現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

文字の大きさ
86 / 96

72

しおりを挟む
 テントの中に新たに現れた男、陸上自衛隊を名乗る男だが、その男はリリスに倒されいた公安委員会の大野とその仲間の額を拳銃で撃ち抜き、公安の犬の無礼をこれで収めて欲しいと言って来た。

 こんなの親父がたまに見ていた、任侠映画でしか見た事がない。

 そして男は俺にこう告げて来る。

「我々と交渉をして欲しい」と。

 男の言葉に俺は返答をする。

「所属や姓名を名乗れない方と何を交渉するんですか?身元を明かせない方との交渉は出来ませんし、そもそも今回の騒動で俺は交渉に応じる立場にもありません」

「でも仲介は出来るのでは?」

「仲介はしようと思えば出来ますが、脅す様な真似をされたりしたら、その気も無くなりますよね。あなた方政府関係者は、俺を脅す事を選んだ。だから俺は仲介に応じない事を選んだ。自業自得では?」
 
「それは探索者協会と公安がした事であって、我々自衛隊や防衛省は脅す様な真似はしません。純粋に国家と国民の生命と財産を守る為に、仲介をお願いしたいのです」

「所属と姓名を名乗れる様になったら、話を聞きます。ひとまず今日のところは失礼させて貰います」

 俺はリリスに目配せをして、テントを出て行った。

 外に出るとテントの周りには、完全武装した迷彩服の一団がテントを囲む様に展開していたが、俺とリリスの行く手を阻む様な事はして来なかった。

 俺とリリスはザワつく周囲を無視して、ダンジョンゲートがあったところへと移動する。

 そして周囲に誰も居ない事を確認すると、転移でダンジョン10階層へと移動した。

 10階層に戻るとリリスは、

『ご立派でした。ですが鉄の礫を手で受け止められるのはいただけません。私がお護りするので、もっと私を頼ってください』

 と言って来た。

 リリスの言葉に俺は頷き返し、ウメちゃんのテントへと向かう。

 テントまでの短い道中は、魔族に囲まれる事もなく、スムーズに移動出来た。

 移動は出来たのだが、魔族の皆さんはリリスを見つけると、跪いて頭を下げている。

 護衛のリリスはそんなに偉い人なのであろうか?

 俺の疑問はまた一つ増え、後でウメちゃんに答え合わせをしようと思いながらテントを目指して歩いた。


ーーーーーーーーーー

 シンとリリスが立ち去った後のテント内は、テントの外に居た陸上自衛隊員が公安の人間を死体袋に入れ、公安の人間を撃った男は森田と会話をしていた。

「何故公安はあの様な暴挙に出たのですか?協会職員である貴方はそれを止める事は出来なかったのですか?」

「公安と私は指示系統が違うので、何故あんな事になったのかは分かりません。ただ、安達さんが来る少し前にここに来て、上からは協力する様にとしか言われてなかったので、本当に何も知らないんです!」

 陸上自衛隊の男の問いに、森田は答える。

「話を変えましょう。探索者協会は彼をどうするつもりですか?」

「彼は協会の元理事に理不尽な要求をされた被害者です。この様な事態に発展させてしまった事は、協会に責任があり、彼には責任はありません。ですので現在私の知る限りでは、彼の探索者資格を剥奪する等の処分が下される話は聞いていませんし、進言するつもりもありません」

 森田の話を聞いて、陸上自衛隊の男は少し考える素振りを見せてから、森田に言葉を返す。

「彼が魔王軍と少なからず誼を通じているのであれば、彼の機嫌を損ねる事により、ダンジョンの封鎖は解かれませんよね?協会は打算的に彼を罰しないと?」

「そう言った事はありません。彼は本当に協会の薄汚い一面の被害を受けた被害者ですから。罰するつもりも、罰する理由も無いのです」

「なるほど・・・。ですが政府は彼を良しとは思わないでしょう。ここであった事、ここで聞いた事、全て報告します。その報告を受けて、政府は彼を良しとするでしょうか?普通に考えたら良しとはならないですよね?恐らく彼の意思が介在していなくても、今回の騒動に関わった者として、彼は何らかの罰を下されるでしょう。それが例え被害者でも・・・ね」

 陸上自衛隊の男はそこまで言うと、テントを出て行った。

 テントに一人残された森田は、協会会長に電話をかける。

「もしもし、森田でございます。黒級探索者と接触出来ましたが、公安の大野さんが彼に発砲をして、全てが台無しになってしまいました。」

『木下との関係と、魔王軍との関係は分かりましたか?』

「はい、木下との関係は、木下が彼の命を狙い襲って、彼は重症を受けたそうです。そして魔王軍との関係は、ダンジョンで知り合い仲良くなった魔族が魔王軍の関係者だそうです。木下が彼を襲った事を、人類から魔王軍への宣戦布告と見なしたのではないかと推察いたします」

『それならば彼を懐柔しなければ、探索者協会の未来も、ダンジョンの開放も明るくはならないって事ですね。彼を懐柔出来そうですか?』

「かなり難しいかと・・・。私が公安の暴挙に居合わせた事と、陸上自衛隊が・・・恐らく特殊部隊だと思われますが、介入して来ました。陸上自衛隊は公安の人間を一人残らず射殺し、その後彼に交渉をして欲しいと言っておりましたが、彼は「官姓名を名乗れない相手とは交渉出来ない」と突っぱねておりました。彼は国家を良く思ってはいないと思います」

『そうですか・・・。ならばこちらも対策を考えます。出来るならば彼を手中に収めたいのですが、無理であれば良い関係を築きたいところですね。ご苦労さまでした。動きがあれば連絡をしてください』

 協会会長はそう言って電話を切った。

 だが、森田は思った。

 彼との関係改善は非常に困難であると・・・。


ーーーーーーーーーー

 桜ダンジョン10階層に戻り、ウメちゃんに「話にならなかった」と伝えてから、俺は再度11階層へと向かった。

 アッポルの乱獲と、12階層への階段を探す為だ。

 俺はアッポルを見つけ次第乱獲し、マップスキルで埋められていない場所を歩き回っている。

 この11階層に入り、未だにモンスターとは遭遇してなく、ここがダンジョンだという事を忘れそうになっていた。

 そんな時、前方で魔力が膨れ上がるのを感じる。

 いよいよ待ちに待ったモンスターとの遭遇だと、胸をワクワクさせながら魔力を感じた場所へと向かう。

 その場所に辿り着くと、膨れ上がった魔力の中から、一体のモンスターが現れた。

 そのモンスターは、巨大な身体に鋭い牙と爪を持った、虎型とモンスターで、牙を剥いて俺を威嚇している。

 これが11階層以降のモンスター・・・、胸の高鳴りを抑えながら右手で腰から霊刀ヨコワを抜き、左手には魔道拳銃を持ち、虎型モンスターと対峙した。

 モンスターは俺を威嚇して来るが、襲いかかっては来ない。

 様子を見ているのだろう。

 俺は必中スキルを発動し、魔導拳銃をモンスターに向けて発砲した。

 発砲に合わせてモンスターへと近付き、ヨコワでの突きをモンスターへと放つ。

 魔導拳銃の射撃で、少なからずダメージを受けて怯んだモンスターは、俺の突きを躱す事が出来ず、ヨコワの切っ先はモンスターの首の辺りに深く入り込んで行った。

 俺はすぐさまヨコワでモンスターを抉りながら切っ先を首から抜き、至近距離での射撃をモンスターに浴びせながら、首の辺りをヨコワで切りつけた。

 ヨコワの刃はモンスターの首を中半まで断つ事が出来、モンスターは首から大量の血液を流しながら、崩れる様に倒れた。

 だがまだ絶命していない。

 今まで散々油断してピンチを招いた俺は、倒れたモンスターにトドメを刺すまで、攻撃の手を緩めない。

 魔導拳銃を腰に差し込み、ヨコワを両手で持つと、モンスターの首を跳ね飛ばす為に全力で振り下ろした。

 ヨコワの刃はモンスターの首を両断し、首を失った虎型モンスターは光の粒子になり、ドロップ品へと変わっていった。

 虎型モンスターのドロップ品は、大きな魔石と立派な毛皮、大きな牙が二本と豪華な装飾の宝箱だった。

 俺は魔石を収納し、毛皮を鑑定してみる事にした。

 【ビッグタイガーの毛皮:ビッグタイガーの毛皮。上品で滑らかなな手触りと、寒さへの耐性を持つ毛皮】

 なるほど、あの巨大な虎はビッグタイガーって言うのね。

 見た目そのままの名前だった。


 次は牙、

 【ビッグタイガーの牙:ビッグタイガーの鋭い犬歯。武器の材料として非常に優秀】

 武器の材料ね・・・。

 そのうちナイフでも作ろうかな。

 そしてお次は宝箱だが、鑑定では罠は無いと出ているので、すぐに宝箱を開けた。

 宝箱の中には、魔導拳銃が一丁と、瓶に入った液体が10本入っていた。

 俺は宝箱から中身を取り出して収納に入れてから、宝箱も収納に入れた。

 戦闘が終わりドロップ品の回収も終えると、地響きがし始めてビッグタイガーの現れた場所に階段が現れた。

 この階層はボスモンスターを討伐しなければ、階段は現れない仕様だった様だ。

 俺は現れた階段を降り、12階層へと足を踏み入れた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

処理中です...