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それぞれの行動

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~ギルドにて~

・サリス
「ふぅ~、困ったわ、、、」

ギルドの一室で困り果てるサリス。
一枚の紙を見ながらため息が漏れる。
彼女は綺麗な装飾が施されてる手紙を見つめてた。
国からの依頼書だ。
ギルドは必ず答えなければいけない依頼。
拒否権は無い。
年に数回あるかどうかの珍しいものでもある。
国がギルドに頼る時、、、
軍だけでは手に負えない面倒な時に依頼が来る。
『オーク殲滅戦』の時にも来た依頼書である。

・サリス
「こう何回も来られても困るんだけど、、、
今年は短いスパンで2回目。
何かの前兆なのかしら、、、」

嫌な予感は妙に当たるものである。
肝心の内容は、隣国のモーダル国領土であるハーラルの調査。
先発隊の1小隊との連絡が途絶えた為、1部隊を送ったが壊滅したとの報告が入ったらしい。
次の部隊を送りたいが、あまり大きな動きを見せるとモーダル国との戦争になりかねない為、ギルドで冒険者として調査してほしいとの事。
冒険者としてなら軍が動くよりも警戒されにくい。
恐らくそんな事だろう。
そして、依頼書には冒険者の指名もあった。
ライオット殿に依頼したいと、、、

・サリス
「困ったわ、、、
ライオットさんが断っちゃったらどうしよう。
依頼料は凄い額になってるけど、国の依頼を断るなんて事は無いわよね?
でもライオットさんだからなぁ~、、、
笑顔で『お断りします』とか言いそうだわ。」

そんな折、ギルド受付より声が掛かる。
なんでも冒険者ライオットがサリスとの面会を求めているらしい。

・サリス
「そう言えば、先程出ていく際に後で話を聞いてくれるって言ってたわね。
律儀な方でありがたいわ。」 

こちらに通すように受付に伝える。
するとすぐにライオットが現れた。
共に居るのは、ミズキ、マルチ、セリスだ。
珍しくミズキが姿を現している。

・セリス
「ただいま、姉さん。
とりあえずライオットの話を聞いてほしい。
アタシも詳しく知らないが緊急らしいからさ。」

サリスが話す前にセリスが話し出した。
本当はこちらの話を先にしたかったが、何やら様子がおかしい。 

・サリス
「何かあったの?」

・「単刀直入に聞きます。
『カイジュ監獄』ってご存知ですか?」

どうしてその名を知っているのかしら?
本当に不思議な人ね、ライオットさん。

・サリス
「隣国にある辺境の監獄ね。
どうして知ってるのかしら?聞いていい?」

・「俺にマップのスキルがあるのをご存知ですよね?俺のマップ機能で場所の特定はできるのですが、入った事のない場所は地図を見ないと詳細が出ないらしくて。
名前と世界のどこにあるかは解るんですけどね。
名前を知っているのはマップを見たからです。」

十分恐ろしい機能である。
その上、街やダンジョンに入ると詳細まで見えるようになる。
相手にとっては最悪のスキルだろう。

・「ある人物に言われたんです、、、
リーシュが危ないと。
それでマップ機能を使って見てみたら『カイジュ監獄』にいることがわかりました。
大変な状況になってまして、すぐに助けに行きたいんです。」

・サリス
「大変な状況?」

・「俺のマップで敵対心が解るのはご存知ですよね?リーシュの周りが真っ赤っかなんですよ。
周りには青い点が囲う様にありますが、心配で、、、」

そう言えばそうだったわね、、、
色で敵か味方かが解るんだったわ。
恐ろしいスキルだこと。

・サリス
「解りました、、、では地図を持ってきます。
それと、ちょっとこちらのお願いも聞いてもらえるかしら?」

この際だから依頼も一緒にお願いしちゃおう。

・サリス
「実は、ライオットさん宛に国から依頼が来ています。隣国のハーラルと言う町を調査してほしいの。
無理にとは言わないわ。
リーシュさん達の小隊が向かって連絡が途絶えたのもこの町で、何か関係があるかもしれないわ。
小隊の連絡が途絶えて、その後に出発した1部隊が壊滅したのも同じ町よ。
かなりの危険が潜んでいるかもしれない。
冒険者として訪れて様子を伺ってほしいの。」

・「、、、、解りました。
その依頼を受けましょう。
でも、まずはリーシュの安全を確かめるのが先です。その後、余裕があったら調べてみます。」

ライオットさんなら例え依頼不履行でも大丈夫かな?国王からの信頼も厚いみたいだし、、、
それよりもリーシュさんの身柄を確保することが先決ね。ひょっとしたら、リーシュさんが何か知ってるかもだし。

・サリス
「ありがとう、ライオットさん。
リーシュさんを救出したら戻って来ても大丈夫よ。
国王さんには私から説明しておくわ。
救出を優先してください。
ちなみに、ハーラルの町は監獄の北にあります。」

・「はい、ありがとうございます。」

サリスは地図を取りに部屋を出ていく。
話を聞いていた3人はそれぞれの意見を話し出す。

・セリス
「リーシュが危ないって本当か?
すぐに助けに行こうぜ。」

・マルチ
「リーシュ、、、助ける」

・ミズキ
「あなた、、、先程の人物の事だけど。
遠目から見てましたが何者ですか?」

ミズキがグランの事を気にしている。
直接見ていたのはミズキだけだからな、、、
不審に思うのは当たり前か。

・「セリス、マルチも聞いてくれ。
先程、『グラン』と言う人物にあった、、、
リーシュの危機を教えてくれた人だ。
同時にこんな事も言っていた。
国が危ないと、、、
俺は出来る限り対処したつもりだが、『グラン』と言う人物がよく解らない。
国を助けるか、リーシュを助けるか。
どちらかを選べと言われ、俺はリーシュを選んだ。
国の対処はどうすればいいと思う?」

・セリス
「初対面なんだろ?どんな奴かもわからない奴の言葉を鵜呑みにするのか?」

・「だが、万が一という事もある。
実際にリーシュは危機に瀕している。
あながち国の危機も起こるかもしれないだろ?
詳細は教えてくれなかったけど、ただ者ではなかったぞ?」 

思い出しただけでも鳥肌が立つ。

・セリス
「ぬぅ、、、、」

・ミズキ
「それなら私が国王に直談判しましょう。
そして守りを固める様に言います。」

・「良いのかい?
守りを固めろと言って何も起きなかったらミズキが怒られるんじゃない?」

・ミズキ
「私は貴方を信じていますから。
それに、何事も起きなければそれで良いじゃないですか。」

確かに、、、何も起きなければそれで良いか。
でも、その時にミズキが怒られるのは嫌だなぁ~。

・サリス
「お待たせしました。」

サリスさんが帰って来た。
よし、サリスさんにお願いしよう。

・「ありがとうございます。
サリスさん、依頼を受ける代わりに一つお願いしていいですか?」

・サリス
「私に出来る事なら。」

・「これからすぐにでも国が消滅するかもしれない危機的な何かが起こります。
その事を国王に伝えて守りを固めて下さい。
何が起こるかは分かりませんが、何かしら起こるのは確かです。
解らない事に対しての防衛は不可能かもしれませんが、何かしらの対策をして欲しいのです。
国王も俺と同じ程ではありませんがマップ機能が使えますので、駆使して危険を回避してほしいとお伝えください。
情報源は俺です。
何もなかった時は俺が罰を受けますので。」

これで、ミズキさんは何の罰も受けないで済む。

・ミズキ
「あなた、、、、」

少しモジモジしているミズキが可愛い、、、
良いものが見れた。

・サリス
「本当なの?
消滅するって、、、」

・「俺も聞いただけですから何とも言えませんが。
危険が迫ってるとみて良いかもしれません。」

思いの外、すんなりと信じてる感じだな。
サリスさん、ひょっとして『グラン』を知っているのか?

・「こんな時に居なくなって申し訳ありません。
俺はすぐにでもリーシュを助けに行きます。」

・サリス
「解ったわ、、、こっちの事は私に任せて。」

・「ミズキ、サリスさんの補佐を頼む。」

・ミズキ
「解りました。
あなたもお気をつけて、、、」

俺はギルドを出ていく。
問題はセリスとマルチだな、、、
ここに残しても危険、、、
一緒に来ても危険、、、
この国を出て逃げて欲しいけど一緒に居るって言ってくれるだろうな。
どうしようかなぁ~。

・セリス
「あ~、、、ライオット。
色々とアタシたちの事、考えてるんだろ?
考えても無駄だぜ?
お前と一緒に行くからな。」

セリスの強い意志を感じる。
マルチも大きく頷いている。

・「正気にに言うよ。
俺達が死ぬ確率が高いらしい、、、
出来れば逃げて欲しいだけど。」

・マルチ
「尚更、一緒に居る。
今度は私がライオットを助ける。」

・セリス
「あたしも同じ意見だ。
言っただろう?困った時は頼れって。
冒険者としてまだまだ新米のヒヨッコは大人しく頼れば良いの。」

セリスとマルチが笑いかけてくれる。
凄く嬉しい、、、
正直怖かったんだよね。

・「俺が、、、絶対に2人を死なせない。
約束するよ。」

・マルチ
「じゃあ、私達がライオットを死なせない。
これで、誰も死なないね。」

・「さすが年上のお姉さん方、頼りにな、、」

・セリス
「あ”ぁ”?」

どんな発音?
めっちゃ怖いんですが!

・「な、、何でもないです、、、」

・マルチ
「私は、、、、年下。」

・「はい、解っています、、、すいません。」

こぇぇ、、、
めちゃめちゃ怖い、、、
『グラン』なんて比較にならん程に怖い。
2人の怒気が俺を襲った後。
2人とも優しい笑顔で包んでくれる。
このギャップはたまりませんな。


~未知の場所~

・グラン
「へっぷし、、、」

誰か、僕の噂でもしてるのかな?

・グラン
「さて、、、僕もそろそろ行動に移ろうか」


~ギルド前~

・「さて、行こうか、、、
リーシュを助けに。」

腹は決まった、、、
例え死ぬかもしれない場所でも、大切な人の為なら喜んで突っ込んでやる。

『グラン』は言った、、、
このままいけば死ぬ確率が高いと、、、
裏を返せば、死なないかもしれなって事でもある。
既に危険だと言う情報は入手できた。
ならば細心の注意と迅速な行動で、死ぬ確率とやらを下げて行けばいい。
知恵と工夫で乗り切ってやるさ。

・セリス
「監獄まで通常は1週間はかかるぞ。
なんせ、山道が多いからな、、、
直ぐに馬車を手配してくる。」

・「待って、そんな時間はかけれない。
予想を裏切るような動きをしないと手遅れになるかもしれないからさ。
想像の斜め上を意識して行動したい。
2人とも最小限の荷物を持ってきてくれ。」

実は考えがある。
常識を覆す移動方法、、、
サリスさんが見せてくれたものだ。
準備の整ったセリスをおんぶする。
マルチはお姫様抱っこにした。

・セリス
「帰りは、、、、あたしを抱っこしてくれ、、、」

背中でセリスが何かをつぶやいてた気がした。

・「しっかりと掴まれ!
全力で飛ばすからな。」

俺は魔力を高める。
身体全体を包み込み、一気に爆発させる。
全力の風魔法だ、、、、
山なんて飛び越えてやる。
まずは距離1週間分の常識を覆すんだ。
俺達は一気に飛び立っていった。
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