から覚醒した人族は、岸破が手足を失った事に気付いていなかったが、岸破のベッド横に放置されている血塗れの山を見付けると絶叫した。
その絶叫を聞いて動こうとした岸破は、自分の両肘から先、両膝から先が無い事に気付き、叫び声を上げる。
そして病室内に居る人族達は、血塗れの山の正体が、岸破の手足だった事を知る事になった。
総理大臣である岸破は、魔王軍の恐ろしさを身を持って知る事になり、自衛隊に防衛出動の命令を出す事を決定し、魔王軍と少しでも早い停戦交渉を望むのであった。
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ダンジョン11階層を歩き回る事数時間。
未だに収穫は大量のアッポルだけで、階段はおろかモンスターさえも発見出来ていなかった。
アッポルは美味しいので、大量にあっても困らないが、せっかくのダンジョン探索でモンスターと遭遇しないのは正直退屈だ。
マップスキルで自動作成されるマップは、まだまだ完成には程遠く、少し疲れた俺はダンジョン10階層に戻る事にした。
転移で10階層の魔王専用テント内に戻り、戦争の状況をウメちゃんに教えて貰う。
ウメちゃんから教えて貰った戦争の状況は、想像を遥かに超えていた。
国会議事堂を襲撃し、国会議員を負傷させ、日本の政治能力を一時的に麻痺させる事に成功。
事の発端である探索者協会桜ダンジョン支部の施設を完全破壊。
日本政府のトップ、内閣総理大臣の四肢を奪い、【いつでも命を奪う事が出来る】と恐怖を刷り込む事に成功。
そしていずれも死者は出していない・・・。
やり過ぎな感じはあるが、戦争の一部と捉えるならば、かなり手加減をしているのだろう。
魔王軍の攻撃を受けて日本政府は、自衛隊への防衛出動を要請し、公安には俺と木下の身柄確保を命じたらしい。
「追い込まれた人族は何をするか分かりませんので、主様はダンジョンから出ない様にお願いします。お母様やお父様には私の配下を護衛に付けていますので安心してください」
と言われたが、政府に俺が探されるのは正直あまりいい気がしない。
戦争を早く終わらせる為、そして俺や俺の関係者にこれ以上被害を出さない為に、新たな一手を打つ事にする。
「ウメちゃん、多分人族は今回の戦争が何故起きたのかを知らないと思うんだよね。だから俺が政府関係者の所に出向いて、戦争の原因になった事を説明してこようと思うけどいいかな?」
「そんな危険な事を主様にさせられません!」
予想通りの答えが帰って来た。
「戦争を続けるにしても、止めるにしても、一人の人間のエゴで起きた愚かな戦争って事を向こうに分からせないと、同じ様な考えの人間はいくらでも出て来ると思うんだよね。たぶん俺を探している組織も、このままの状態だったら俺を無事では済まさないはず。だから事態が悪化しない様に、一度説明だけして、政府に考える余地を与えようと思う。どうかな?」
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