上 下
57 / 82

予兆

しおりを挟む
俺が起きてから数日が経った。
相変わらずマップには赤い点が数点、、、
いい加減目障りになって来た。
実は少し前、ロイヤルの所を訪れて今回の件から身を引く事を伝えた。
何かしらの交換条件を出されると覚悟していたが、思いの外すんなり了承してくれた。
なにやら考えがあるらしい、、、
まぁ、この先はビジネスのプロに任せるか。

マップの赤い点も少しは減ったが、未だにある。
俺は良いけど、屋敷の人たちに危害があると困る。
そろそろ彼らにも退場してもらおうかな。
そう考えて行動に移る事にした。

・「セリス、マルチ、ちょっとお願いがあるんだけど聞いてくれるかな?」

朝食の時、俺は二人に願い出る事にした。
最近は絶対に一人にさせてくれないからさ、、、
正直に話して今日だけは一人で行動しよう。

・「気付いているだろうけど、最近何者かの監視の目がうっとうしくなってきてね。
そろそろ退場願おうかと思うんだ。
だから、今日は俺一人で行動していいかな?」

・マルチ
「ダメ!」

・セリス
「断る!」

秒で断られた!
早いよ二人とも。

・「頼むよ。
一人じゃないと襲って来なさそうだし、屋敷の人を人質に取られたりしたら困るだろう?」

・マルチ&セリス
「むぅぅぅ~」

・ミズキ
「ライオットは私が守るので安心して。」

相変わらずいつの間にか出現するミズキさん
本当にすごい技術だ、、、

・「今日だけ頼むよ、屋敷の人たちの為にもさ。」

その後もごねる二人をミズキと俺で説得する。
そして、離れた場所で待機すると言う所で折れてくれた。そう言えば、最近セリスがギルドに行ってないけど大丈夫か?

昼前に俺は行動に移す。
俺の護衛は隠れてミズキがしてくれている。
セリスとマルチはかな~り離れて行動。
ミズキの合図と共に現れる手筈となっている。

・「さてと、、、
全ての赤い点が付いて来ているな。
では、ギルドで適当な依頼を受けて外に出るか。
冒険者として行動すれば怪しまれないだろう。」

俺はギルドへと向かう。
マップで確認する限り、赤点人数は6人。
結構多いな、、、

ギルドに着いた。
俺はさっそく依頼ボードに向かう。

・「依頼は、、、よし、これにしよう。」

鉱物採掘の依頼を受ける。
懐かしの銅鉱採掘の依頼だ。
実は鞄の中に銅鉱は入っている。
最小限の素材は常に持っているのだ!
何処でもレベル上げができる様に。

手続きを済ませてギルドを後にする。
受付時にサリスさんが話があると言ってきたが、先にこちらを片付けたいので後にしてもらった。
何だかすみません、、、
このモヤっとした気持ちも尾行している奴らにぶつけよう。

懐かしい道のりを進む、、、
そう言えば何回も通ったなぁ~。
あの頃はレベル上げの事だけを考えて頑張ってたなぁ、楽しかった。
よし、この件が終わったらレベル上げに勤しもう。
俺の気持ちは固まった、、、
そして、銅鉱が取れる場所までやって来た。

「さて、、、この辺で良いか、、、
ステータス。」

ライオット レベル28 手持金 10万c

筋力 152 補正値 70  計 222
知力 185 補正値 320 計 505
敏捷性158 補正値 60  計 218

スキル
チートマップ・精神自動回復・順応力

魔法
風属性 46 水属性 39 炎属性37

技能(補正値は装備時のみ発動)
剣術 22 補正LV4 筋力8 敏捷性8
杖術 20 補正LV4 知力20
盾術 21 補正LV4 筋力20
槍術 20 補正LV4 筋力12 知力4
体術 20 補正LV4 筋力10 敏捷性12
射撃 31 補正LV6 筋力12 敏捷性12

特殊技能(補正値は常時発動)
採取 31 補正LV6 筋力30 知力30
採掘 11 補正LV2 筋力10 敏捷性10
魔装 54 補正LV10知力100
操舵 27 補正LV5 敏捷性50

加工技能(補正値は常時発動)
裁縫 42 補正LV8 知力80
鍛冶 19 補正LV3 筋力30
錬金 22 補正LV4 知力40
魔生 38 補正LV7 知力70

ふむ、、、かなり強くなったなぁ~。
でも、このステータスで俺を尾行している奴らに勝てるのだろうか?
ちょっと不安になって来た、、、
ヤバくなったらミズキさんや待機組の二人に助けを求める方が安全かな?

まあいい、はじめますか。

・「はーぃ、隠れてる皆さん。
出て来てくださぁーい。」

周りはシーンと静まり返っている。
まぁ、出てこいと言われて出て来る奴は居ないか。
でも何もアクションが無いのは少し寂しい、、、
一人ぐらい出てきて欲しいものだね。

・「出てきてくださーい。5秒で出て来ないのであればこちらにも考えがあります。」

やはり反応はない、、、
仕方がない、向こうの言い分を聞いてから攻撃しようと思ってたけど先制攻撃するか。
俺はマップで敵の位置を確認。

いつの間にか7人に増えてる。
全く、困ったものだ。
7人全員の頭上にこっそりと大量の水を展開。
圧縮した後、風魔法で一気に押し流すつもりだ。
面倒だからこっちに流すか、、、
水は炎魔法で蒸発、消滅させよう。

・「はい、時間切れ~」

そんな気の抜けた言葉と同時に魔法を発動。
7カ所に展開した水を開放する。

『ウォータースプラッシュ ×7』

いきなり頭上から攻撃された7人は何も出来ない。
予想通り次々とこちらに流されてくる。
そこにピンポイントで鞄から取り出した銅鉱を投げて一人一人気絶させていく。

注)良い子は人に石を投げてはいけません。

、、、、一人足りないな。
6人の男が倒れている。
すぐにマップを確認、、、、
しかし、7つあった筈の点が6つしかない。
しかもマップを見る限り、この周辺には倒れている男たちとミズキとマルチ達しかいない筈だ。
どういう事だ?

・???
「へぇ、やっぱり君もマップ持ちかい?」

背後で声がした、、、
不思議と敵意が無い事が解る。
しかし、安堵の瞬間、凄まじい殺気が一瞬だけ走る、、、、生きている心地がしなかった。
いま、、、、俺、死んでたな。

俺はその場から逃げ出す事もしなかった。
ただ振り返る。
その様子に驚く謎の人物。

・???
「へぇ、逃げもビビりもしないんだね。
それとも何も感じなかった?」

・「いや、、、死んだと感じたよ。
その気になれば一瞬で殺せると感じる程に。
まだ生きていると言うことは、それを伝えたかっただけと受け取りました。
それで、、、、
マウントを取った貴方は何を伝えたいのですか?」

気付けば途中から敬語になってる俺。
だってこの人怖いんだもの!

・???
「すごいね、こんな人間初めてだ。
どうやったらそんな風に考えられるのかな?
死ぬと思ったんでしょ?
その割には落ち着いてるね~」

少し楽しそうに話す謎の人物。
凄いのはそっちだろう?
ミズキが出てこないという事は、あの殺気は俺だけにしか感知出来ていないのだろう。
それに一瞬だけ感じた魔力の濃さ、、、
尋常じゃない。
その気になればミズキもマルチも、セリスだって危ない、全員で戦っても勝てる気がしない。

・???
「ふふふ、まぁそんなに緊張しないで。
今回はさ、質問があって来たんだ。」

・「質問、、、ですか?」

・???
「簡単な2択だよ。
どちらかが必ず消滅するとしよう。
国と仲間、、、君ならどちらを助けたい?」

どういう意味だ?
真意が解らないが、答えないのも恐ろしい、、、

・「何を確かめたいのかはわかりませんが、、
仲間です。」

俺は正直に答えた。

・???
「ふむ、、、、
その結論に至った君の考えを聞いていいかな?」

・「俺には国を助けるなんて力はありません。
例えあったとしてもそんな大それた事はしない。
人間一人で救える事なんてたかが知れてると思うので、何を犠牲にしても大切な仲間を見捨てる事など出来ません。」

・???
「なるほど、共感が持てる意見だね。
だが、実際の問題ではどうなるかな?
次の質問だ、、、」

謎の人物から嫌な雰囲気が溢れ出す、、、
なんだ?

・???
「今から隠れている3人を殺す。
助けたいのであれば、今ここで君が死ぬしかない。
どうする?」

、、、、、なんだこの空気。
殺気?
違うな、、、
得体が知れない、、、、
間違いない、、、死ぬ。

俺はそこにある死を確信した。
この人物、、、、強すぎる、、、

・???
「どうする?」

もう、迷ってる暇はない。
戦うと言う選択はない。
賭けに出るしかない。

・「解りました。
あの三人には手を出さないと約束してください。」

・???
「俺が約束を守ると思うのかい?」

・「選択肢まで与えたのに約束を破るのですか?
貴方の様に何かを極めた人がそんな無駄な事をするとは思えません。
私は貴方を信じます。」

相手を持ち上げて信頼の意を表す。
絶対の降伏、、、
これで相手を満足させて約束を守らせる。
これしか3人を守る道はない。
俺はそう考えた。

・???
「死ぬのが怖くないのかい?」

・「怖いですよ、、、、でも、何故でしょう?
3人を死なせたくないと思う気持ちの方が強い。
いえ、、違うかな。
いや、、違わないか。
ただ、それだけです。」

あぶねぇ、本音が出る所だった。
仲間を死なせたくない、、、違うな。
本当は仲間の死ぬところが見たくない。
大切な人を失って、自分の心が傷付きたくないだけ、これが本音なのだろう。
確実な死を前にして、自分でも気付かなかった本音が見えたよ。
なんて自己中心的な考え方なんだろう。
実に人間らしい考え方だ、、、反吐が出る。

俺が自己嫌悪に陥っている間に、謎の人物からの圧力が元に戻る。

・???
「君は本当に面白い子だね。
どうだい?
自分の人間らしい本心に触れた感想は?」

くっそ、、、何がしたいんだ?
流石にストレートに聞かれると腹が立つ。
でも逆らえない程の差があるのも解る、、、
なんだろう、、、この悔しさ。

悔しいくても何も出来ない。
この無力感、、、
何故だろう、、、懐かしい?

・???
「ここまでにしておくよ。
何か思い出したかな?」

本当に何がしたいんだ?

・???
「すまなかったね。
僕の名はグラン。
一応、君の味方だよ。」

何処がだよ、、、くっそ好き勝手言いやがって。
何も言い返せない自分が悲しいよ。

・グラン
「さて本題に移ろう。
今現在、二つの脅威が迫っている。
一つは国に、一つは仲間にだ。
どちらもかなり危険な状態だと言える。
しかし、今の君が介入すれば君が死ぬ確率が高い。
更に、殆ど同時に別の場所で起こる出来事だ。
どちらを選ぶ?」

・「詳細を教えて貰えませんか?」

・グラン
「詳細は無理だ。
まだ決まっていない未来だからね。
僕が言えるのは危険が迫っていると言うことだけ」

俺は考える。
今までのやりとりを思い出す、、、
まるで俺の心を見透かす様な言動。
更にはこれから起こる事を知っているそぶり。
まるで、、、女神さんじゃないか。

もちろん、女神さんみたいに綺麗で優しくて暖かくなく、人をおちょくりながらマウント取ったり非情なやり方で嫌な人物で、イケメンで許せないけど。

・???
「言い過ぎ!」

たが、俺に迷いはない。

・「仲間を助けたいです。」

・グラン
「わかった。
ではマップでリーシュを追いなさい。」

リーシュさん?
確か今は国を離れているんだよな?
て言うか、何でグランはマップを知ってるんだ?
他人の状況を見れることも知っている?
グランも使えるのか?

考えながらもマップを見る。
マップで見る限るでは、、、、なんだこの状況?

・「ありがとうございます、グランさん。
すぐに向かいたいのでここで失礼します。」

・グラン
「国は見捨てるのかい?
それに、リーシュを助けられる保証はないよ?
君は死ぬだけかもしれない。
何も出来ずに犬死になるかもしれないよ?」

・「先程も言った通り、俺には国を守る力は無い。
できる限りの手は打ちます。
今は何よりも仲間を助けたいと思っていますので、俺はリーシュを助けに行きます。
例え何も出来なくても、何もしないよりはマシでしょう?
貴方はどうしますか?
味方だと言いながら、、、危険と解っていながら見捨てるのですか?
力を持つ者が何もしないで見ている、そんなクズにはなりたくありませんので!
では、失礼します。」

そう言い放ち、逃げる様にその場を後にする。
それに合わせてミズキも退却する。

俺は出来る限りの事をしたつもりだ。
最悪その場で殺されても構わない、、、
そんな賭けに出たんだ。
どんな人物か知らないけど、グランと名乗る人物が味方なのは間違いなさそうだ。
ならばそれを利用させてもらう。
でも、出来ればもう会いたくないな。
あの人、怖すぎる。

俺達が居なくなった後、グランは呟く
その足元には、6つの遺体がある。
ライオットが気絶させた人達が、生き絶えていた。

・グラン
「ライオットか、、、
最後にとんでもない勝負に出たな。
僕を味方と信じて言ったのか?
それとも煽って行動させる為か?
どちらにしても面白い人間だね。
良いだろう、これでも君の味方だ。
力を貸してあげる。
味方だと言う所を見せてあげるよ。」

そう呟いて、その場から消える
6つの遺体と共に、、、


~登場人物~

・グラン
謎の人物。
圧倒的な力の差を感じさせる。
一応味方らしい。
しおりを挟む

処理中です...