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俺は因果律改変システムから出された選択肢を選び、選んだ選択肢をタップした。
俺が選択したのは、因果律を改変しない[NO]の方だ。
争いの無い平穏な日々には憧れたが、記憶や出会った人々、新たな大切な家族である魔王軍を失いたくなかったから、迷う事なく[NO]を選んだ。
「バイバイ」って言ったのは、俺の平穏な日々に別れを告げる為の言葉だ。
我ながらちょっとカッコ良かったと思う。
因果律改変を望まなかった俺には、もうこのドームの中にいる意味は無い。
俺はドームを出る為に、ドームの壁面を目指して歩き始めた。
しかしこのドームの中、本当に何も無い。
だが不思議と何も無いのに、神秘的で未来的に見えてしまうのは何故だろう。
壁面に着き、壁に手を触れて出口を作る。
だが出口となる開口部は現れなかった。
俺は何度も開口部を作る為に壁面に触れたが、結果は変わらず開口部は出来なかった。
そんな時、背後に気配を感じた。
先程までは無かった気配だ。
俺は気配の主を確認する為に振り返った。
そこに居たのは、なんと白い服を着た絶世の美女だった。
そしてその美女が話し掛けて来た。
『因果律の改変を望まぬ者よ。私は運命の神モイラ。因果律の改変を願わなかったあなたに聞きたい事があり顕現しました』
目の前にいるおねーさん、運命を司る女神様らしい。
『何故改変を望まなかったのですか?このままだとあなたは、人族の敵として世界中から狙われてしまいます。あなただけならまだしも、あなたの家族も同じ扱いを受けるでしょう。それでも改変を望まないと?』
「はい。俺は改変を望みません。平穏な日々を手に入れる為に、新たに出会った人々や、新しく家族同然になった魔王軍の仲間達を忘れてまで、平穏な日々を送りたくないですから・・・」
俺はそう答えてから一礼し、ドームを出る為の開口部を作ろうと振り返ると、モイラ様は話しを続けて来た。
『お待ちなさい。ここ数ヶ月のあなたの行動、少しばかり気になったので見させて貰ってました。確かにあなたは巻き込まれただけで、あなたは悪くない。ですが、良い事も悪い事も引き寄せる体質がある様です。私が顕現し直言を許した稀有の存在であるあなたに、一つだけ贈り物をしましょう。それはあなたが改変を望まないのであれば、あなた以外を改変するという贈り物です。あなた以外の因果律を改変するのではなく、あなた以外の方々の記憶と記録を改変させていただきます。あなたは魔王軍の関係者ではないと・・・。そうすればあなたは何も失わず、今まで通り暮らしていけます』
モイラ様はとんでもない事を提案して来た。
俺は何も失わないが、俺と魔王軍の関係を知っている人々の記憶と記録を改変し、俺と魔王軍は無関係だった事にしてしまう、何とも力技だが有難い申し出だ。
だが気になる事もある。
「モイラ様のご厚意大変有難いのですが、俺にはモイラ様のご厚意にお返し出来る物がありません」
俺がそう言うと、モイラ様はニッコリ微笑んでから、俺に話をして来る。
『そんなに構えなくても大丈夫です。・・・・そうですね・・・。あなたが作る手料理とお酒を私にご馳走していただけますか。それを贈り物の返礼とさせていただきましょう』
探索者になってから出会った、人間以外の高次元的な存在の方々は、皆食い気が前面に出た残念な方ばかりだ。
モイラ様の言葉に笑顔で頷く事しか出来なかったが、俺のこの判断が結果的に、後々多大なプラスに転じる事となった。
ーーーーーーーーーー
桜ダンジョン12階層の森林の中にある、謎のドーム内に特設された簡易キッチン(アウトドアテーブルの上にカセットコンロを並べただけ)の上は、散々たるものだった。
散乱する食材、散らかった調味料と調理器具、モイラ様に料理を振る舞った事が如何に重労働だったのかが見てとれる。
今までに入手したダンジョン食材をフル活用し、考え付く限りの料理を作り、それをモイラ様に出す。
モイラ様は俺の出した料理をひたすら食べ続け、俺は数時間の間料理を作り続ける事になった。
モイラ様が『腹八分目って言うのでしたか?ここらで食事を終わりにしましょう』と言った時には、オーク、ブラックカウ、魔鯛、魔イカは各一匹分、スカイフィッシュとコカトリスは半匹分、デビルスカラップは数え切れない程消費されていた。
それと大量のお酒も・・・。
この身体のどこに入ったのだろうか?
そんな心配をよそに、モイラ様はアフターコーヒーと言わんばかりにお酒をがぶ飲みしてらっしゃる。
戦いの残骸を収納に片付け、モイラ様に近付くと、モイラ様が話し始めた。
『やはり人族の食事は美味な物が多いですね。お願いした甲斐がありました。それであなた以外の記憶と記録の改変についてですが、[魔族と人族の争いにあなたが関与していない]と改変させていただきます。地球人の全ての記憶と記録、魔族の全ての記憶と記録から、あなたが襲われた事により、この争いが起きた事を抹消します。さすがに亡くなった方々の命までは戻せないので、この争いを無かった事には出来ませんが、あなたは争いが起こる以前の生活を取り戻す事が出来ます』
モイラ様はそう説明してくれた。
この争いの発端は、探索者協会の横澤理事が部下を使って俺を襲った事から始まった。
俺以外の全ての人達から、事の発端は俺という記憶と記録を抹消してくれるのであれば、悠々自適な探索者ライフを送る事が出来る。
だが気になる事がある。
「そうであれば、この争いの原因はどうなるのですか?」
『そうですね・・・、この争いの発端は、魔族の要人が人族に襲われたって事にしておきましょう。あながち嘘ではありませんので、改変するのも手間ではありませんし』
「それでもこの争いは終わらないですよね?終わらせる方法はありませんか?」
事の発端を俺が襲われた事から、魔族の要人が襲われた事に変えてくれるらしいが、戦争自体は無くならない様だ。
だから俺は戦争を終わらせる方法を尋ねた。
『我々神族は基本的に下界の事象には関与しません。ですので星が無くなる様な事をしない限りは静観するつもりです。・・・ですがあなたが戦争の集結を望むのであれば、特別に戦争を終わらせる方法をお教えしましょう。それは魔族が圧倒的な武力で人族に愚かさを教えてあげる事です。人族は生態系の頂点に立ったと勘違いし、星を破壊し星のバランスを崩しました。しかも星を何個も破壊する事の出来る、核兵器という持つべきではない武器まで持っています』
モイラ様はここまで一気に話すと、缶ビールを口に流し込む。
『人族は身をもって自分達の愚かさを知り、捕食する立場から捕食される立場まで堕ちるべきでしょう。そうすれば自分達が星の支配者だという傲慢な考えが無くなり、この争いが意味の無い物だと気付くはずです。ついでに今の地球に存在する価値の無い国を、魔族に滅ぼさせるのも一興でしょう』
モイラ様はそう言うと新しいビールの缶を開け、美味しそうに飲み始めた。
モイラ様の言う通りだ。
今の地球人は偏った思想が蔓延していて、助け合う事よりも人を蹴落とす事ばかりに一生懸命になっている。
他者より先に、他者より裕福に、他者より偉くなり、他者より恵まれた生活を求め、人が人を害する事に抵抗が無くなっている。
それに従わない者は[同調圧力]という、見えない暴力により淘汰される。
モイラ様が言う事は間違っていない。
俺は返す言葉が見つからないまま、ビールを美味しそうに飲むモイラ様を見つめる事しか出来なかった。
俺が選択したのは、因果律を改変しない[NO]の方だ。
争いの無い平穏な日々には憧れたが、記憶や出会った人々、新たな大切な家族である魔王軍を失いたくなかったから、迷う事なく[NO]を選んだ。
「バイバイ」って言ったのは、俺の平穏な日々に別れを告げる為の言葉だ。
我ながらちょっとカッコ良かったと思う。
因果律改変を望まなかった俺には、もうこのドームの中にいる意味は無い。
俺はドームを出る為に、ドームの壁面を目指して歩き始めた。
しかしこのドームの中、本当に何も無い。
だが不思議と何も無いのに、神秘的で未来的に見えてしまうのは何故だろう。
壁面に着き、壁に手を触れて出口を作る。
だが出口となる開口部は現れなかった。
俺は何度も開口部を作る為に壁面に触れたが、結果は変わらず開口部は出来なかった。
そんな時、背後に気配を感じた。
先程までは無かった気配だ。
俺は気配の主を確認する為に振り返った。
そこに居たのは、なんと白い服を着た絶世の美女だった。
そしてその美女が話し掛けて来た。
『因果律の改変を望まぬ者よ。私は運命の神モイラ。因果律の改変を願わなかったあなたに聞きたい事があり顕現しました』
目の前にいるおねーさん、運命を司る女神様らしい。
『何故改変を望まなかったのですか?このままだとあなたは、人族の敵として世界中から狙われてしまいます。あなただけならまだしも、あなたの家族も同じ扱いを受けるでしょう。それでも改変を望まないと?』
「はい。俺は改変を望みません。平穏な日々を手に入れる為に、新たに出会った人々や、新しく家族同然になった魔王軍の仲間達を忘れてまで、平穏な日々を送りたくないですから・・・」
俺はそう答えてから一礼し、ドームを出る為の開口部を作ろうと振り返ると、モイラ様は話しを続けて来た。
『お待ちなさい。ここ数ヶ月のあなたの行動、少しばかり気になったので見させて貰ってました。確かにあなたは巻き込まれただけで、あなたは悪くない。ですが、良い事も悪い事も引き寄せる体質がある様です。私が顕現し直言を許した稀有の存在であるあなたに、一つだけ贈り物をしましょう。それはあなたが改変を望まないのであれば、あなた以外を改変するという贈り物です。あなた以外の因果律を改変するのではなく、あなた以外の方々の記憶と記録を改変させていただきます。あなたは魔王軍の関係者ではないと・・・。そうすればあなたは何も失わず、今まで通り暮らしていけます』
モイラ様はとんでもない事を提案して来た。
俺は何も失わないが、俺と魔王軍の関係を知っている人々の記憶と記録を改変し、俺と魔王軍は無関係だった事にしてしまう、何とも力技だが有難い申し出だ。
だが気になる事もある。
「モイラ様のご厚意大変有難いのですが、俺にはモイラ様のご厚意にお返し出来る物がありません」
俺がそう言うと、モイラ様はニッコリ微笑んでから、俺に話をして来る。
『そんなに構えなくても大丈夫です。・・・・そうですね・・・。あなたが作る手料理とお酒を私にご馳走していただけますか。それを贈り物の返礼とさせていただきましょう』
探索者になってから出会った、人間以外の高次元的な存在の方々は、皆食い気が前面に出た残念な方ばかりだ。
モイラ様の言葉に笑顔で頷く事しか出来なかったが、俺のこの判断が結果的に、後々多大なプラスに転じる事となった。
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桜ダンジョン12階層の森林の中にある、謎のドーム内に特設された簡易キッチン(アウトドアテーブルの上にカセットコンロを並べただけ)の上は、散々たるものだった。
散乱する食材、散らかった調味料と調理器具、モイラ様に料理を振る舞った事が如何に重労働だったのかが見てとれる。
今までに入手したダンジョン食材をフル活用し、考え付く限りの料理を作り、それをモイラ様に出す。
モイラ様は俺の出した料理をひたすら食べ続け、俺は数時間の間料理を作り続ける事になった。
モイラ様が『腹八分目って言うのでしたか?ここらで食事を終わりにしましょう』と言った時には、オーク、ブラックカウ、魔鯛、魔イカは各一匹分、スカイフィッシュとコカトリスは半匹分、デビルスカラップは数え切れない程消費されていた。
それと大量のお酒も・・・。
この身体のどこに入ったのだろうか?
そんな心配をよそに、モイラ様はアフターコーヒーと言わんばかりにお酒をがぶ飲みしてらっしゃる。
戦いの残骸を収納に片付け、モイラ様に近付くと、モイラ様が話し始めた。
『やはり人族の食事は美味な物が多いですね。お願いした甲斐がありました。それであなた以外の記憶と記録の改変についてですが、[魔族と人族の争いにあなたが関与していない]と改変させていただきます。地球人の全ての記憶と記録、魔族の全ての記憶と記録から、あなたが襲われた事により、この争いが起きた事を抹消します。さすがに亡くなった方々の命までは戻せないので、この争いを無かった事には出来ませんが、あなたは争いが起こる以前の生活を取り戻す事が出来ます』
モイラ様はそう説明してくれた。
この争いの発端は、探索者協会の横澤理事が部下を使って俺を襲った事から始まった。
俺以外の全ての人達から、事の発端は俺という記憶と記録を抹消してくれるのであれば、悠々自適な探索者ライフを送る事が出来る。
だが気になる事がある。
「そうであれば、この争いの原因はどうなるのですか?」
『そうですね・・・、この争いの発端は、魔族の要人が人族に襲われたって事にしておきましょう。あながち嘘ではありませんので、改変するのも手間ではありませんし』
「それでもこの争いは終わらないですよね?終わらせる方法はありませんか?」
事の発端を俺が襲われた事から、魔族の要人が襲われた事に変えてくれるらしいが、戦争自体は無くならない様だ。
だから俺は戦争を終わらせる方法を尋ねた。
『我々神族は基本的に下界の事象には関与しません。ですので星が無くなる様な事をしない限りは静観するつもりです。・・・ですがあなたが戦争の集結を望むのであれば、特別に戦争を終わらせる方法をお教えしましょう。それは魔族が圧倒的な武力で人族に愚かさを教えてあげる事です。人族は生態系の頂点に立ったと勘違いし、星を破壊し星のバランスを崩しました。しかも星を何個も破壊する事の出来る、核兵器という持つべきではない武器まで持っています』
モイラ様はここまで一気に話すと、缶ビールを口に流し込む。
『人族は身をもって自分達の愚かさを知り、捕食する立場から捕食される立場まで堕ちるべきでしょう。そうすれば自分達が星の支配者だという傲慢な考えが無くなり、この争いが意味の無い物だと気付くはずです。ついでに今の地球に存在する価値の無い国を、魔族に滅ぼさせるのも一興でしょう』
モイラ様はそう言うと新しいビールの缶を開け、美味しそうに飲み始めた。
モイラ様の言う通りだ。
今の地球人は偏った思想が蔓延していて、助け合う事よりも人を蹴落とす事ばかりに一生懸命になっている。
他者より先に、他者より裕福に、他者より偉くなり、他者より恵まれた生活を求め、人が人を害する事に抵抗が無くなっている。
それに従わない者は[同調圧力]という、見えない暴力により淘汰される。
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