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野営地にて

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オルドラ王国を飛び出して一日が経過した。
全行程の半分以上進んだ所で野営を行う。
やはり空を飛行すると恐ろしく速い、、、
後ふた山程飛び越えればもう目的地だ。

・セリス
「お疲れ様、、、だな。
こんなに早くここまで来るとは思わなかった。
やっぱりお前は凄い奴だ。」

セリスが褒めてくれる。
かなり嬉しいのだが、今は魔力枯渇で苦しいのだ。
いつもは精神自動回復ですぐに元気になるのだが、流石に7時間連続魔法使用は無理があったみたい。
目的地に早くついてもヘロヘロだったら意味がないからね。
今日はここでゆっくりと休もう。

・マルチ
「ライオットはゆっくりしていて。
料理も寝床の準備も私たちに任せて。」

マルチの優しさが身に染みる。
俺はお言葉に甘えて仮眠を取る事にした。
やはり回復と言えば寝るに限るから、、、
目を閉じると即刻眠りについた。

・セリス
「眠ったか?
常識の通じない奴だと思ったが、まさか一日でこんな所まで飛んでくるとは思わなかった。」

地図を見ながらつぶやくセリス。
マルチは頷きながら料理を作っている。

・セリス
「何があったかは知らないが、、、
待ってろリーシュ、すぐに助け出してやる。」

固い決意を胸に、マルチの手伝いへと向かう。
2人は協力してキャンプ飯を作るのだった。


~女神さんの空間にて~

・「お、、、ここは女神さんの所かな?」

・女神さん
「こんばんわ、ライオットさん。
呼んでもないのに現れるなんて珍しいですね。
どうやったんですか?」

・「いえ、寝ただけなんですけどね?
なんでここに来れたんだろう?」

謎だ、、、、
魔力使いすぎて死にかけてたのかな?
そんな感じはしなかったけど、、、

・女神さん
「あ、、、その服に刺さってるアクセサリー。
どうしたんですか?」

ん?アクセサリー?
女神さんが指さす場所をさする。
上着で隠れる様に腰当りに何か刺さっていた。

・「これなんでしょう?
こんな物、買った覚えもないし。
見た事もない、、、」

しかし、なんだ?
よくよく見ると魔力が渦巻いている感じがする。
こんなにもハッキリした魔力の渦があるのに、言われるまで気づかなかったぞ?
更に観察してみると一定の魔力の流れ、その中に何やら文字の様な物まである。
魔方陣?いつの間にこんなものが?

・女神さん
「これは、、、まさか、、、」

何か知ってるっぽいな、、、
でも教えてはくれないんだろうなぁ~。

・女神さん
「申し訳ありません。
このアクセサリーを譲ってもらえませんか?」

珍しく女神さんからお願いが来たぞ?
いつも助けてもらってばかりだから、何か返せるのは嬉しいな。

・「もちろん良いですよ。」

俺は快く渡した。
女神さんはアクセサリーを調べている。
いつ見ても綺麗だな~女神さん。
いいなぁ~、ずっと見てられるなぁ~。

・女神さん
「ありがとうございます。
嬉しいのですが、、、、
セリスさんやマルチに怒られますよ?」

やべ、思考が読まれるんだった、、、
考えてたことモロバレじゃないですか!

・女神さん
「ふふふ、ライオットさんは面白いね。
どうやらこのアクセサリーのお陰でこの世界に来れたみたいですね。
でも、すぐに効力が切れるみたい。」

そうだったのか、、、
まぁいいや、女神さんに逢えて元気が出た。

・女神さん
「かなりの魔力を消費している様ですね。
アクセサリーのお礼に回復してあげます。」

ありがたい、、、
来てよかったなぁ~。
完全に偶然だけど。

・女神さん
「では、明日は気を付けてくださいね。」

そして、世界が変わる、、、
俺が消えた世界で女神は呟く。

・女神
「これは紋章術、、、
そしてこの紋はあの人のよね?
私に力を貸してくれるの?」

~野営地~

・「、、、、、、。」

起きた。
凄く良い匂いがする、、、

・セリス
「お?起きたかライオット。」

セリスが気付いてくれた。

・マルチ
「食事の準備は完了したよ。
一緒に食べる。」

マルチに進められるがままに食事となった。
女神さんのお陰ですっかり魔力は回復したな。
飯食って体力を回復すれば万全の状態になる。

・「いっただっきまぁ~っす」

俺は二人の作った飯にかぶりつく、、、
そして硬直、、、、

・マルチ
「どう、、、かな?」

心配そうに聞いてくるマルチ。
セリスは知らんぷりしながらも、しっかりと聞き耳を立てている。

・「うっま!」

めちゃくちゃ美味いぞ!

・「ビックリするほど美味しいよ。
二人とも凄いな、、、
こんなに料理が上手だったんだね。
いいお嫁さんになれるよ。」

・セリス
「もうなってるが?」

そう言えばそうだった、、、
考えてみれば幸せだなぁ~。

・「こんなにも可愛い嫁さんが4人も居るなんて、前の世界では考えられないや。」

嬉しそうにする二人。
そして当然こんな質問をされる。

・マルチ
「前の世界では、お嫁さん居なかったの?」

・「え?」

前の世界、、、、嫁?
居たよな?
、、、あれ?
居なかったっけ?
記憶が、、どんどん消えている?

・セリス
「む、無理に答えなくて良いからな?」

・「いや、、、答えたいんだが、、、
すまない、記憶が消えている感じだ。
思い出せる事がドンドン少なくなっている。
何だろう?何で思い出せないんだろう?」

不思議だ、、、
思い出そうとしても思い浮かばない感じ?
ぼんやり思い出せても思い出に実感が無い、、、
他人の人生を別の視点で見ている感じだ。

・マルチ
「ごめんね、変なこと聞いちゃって、、、」

ちょっと泣きそうになっているマルチさん。
そんなに悲しそうな顔されると申し訳なくなる。

・「ごめんごめん、謝らないでマルチ。
仮に過去の事を忘れても平気だよ。
今が幸せだからね。
セリスとマルチのお陰だな。
本当にありがとう。
セリス、マルチ、ミズキにリーシュさん。
みんな俺の大切な人だ。
絶対に、守り抜いて見せる。」

二人は嬉しそうに頷いた。
その後、美味しい料理を堪能して寝床に向かい、明日の為に早めに眠りにつく事にした。

早めに眠りにつく。

早めに眠りにつく、、、?

非常に眠りにくい、、、、!

・「寝床、、、一つしかないのかい?」

思わず呟いてしまった、、、

・マルチ
「明日の為に見張りをしないで、みんなで寝ておきたいってセリスと話してた。だから結界陣を張ったけど範囲は狭いから、一緒に寝る。」

・「結界陣、、、知らない単語だな。
安心して寝られる結界でも張ったのかい?
そんな事が出来るんだね。」

・マルチ
「これで安心、明日の為に寝る。」

セリスが非常に大人しい、、、
もう寝たのか?
俺の腕にしがみ付いてピクリともしない、、、
耳が真っ赤になってますよ?
これ、起きてるよね?

反対側にはマルチがしがみ付いている。
妙に嬉しそうだ、、、、

二人とも知ってる?
可愛い子がぴったりくっついてると、、、、
男の子は目が覚めちゃうんだよ?
そんな事を思いつつ、野営地の夜は深けていく。

~次の日~

・「、、、、、、」

きっと仮眠をしていたからだろう。
余り眠れなかった。
二人はまだスヤスヤと寝ている。
俺はゆっくりと寝床を後にする。
男の子の朝は色々と大変な事になっているのだ。

主に下半身が、、、、

しかし、これは仕方のない事だ。
朝の自然現象なんだから!

数十分もすると二人が起きてくる。
セリスに言われて俺は周辺の見回りに向かう。
その間に2人は野営の後片付けを行う事になった。

近くに川とかないかな?
そんな気持ちで野営地を離れる。

・セリス
「なぁ、、マルチ、、、、
やっぱり昨晩も手を出してこなかったな。
アタシ達ってそんなに魅力ないのかな?
仮にも嫁の立場なんだが、、、
覚悟を決めているとはいえ、肩透かしがこうも多いとチョット自信なくなってくる。」

・マルチ
「わかる、、、、
私がちょっと怖いと思っているせいなのかな?
ライオットは大好きだけど、、、
未知の行為がちょっと怖い。
そんな空気を察してるのかな?」

・セリス
「実は、、、、怖いのはアタシもだ、、、
ライオットは優しいからなぁ~。」

二人はため息を漏らす、、、
実はライオットは未だに何もしてこない。
セリス、マルチ、ミズキ、リーシュ。
妻たちにとっては由々しき事態である。
彼は4人の美女に囲まれながらも手を出さない。
とんだヘタレだと思われても仕方が無いのである。
ミズキに至ってはかなりの猛アピールを続けているらしいが、まだ何もないと言っていた。
こっそりと情報共有している妻4人であった。
しかし、4人は知らない。
その事についてはライオットが一番不思議に思っているのであった。


~オルドラギルド~

ギルド長の部屋にサリスが座っていた。
最近はギルド長のセリスが不在の為、サリスが長の仕事をしている。
、、、その手が止まる。

・セリス
「、、、、、いらっしゃるのでしょう?
お姿をお見せください。」

誰もいない筈なのに、そう呟くセリス。
すると、突然空間が歪む。

・グラン
「やぁ、サリス。
相変わらず鋭いね、、、
僕の存在を感知できるのって君と勇者、、、
後は女王位なんじゃないかな?」

・サリス
「ライオットさんが言ってたグランと言う人物。
やっぱり貴方様だったんですね。」

サリスは席を立ちグランの前に出る。
そして膝まづく。

・サリス
「何か御用でしょうか?」

・グラン
「あ~、そう改まらないで良いよ。
今は普通の人間として行動してるしさ。
今後は普通に接して欲しいな。」

・サリス
「解りました。
ではもう一度聞きます。
、、、何か用?」

・グラン
「昔では考えられない位にあっさりと順応したね?
これも彼の影響かな?」

ふと思い浮かべる。
つい最近逢った、不思議な人物。

・サリス
「私自身、びっくりしてるわ。
恐らくそうなのでしょう、、、
セリスも変わりました。
全ては彼と出会ってから、、、」

300年、400年、、、
もっと多くの時間を共有してきた妹。
ずっと2人で一緒だった。
孤立を防ぐためにギルドに入り、身を隠した。
彼女を守るために組織に入り今の地位を確立した。
そこには仲間の為などと言う気持ちは無かった。
ただただ、妹を守るだけに生きてきた。
そんな可愛い妹、、、
それが、一人の人間と関わって変わってしまった。

・グラン
「サリス、正直に答えて欲しい。
彼は、、、ライオット君は必要?
排除すべき?」

可愛い妹を変えてしまった人物。
彼の事を思い浮かべて目を閉じる。

・サリス
「彼は、、、、」


~野営地後~

・「ただいまぁ~
周辺に異常はなかったよ。」

ライオットが帰って来た。
既に出発の準備は整っていた。

・セリス
「ご苦労さん。」

・マルチ
「ん。」

二人が出迎えてくれた。
先程マップで確認してみた所、少し動きがあった。
赤い点の数が明らかに多くなっている。

・「リーシュにとっての敵がかなり増えた。
どうやら牢っぽい場所から移動するみたいだ。
こっそりと助け出そうかと思ったが、変更するかもしれない。」

・セリス
「好きに動け、サポートはする。」

・マルチ
「何かあったら指示して。
何でもする。」

2人共、頼もしいな、、、
目的地まで後2山程、、、
飛んでいけば30分も掛からないだろう。
1週間を1日ちょいで移動してやったぞ。
必ず、助け出してみせる。
待ってろよ、リーシュ。
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