現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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 人類初の12階層、本来であれば国中が湧き上がる程の偉業なのだが、現在ダンジョンには誰も入る事が出来ない設定になっている。

 本当は魔王軍や俺は自由に出入り出来るのだが、探索者達は入る術が無いので、ダンジョンには入る事が出来ない。

 なのでこの感動は独りぼっちで独り占め、やるせない気持ちのまま12階層へと足を踏み入れた。

 12階層もフィールド型ダンジョンで、平原と森林の混合となっている様に見える。

 周囲にモンスターの気配が無い事を確認した俺は、9階層の階段室へと転移し、野営の準備を始めた。

 なんで10階層で野営しないのかって?

 そんなの簡単だ。

 魔族な囲まれてちょっとだけ怖いからだ!

 いくら魔王や四天王が[主]と言ってくれたとしても、戦闘力で言えば足元にも及ばない。

 カミュに勝てたのはたまたまであって、本来なら俺の攻撃なんざ掠りもしないだろう。

 そんな強者の中でゆっくり休めるのかって?それは無理な話だ!

 だから9階層の階段室で、一人気ままにソロキャンプを楽しむ事を選んだのだ。

 俺は調理器具を取り出し、それからブラックカウのリブロースを取り出した。

 カセットコンロでパックご飯を温めながら、リブロースを4cmの厚さへと切っていく。

 今夜食べる予定の2枚だけまな板の上に残し、残りは収納へ。

 まな板に残した2枚のリブロースの脂身を適度に切り離し、その脂身は細かく刻んでニンニクと一緒に鍋に放り込む。

 それに水を注いで、カセットコンロで煮立ててから乾燥ワカメを入れて味を整えれば、簡単にスープが出来上がる。

 次はフライパンを熱して、牛脂を敷いてから、強火でリブロースを焼く。

 焼き固まったらひっくり返して、反対を中火で焼く。

 焼き固まったらフライパンに蓋をして、一度コンロから外してフライパンの温度を下げる。

 その間もフライパンの中でリブロースは蒸し焼きになり、いい感じで火は通っていく。

 そして焼きあがったステーキに、スーパーで買って来たステーキソースをかければ完成だ。

 熱せられたフライパンでソースが焦げる香り・・・、たまりません・・・。

 出来上がった料理をアウトドアテーブルに並べて、いざ実食ってタイミングでリリスが現れた。

『10階層で夕食の準備が整いました・・・って、ご自分で作られていたのですね。・・・、我々魔族がご用意した夕食よりも豪華ですね・・・。えっ?魔族が何を準備したのかって?パンとスープをご用意いたしましたが、この料理の前ですと、霞んで見えます』

 リリスは物欲しそうな目で、俺の料理を見ている。

『私は10階層に戻りますね。あっ、お気遣いなく。軍事活動中の食事はパンとスープでも十分豪華ですから・・・。そもそも魔族は魔力があれぱ良いので、食事は必要ではありませんし』

 俺は先程から何も言葉を発していない。

 それなのにリリスは何か意味ありげに一人で会話を成立させている。

 もしかして食事に誘うのを待っているのだろうか?

 一応声を掛けてみる事にした。

「良かったら一緒に食べます?簡単に作った『はい!是非!』男飯ですが・・・」

 魔族ってなんでこんなに残念なんだろう。

 食べるか聞くと、誰もが食い気味に答えて来る。

 俺は収納から食器を出して、リリスの分を盛り付けてから渡した。

 飲み物は何がいいか分からなかったので、缶ビールだ。

 そしていざ実食!

 初手は口に潤いを与える為のスープから。

 某有名グルメ漫画で出ていたレシピを丸パクリして作ったスープだ。

 不味い訳が無い!

 牛脂の甘みと香りがニンニクの香りと一体となり、さらにワカメの香りが加わる事により、食欲を揺さぶってくる。

 仕上げにかけたコショウも良い仕事をしている。

 そしてメインのブラックカウのリブロースステーキ。

 こいつも不味い訳が無い!

 ただでさえ美味いブラックカウの肉、その中でも最もサシが入りジューシーなリブロースをステーキで食す・・・。

 はぁ(*´Д`*)、口の中が肉汁の洪水でに覆われて、肉汁洪水警報が発令されそうだ。

 適度な噛みごたえと、溢れ出る肉汁、そして市販の美味しいステーキソース、こいつは堪らん。

 肉の余韻が残っている口に、パックご飯を掻き込んで良く噛み締め、それをスープで喉の奥へと流し込む。

 堪らん・・・。

 あとはひたすらそれのループ。

 気が付けば完食していて、食べる事に夢中になって放置してしまってあたが、目の前に座るリリスも完食して、だらしない顔をしていた。

 もちろん食事もビールも綺麗に無くなっていた。

 俺はフライパンを洗ってから、フライパンにバターを投入して火にかけ、くし切りにしたアッポルを溶けたバターの上に並べて加熱した。

 そして焼きあがったアッポルを2枚の皿に分けて盛り付けると、収納から最強の危険物でもある、バニラアイスを取り出して、熱々の焼きアッポルの上に盛り付けた。

 リリスにも渡し手から、焼きアッポルのバニラアイス添えを食べる。

 アルミホイルで包んで焼いた焼きリンゴとは違い、表面は熱々で柔らかいが、芯は程よく食感が残っており、それにバターの香りとバニラアイスが加わると、これはもう食べる凶器でしかない。

 その証拠に、リリスは焼きアッポルのバニラアイス添えに打ち負かされた様で、涙を流しながら食べている。

 ダンジョン産の食材・・・危険が危な過ぎるくらい美味しいです!


 食事を終えて片付けまで終わると、ようやくリリスがこちらの世界に戻って来た。

『魔王様からは暫くの間護衛にと言われましたが、もし良ければこのまま従魔にしていただいて、生涯護衛をさせていただきたいのですが・・・』

 予想通りの展開になる。

 魔族は美味しい物を食べると、すぐに従魔になろうとする。

 別に迷惑では無いのだが、ウメちゃんの配下を片っ端から従魔にするのは、何か悪い気がする。

「魔王様が良いって言ったら考えます。なので魔王様に聞いてみてください」

 今の俺が言える精一杯の答えだ。

 リリスは『魔王様に聞いてみます』と嬉しそうに答えて来たが、果たしてウメちゃんはOKと言うのだろうか。

 そんな会話をしながら寝床の準備をしていると、階段を上がってくる足音が聞こえて来た。

 足音のする階段の方に視線を向けると、階段から現れたのは、ウメちゃんと護衛のルシフェルだった。

 階段室に現れたウメちゃんは、鼻をヒクヒクさせて辺りの匂いを嗅ぐと、俺に詰め寄って来た。

「主様!もしかして何か作られたのですか?いえ、作られたのは間違いありません!私の鼻がそう言っています!と言う事は、リリスも食べたんですね!主様がおひとりで食べるはずはありません!必ず分け与えるのが主様です!なのでリリスも食べたのでしょう?」

 ウメちゃんの残念アタックは俺からリリスへと矛先が変わり、リリスはウメちゃんに詰められている。

 そしてリリスはウメちゃんの勢いに負けてしまった・・・。

 その結果、ウメちゃんとルシフェルにも同じメニューを提供する事になり、俺は再度料理を始める事になった。

 その後、料理を食べて満足したウメちゃんとルシフェルは、10階層へと歩いて帰って行った。

 そう言えば帰り間際、

「我々が攻撃を加えた混乱に乗じて、周辺国が侵略を目論んでいる様です。主様の生まれ育った国を、今回の件に関係無い者達に踏ませる様な真似はいたしませんので、魔王軍にお任せください」

 と言っていた。

 一人の欲から始まった今回の騒動、彼はどうやって責任を取るのだろうか・・・。
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